将棋の戦法・囲い一覧|矢倉・美濃・穴熊の名前の由来まとめ

将棋の戦法・囲いには「矢倉」「美濃囲い」「穴熊」など、個性的な名前がたくさんあります。なぜ「穴熊」と呼ぶのか、「美濃」はどこから来た名前なのか、知っているようで意外と知らない由来が多いものです。

この記事では、居飛車・振り飛車の戦法と囲いを一覧テーブルで網羅したうえで、名前の語源が面白い主要戦法をピックアップして解説します。将棋を楽しむ入り口として、また雑学として、ぜひ読んでみてください。

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居飛車の戦法・囲い一覧

「居飛車(いびしゃ)」とは飛車を初期位置のまま使う戦い方です。序盤から正面対決を仕掛けるダイナミックな戦型が多く、「相掛かり」「角換わり」「矢倉」などが代表格です。

居飛車の主な戦法

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戦法名 読み方 攻め/守り 特徴
相掛かり あいがかり 攻め 双方が飛車先の歩を突き合う最古形の一つ
角換わり かくがわり 攻め 序盤に双方の角を交換し合う近代的戦型
矢倉 やぐら 攻め/守り 金銀を積み上げた堅固な守りと組み合わせる王道戦法
雁木 がんぎ 攻め/守り 金銀が階段状に連なる江戸時代から続く古式戦型
横歩取り よこふどり 攻め 相手の横歩を奪いにいく積極的な奇襲戦法
棒銀 ぼうぎん 攻め 銀を一直線に前進させ飛車と連携して突破を狙う
右四間飛車 みぎしけんびしゃ 攻め 4筋に飛車を持ってくる居飛車版の急戦戦法
一手損角換わり いってそんかくがわり 攻め 後手から積極的に角換わりを誘う現代的変型

居飛車の主な囲い

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囲い名 読み方 堅さ 特徴
矢倉囲い やぐらがこい ★★★ 金銀を城の矢倉のように積み上げた代表的囲い
穴熊囲い あなぐまがこい ★★★★ 端に玉を隠す鉄壁の守り。守りの最高峰
銀冠 ぎんかん ★★★ 銀を玉の頭に被せるような柔軟性の高い囲い
金無双 きんむそう ★★ 金が横並びになる簡潔な囲い
左美濃 ひだりみの ★★★ 美濃囲いを左右反転させた居飛車用の囲い
舟囲い ふながこい ★★ 舟の形に似た軽快な簡易囲い
早囲い はやがこい ★★ 手数を省いて素早く玉を安全地帯に移す囲い
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振り飛車の戦法・囲い一覧

「振り飛車(ふりびしゃ)」は飛車を横に動かして戦う戦い方です。飛車を動かす筋によって「四間飛車」「三間飛車」「中飛車」などに分類されます。美濃囲いをベースにした堅固な守りと組み合わせるのが定番です。

振り飛車の主な戦法

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戦法名 読み方 特徴
四間飛車 しけんびしゃ 飛車を4筋に振る最もポピュラーな振り飛車
三間飛車 さんけんびしゃ 飛車を3筋に振る。石田流と組み合わせることが多い
石田流 いしだりゅう 石田検校が創始した三間飛車の特殊形。攻撃力が高い
中飛車 なかびしゃ 飛車を中央5筋に据える攻撃的な戦法
ゴキゲン中飛車 ごきげんなかびしゃ 近藤正和が体系化した積極的な中飛車の指し方
向かい飛車 むかいびしゃ 相手の飛車と向かい合う形になる振り飛車
角交換振り飛車 かくこうかんふりびしゃ 角を交換してから振り飛車を展開する現代的戦法
嬉野流 うれしのりゅう 嬉野宏明が体系化した独自の戦法体系
藤井システム ふじいしすてむ 藤井猛九段が開発した四間飛車の革命的戦法体系
鬼殺し おにごろし 序盤から激しく仕掛ける奇襲戦法

振り飛車の主な囲い

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囲い名 読み方 堅さ 特徴
美濃囲い みのがこい ★★★ 振り飛車の代名詞。バランスと堅さを兼ね備えた基本囲い
高美濃 たかみのがこい ★★★ 美濃囲いを一段上に発展させた上位形
ダイヤモンド美濃 だいやもんどみの ★★★ 美濃の発展形でダイヤモンド型の金銀配置
菊水矢倉 きくすいやぐら ★★★ 振り飛車で矢倉を組む特殊な囲い。バランスが良い
振り飛車穴熊 ふりびしゃあなぐま ★★★★ 振り飛車に穴熊を組み合わせた超高堅囲い
銀冠穴熊 ぎんかんあなぐま ★★★★ 銀冠と穴熊を融合させた現代最強クラスの囲い

相振り飛車・特殊戦型

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戦型名 読み方 特徴
相振り飛車 あいふりびしゃ 双方が振り飛車を使う戦型
力戦 りきせん 定跡を外れ独自の局面を生み出す自由な指し方
奇襲戦法 きしゅうせんぽう 序盤から相手の意表を突く各種戦法の総称
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名前の由来が面白い戦法・囲い

将棋の戦法・囲いの名前には、城郭建築・地名・人名・形状など様々な由来があります。知っていると対局中の楽しみが増えます。

矢倉(やぐら)

矢倉囲いの名前は、日本の城郭に設けられた「矢倉(やぐら)」に由来すると言われています。矢倉とは城の上に建てられた望楼のことで、金銀を積み重ねた囲いの形が城の矢倉に似ていることからこの名が付きました。

