台風・ハリケーン・サイクロン・トルネードの違い|世界の呼び名と強さの単位まとめ

台風・ハリケーン・サイクロン……これらは「どれも激しい嵐」のように見えますが、実は同一の気象現象が海域によって名前を変えているだけです。世界には7種類以上の呼び名が存在し、それぞれに異なる強度分類システムまで持っています。さらに「トルネード(竜巻)」は全く別種の現象で、混同されがちですが仕組みが根本的に違います。本記事では、各呼び名の定義・発生海域・語源・強さの単位を一挙にまとめます。

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台風・ハリケーン・サイクロンはすべて「熱帯低気圧」

実は台風・ハリケーン・サイクロンは、気象学的には同じ現象の別名です。正式な気象学用語では「熱帯低気圧(Tropical Cyclone)」といい、熱帯・亜熱帯の暖かい海上で発生する大規模な低気圧のことを指します。

呼び名が異なる理由はただひとつ――発生する海域(地域)によって異なる機関が命名しているからです。

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呼び名 発生海域 主に影響する地域
台風(Typhoon) 北西太平洋(フィリピン海・南シナ海・東シナ海) 日本・中国・フィリピン・台湾・朝鮮半島
ハリケーン(Hurricane) 北大西洋・北東太平洋(メキシコ湾・カリブ海) アメリカ・メキシコ・中央アメリカ・カリブ海諸国
サイクロン(Tropical Cyclone) インド洋・南太平洋 インド・バングラデシュ・オーストラリア・マダガスカル
バギオ(Baguio) フィリピン周辺 フィリピン(旧来の地域呼称)

これらはいずれも、海面水温が約26〜27℃以上の熱帯海域で発生し、大量の水蒸気が凝結する際に放出されるエネルギーで発達します。

北半球は反時計回り、南半球は時計回り

渦を形成するのは「コリオリの力」(地球の自転による仮想的な力)のためで、北半球では反時計回り、南半球では時計回りに回転します。赤道から南北5度以内ではコリオリの力が極めて小さいため、熱帯低気圧はほとんど発生しません。

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熱帯低気圧の発生メカニズム

台風・ハリケーン・サイクロンはなぜ発生するのでしょうか。その仕組みは以下の通りです。

  1. 海面水温が約26〜27℃以上になると、海面から大量の水蒸気が蒸発して大気中に供給される
  2. 水蒸気が上昇して凝結(雨になる)するとき、潜熱が放出され、周囲の大気を温める
  3. 温められた空気はさらに上昇し、海面近くでは気圧が下がって強い低気圧が形成される
  4. コリオリの力によって渦が生まれ、持続的に発達すると台風・ハリケーン・サイクロンになる

この発達サイクルが継続するために必要な条件は、①暖かい海水(海面水温26℃以上)②コリオリの力(赤道から5度以上離れていること)③大気の鉛直方向の風の変化が小さいことの3点です。

「台風の目(眼)」が形成される理由

大型の熱帯低気圧には「台風の目」と呼ばれる中心部の静穏域が生まれます。これは、強い遠心力によって中心付近の風が外側に引っ張られ、中心に「空気の柱」ができるためです。台風の目の中は風が弱く晴れていることが多く、直径は数十km程度です。目の周りを囲む壁(アイウォール)は最も激しい嵐が集中し、最大風速はここで観測されます。

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台風(タイフーン)

定義と発生海域

台風とは、北西太平洋および南シナ海に発生する熱帯低気圧のうち、中心付近の最大風速が毎秒17.2m(34ノット)以上のものを指します(日本気象庁の定義)。毎年平均25〜26個が発生し、そのうち3〜4個が日本に上陸または接近します。

台風シーズンは主に6〜11月で、最も多いのは8〜9月です。

日本気象庁の強度分類

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強度 最大風速(10分間平均)
台風(通常) 毎秒17.2m〜32.6m未満
強い台風 毎秒33m以上〜43.9m未満
非常に強い台風 毎秒44m以上〜53.9m未満
猛烈な台風 毎秒54m以上

