
フリーメーソン、イルミナティ、テンプル騎士団、スカル&ボーンズ——歴史の陰に潜む秘密結社は、現実と陰謀論が入り混じった独特の魅力を放つ。本記事では世界の秘密結社32団体を、友愛系・騎士系・エリート系・革命系・オカルト系などカテゴリ別に歴史的事実をもとに解説する。陰謀論として広まっている話と史実は、できるかぎり区別して記載する。
秘密結社とは?
秘密結社とは、メンバーシップの基準・儀式・目的を外部に明かさず、共有された秘密をよりどころに結束する集団のこと。古代の密儀宗教に始まり、中世の騎士修道会、近代の革命組織、現代のエリートネットワークまで、その形態は多岐にわたる。
「秘密結社=悪の陰謀組織」というイメージが先行しがちだが、実際には慈善団体・宗教組織・学術結社・政治運動など、性格は様々だ。歴史的に「秘密」であったことが後世の想像力を刺激し、実体以上に大きな陰謀論を生み出してきた側面も大きい。
なお、本記事で紹介する8カテゴリの団体のうち、末尾の「捏造・陰謀論」カテゴリに分類したものは、歴史的実体が確認されていない、または創作と判明している結社である。
友愛・知識系の秘密結社
フリーメーソン(Freemasonry)
設立:1717年(グランドロッジ結成)/発祥:イギリス・ロンドン
「自由・平等・友愛」を掲げる世界最大の友愛結社。1717年にロンドンで4つのロッジが統合し「イングランド連合グランドロッジ」を形成したことが近代フリーメーソンの起点とされる。名称の「フリーメーソン(自由石工職人)」は中世ヨーロッパの石材工ギルドを起源とする説が有力だ。
著名なメンバーはジョージ・ワシントン(初代米国大統領)、ヴォルテール(哲学者)、モーツァルト(音楽家)など枚挙にいとまがない。「世界を陰から操る影の支配者」「ドル紙幣のピラミッドの目がシンボル」などの陰謀論は根強いが、現代のフリーメーソンは主に慈善活動・社交を目的とする紳士クラブに近い。日本にも東京グランドロッジが存在し、現在の全世界の会員数は約600万人とされる。
イルミナティ(Illuminati)
設立:1776年5月1日/発祥:バイエルン(現ドイツ)
哲学者・法学者のアダム・ヴァイスハウプトがバイエルン州インゴルシュタット大学で創設。「啓明結社(Bund der Perfectibilisten)」とも称し、教会や貴族の権威にとらわれない理性的社会を目指す啓蒙思想運動の一翼として誕生した。最盛期には2,000人超のメンバーを擁したが、バイエルン政府が1785年に解散命令を発令。ヴァイスハウプトはゴータへ亡命後も1787年まで秘密裏に活動を続けたが、その夏をもって組織は実質的に消滅した。活動期間は約11年と短命だった。
現代の陰謀論では「解散後も存続し、新世界秩序(NWO)を画策する影の支配者」とされるが、これは俗説である。歴史的なイルミナティは啓蒙思想の急進的な一形態にすぎず、解散後の継続を示す史料は確認されていない。
薔薇十字団(Rosicrucians)
設立:1614年(最初の宣言書発表)/発祥:ドイツ
1614年にドイツで匿名出版された「フォーマ・フラタニタティス(友愛団の名声)」という文書が起源。伝説の創設者「クリスティアン・ローゼンクロイツ」は後代の創作とみる研究者が多く、実体は17世紀ヨーロッパの知識人に影響を与えた錬金術・カバラ・ヘルメス哲学の思想運動とされる。薔薇(愛・秘密)と十字(キリスト・不死)を組み合わせた象徴は神秘主義の代表的なシンボルとなり、黄金の夜明け団やフリーメーソンへの影響も大きい。現在は「古代神秘薔薇十字教団(AMORC)」などが薔薇十字の伝統を継承すると称して活動している。
ブナイ・ブリス(B'nai B'rith)
設立:1843年/発祥:アメリカ・ニューヨーク
「息子たちの同盟」を意味するヘブライ語が名称の由来。1843年にニューヨークでドイツ系ユダヤ系移民12人が設立した友愛・互助組織で、「ユダヤ版フリーメーソン」と呼ばれることもある。反ユダヤ主義への対抗・ユダヤ人コミュニティの教育支援・慈善活動を目的とし、現在も世界約50か国で活動するほぼ公開された人権団体だ。入会儀式の一部は非公開だが、秘密結社的な色彩は薄い。
