日本刀の種類と名刀一覧|天下五剣・村正・正宗など44選まとめ

世界最高峰の刃物文化と評される日本刀。平安時代から江戸時代末期にかけて、無数の刀工が魂を込めて打ち上げた名刀は今も博物館で人々を魅了し、ゲームや漫画を通じて現代に受け継がれている。この記事では、太刀・打刀・脇差など日本刀の種類を基礎から整理し、天下五剣をはじめ戦国武将や幕末志士が愛用した名刀44振を、刀工・時代・所蔵先・逸話とともにまとめる。史実と伝説は明確に区別し、正確な情報をお届けする。

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日本刀の種類一覧

日本刀は刃長(刀身の長さ)と携帯方法の違いによっていくつかの種類に分類される。

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種類 読み 刃長の目安 特徴・用途
太刀 たち 60cm以上 刃を下向きに腰から吊るして携帯(佩用)。平安〜室町時代の騎馬武者が主に使用
打刀 うちがたな 60cm以上 刃を上向きに帯に差して携帯(帯刀)。室町後期以降の主流。一般に「刀」と呼ばれる
脇差 わきざし 30〜60cm 打刀と一緒に帯びる補助刀。武士の「大小」の「小」にあたる
短刀 たんとう 30cm未満 護身・切腹・女性の護身用として広く使われた
薙刀 なぎなた 刃40〜60cm程度(全長150cm超) 長柄の先に刃が付いた武器。薙ぐように振るう。女武者も多用
やり 穂先10〜50cm(全長2m以上) 刺突専門の武器。戦国時代の集団戦で広く普及
つるぎ 30〜80cm程度 両刃(諸刃)の直刀。古墳〜奈良時代に多く、神事・儀式用として残る
長巻 ながまき 刃70cm前後(全長150cm前後) 薙刀に似た大型武器。鎌倉〜南北朝時代に使用

太刀と打刀の見分け方

太刀と打刀の最も確実な見分け方は「銘(めい)の位置」である。腰に吊るしたとき外側にくる面に銘があれば太刀、腰に差したとき外側にくる面に銘があれば打刀となる。博物館での展示では、太刀は刃を下向きに、打刀は刃を上向きに置かれることが多い。

時代別の区分

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区分 製作年代の目安 主な特徴
古刀(ことう) 〜1596年(慶長以前) 平安〜戦国時代の刀。現代の技術でも完全再現困難と言われる
新刀(しんとう) 1596〜1780年頃 江戸時代初〜中期。江戸・大阪に刀工が集積し量産化が進む
新々刀(しんしんとう) 1780〜1876年頃 古刀の復古を目指した時期。水心子正秀・大慶直胤らが活躍
現代刀(げんだいとう) 1876年〜現在 廃刀令以降。美術工芸品・神社奉納刀として製作
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日本五大流派(五箇伝)と代表刀工

日本刀の製法・作風は産地ごとに「五箇伝(ごかでん)」と呼ばれる五大流派に大別される。

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伝(流派) 産地 時代 代表刀工
大和伝 大和国(奈良県) 平安〜南北朝 手掻包永・千手院・保昌・尻懸
山城伝 山城国(京都府) 平安〜室町 三条宗近・藤四郎吉光・粟田口国綱
備前伝 備前国(岡山県東部) 平安〜江戸 古備前・一文字派・長光・景光
相州伝 相模国(神奈川県) 鎌倉〜南北朝 新藤五国光・岡崎正宗・郷義弘
美濃伝 美濃国(岐阜県) 南北朝〜江戸 兼氏・兼定・関の孫六

名刀一覧

天下五剣(てんかごけん)

「天下五剣」は数ある名刀の中でも最高峰とされる5振の総称。いずれも国宝または御物(皇室所蔵)で、現存している。「天下五剣」という呼称が文献に登場するのは明治時代以降とされる(諸説あり)。