日本の気象庁は10分間平均の風速を基準とします。これは国際気象機関(WMO)の標準です。

「台風」という言葉の語源

「台風」の語源には複数の説があります。

  • 漢語由来説:中国語で強い風を意味する「颱風(タイフォン)」が日本語に入り「台風」になったという説
  • アラビア語説:アラビア語で嵐を意味する「ṭūfān(トゥーファン)」がポルトガル語「tufão」を経て英語「typhoon」になり、日本語の「台風」に逆輸入されたという説
  • ギリシャ神話説:嵐の神「Typhon(テュポン)」に由来する英語「typhoon」が語源とする説

いずれの説も確定していませんが、中国語・アラビア語・ギリシャ語がそれぞれ「typhoon」という語形に収束していったと考えられています。

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ハリケーン(Hurricane)

定義と発生海域

ハリケーンは、北大西洋・カリブ海・メキシコ湾・北東太平洋に発生する熱帯低気圧で、最大風速が毎秒33m(64ノット)以上のものを指します。アメリカ海洋大気庁(NOAA)の国立ハリケーンセンター(NHC)が観測・命名を担当しています。

ハリケーンシーズンは6月1日〜11月30日(大西洋)と定められており、特に8〜10月に集中します。

サフィア・シンプソン・スケール(カテゴリ1〜5)

アメリカでは「サフィア・シンプソン・ハリケーン風速スケール(SSHWS)」を使い、最大持続風速でカテゴリ1〜5に分類します。アメリカは1分間平均の最大風速を使う点に注意が必要です(日本の10分間平均とは異なり、約1.1〜1.3倍大きく出る傾向があります)。

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カテゴリ 最大持続風速(1分平均) 被害の目安
カテゴリ1 119〜153 km/h(33〜42 m/s) 一部損害(ガラス破損・停電・屋外看板倒壊)
カテゴリ2 154〜177 km/h(43〜49 m/s) 大きな損害(屋根剥がれ・大木倒壊・電力長期停止)
カテゴリ3 178〜208 km/h(50〜58 m/s) 壊滅的損害(外壁崩壊・構造的被害)
カテゴリ4 209〜251 km/h(58〜70 m/s) 極度の被害(建物の大部分が損壊)
カテゴリ5 252 km/h以上(70 m/s以上) 壊滅的(住宅全壊・長期間の居住不能)

カテゴリ3以上を「メジャーハリケーン(Major Hurricane)」と呼び、特に警戒が必要とされます。

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気象庁台風等級とハリケーンカテゴリの対応

台風とハリケーンは風速の測定方法が異なるため、単純比較には注意が必要です。日本の10分間平均風速に換算すると、ハリケーンのカテゴリ5は気象庁の「猛烈な台風」(毎秒54m以上)に相当します。

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気象庁等級(10分平均) 風速 ハリケーンカテゴリの目安(1分平均)
台風(通常) 17〜32 m/s カテゴリ1未満〜カテゴリ1
強い台風 33〜43 m/s カテゴリ1〜2
非常に強い台風 44〜53 m/s カテゴリ3〜4
猛烈な台風 54 m/s以上 カテゴリ4〜5相当

日本では「スーパー台風」という公式な等級はありませんが、米軍合同台風警報センター(JTWC)が独自に「スーパー台風(Super Typhoon)」の基準として最大持続風速が毎秒65m(130ノット)以上を用いています。

「ハリケーン」という言葉の語源

「Hurricane」は、カリブ海の先住民タイノ族が嵐の神を指して使った言葉「Huracán(フラカン)」に由来するというのが通説です。スペインの探検家たちがカリブ海に到達した際にこの言葉を借用し、スペイン語「huracán」となり、やがて英語に「hurricane」として定着しました。なお、マヤのキチェ族の神話にも嵐の神「Huracán(フラカン)」が登場し、タイノ語との関係を指摘する説もあります(諸説あり)。

