
中国語の学習を始めると最初に習う「拼音(ピンイン)」。アルファベットと声調記号を組み合わせた発音表記システムで、現代の中国語学習に欠かせません。この記事では、声母21個・韻母16個・四声を網羅した一覧表と、台湾で使われる注音符号(ボポモフォ)との完全対応表をまとめました。昨日公開した発音記号(IPA)一覧と合わせて読むと、言語ごとの発音記号の設計の違いがよくわかります。
拼音とは
拼音(ピンイン、正式名称:漢語拼音)は、中国語(普通話・標準語)の発音をアルファベットと声調符号で表記するシステムです。1958年に中国政府が正式採用し、1982年にはISO 7098として国際標準規格になりました。
現在は中国大陸・シンガポール・台湾(補助的に)など中国語圏で広く使われており、中国語を外国語として学ぶ際の世界標準表記でもあります。
拼音を構成する3要素:
- 声母(shēngmǔ):音節の最初に来る子音(21個)
- 韻母(yùnmǔ):声母に続く母音・複合音・鼻音
- 声調(shēngdiào):音の高低を示す符号(四声+軽声)
注音符号とは
注音符号(ジュウインフーハオ)、通称ボポモフォ(Bopomofo)は、中国語の発音をアルファベットではなく専用の記号で表記するシステムです。台湾の教育部(文部科学省)が1913年に制定し、1918年に公布されました。現在も台湾の初等教育や漢和辞書で標準的に使われています。
記号数は37個(声母21個+韻母16個)。日本語のひらがなによる「ふりがな」に相当する役割を持ちます。先頭の4記号「ㄅ・ㄆ・ㄇ・ㄈ」の読みから「ボポモフォ」とも呼ばれます。
声母(子音)21個 ─ 拼音・注音符号 対応表
声母は発音の調音位置によって7グループに分類されます。同じグループ内では口や舌の位置が共通しており、有気音(息を強く弾く)と無気音(息を弾かない)の対になっているペアが多数あります。
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| 拼音 | 注音 | グループ | 発音の特徴 |
|---|---|---|---|
| b | ㄅ | 唇音 | 「バ」行の無気音(息を強く弾かない) |
| p | ㄆ | 唇音 | 「パ」行の有気音(息を強く弾く) |
| m | ㄇ | 唇音 | 「マ」行(鼻音) |
| f | ㄈ | 唇歯音 | 「ファ」行(上歯を下唇に軽く当てる) |
| d | ㄉ | 舌尖音 | 「ダ」行の無気音 |
| t | ㄊ | 舌尖音 | 「タ」行の有気音 |
| n | ㄋ | 舌尖音 | 「ナ」行(鼻音) |
| l | ㄌ | 舌尖音 | 「ラ」行(側面音) |
| g | ㄍ | 舌根音 | 「ガ」行の無気音(舌の奥を使う) |
| k | ㄎ | 舌根音 | 「カ」行の有気音 |
| h | ㄏ | 舌根音 | 「ハ」行(喉の奥を摩擦させる) |
| j | ㄐ | 舌面音 | 「ジャ」行に近い(i・üの前にのみ現れる) |
| q | ㄑ | 舌面音 | 「チャ」行に近い(i・üの前のみ・有気音) |
| x | ㄒ | 舌面音 | 「シャ」行に近い(i・üの前のみ) |
| zh | ㄓ | そり舌音 | 「チャ」行の無気音(舌先を上に巻く) |
| ch | ㄔ | そり舌音 | 「チャ」行の有気音(舌先を巻く) |
| sh | ㄕ | そり舌音 | 「シャ」行(舌先を上に巻く) |
| r | ㄖ | そり舌音 | 「リャ」行に近い(英語の r に似た音) |
| z | ㄗ | 舌尖前音 | 「ザ」行の無気音(舌先を上前歯の裏に近づける) |
| c | ㄘ | 舌尖前音 | 「ツァ」行(z の有気音版) |
| s | ㄙ | 舌尖前音 | 「サ」行(舌先を上前歯の裏に近づける) |
有気音と無気音の見分け方:b/p・d/t・g/k・zh/ch・z/c がそれぞれペアになっています。手を口の前に当てて発音したとき、息が当たる(紙が揺れる)のが有気音です。
韻母(母音・複合音)16個 ─ 注音符号との対応表
注音符号が独立した記号を持つ基本韻母は16個です。拼音では声母との組み合わせによって表記が変わる場合があります。
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| 注音 | 拼音 | 発音のポイント |
|---|---|---|
| ㄧ | i | 「イ」(唇を横に引く) |