信仰を守った騎士たち:中世騎士・宗教系
テンプル騎士団(Knights Templar)
設立:1119年/発祥:エルサレム(十字軍国家)/消滅:1312年
第1回十字軍後の1119年、フランス騎士ユーグ・ド・パイヤンが創設した修道騎士団。エルサレムへの巡礼者保護と聖地防衛を目的に設立され、最盛期には各国に1万人超の騎士・従者を擁した。信用状による国際送金サービスも行い、「中世最初の多国籍金融機関」ともいわれる。
1307年、財政難に苦しんだフランス王フィリップ4世が財産没収目的で異端審問を申請。1312年に教皇クレメンス5世が解散を命令し、1314年に最後の総長ジャック・ド・モレーが火刑に処された。処刑直前に「教皇と国王は一年以内に神の審判を受けるだろう」と予言したとされ(「モレーの呪い」)、実際に両者がその年のうちに没したことが伝説を強化した。フリーメーソンとの歴史的つながりを説く俗説は多いが、直接的な継承関係を示す史料は確認されていない。詳しくは「中世ヨーロッパの騎士団まとめ」も参照。
聖ヨハネ騎士団(Knights Hospitaller)
設立:1099年頃/発祥:エルサレム/現在:マルタ騎士団として存続
十字軍時代に巡礼者への医療・保護を行う修道会として誕生。テンプル騎士団解散後はロドス島(1309〜1522年)・マルタ島(1530〜1798年)を拠点に活動を続け、現在は「マルタ騎士団(Sovereign Military Order of Malta)」として国連オブザーバー資格を持つ主権組織として存続している。軍事的秘密結社のイメージが強いが、現在の活動は人道支援・医療サービスが中心の公開組織だ。
ドイツ騎士団(Teutonic Knights)
設立:1190年(正式認可1198年)/発祥:十字軍の聖地
第3回十字軍(1190年)最中に傷病ドイツ人巡礼者の看護のために設立。後にプロイセン・バルト地方への布教・征服活動に重心を移し、現在のドイツ・ポーランドにわたる地域を長期支配した「ドイツ騎士団国」を形成。17世紀以降は軍事力を失い、現在はウィーンを本部とする宗教騎士修道会として慈善活動を続けている。
暗殺教団(Assassins)
設立:1090年(アラムート城拠点化)/発祥:ペルシャ(現イラン)
「ハシシュ使用者(ḥashshāsh)」を語源とする説があるが、異説も多い「Assassin(暗殺者)」の語源がこの組織だ。イスラム・シーア派ニザール・イスマーイール派の指導者ハサン・イ・サッバーフが1090年にアラムート城を拠点に組織した武装集団で、セルジューク朝や十字軍の要人暗殺を戦術として多用した。1256年、フラグ率いるモンゴル軍の侵攻で拠点が壊滅。現在、ニザール・イスマーイール派はカナダ在住のアーガー・カーン4世を指導者として、社会福祉・教育活動を行う宗教共同体として存続している。
オプス・デイ(Opus Dei)
設立:1928年/発祥:スペイン・マドリード
「神の業」を意味するラテン語が名称の由来。スペインの司祭ホセマリア・エスクリバーが1928年に設立し、日常生活のなかにキリスト教精神を浸透させることを目的とした。1982年に教皇ヨハネ・パウロ2世が属人区として認可し、エスクリバーは2002年に列聖された。教会組織内に強い影響力を持つとされ、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』では悪役的な組織として描かれたが、公認されたカトリック組織である。
権力者の社交場:現代エリート系の結社
スカル・アンド・ボーンズ(Skull and Bones)
設立:1832年/発祥:イェール大学(米コネチカット州)
1832年にイェール大学の学生ウィリアム・ハンティントン・ラッセルとアルフォンソ・タフト(ウィリアム・ハワード・タフト第27代米大統領の父)が創設した選抜制学生結社。毎年上級生から15名の「Bonesmen(ボーンズマン)」を選出するシステムで、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ、ジョン・ケリー(上院議員・国務長官)などを輩出した。