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刀名(読み) 刀工・時代 文化財 所蔵先
童子切安綱(どうじぎりやすつな) 大原安綱・平安時代後期 国宝 東京国立博物館
三日月宗近(みかづきむねちか) 三条宗近・平安時代末期 国宝 東京国立博物館
大典太光世(おおでんたみつよ) 三池典太光世・平安〜鎌倉初期 国宝 前田育徳会(東京国立博物館に寄託)
数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ) 青江恒次・平安時代 国宝 本興寺(兵庫県尼崎市)
鬼丸国綱(おにまるくにつな) 粟田口国綱・鎌倉時代 御物 宮内庁(一般非公開)
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平安〜室町時代の著名な名刀

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刀名(読み) 刀工 文化財 所蔵先
山鳥毛(さんちょうもう) 一文字友成(備前) 重要文化財 岡山県立美術館
小竜景光(こりゅうかげみつ) 備前景光 国宝 東京国立博物館
太刀 銘 一(菊一文字則宗・きくいちもんじのりむね) 一文字則宗(備前) 国宝 東京国立博物館ほか
太刀 銘 光忠(みつただ) 備前光忠 国宝 東京国立博物館・徳川美術館ほか
太刀 銘 長光(ながみつ) 備前長光 国宝 徳川美術館・東京国立博物館ほか
太刀 銘 包永(かねなが) 手掻包永(大和) 国宝 東京国立博物館
太刀 銘 国光(くにみつ) 新藤五国光(相州) 国宝 東京国立博物館
太刀 銘 正宗(まさむね) 岡崎正宗(相州) 国宝・重文多数 東京国立博物館・徳川美術館ほか
太刀 銘 義弘 梅花皮江(かいらぎごう) 郷義弘(越中) 国宝 徳川美術館
太刀 銘 長義(ながよし) 長船長義(備前) 国宝 東京国立博物館
太刀 銘 助真(すけざね) 福岡一文字助真(備前) 国宝 東京国立博物館
厚藤四郎(あつしとうしろう) 藤四郎吉光(山城) 国宝 東京国立博物館
骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう) 藤四郎吉光(山城) 重要文化財 豊国神社(京都)※鑑定で吉光作以外の可能性も指摘
秋田藤四郎(あきたとうしろう) 藤四郎吉光(山城) 国宝 東京国立博物館
五月雨江(さみだれごう) 郷義弘(越中) 国宝 前田育徳会(東京国立博物館に寄託)
桑名江(くわなごう) 郷義弘(越中) 国宝 徳川美術館
太刀 銘 友切(ともきり)(髭切・ひげきり) 大原安綱の系統(伝・諸説あり) 重要文化財 北野天満宮(京都)
薄緑(うすみどり)(膝丸・ひざまる) 不詳(平安時代の作とされる) 重要文化財 大覚寺(京都市右京区)
小烏丸(こがらすまる) 伝:天国(あまくに)作(諸説あり)・奈良〜平安期 御物 東京国立博物館(宮内庁から寄託)
石切丸(いしきりまる) 不詳(平安〜鎌倉時代の作とされる) 重要文化財 石切剣箭神社(大阪府東大阪市)御神体
太刀 銘 国宗(くにむね) 備前国宗・鎌倉時代初期 国宝 東京国立博物館

※ 髭切(友切)は源頼光が所持したとされる太刀。蜘蛛の首を切り落としたという伝説が「諸説あり」として伝わる。
※ 薄緑(膝丸)は源頼光の子・頼信が所持し、源義経の手に渡ったという伝説がある(講談の域)。
※ 小烏丸は現存する最古クラスの日本刀の一振。直刀から湾刀への移行期の独特な刀形(切っ先両刃)を持つ。平家の重宝として伝わった。