| ㄨ | u | 「ウ」(唇を強く丸める) |
| ㄩ | ü(yu) | 「ユ」(唇を丸めたまま「イ」を発音する) |
| ㄚ | a | 「ア」(口を大きく開く) |
| ㄛ | o | 「オ」(唇を少し丸める) |
| ㄜ | e | 「ウ」と「エ」の中間(喉の奥でこもる音) |
| ㄝ | ê | 「エ」(口を横に開く・単独での出現は稀) |
| ㄞ | ai | 「アイ」 |
| ㄟ | ei | 「エイ」 |
| ㄠ | ao | 「アオ」 |
| ㄡ | ou | 「オウ」 |
| ㄢ | an | 「アン」 |
| ㄣ | en | 「エン」(鼻音) |
| ㄤ | ang | 「アン(g)」(口を大きく開いた鼻音) |
| ㄥ | eng | 「ウン(g)」(奥で響く鼻音) |
| ㄦ | er | 「アール」(舌を丸めるそり舌母音) |
四声(声調)の書き方比較
中国語(普通話)の声調は第1声〜第4声の四声と軽声(中性声調)を加えた計5種類です。
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| 声調・名称 | 拼音の符号 | 注音符号 | 音の特徴 |
|---|---|---|---|
| 第1声 陰平(yīnpíng) | ā(横棒) | 符号なし | 高く平らに伸ばす |
| 第2声 陽平(yángpíng) | á(右上がり) | ˊ | 中音域から高く上がる |
| 第3声 上声(shǎngshēng) | ǎ(V字形) | ˇ | 低く下がってから上がる |
| 第4声 去声(qùshēng) | à(右下がり) | ˋ | 高いところから急に下がる |
| 軽声(qīngshēng) | 符号なし | ˙ | 短く軽く添える中性調 |
拼音では声調符号を母音の上に書きます(例:māma= 妈妈)。注音符号では音節の右上や右横に付けます。第1声は「当たり前の音」として拼音では符号を省くのが基本です。
拼音の特殊ルール
拼音には、組み合わせによって書き方が変わる規則があります。中国語を学ぶ際に混乱しやすいポイントです。
ü の書き方(j・q・x・y の後では u と書く)
ü(唇を丸めた「イ」音)は、j・q・x・y の後では u と表記します(例:ju=ジュ、qu=チュ、xu=シュ)。ü の点を省略しても混同のおそれがないためです。ただし g・k・h などの後の u は本来のウ音なので別物です。
声母なしで i・u・ü が単独で来るときの表記
i 単独→ yi(例:一=yī)、u 単独→ wu(例:五=wǔ)、ü 単独→ yu(例:雨=yǔ)と書きます。これは声母なしの音節を明確にするためのルールです。
iou・uei・uen の短縮形
声母と結合すると一部の韻母が短縮されます:iou → iu(例:六=liù)、uei → ui(例:对=duì)、uen → un(例:论=lùn)。辞書や教材でよく出てくる短縮形です。
発音記号にまつわる豆知識
ボポモフォという名前の由来
注音符号の先頭4文字 ㄅ(bo)・ㄆ(po)・ㄇ(mo)・ㄈ(fo)を音読みしたものが「BoPoMoFo=ボポモフォ」という通称の由来です。英語圏では Unicode ブロック名にも採用されています。
拼音は1日で覚えられる?
日本語話者にとって拼音は、日本語の音と英語のアルファベットの両方で類推できるため比較的習得しやすい部類です。ただし zh・ch・sh のそり舌音、j・q・x の舌面音、ü の発音は日本語にない音なので、耳と口で繰り返し練習する必要があります。
台湾では両方使われる
台湾では、学校教育では注音符号を先に学ぶのが伝統ですが、近年はインターネット・スマートフォンのIMEとして拼音入力も広く使われています。台湾の子どもたちは注音符号でひらがな同様に文字を学び、大人になってから拼音も習得するというケースが多いです。
まとめ
拼音の声母は21個、注音符号の記号総数は声母21個+韻母16個の計37個です。どちらも「声母+韻母+声調」という3要素が1音節を構成する点は共通しています。中国大陸・海外では拼音が、台湾では注音符号が標準的に使われていますが、両者は完全に対応しているため、片方を覚えればもう片方への移行はスムーズです。
腕試しクイズ(全5問)
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