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サイクロン(Cyclone)

定義と発生海域

サイクロンは、インド洋・南太平洋・ベンガル湾などに発生する熱帯低気圧を指します。北インド洋(アラビア海・ベンガル湾)ではインド気象局(IMD)が、南インド洋・南太平洋ではオーストラリア気象局(BOM)などが管轄します。

最大風速の基準はハリケーンと同様、毎秒33m(64ノット)以上を「Cyclone」と呼ぶことが多いですが、機関によって若干異なります。

サイクロンの強度分類(オーストラリア気象局・BOM)

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カテゴリ 最大ガスト風速 特徴
カテゴリ1 90 km/h未満 暴風警戒レベル(樹木被害)
カテゴリ2 125 km/h未満 重大な損害(建物一部損壊)
カテゴリ3 170 km/h未満 壊滅的損害(建物被害大)
カテゴリ4 225 km/h未満 壊滅的(屋根・壁が飛ぶ)
カテゴリ5 225 km/h以上 極めて壊滅的(コンクリート建物も損壊)

「サイクロン」という言葉の語源

「Cyclone」という名称は、1848年にイギリスの気象学者ヘンリー・ピディントン(Henry Piddington)が命名しました。ギリシャ語で「円」「輪」を意味する「κύκλος(kyklos/キュクロス)」に由来し、渦を巻く形状を表現しています。

バギオ(Baguio)

「バギオ」はフィリピンの旧来の呼称で、かつてはフィリピン周辺に接近する台風をこう呼んでいました。現在は気象学の正式用語としてはほとんど使われませんが、歴史的文脈や古い文献・地域の会話で見かけます。フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)は現在、フィリピン地域名(ローカルネーム)を独自に付与する制度を採用しています。

トルネード(竜巻)は全く別の現象

熱帯低気圧ではない

トルネード(竜巻)は、台風・ハリケーン・サイクロンとは根本的に発生メカニズムが異なる気象現象です。熱帯低気圧は「海面の暖かい水から蒸発した水蒸気が凝結するエネルギー」で発達しますが、竜巻は積乱雲(雷雲)の内部に生じる激しい上昇気流と回転風によって形成されます。

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比較項目 台風・ハリケーン・サイクロン トルネード(竜巻)
分類 熱帯低気圧 積乱雲から派生する渦
発生場所 熱帯・亜熱帯の暖かい海上 陸上(内陸部・沿岸部どこでも)
直径 数百〜数千km 数メートル〜数百m
持続時間 数日〜2週間以上 数分〜1時間以内(平均数分)
発生に必要なもの 暖かい海水・コリオリの力 積乱雲・大気の不安定・ウィンドシア
発生数(年間) 全球で約80〜100個 全球で約1,000〜2,000個(米国だけで約1,000個)

「トルネード」は英語名で、日本語では「竜巻」と呼びます。竜巻はアメリカの「トルネードアレー(竜巻回廊)」——テキサス州からカンザス州にかけての平原地帯——で特に頻繁に発生します。

竜巻の強度分類:改良藤田スケール(EFスケール)

竜巻は「改良藤田スケール(EF Scale)」で0〜5の6段階に分類されます(2007年にアメリカで改定)。元は日本生まれの気象学者・藤田哲也が考案した「藤田スケール(Fスケール)」が基となっています。

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スケール 最大風速(推定) 被害の目安
EF0 105〜137 km/h 軽微な被害(枝折れ・看板倒壊)
EF1 138〜177 km/h 中程度(屋根瓦剥がれ・窓ガラス破損)
EF2 178〜217 km/h 相当な被害(屋根ごと吹き飛ぶ)
EF3 218〜266 km/h 重大(鉄筋コンクリート建物に被害)
EF4 267〜322 km/h 壊滅的(住宅を基礎から破壊)
EF5 323 km/h以上 完全壊滅(コンクリート建物も損壊)