「世界を動かすエリートネットワーク」として陰謀論の象徴的存在だが、実態はアメリカの名門大学に数多く存在する同窓ネットワーク組織の典型に近い。儀式の詳細は非公開。創設以来の会員名簿は部分的に判明している。
ボヘミアン・クラブ(Bohemian Club)
設立:1872年/発祥:アメリカ・サンフランシスコ
1872年に芸術家・ジャーナリストのグループが設立した紳士クラブ。毎年7月にカリフォルニア州北部のボヘミアン・グローブ(広大な森林地)で行われる2週間のリトリートが有名で、歴代アメリカ大統領・財界人・著名人が参加する。「マンハッタン計画の非公式な初期検討が1942年にここで行われた」という記録も残る。
木製フクロウ像の前で行う「ケア・クレミエーション」と呼ばれるセレモニーは「憂いを焼き捨てる」儀礼的な演出で、実際の秘密儀式というより演劇的な行事に近い。参加者リストは非公開だが、陰謀論が描くほど密室性が高いわけではない。
ビルダーバーグ会議(Bilderberg Meetings)
設立:1954年/発祥:オランダ(ホテル・デ・ビルダーバーグ)
1954年にオランダのドゥーン近郊のホテルで初会合が開かれた非公開の国際会議。欧米の政治家・銀行家・実業家・学者・メディア人が年1回集まり、国際情勢・経済・政策について議論する。参加者リストは毎年公開されるようになったが、議事録は非公開。「密室で世界経済・政治の方向性を決める影の世界政府」という陰謀論の代表例だが、非公開の政策討議フォーラムとして見れば、G7・ダボス会議などと本質的な違いは小さい。
ラウンドテーブル(Round Table)
設立:1909年頃/発祥:イギリス
南アフリカのダイヤモンド鉱山で財をなしたセシル・ローズの遺志(「英語圏の団結」「英連邦の強化」)を継承した知識人グループ。ローズの後継者アルフレッド・ミルナーが1909年頃に英国・南アフリカ・オーストラリア・カナダなどに「ラウンドテーブル・グループ」を結成した。ローズ奨学金の思想的基盤でもある。陰謀論では「CFR(外交問題評議会)やビルダーバーグへとつながる世界政府網の源流」とされることがあるが、実態は英連邦の政策を議論する知識人サークルだった。
体制打倒を目指した革命・民族解放系
カルボナリ(Carbonari)
設立:19世紀初頭(1807年頃)/発祥:イタリア南部
「炭焼き人」を意味するイタリア語が名称の由来。ナポレオン占領下のイタリアで生まれた革命的秘密結社で、立憲制の確立と国民統一を目標とした。フランスにも拡大し、マッツィーニやガリバルディなど後のイタリア統一運動(リソルジメント)指導者を多く輩出。フリーメーソンに影響を受けた入会儀式・位階制度を持ち、1830〜1840年代の革命運動の精神的支柱となった。
黒手組(Black Hand)
設立:1911年/発祥:セルビア・ベオグラード
「統一かさもなくば死か(Ujedinjenje ili smrt)」を標語に掲げたセルビアの民族主義秘密結社。セルビア陸軍の情報将校ドラグティン・ディミトリエヴィッチ(通称「アピス」)が主導した。1914年6月、サラエヴォでオーストリア皇太子フランツ・フェルディナント大公を暗殺したガヴリロ・プリンツィプは民族主義結社「青年ボスニア」のメンバーで、黒手組との協力関係にあったとされる。この暗殺事件が第一次世界大戦の引き金となった。
洪門・天地会(Hongmen / Heaven and Earth Society)
設立:17世紀後半頃/発祥:中国・福建省周辺
「天と地を兄弟とする(天地を結ぶ)」組織で「東洋のフリーメーソン」とも呼ばれる。明朝の滅亡(1644年)後に「反清復明(清朝を打倒し明朝を復活させる)」を掲げて誕生したとされ、秘密の入会儀式と複雑な暗号体系を持つ。孫文も洪門と関わりを持ったとされる。洪門の系譜を引く「三合会(Triads)」は現在アジア系犯罪組織として知られるが、洪門本体は海外華人の文化保存・政治活動を行う団体としての系統も残っている。
