日本の城の部位名称一覧|天守・石垣・狭間など74種の役割まとめ

天守・石垣・狭間・鯱……日本のお城を訪れると、あちこちで目にする部位の名前。でも「なんとなく見ている」だけで、正式な名称や役割までは知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、日本の城の部位・名称を74種一覧にまとめています。縄張り・天守・石垣・堀・門・防衛装置・屋根装飾の7カテゴリに分類し、読み方と役割をセットで解説します。お城巡りの前知識として、また歴史小説・時代劇・ゲームの参考としてもご活用ください。

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曲輪と縄張り(城の区画)

城の設計・区画全体を縄張り(なわばり)と呼びます。縄張りの善し悪しが城の防衛力を大きく左右するため、城主は優れた武将や軍師に縄張りの設計を任せることもありました。縄張りを手がける専門家を「縄張師(なわばりし)」といい、黒田官兵衛や藤堂高虎などは名縄張師として知られています。

縄張り内を石垣や土塁で区切った各エリアを曲輪(くるわ)といい、役割に応じて本丸・二の丸・三の丸などに分けられます。曲輪の配置形式は「輪郭式(本丸を同心円状に囲む)」「連郭式(一列に並べる)」「梯郭式(本丸を隅に置く)」「渦郭式(渦巻き状に配置する)」の4タイプに大別されます。

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名称 読み 役割・特徴
縄張り なわばり 城全体の設計・区画計画の総称
曲輪 くるわ 石垣や土塁で区切られた城内の各エリア
本丸 ほんまる 城の最も重要な中枢区画。天守・御殿が置かれる
二の丸 にのまる 本丸の外側に隣接する第2の区画
三の丸 さんのまる 二の丸のさらに外側の区画。家臣の屋敷などが置かれた
西の丸 にしのまる 本丸の西側に設けた補助的な曲輪。隠居所・後継者の居所に使われることも
出丸 でまる 城の外に突き出して設けた前線曲輪。出撃の拠点となる
腰曲輪 こしくるわ 本丸など主要曲輪の斜面に帯状に設けた補助曲輪。帯曲輪とも呼ぶ
馬出し うまだし 虎口の外に設けた小区画。出撃準備の緩衝地帯となる
総構え そうがまえ 城下町全体を堀・土塁で囲んだ大規模な防衛システム

天守・御殿・櫓(城の建物)

天守と御殿

城の建物の中で最もシンボル的なのが天守です。織田信長が1576年に安土城の「天主(てんしゅ)」の築城を開始し(完成は1579年)、以後、各地の大名が天守を競い合って築くようになりました。天守には構造上の違いから「望楼型(ぼうろうがた)」と「層塔型(そうとうがた)」の2種類があります。望楼型は大きな建物の上に物見台を乗せた古い形式、層塔型は各階の造りが整った統一感のある新しい形式です。

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名称 読み 役割・特徴
天守 てんしゅ 城のシンボルとなる最上位の建物。物見・軍事指揮の場
小天守 こてんしゅ 天守に隣接する小型の付属天守
天守台 てんしゅだい 天守を建てるための石垣製の台座・基礎
御殿 ごてん 城主の居住・政務・謁見を行う建物群
穴蔵 あなぐら 天守の地下部分。食料・武器の貯蔵や緊急避難に使用
礎石 そせき 天守や建物の柱を受けるために据えられた土台の石
番所 ばんしょ 門の近くに設けた武士の詰め所・見張り所
渡り廊下 わたりろうか 建物間をつなぐ廊下。「渡廊(わたりろう)」とも呼ばれる

櫓(やぐら)の種類

は、城内の重要な拠点に建てられた多目的な高楼建物です。防衛だけでなく、武器・弾薬の倉庫や、見張り・合図の発信地としても機能しました。曲輪の角(隅)に置かれる隅櫓は特に堅牢に作られ、石垣の上を廊下のように連なる多門櫓は塀の機能も兼ねました。

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名称 読み 役割・特徴
隅櫓 すみやぐら 曲輪の角に設けた防衛用建物。四方を監視できる
多門櫓 たもんやぐら 石垣の上に細長く続く廊下状の櫓。塀と倉庫を兼ねる
月見櫓 つきみやぐら 吹き抜けの優美な造りの観賞・物見用の櫓
物見櫓 ものみやぐら 敵の動向を監視するための高所の建物
太鼓櫓 たいこやぐら 太鼓を打って時刻・警報を城内に知らせる役割の櫓
付櫓 つけやぐら 天守などの主要建物に付属して設けた小型の櫓
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石垣・土塁・堀