ウィリーウィリー(Willy-Willy)はさらに別物

「オーストラリアの台風のことをウィリーウィリーと呼ぶ」という説明を見かけることがありますが、これは誤りです。ウィリーウィリーとは、オーストラリアの内陸乾燥地帯で発生する小規模な塵旋風(じんせんぷう)のことで、砂漠の地面が強く加熱されて生じる上昇気流が回転したものです。台風や竜巻とは全く異なる現象で、規模も影響も格段に小さいです。オーストラリアの熱帯低気圧は「Tropical Cyclone(熱帯低気圧)」と呼ばれ、ウィリーウィリーとは明確に区別されています。

世界の熱帯低気圧の呼び名まとめ

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呼び名 発生海域 管轄機関 風速基準
台風(Typhoon) 北西太平洋 日本気象庁(JMA)・フィリピン気象局(PAGASA)等 毎秒17.2m以上(10分平均)
ハリケーン(Hurricane) 北大西洋・北東太平洋 アメリカ国立ハリケーンセンター(NHC) 毎秒33m以上(1分平均)
サイクロン(Tropical Cyclone) インド洋・南太平洋 インド気象局(IMD)・オーストラリア気象局(BOM) 毎秒33m以上(10分平均)※機関による
バギオ(Baguio) フィリピン周辺(旧来の呼称) 現在は不使用
ウィリーウィリー(Willy-Willy) オーストラリア内陸 ―(台風とは別物・塵旋風)

気象学の観点から言えば、台風・ハリケーン・サイクロンはすべて「熱帯低気圧(Tropical Cyclone)」という同じ現象です。地域の歴史・文化・管轄機関の違いが多彩な呼び名を生み出しています。

豆知識:記録的な熱帯低気圧

史上最強のハリケーン

2015年10月に東部太平洋で発生したハリケーン「パトリシア(Patricia)」は、最大持続風速345 km/h(215 mph・1分平均)・中心気圧872hPaを記録し、西半球の熱帯低気圧として観測史上最強とされています。ただしメキシコ上陸前に急速に勢力を弱め、人的被害は比較的抑えられました。

史上最も多くの死者を出したサイクロン

1970年のボラ・サイクロン(Bhola Cyclone)は、現在のバングラデシュに上陸し、推計で30万〜50万人が死亡した(出典により異なる)史上最悪の熱帯低気圧とされています。高潮による洪水と地形的な脆弱性が主な被害要因でした。

台風の記録

2013年のスーパー台風「ハイエン(Haiyan)」は、フィリピンに上陸した際に最大持続風速約315 km/h(1分平均・米軍JTWC推定)を記録し、死者6,300人・行方不明1,062人、合計約7,400人以上の被害をもたらしました(フィリピン国家災害リスク軽減管理委員会〔NDRRMC〕確定値)。フィリピンではこの台風を「ヨランダ(Yolanda)」と呼んでいます。

南大西洋では台風はほぼ発生しない

南大西洋では水温・風の条件から熱帯低気圧がほとんど発生しません。2004年にブラジル沖に上陸した「ハリケーン・カタリナ(Catarina)」は南大西洋で観測された極めて稀な例外として記録されています。

まとめ

台風・ハリケーン・サイクロンはいずれも同じ「熱帯低気圧」という気象現象であり、発生する海域の違いから呼び名が分かれています。トルネード(竜巻)は全く別の現象で、積乱雲から発生する小規模かつ短命の渦巻きです。ウィリーウィリーはさらに別物(砂漠の塵旋風)であり、熱帯低気圧とは関係ありません。各機関が独自の強度分類スケールを持ち、測定方法(10分平均・1分平均)にも違いがあることを理解すると、台風情報やニュースが格段に読みやすくなります。

台風の名前(アジア名)の仕組みについては台風の名前一覧|アジア名140個・命名ルール・日本提供の星座名10個まとめで詳しく解説しています。また、地球上の珍しい気象現象に興味がある方は世界の不思議な気象現象15選もご覧ください。

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