世界各国語で「月」は何という?|68言語の月の呼び方と語源まとめ

月は人類が最も古くから見上げてきた天体のひとつ。三日月・満月・新月——その呼び名は日本語だけでも豊かですが、世界の言語では「月」をどう呼ぶのでしょうか。フランス語の「lune(リュヌ)」と英語の「moon(ムーン)」は、実は全く異なる語源を持ちます。アラビア語では月の形によって言葉が変わり、トルコ語では「月」と「1か月」が同じ一語で表されます。本記事では世界68言語の「月」の呼び方を言語族別に網羅し、語源と比較言語学の面白さを解説します。

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世界各国語の「月」の言い方一覧

インド・ヨーロッパ語族|ロマンス語派(ラテン語 luna の子孫)

ロマンス語派はラテン語「luna(ルナ)」を直接受け継いでいます。「luna」の語源はさらに古く、「光る・白い」を意味する印欧祖語 *lewk- に遡ります。日本語で月の女神を「ルナ」と呼ぶのも、このラテン語が英語などを経由した影響です。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
フランス語 lune リュヌ ラテン語 luna そのまま継承
スペイン語 luna ルナ ラテン語 luna そのまま
イタリア語 luna ルーナ ラテン語 luna そのまま
ポルトガル語 lua ルア luna から末尾が短縮
ルーマニア語 lună ルナ ă は曖昧母音
カタルーニャ語 lluna ジュナ ll は舌側音

インド・ヨーロッパ語族|ゲルマン語派(印欧祖語 *meh₁n- の子孫)

ゲルマン語派の「moon/Mond」は、「計る・測る」を意味する印欧祖語 *meh₁n- に由来します。月の満ち欠けで時間を測ったことが語源です。英語の「month(月・1か月)」も同じ語根から生まれました。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
英語 moon ムーン 古英語 mōna から
ドイツ語 Mond モント 名詞は大文字
オランダ語 maan マーン 英語・ドイツ語と同系
スウェーデン語 måne モーネ å = オー音
ノルウェー語 måne モーネ スウェーデン語と同形
デンマーク語 måne モーネ スウェーデン語と同形
アイスランド語 tungl トゥングル 「天空に浮かぶ球体」の意。máni(マーニ)も古形として残る
アフリカーンス語 maan マーン オランダ系入植者が南アフリカへ持ち込んだ形
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インド・ヨーロッパ語族|スラブ語派

スラブ語派では「luna」系(ロシア語のлуна)と「месяц(mesyats)」系の2種類が混在します。興味深いことに、「месяц」は天体としての月よりも「三日月・1か月」の意味で使われることが多く、ロシア語では丸い満月をлуна、細い三日月をместяцで使い分ける話者もいます。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
ロシア語 луна(luna) ルナ 天体としての月。三日月・月間は месяц(メシャッツ)
ポーランド語 księżyc クシェンジツ 古スラブ語「王侯・月」から
チェコ語 měsíc ムニェシーツ 月・1か月の両方の意味
スロバキア語 mesiac メシアツ チェコ語と同系
ブルガリア語 луна(luna) ルナ ロシア語と同形
ウクライナ語 місяць(misyats) ミシャツ 月・1か月の両意味
セルビア語 Месец(mesec) メセツ 月・1か月の両意味
クロアチア語 Mjesec ミェセツ セルビア語と同系

インド・ヨーロッパ語族|ケルト語派

ケルト語派はロマンス語派・ゲルマン語派とは異なる語形を持ちます。ウェールズ語の「lleuad(フレイアド)」は古ケルト語「光る」に由来し、アイルランド語・スコットランド・ゲール語の「gealach(ギャラホ)」は「gel(明るい・白い)」が語源です。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
ウェールズ語 lleuad フレイアド ll は無声歯茎側面摩擦音
アイルランド語 gealach ギャラホ gel(明るい)+接尾辞
スコットランド・ゲール語 gealach ギャラフ アイルランド語と同系

インド・ヨーロッパ語族|バルト語派

バルト語派(リトアニア語・ラトビア語)は、インド・ヨーロッパ語族の中でも古い形を多く残すグループです。「月」の言葉も印欧祖語 *meh₁n- に直接遡ります。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
リトアニア語 mėnulis メーヌリス 印欧祖語 *meh₁n- の系統
ラトビア語 mēness メーネス リトアニア語と同系
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インド・ヨーロッパ語族|インド語派・イラン語派

南アジアのインド語派はサンスクリット語「chandra(चन्द्र)」を源流に持ちます。「chandra」は「輝く・光る」の意味で、ヒンディー語の「chand(チャーンド)」はその口語形。インド・パキスタン映画でよく耳にする「チャンド(chand)」も同じ語です。イラン語派のペルシャ語では「mah(ماه)」が使われます。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
サンスクリット語 चन्द्र(chandra) チャンドラ 「輝く」が語源。月の神の名でもある
ヒンディー語 चाँद(chand) チャーンド chandra の口語形
ベンガル語 চাঁদ(chand) チャーンド ヒンディー語と同形
ペルシャ語(ファルシー) ماه(mah) マー 月・1か月の両意味