石垣の積み方

石垣は城の基礎であり外壁を兼ねる最重要構造物です。石垣の積み方は時代とともに進化し、安土桃山時代から江戸時代にかけて技術が飛躍的に向上しました。野面積み→打込接→切込接という順で精度が上がり、切込接の石垣は現代の建設機械なしで作られたとは思えないほど精密です。

特に算木積み(さんぎづみ)は石垣の角(隅)を強化する技法で、長方形の石を交互に噛み合わせることで崩れにくくしています。姫路城・松本城・熊本城などの石垣に見られます。

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名称 読み 特徴
石垣 いしがき 城の基礎・外壁となる石組み構造物の総称
野面積み のづらづみ 自然石をほぼそのまま積む最古の工法。間に小石(間石)を詰める
打込接 うちこみはぎ 石の角を砕いて合わせ目を整えた中期の工法
切込接 きりこみはぎ 石を精密に加工して隙間なく積む最高精度の工法
算木積み さんぎづみ 石垣の隅部を長方形の石を交互に組んで補強する技法
布積み ぬのづみ 石を水平な段に均一に揃えて積む規則的な工法
乱積み みだれづみ 大小の石を不規則に組み合わせて積む工法

土塁・切岸

石垣が普及する以前は、盛り土で作った土塁(どるい)が主な防衛壁でした。山城では山の斜面を人工的に切り立てた切岸(きりぎし)を防壁の代わりに用い、急勾配で敵の登攀を阻みました。

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名称 読み 役割・特徴
土塁 どるい 土を盛り上げて作った城壁。内側に堀を掘った土を積む
石塁 せきるい 石を積んで作った塁壁。石垣の前身・類似した構造物
切岸 きりぎし 山の斜面を人工的に切り立てた急崖。山城の防衛に利用

堀の種類

は城を囲む防衛用の溝で、水を張った水堀と水のない空堀に大別されます。平地に建つ平城では水堀が基本、山に建つ山城では水が引きやすいため空堀が多く使われました。現代でも大阪城の外堀や江戸城の内堀・外堀は一部が残っています。

山城特有の障子堀(しょうじぼり)は、堀の底に格子状の仕切り壁を設けた高度な防衛設備で、北条氏が多用したことで知られています。静岡県の山中城や小田原城の総構えに代表的な遺構が残っています。

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名称 読み 特徴
ほり 城を囲む防衛用の溝の総称
水堀 みずほり 水を張った堀。平城に多く、船での通行も可能
空堀 からぼり 水のない堀。山城や内陸の城に多い
内堀 うちぼり 本丸・二の丸を直接取り囲む最も内側の堀
外堀 そとぼり 城全体の外縁を囲む最も外側の堀
堀切 ほりきり 山の尾根を横断するように掘った堀。山城の独立した防衛設備
竪堀 たてぼり 山の斜面を縦方向に掘り下げた堀。横移動を阻む
畝状竪堀 うねじょうたてぼり 竪堀を多数並列させた防衛設備。畝のように並ぶ
薬研堀 やげんぼり 断面がV字形の深い堀。薬を砕く道具「薬研」に形が似る
障子堀 しょうじぼり 堀の底に格子状の仕切りを設けた複雑な構造の堀
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門・虎口・橋

城の出入口の設計は防衛上の最重要課題でした。戦国時代には「虎口を制する者が城を制する」と言われ、門を通過するだけで複数の罠に引っかかる構造が発展しました。

門の種類

城の正面の門を大手門(おおてもん)、裏口を搦手門(からめてもん)と呼びます。大手(おおて)は「正面」を意味し、搦手(からめて)は「背後から捕らえる手」を語源とします。

家紋の種類一覧と同様に、門のデザインも武家の権威を示す重要な表現でした。

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名称 読み 役割・特徴
大手門 おおてもん 城の正面にあたる正門。城の顔とも呼ばれる
搦手門 からめてもん 城の裏口にあたる門。警備を厳重にした通用門
高麗門 こうらいもん 控え柱の上にも小屋根がつく形式の門。枡形の外門に多い
薬医門 やくいもん 本柱2本に大屋根を乗せ、後方に控え柱を立てた形式
棟門 むなもん 2本の本柱だけで構成するシンプルな門
冠木門 かぶきもん 2本の柱の上に横木(冠木)を渡した最も簡素な形式
埋門 うずみもん 石垣や土塁に埋め込まれた小型の潜り口。隠し門とも呼ぶ