戦国時代ゆかりの名刀

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刀名(読み) ゆかりの人物 刀工・種類 所蔵先
へし切長谷部(へしきりはせべ) 織田信長→豊臣秀吉→黒田如水 長谷部国重(はせべくにしげ)・打刀 福岡市博物館(国宝)
宗三左文字(そうさのさもじ) 今川氏親→武田信玄→織田信長 左文字(九州)・打刀 徳川美術館(重要文化財)
義元左文字(よしもとさもじ) 今川義元→織田信長 左文字(九州)・打刀 建勲神社(京都市)※京都国立博物館に寄託(重要文化財)
前田藤四郎(まえだとうしろう) 織田信長→前田利家 藤四郎吉光・短刀 前田育徳会(国宝)
薬研藤四郎(やげんとうしろう) 織田信長 藤四郎吉光・短刀 現存不明(本能寺の変で消失か)
燭台切光忠(しょくだいきりみつただ) 伊達政宗→徳川秀忠 備前光忠・打刀 水戸市立博物館(重要文化財)
大倶利伽羅広光(おおぐりからひろみつ) 伊達政宗→仙台伊達家 広光(相州伝)・打刀 日本美術刀剣保存協会技術研究財団(大阪府茨木市)(重要美術品)
物吉貞宗(ものよしさだむね) 徳川家康 岡崎正宗・打刀 東京国立博物館(重要文化財)
日向正宗(ひゅうがまさむね) 徳川家康→田中吉政に下賜 岡崎正宗・短刀 東京国立博物館(国宝)
松井江(まついごう) 織田信長→豊臣秀吉→細川忠興 郷義弘・打刀 永青文庫(熊本)(重要文化財)
篭手切江(こてぎりごう) 南部氏→島津氏→徳川将軍家 郷義弘(伝)・打刀 東京国立博物館(重要文化財)
石田正宗(いしだまさむね) 石田三成 岡崎正宗・短刀 東京国立博物館(国宝)
天下藤四郎(てんかとうしろう) 豊臣秀吉 藤四郎吉光・短刀 前田育徳会(重要文化財)
江雪左文字(こうせつさもじ) 北条氏康ゆかり(伝・諸説あり)→徳川将軍家 左文字(九州)・打刀 永青文庫(東京都文京区)(重要文化財)
山姥切国広(やまんばぎりくにひろ) 長尾顕長(足利城主)→前田利長 堀川国広・打刀 黒川古文化研究所(兵庫県芦屋市)(重要文化財)

幕末・新選組の名刀

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刀名(読み) 使用者 刀工・産地 特記事項
長曽祢虎徹(ながそねこてつ) 近藤勇 長曽祢入道興里(江戸・新刀) 「近藤の虎徹」として有名。一方で偽物説も多く、真作かどうかは現存刀の鑑定でも議論が続く
和泉守兼定(いずみのかみかねさだ) 土方歳三 兼定(美濃伝・会津)・打刀 11代兼定の作とされる。函館五稜郭での戦いまで共にした愛刀
加州清光(かしゅうきよみつ) 沖田総司(諸説あり) 清光(加賀)・打刀 複数の説があり定説なし。沖田は複数の刀を使ったとされる
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天下五剣を徹底解説

童子切安綱(どうじぎりやすつな)

伯耆国(現・鳥取県)の刀工・大原安綱が平安時代後期に打ち上げた太刀。刃長80.0cm。国宝に指定され、現在は東京国立博物館が所蔵する。

「童子切」という号の由来は、平安時代の武将・源頼光が鬼(酒呑童子)の首を斬り落としたという伝説にある(伝承であり史実ではない)。天下五剣の中で最も古い時代の作とされ、古刀随一の傑作と評価される。

三日月宗近(みかづきむねちか)

平安時代末期、山城国の刀工・三条宗近が打った太刀。刃長80.0cm。国宝。東京国立博物館所蔵。

天下五剣の中で「最も美しい」と称される1振。刃文に「打ちのけ(打除け)」と呼ばれる三日月形の景色が多くあらわれることが号の由来。豊臣秀吉の正室・高台院(北政所)が所持し、高台院の死後の1624年(寛永元年)に遺品として徳川秀忠に贈られた。以後、江戸期を通じて徳川将軍家の御重宝として大切に保管された。

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大典太光世(おおでんたみつよ)

筑後国(現・福岡県)の刀工・三池典太光世が平安時代末期〜鎌倉時代初期に制作した太刀。刃長66.0cm。国宝。前田育徳会が所蔵し、東京国立博物館に寄託される。

「享保名物帳」に名物として記録され、国宝指定を受け、天下五剣の一振に数えられ、前田家では「加賀前田家三種の神器(宗近の刀・静御前の薙刀・大典太光世)」の一つとして特別に重宝された。霊力があるとされ、豊臣秀吉が病に倒れた豪姫(前田利家の娘)平癒のために使わせ、秀吉が死去する直前に前田家に下賜したという逸話が伝わる。