人民の意志(Narodnaya Volya)
設立:1879年/発祥:ロシア帝国
アンドレイ・ジェリャーボフらが1879年に組織した革命的テロ組織。帝政ロシアの打倒を目指し直接的な暗殺活動を展開した。1881年3月13日、アレクサンドル2世の馬車に爆弾を投擲して暗殺に成功。しかしこの行動はロマノフ朝の反動的強化を招き、メンバーの多くはほどなく処刑されて組織は壊滅した。ロシア革命(1917年)の先駆的なテロ組織として研究される。
マウマウ団(Mau Mau)
設立:1950年頃/発祥:ケニア(英国植民地)
「ケニア土地自由軍(KLFA)」とも呼ばれる英国植民地支配への抵抗組織。入会には秘密の誓約儀式があり、宗主国イギリス側から「邪悪な秘密結社」として描かれた。1952〜1960年の蜂起(マウマウの乱)はケニア独立運動の重要な転換点となった。2013年には英国政府がケニア植民地支配時の拷問・虐待を認め、被害者への補償を表明している。
魔術と神秘の追求:オカルト系の結社
黄金の夜明け団(Hermetic Order of the Golden Dawn)
設立:1888年/発祥:イギリス・ロンドン
1888年にウィリアム・ウィン・ウェストコット・マクレガー・マザース・ウィリアム・ロバート・ウッドマンが共同創設した魔術結社。カバラ・錬金術・占星術・タロットを統合した西洋魔術体系を確立し、近代「魔術ルネサンス」の出発点とされる。詩人W.B.イェイツや後のO.T.O.指導者アレイスター・クロウリーが在籍した(クロウリーは内部対立で除名)。現代のウィッカや西洋オカルティズムに多大な影響を残した。
O.T.O.(Ordo Templi Orientis・東方テンプル騎士団)
設立:1904年頃/発祥:ドイツ・オーストリア
カール・ケルナーが1895年頃に構想を始め、ケルナー死後にテオドール・ロイスが1906年頃に正式に組織化したオカルト騎士団(設立時期には諸説あり)。後にアレイスター・クロウリーが主導権を握り、「汝の意志するところを行え(Do what thou wilt)」を基本原理とする「テレマ(Thelema)」哲学を中心教義に据えた。儀式・神秘主義・性的魔術を扱う団体として広く知られ、現在も世界各国にロッジが存在する。
ヘルファイア・クラブ(Hellfire Club)
設立:1749年(最も著名な版)/発祥:イギリス
最も有名なバージョンは1749年にフランシス・ダッシュウッド卿がロンドン郊外のメドマナム修道院を拠点に設立したもの。政治家・貴族・芸術家が集い、放蕩的な宴会とパロディ的な「悪魔崇拝」儀礼を楽しんだとされる。政治風刺家ジョン・ウィルクスも一時期会員だった。実際の悪魔崇拝よりも反宗教的言論の自由と享楽を旨とする貴族のスキャンダラスな社交クラブという性格が強い。
ゲルマン騎士団(Germanenorden)
設立:1912年/発祥:ドイツ
1912年にフリードリッヒ・フィンク・フォン・フィンケンシュタインらが設立した反ユダヤ主義的オカルト騎士団。フリーメーソン的な儀式体系を持ちながら「アーリア純潔主義」を掲げ、後のトゥーレ協会や国家社会主義(ナチズム)の思想的土壌を形成した。
トゥーレ協会(Thule-Gesellschaft)
設立:1918年/発祥:ドイツ・ミュンヘン
1918年にルドルフ・フォン・ゼーボッテンドルフが設立した、オカルト的アーリア主義の秘密結社。ゲルマン騎士団の分派で、北欧神話上の「トゥーレ(北の楽園)」にアーリア民族の起源を求めた。初期のNSDAP(国家社会主義ドイツ労働者党・ナチ党)の設立に深く関与し、ルドルフ・ヘス(後の副総統)もメンバーだったとされる。ハーケンクロイツ(鉤十字)の採用を提案したのもトゥーレ協会とする説が有力だ。
アセファル(Acéphale)
設立:1936年/発祥:フランス・パリ