虎口の種類

虎口(こぐち)は城の出入口の総称です。名称の由来には「虎が口を開けたように危険」「小口(こぐち)=小さな口」の転など諸説あります。江戸時代には門の内外に四角い空間を設けた枡形虎口が普及し、敵が一気に侵入できない複雑な構造になりました。

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名称 読み 特徴
虎口 こぐち 城の出入口の総称。攻防の要となる場所
枡形 ますがた 門の前後に設けた四角い仕切り空間。敵の突破速度を落とす
枡形虎口 ますがたこぐち 枡形を組み込んだ高度な防衛型虎口。江戸時代の城に多い
喰違い虎口 くいちがいこぐち 出入口がく字にずれた構造。直進できず混乱を招く

橋の種類

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名称 読み 特徴
土橋 どばし 堀を渡る盛り土の橋。撤去が難しく恒久的な通路となる
木橋 もくばし 材木で架けた橋。有事には撤去または焼却して遮断できる
跳ね橋 はねばし 緊急時に跳ね上げて通行を遮断できる可動式の橋
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防衛装置と屋根装飾

防衛装置・設備

天守や塀の壁面に設けられた狭間(さま)は、内部の武者が外に向かって矢や鉄砲を放つための穴です。形状により矢を射るための縦長の「矢狭間」と鉄砲用の丸型・三角型の「鉄砲狭間」に分かれます。城の外壁を見上げると、今も多数の狭間が残っているのが確認できます。

また、石落とし(いしおとし)は石垣の上部に張り出した床の開口部で、直下に迫った敵に石・熱湯・熱砂などを落とすための設備です。姫路城など現存天守でよく見られます。武器の種類一覧と合わせて読むと、城の防衛戦術がより立体的にわかります。

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名称 読み 役割・特徴
狭間 さま 塀・天守・櫓の壁に開けた攻撃用の穴の総称
矢狭間 やざま 矢を射るための縦長スリット状の狭間
鉄砲狭間 てっぽうざま 鉄砲を撃つための丸型または三角型の狭間
石落とし いしおとし 石垣上部から張り出した床の開口部。石・熱湯を落とす
忍び返し しのびがえし 壁・柵の上端に設けた逆茂木状の障害物。侵入者を阻む
犬走り いぬばしり 石垣と建物の間の細い通路。補強・排水・見回りに使用
土塀 どべい 土と漆喰で作られた塀。厚みがあり弾丸を通しにくい
武者走り むしゃばしり 塀や土塁の内側に設けた武士が行き来するための通路

屋根・装飾の名称

天守の屋根に施された装飾は、防衛機能だけでなく城主の権威と富を示すものでもありました。最も有名なのは天守最上部に置かれた鯱(しゃちほこ)で、虎の頭と魚の体を持つ想像上の動物です。「水を呼ぶ霊獣」として火災除けの守り神とされ、名古屋城の金鯱は日本で最も有名な鯱として知られています。

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名称 読み 役割・特徴
破風 はふ 屋根の妻側(端部)の三角形の部分。装飾として重要
千鳥破風 ちどりはふ 屋根の傾斜面に設けた三角形の飾り破風
唐破風 からはふ 曲線的で優美な形の破風。門・玄関・天守に多い
入母屋破風 いりもやはふ 上部が三角、下部が寄棟屋根になる組み合わせ形式の破風
しゃちほこ 天守最上部に設ける虎頭魚体の霊獣。火除けの象徴
鬼瓦 おにがわら 屋根の端に置く鬼面の瓦。魔除けと雨水の浸入防止を兼ねる
懸魚 げぎょ 屋根の妻側に飾る彫刻された板状の装飾。火除けの意味を持つ
高欄 こうらん 天守の廻縁(外部通路)などに設ける手すり・欄干
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まとめ

日本の城の部位名称74種を、縄張り・天守・石垣・堀・門・防衛装置・屋根装飾の7カテゴリにわたって解説しました。一見すると単なる建築物に見える城の各部位も、それぞれが巧みな防衛思想に基づいて設計されていることが伝わったでしょうか。次にお城を訪れた際は、ぜひ各部位の名前と役割を意識しながら見学してみてください。観光の楽しさが格段に広がるはずです。

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