数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)

備中国(現・岡山県)の刀工・青江恒次が平安時代に制作した太刀。刃長83.0cm。天下五剣の中で最も刃長が長い。国宝。兵庫県尼崎市の本興寺が所蔵する。

日蓮宗の開祖・日蓮上人が護持したとされる仏法ゆかりの刀で、柄に数珠が巻かれていたことが号の由来。日蓮→日朗→各寺院→本興寺と伝来したとされる。通常は非公開だが、特別な機会に公開されることがある。

鬼丸国綱(おにまるくにつな)

鎌倉時代に山城国の粟田口国綱が制作した太刀。天下五剣の中で唯一、国宝・重要文化財に指定されておらず、御物(天皇の私有財産)として宮内庁が管理する。一般向けの公開機会が極めて少ない。

号の由来は、北条時頼が夢の中でこの刀が鬼(病の元凶)を自ら斬ったというお告げを受け、その後病が治ったという伝説(伝承であり史実ではない)。御物という性格上、詳細な研究が限られている。

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著名な名刀のエピソード

村正(むらまさ)—「妖刀」の真相

伊勢国桑名(現・三重県桑名市)を拠点とした刀工の総称。室町時代後期から江戸時代初期にかけて複数代にわたり活躍した刀工一門で、作刀の切れ味・品質は高く評価されていた。

「妖刀」として恐れられた背景には、徳川家の歴史的な偶然がある。徳川家の敵対勢力(今川氏・武田氏・石田三成方など)が村正の刀を好んで使用したため、徳川家の多くの人物が「村正の刀に斬られた・傷ついた」という事例が重なった。こうした偶然が積み重なり、江戸時代に「村正は徳川家に禍をもたらす妖刀」という俗説が広まったとされる。妖刀伝説は後世の講談・物語が誇張したもので、刀そのものに特別な能力があるわけではない。

正宗(まさむね)—日本刀の頂点

岡崎正宗(生没年不詳、鎌倉時代後期・13世紀末〜14世紀初頭)は相模国鎌倉(現・神奈川県)を拠点とした刀工で、相州伝の最高峰として「日本一の名刀工」と評価が高い。「天下三作」の1人(ほかに郷義弘・藤四郎吉光、ただし諸説あり)。

正宗の作刀の特徴は「沸(にえ)」と呼ばれる刃文の砂粒状の景色が豊かで、地肌の映り(うつり)が美しい点。弟子たちは「正宗十哲(まさむねじってつ)」と呼ばれ、その後の日本刀製作に大きな影響を与えた。現存する正宗銘の刀の多くは国宝・重要文化財に指定されている。

菊一文字(きくいちもんじ)—後鳥羽上皇ゆかりの名刀

鎌倉時代初期、後鳥羽上皇(1180〜1239)が全国の優れた刀工を御番鍛冶として召し集め、自ら鉄を叩くほどの熱心さで刀作りに打ち込んだ。このとき作られた刀群が「菊一文字」と呼ばれる。「菊」は天皇家の御紋、「一文字」は刃文の形状に由来する。なかでも則宗(のりむね)の作が特に名高く、国宝に指定された作品が複数存在する。

まとめ

今回は日本刀の8種類の分類から五箇伝の流派、そして44振の名刀一覧と天下五剣の詳細解説まで幅広くまとめた。天下五剣に代表される古刀の傑作は、現在も東京国立博物館・各地の博物館・神社で実物を鑑賞できるものが多い。村正の「妖刀」伝説も、史実を正しく知れば刀工の優秀さを再発見できる。日本刀の奥深い世界への入り口として、この記事が役立てば幸いだ。

日本刀を含む世界の武器については武器の種類一覧115選|世界の刀剣・槍・弓から忍者の暗器まで地域別まとめもあわせてどうぞ。

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