
タンパク質は20種のアミノ酸からできており、そのうち9種は体内で合成できない「必須アミノ酸」です。食事から摂るしかないため、不足すると体の機能維持に支障をきたします。この記事では必須アミノ酸9種を一覧テーブルで網羅し、それぞれの働き・多く含む食品・BCAAとの関係をわかりやすく解説します。アミノ酸スコアや条件付き必須アミノ酸についても補足するので、栄養素の全体像を把握したい方はぜひ参考にしてください。
必須アミノ酸9種一覧
体内で合成できず食事から摂る必要があるアミノ酸を必須アミノ酸といいます。2007年のWHO/FAO/UNU報告書で9種が確定しており、日本でも同じ基準が採用されています。
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| 名称(記号) | 読み | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|---|
| ヒスチジン(His) | ひすちじん | ヘモグロビン合成・神経伝達物質ヒスタミンの前駆体・成長支援 | 鶏肉・牛肉・サバ・マグロ |
| イソロイシン(Ile)★ | いそろいしん | 筋肉修復・エネルギー代謝・血糖値調節 | 牛肉・鶏胸肉・大豆・チーズ |
| ロイシン(Leu)★ | ろいしん | 筋タンパク合成促進(mTOR活性化)・エネルギー代謝 | 牛肉・鶏肉・マグロ・大豆 |
| リシン(Lys) | りしん(リジンとも) | コラーゲン合成・カルシウム吸収促進・免疫機能維持 | 肉類全般・魚介類・卵・乳製品 |
| メチオニン(Met) | めちおにん | 肝臓保護・抗酸化(グルタチオンの前駆体)・システイン合成 | 卵・鶏肉・魚・ゴマ |
| フェニルアラニン(Phe) | ふぇにるあらにん | チロシン合成・ドーパミン・ノルアドレナリンの前駆体 | 大豆製品・牛肉・卵・乳製品 |
| トレオニン(Thr) | とれおにん(スレオニンとも) | 消化管粘膜の維持・コラーゲン合成・成長促進 | 豚肉・牛肉・卵・レンズ豆 |
| トリプトファン(Trp) | とりぷとふぁん | セロトニン・メラトニン合成・睡眠と気分の調節 | バナナ・牛乳・大豆・七面鳥 |
| バリン(Val)★ | ばりん | エネルギー産生・筋肉修復・窒素代謝バランス維持 | 牛肉・鶏肉・大豆・チーズ |
★: BCAA(分岐鎖アミノ酸)
各アミノ酸の補足メモ
- ヒスチジン:以前は乳幼児にのみ必須とされていたが、1985年のWHO/FAO/UNU基準で成人にも必須と確認された(2007年の改訂報告書でも引き続き確認)。脱炭酸されるとアレルギー反応に関わるヒスタミンになる。
- リシン(リジン):日本ではリシン・リジン両方の表記が使われる。米や小麦に不足しやすい「第一制限アミノ酸」として知られ、日本人の食生活でも不足しがちなアミノ酸の一つ。
- メチオニン:含硫アミノ酸(硫黄を含む)の代表。体内でシステインに変換される。ホモシステイン代謝にも関わる。
- フェニルアラニン:体内でチロシンに変換される。フェニルケトン尿症(PKU)の患者は代謝できないため摂取制限が必要。
- トレオニン(スレオニン):1935年に最後に発見された必須アミノ酸。英語名 Threonine からトレオニン(またはスレオニン)と呼ぶ。
- トリプトファン:必須アミノ酸の中で食品中の含有量が最も少ない。日照不足の冬や夜勤生活ではセロトニンが減りやすく、トリプトファンを多く含む食品を意識的に摂ることが推奨される。
必須アミノ酸の豆知識
BCAAとは?イソロイシン・ロイシン・バリンの3種
BCAA(Branched-Chain Amino Acids:分岐鎖アミノ酸)は、イソロイシン・ロイシン・バリンの3種の必須アミノ酸の総称です。名前の由来は側鎖(サイドチェーン)が枝分かれした構造を持つことから。
- 必須アミノ酸9種のうち3種がBCAA(全必須アミノ酸の33%)
- 肝臓ではなく主に筋肉で直接代謝されるため、エネルギー利用が速い
- ロイシンは特に注目されており、mTOR(タンパク合成を調節するシグナル経路)を直接活性化して筋タンパク合成を促進する
- プロテインサプリやスポーツドリンクに「BCAA配合」として広く使われている
- BCAA含有量が多い食品:鶏胸肉・牛肉・マグロ・大豆・卵
アミノ酸スコアとは?食品のタンパク質の質を評価する指標
アミノ酸スコアは、ある食品が必須アミノ酸をどれだけバランスよく含んでいるかを示す指標です。100に近いほど良質なタンパク質といえます。
スコア100の食品(完全タンパク質):卵・鶏肉・牛肉・豚肉・魚介類全般・牛乳・チーズ・大豆(植物性では唯一スコア100)
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| 食品 | アミノ酸スコア | 制限アミノ酸 |
|---|---|---|
| 精白米(うるち米) | 93 | リシン |
| 食パン | 51 | リシン |
| とうもろこし | 44 | リシン・トリプトファン |
※2007年WHO/FAO/UNU基準。旧基準(1973年FAO/WHO)では精白米=61と表記している資料も多い。
スコアが低い食品でもタンパク質の補完効果を利用することで不足するアミノ酸を補えます。「ご飯+味噌汁・納豆」は米のリシン不足を大豆が補完しており、日本の伝統的な一汁三菜が理にかなっている理由のひとつです。
必須アミノ酸が不足するとどうなる?