インド・ヨーロッパ語族|ギリシャ語・アルバニア語

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
現代ギリシャ語 φεγγάρι(fengari) フェンガリ 口語。学術語は σελήνη(セレニ)=月の女神名でもある
アルバニア語 hënë ハン ラテン語 luna から音変化したとみられる
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セム語族

アラビア語・ヘブライ語

セム語族は印欧語族とはまったく異なる語根を持ちます。アラビア語は月を「形によって」使い分ける文化が特徴的で、輝く円い月を「qamar(قمر)」、細い三日月・新月を「hilal(هلال)」と区別します。「hilal」は現在もイスラム諸国の国旗や旗のシンボルとして使われています。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
アラビア語 قمر(qamar) カマル 輝く天体としての月。三日月は هلال(ヒラール)
ヘブライ語 ירח(yareach) ヤレアハ 月神の名に由来するとも。白い意味の לבנה(レバナ)も古形
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テュルク語族

テュルク語族の「月」は「ay(アイ)」一語で統一されており、天体の月も「1か月(月間)」も同じ言葉で表します。中央アジアの広域で同じ語根が使われているのが特徴です。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
トルコ語 ay アイ 月・1か月の両意味
ウズベク語 oy オイ トルコ語 ay の変形
カザフ語 ай(ai) アイ トルコ語と同形
アゼルバイジャン語 ay アイ トルコ語と同形

ウラル語族

ウラル語族は印欧語族とは系統が異なる語族で、フィンランド語・エストニア語とハンガリー語が含まれます。フィンランド語とエストニア語は互いに近縁で「kuu(クー)」という同じ語形を持ちます。ハンガリー語は「hold(ホルド)」という別の語根を使います。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
フィンランド語 kuu クー 月・1か月の両意味
エストニア語 kuu クー フィンランド語と同形
ハンガリー語 hold ホルド フィン語と語根が異なる
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モンゴル語族

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
モンゴル語 сар(sar) サル 月・1か月の両意味

シナ・チベット語族

シナ・チベット語族では、漢字「月(yuè)」が日本語・韓国語に「月(ゲツ/月)」「월(ウォル)」として借用されています。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
中国語(普通話) 月(yuè) ユエ 月・月間の両意味。日本語の「月(ゲツ)」と同系
チベット語 ཟླ་བ(zla ba) ダワ 口語では「ダワ」。人名にも使われる
ビルマ語 လ(la) 月・月間の両意味

日本語・韓国語

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
日本語 月(つき) つき 語源は「透く(すく)・突く」等の諸説あり
韓国語 달(dal) ダル 日本語とは異なる語根

ドラヴィダ語族

ドラヴィダ語族はインド南部で話されています。タミル語の「nilavu(நிலவு)」は「光・明かり」が語源の固有語ですが、テルグ語・カンナダ語ではサンスクリット語「chandra(चन्द्र)」の借用形が普及しています。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
タミル語 நிலவு(nilavu) ニラブ 固有語。「光」が語源
テルグ語 చంద్రుడు(chandrudu) チャンドルドゥ サンスクリット chandra の借用形
カンナダ語 ಚಂದ್ರ(chandra) チャンドラ サンスクリット chandra と同形

オーストロネシア語族

オーストロネシア語族(東南アジア〜太平洋)では「bulan/buwan」系が広く共通します。インドネシア語・マレー語・タガログ語の「bulan/buwan」はそれぞれ「月・1か月」の両方を指します。太平洋の島々では語根が変わり、ハワイ語「mahina(マヒナ)」、マオリ語「marama(マラマ)」が使われます。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
インドネシア語 bulan ブラン 月・1か月の両意味
マレー語 bulan ブラン インドネシア語と同形
タガログ語(フィリピン) buwan ブワン 月・1か月の両意味
ハワイ語 mahina マヒナ 月・月明かりの意
マオリ語(ニュージーランド) marama マラマ 月・明るさ・理解するの意も

アフリカ諸語(バントゥー語族・その他)

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
スワヒリ語 mwezi ムウェジ 月・1か月の両意味。東アフリカの共通語
ズールー語 inyanga インヤンガ 月・1か月・呪術師(inyanga)の意も
ヨルバ語(ナイジェリア) oṣupá オシュパ 西アフリカ最大言語のひとつ
アムハラ語(エチオピア) ጨረቃ(chereqa) チェレカ セム語族(アラビア語と遠縁)

東南アジア諸語

タイ語とクメール語(カンボジア語)は、サンスクリット「chandra」が仏教・ヒンドゥー教を通じて流入した形を使います。「พระ(プラ)」「ព្រះ(プレア)」は「聖なる・敬称」を意味する接頭辞です。