江戸時代の棋書『近代将棋考鑑』(享保年間)には「大阪北浜の矢倉屋という人が好んでこの駒立を指した」という記述もあり、大阪の商人・矢倉屋が愛用したからという説も存在します。諸説あるものの、城郭の「やぐら」に形が似ているという説が現在は最も広く知られています。

美濃囲い(みのがこい)

美濃囲いの名前の由来には複数の説があります。最も有力とされるのは、江戸時代に美濃国(現在の岐阜県)出身の棋士が愛用したからという説。美濃国の僧・音通和尚、あるいは松本紹尊という棋士が創始したとも言われています。

一方、「金銀3枚で囲うので『三つの囲い(みのがこい)』と言ったものが転じて美濃になった」という説や、「布(みの)のように玉を覆うから」という説も古くから存在します。いずれも確証はなく、語源は複数説が並立しているのが実状です。

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穴熊(あなぐま)

端に玉を追い込んで守る「穴熊囲い」は、玉が端に潜り込む様子が熊が穴蔵に入る姿に似ていることから命名されました。江戸時代には「岩屋(いわや)」や「獅子のホラ入り」とも呼ばれていました。

現在では将棋で最も堅固な囲いの一つとして知られており、プロ棋士が高頻度で使用します。1970年代に大内延介九段らによって実戦的な優秀性が示され、プロ間でも一般的になりました。

雁木(がんぎ)

「雁木(がんぎ)」は、17世紀・江戸時代前期の在野の強豪棋士檜垣是安(ひがきぜあん)が、船着き場や寺社の石段(雁木)を見て考案したとされる戦型です。

「雁木」とは雁(がん)の群れが斜めに飛ぶ形に見えることからついた名前で、船着き場の階段状の岸壁を指します。金銀が階段状に斜めに並ぶ布陣の見た目がちょうどその雁木に似ているため、この名が付きました。近年、AI将棋の分析によって再評価され、現代トップ棋士も多用する戦型となっています。

棒銀(ぼうぎん)

「棒銀」は名前のとおり、銀を棒のように一直線に前進させて攻める戦法です。飛車と銀が縦に連動して相手の2筋(あるいは8筋)を突破することを目指します。

派手さはないですが確実に効く攻め方で、初心者にも覚えやすい基本戦法として知られています。プロでも「棒銀」は立派な武器として使われており、単純ゆえに読み切りやすいという利点があります。

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石田流(いしだりゅう)

石田流は、江戸時代の盲目の棋士石田検校(いしだけんぎょう)が考案したとされる三間飛車の戦法体系です。「検校」は江戸時代に盲人に与えられた最高の位称で、俳人・各務支考の著作や明治の文豪・幸田露伴の注釈に「石田といへる馬組(こまぐみ)は石田検校の案じ出せる陣法」と記されています。

飛車を3筋に配置した「石田流本組み」と呼ばれる陣形は攻撃力が高く、現代でも多くのプロ棋士が採用しています。「石田流」という名が戦法名として定着したのは、それほど石田検校の創案という評価が高かった証と言えます。

ゴキゲン中飛車(ごきげんなかびしゃ)

「ゴキゲン中飛車」は近藤正和六段(当時)が1996年のプロデビュー直後から積極的に採用し、結果を残した戦法です。「ゴキゲン」という名前の由来は、元『将棋世界』編集長の大崎善生氏が「コンちゃんはいつ見てもご機嫌な男だ。だからゴキゲン中飛車でどうか」と提案したもので、近藤六段本人も「いいっすねえ」と即決したといいます。近藤六段は2002年度将棋大賞の升田幸三賞を受賞しています。

それまでの中飛車とは異なり、後手番からでも積極的に仕掛けていく指し方が特徴で、多くのプロ・アマに広まりました。「ゴキゲン」という軽快な名前のインパクトも相まって、将棋ファンの間に深く定着した戦法名です。

嬉野流(うれしのりゅう)

「嬉野流」はアマチュア棋士の嬉野宏明氏が長年研究・体系化した独自の戦法で、飛車を4筋に振った後に独特の駒組みを展開します。プロ棋士が長年研究してきた定跡から大きく外れており、「指しやすい・受けにくい」として2010年代以降にアマチュア間で人気に。

その後、プロ棋士も研究に加わり、現在では定跡書も出版されるほど体系化が進みました。2015年には天野貴元氏による棋書が出版されて広く知られ、2017年にプロ棋士が初めて公式戦で採用。2023年には嬉野宏明氏本人が将棋大賞の升田幸三賞を受賞しました。人名を冠した戦法名は棋士や研究者への敬意を示すもので、「嬉野流」はアマチュア発の戦法がプロにまで波及した珍しい例です。

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まとめ

将棋の戦法・囲いには、城郭建築・地名・人名・形状など多彩な由来があります。「矢倉」は城の望楼から、「美濃囲い」は美濃国の棋士から、「穴熊」は熊が穴に潜る姿から、それぞれ名前が生まれました。戦法の名前の背景を知ると、盤面の駒の動きがより立体的に見えてきます。将棋に興味が湧いたら、ぜひ実際に一局指してみてください。

なお、江戸時代の武士や職人の世界にも独特の階層名称がありました。江戸時代の職業一覧では、当時の仕事の名前と由来を詳しく紹介しています。

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