各アミノ酸が不足したときに起こりやすい変化を知っておくと、食生活を見直すヒントになります(一般的な栄養教育情報です)。
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| 名称 | 不足しやすい食生活 | 不足時に起こりやすい変化 |
|---|---|---|
| ヒスチジン | 偏食・肉魚を食べない | 貧血・成長遅延(乳幼児・成長期) |
| イソロイシン | 低タンパク食 | 筋力低下・倦怠感・血糖値不安定 |
| ロイシン | 低タンパク食・高齢者 | 筋肉量の減少(サルコペニアの一因) |
| リシン | 米・小麦を主食にする食生活 | 疲労感・傷の回復の遅れ・成長遅延 |
| メチオニン | 動物性食品を摂らない | 抗酸化能低下・肝機能低下のリスク |
| フェニルアラニン | 低タンパク食 | 集中力低下・気分の落ち込み |
| トレオニン | 偏食・食物繊維過多 | 消化器不調・肝臓への脂肪蓄積 |
| トリプトファン | 低タンパク食・日照不足が重なる | 睡眠の質の低下・気分の落ち込み |
| バリン | 低タンパク食 | 筋肉量の低下・集中力の低下 |
リシン不足に注意:日本人の主食である精白米はリシンが少ないため、毎食の主食に魚・肉・大豆製品を組み合わせることが重要です。特に菜食主義者や偏食傾向のある方は意識的に摂取しましょう。
非必須アミノ酸・条件付き必須アミノ酸の一覧
タンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種。必須アミノ酸9種以外の11種が非必須アミノ酸ですが、すべてが「不要」なわけではありません。
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| 名称(記号) | 読み | 備考 |
|---|---|---|
| アラニン(Ala) | あらにん | グルコース新生の材料として重要 |
| アルギニン(Arg)† | あるぎにん | 成長ホルモン分泌促進・免疫機能 |
| アスパラギン(Asn) | あすぱらぎん | アスパラガスに初めて発見 |
| アスパラギン酸(Asp) | あすぱらぎんさん | エネルギー代謝・クレブス回路 |
| システイン(Cys)† | しすてぃん | メチオニンから合成・抗酸化 |
| グルタミン(Gln)† | ぐるたみん | 腸管・免疫細胞の主要エネルギー源 |
| グルタミン酸(Glu) | ぐるたみんさん | 旨味成分・神経伝達物質 |
| グリシン(Gly)† | ぐりしん | コラーゲンの約33%を占める |
| プロリン(Pro)† | ぷろりん | コラーゲン・エラスチンの構成成分 |
| セリン(Ser)† | せりん | 細胞膜成分・脳神経の構成 |
| チロシン(Tyr)† | ちろしん | メラニン・甲状腺ホルモン合成 |
†:条件付き必須アミノ酸(ストレス・疾患・外傷時に体内合成が不足することがある)
通常は体内で十分合成できるが、重篤な疾患・怪我・強いストレス・早産児などの状態では合成が需要に追いつかなくなる7種(アルギニン・システイン・グルタミン・グリシン・プロリン・セリン・チロシン)を「条件付き必須アミノ酸」といいます。病院食や栄養補助食品では特に注目されています。
効率よく摂るには?完全タンパク質と補完の組み合わせ
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| 食品 | 特徴 | 1食の目安量 |
|---|---|---|
| 鶏胸肉(皮なし) | 高タンパク低脂質・BCAA豊富 | 100〜150g |
| 卵 | アミノ酸スコア100・ビタミン含む | 1〜2個 |
| マグロ赤身 | 鉄分も同時補給 | 刺身5〜8切れ |
| 大豆製品(豆腐・納豆) | 植物性で唯一のスコア100 | 豆腐1/2丁・納豆1パック |
| 牛乳・ヨーグルト | カルシウムと同時補給 | 牛乳200ml・ヨーグルト100g |
一般成人の1日のタンパク質推奨量は体重×0.8g(例:体重60kgなら48g)。アスリートや高齢者は体重×1.2〜2.0gが目安とされています。タンパク質は3食に分けて摂ることで筋タンパク合成が効率化されます。
まとめ
必須アミノ酸9種(ヒスチジン・イソロイシン・ロイシン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン・トリプトファン・バリン)は、体内で合成できないため食事から摂取するしかありません。うち3種(イソロイシン・ロイシン・バリン)はBCAAとして筋肉のエネルギー代謝に特化した働きを持ちます。
食事では肉・魚・卵・大豆などのアミノ酸スコア100の食品をバランスよく摂ることが基本です。米や小麦が主食の場合は、おかずで動物性または大豆タンパクを補う日本の伝統的な食事スタイルが理にかなっています。
栄養素の全体像については栄養素の種類まとめ|ビタミン13種・ミネラル13種を完全網羅も合わせてご覧ください。ビタミンの詳細はビタミン13種類一覧、ミネラルの詳細はミネラルの種類一覧でも解説しています。