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
ベトナム語 trăng チャン 口語形。「月面」はmặt trăng(月の顔)
タイ語 พระจันทร์(phra chan) プラジャン サンスクリット chandra 由来。「月(月間)」はเดือน(ドゥアン)
クメール語(カンボジア語) ព្រះចន្ទ(preah chan) プレアチャン タイ語と同様に chandra 由来

孤立言語・コーカサス・その他

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
バスク語(孤立言語) ilargi イラルギ 「死者の光(hil+argi)」が語源とも。系統不明の孤立言語
ジョージア語(グルジア語) მთვარე(mtvare) ムトゥヴァレ カルトヴェリ語族(コーカサス系)
アルメニア語 լուսին(lusin) ルシン 「光(lus)」が語源。印欧語族の独立した支族

先住民語

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言語 月の言い方 読み(カナ) 備考
ナバホ語(北米先住民) Ooljéé' オルジェー アメリカ南西部の先住民語
ケチュア語(南米) killa キジャ インカ帝国の言語。月の女神の名でもある

語源でわかる「月」の3大ルーツ

68言語の「月」の言い方を見ると、大きく3つの語源グループに分類できます。

① 印欧祖語 *meh₁n-(計る)→ ゲルマン語派・バルト語派

英語 moon・ドイツ語 Mond・リトアニア語 mėnulis はすべてこの語根から。月の満ち欠けで時間を「計る(measure)」ことから生まれた語です。英語の「month(月・1か月)」も同じ語根です。

② ラテン語 luna(光る)→ ロマンス語派

ラテン語 luna の語源は「光る・白い」を意味する印欧祖語 *lewk-。フランス語 lune・スペイン語 luna・ポルトガル語 lua はすべてこの系統です。月の女神ルナ(Luna)の名も同じ語源を持ちます。

③ サンスクリット chandra(輝く)→ 南・東南アジア語

サンスクリット語の「chandra(चन्द्र)」は「輝く・光る」が原義。ヒンディー語・テルグ語・カンナダ語・タイ語・クメール語などに借用されています。インド神話の月神「チャンドラ」の名も同じ語源です。

月と「1か月」が同じ言葉になる言語

天体の「月」と期間の「1か月」が同じ言葉で表される言語は、世界に広く存在します。

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言語 月の言い方 意味
トルコ語・カザフ語ほか ay 月(天体)+1か月
フィンランド語・エストニア語 kuu 月(天体)+1か月
モンゴル語 сар(sar) 月(天体)+1か月
インドネシア語・マレー語 bulan 月(天体)+1か月
タガログ語 buwan 月(天体)+1か月
スワヒリ語 mwezi 月(天体)+1か月
チベット語 ཟླ་བ(zla ba) 月(天体)+1か月
ビルマ語 လ(la) 月(天体)+1か月
ペルシャ語 ماه(mah) 月(天体)+1か月

英語でも ancient English では「moon」が月の満ち欠けの周期(1か月)を指しており、「month」はそこから派生した語形です。英語が「moon」と「month」を別単語に分岐させたのに対し、多くの言語では今も一語で両方を表しています。

日本語の「つき」の語源

日本語の「月(つき)」の語源は諸説あります。

  • 透く(すく)説:月の光が透明で澄んでいることから「透き(すき)」が転じたという説
  • 突く(つく)説:月が夜空に突き出ている様子から
  • 漢語由来説:中国語「月(yuè)」の古い音読みが転訛したという説

いずれも定説はなく、「諸説あり」とされています。ただし書き文字の「月」は中国語からの借用であることは確かです。訓読みの「つき」と音読みの「げつ(月)・がつ(月曜)」は、それぞれ別のルートで日本語に定着しました。

腕試しクイズ(全5問)

68言語の月の呼び方、いくつ覚えられましたか? クイズで確認してみましょう。

腕試しクイズ(全5問)|世界の月の呼び方を確認しよう
全5問。選択肢をタップして「採点する」を押すと、正解数と解説が表示されます。
第1問 フランス語で「月(moon)」は何という?

第2問 トルコ語・カザフ語・アゼルバイジャン語に共通する「月(天体)」の言い方は?

第3問 アラビア語で「輝く天体としての月(満月)」を指す言葉は?(三日月・新月を指す「ヒラール」ではないほうで)

第4問 フィンランド語とエストニア語に共通する「月」の言い方は?

第5問 南米のインカ帝国の言語・ケチュア語で「月」は何という?(月の女神の名でもある)

まとめ

世界68言語で「月」の呼び方を比較すると、印欧祖語由来のゲルマン語派(moon系)・ラテン語由来のロマンス語派(luna系)・サンスクリット由来の南アジア語派(chandra系)という3大ルーツが浮かび上がります。また、月と「1か月」が同じ言葉になる言語は世界中に多く、月が時間を計る道具だった時代の名残が言葉に残っています。月見の季節に、ふと空を見上げながら「世界では何と呼ぶのだろう」と考えてみると、言葉の旅が広がります。

世界の言語についてもっと詳しく知りたい方は「世界の翻訳できない言葉201選|日本語に訳せない各国のユニークな表現」もあわせてどうぞ。

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