哲学者ジョルジュ・バタイユが1936年に設立した超秘密の思想的結社。「頭のない者(acéphale)」を象徴とし、ニーチェ哲学の復権と近代理性主義の超克を目指した。メンバーはわずか数人で、パリ郊外の森での儀礼的集会が中心。バタイユが「結社の絆を強めるために人身御供の志願者を求めた(実現せず)」という証言も伝わり、最も謎めいた思想的結社のひとつとされる。1939年に自然消滅した。
腐敗と恐怖:犯罪・極右系の結社
クー・クラックス・クラン(KKK)
設立:1865年/発祥:アメリカ・テネシー州プラスキー
南北戦争終結直後の1865年12月、南軍将校6人が設立した白人至上主義の暴力的秘密結社。白いローブと頭巾で身元を隠し、解放された黒人・ユダヤ人・カトリック教徒・外国人移民などに対するリンチ・焼き討ち・恐喝などのテロ行為を行った。1920年代には第二の最盛期を迎え、全米で400万人超のメンバーを擁したとされる。現在は分裂・弱体化し、連邦法で厳しく監視される危険組織として指定されている。
ロッジP2(Propaganda Due / P2)
設立:1877年(P2として)、問題化:1980年代初頭/発祥:イタリア・フィレンツェ系
イタリアのフリーメーソン傘下の「プロパガンダ・ドゥエ(P2)」ロッジ。1976年にグランドロッジから承認を取り消されたのちも、リーチオ・ジェッリ主導のもと秘密裏に活動を続けた。1981年3月、ジェッリ邸の捜索で会員名簿が発見され、932人のメンバーに現役将軍30人・国会議員38人・閣僚4人・シルヴィオ・ベルルスコーニ(後の首相)を含む政財界人が名を連ねていたことが判明。「アンブロジアーノ銀行スキャンダル」など複数の汚職事件との関連も疑われ、イタリア史上最大級の政治スキャンダルとなった。1981年10月に解散。
三合会(Triads)
起源:17世紀後半/現在の活動地域:香港・中国・東南アジア・欧米のチャイナタウン
洪門・天地会(上述)の系譜を引く中国系犯罪組織の総称。名称は天・地・人の「三合」に由来するとされる。麻薬密輸・賭博・人身売買・恐喝などに関与する組織として国際的に知られ、日本のヤクザ・イタリア系マフィアと並ぶ世界的な組織犯罪グループとして認識されている。複数の独立した組織の総称であり、統一した単一組織ではない。
日本の秘密結社
玄洋社(Gen'yōsha)
設立:1881年(明治14年)/発祥:日本・福岡
頭山満・平岡浩太郎らが1881年に福岡で設立した国家主義的政治結社。「大日本主義」を標榜しアジア各国の民族主義運動とも連携したことから、「アジア主義」的な超国家主義の元祖ともいわれる。中国・朝鮮・インド等の独立運動家との交流も持ち、戦前日本の右翼・国粋主義運動に大きな影響を与えた。1946年、GHQの占領政策により解散。
黒龍会(Kokuryukai / Black Dragon Society)
設立:1901年(明治34年)/発祥:日本・東京
「黒龍」の名はアムール川(中国語で「黒竜江」)に由来。内田良平が1901年に設立した超国家主義団体で、日露戦争前後にロシアに対する諜報・謀略活動を行った。玄洋社と連携し「アジア主義」の立場から各地の独立運動を支援する一方、軍部・右翼とも深く関係した。1946年、GHQにより解散。
八咫烏(Yatagarasu)
起源:日本神話/形態:都市伝説
八咫烏は本来、日本神話で神武天皇を大和へ導いた三本足の烏の神とされる霊鳥。これが転じて「表の政府とは別に存在する影の支配者」「天皇家の祭祀・政策を裏から操る秘密組織」という都市伝説が現代に広まった。同名の神社組織(賀茂神社系の神職組織)は実際に存在するが、陰謀論的な「影の政府」としての実態は史料によって確認されていない。都市伝説・フィクションとしては厨二的な人気が高い。
捏造された秘密結社:陰謀論の象徴
以下の2団体は、歴史的実体が確認されていない、あるいは創作と判明している結社である。
シオン修道会(Priory of Sion)
登録:1956年/発祥:フランス
1956年にピエール・プランタールがフランスで登録した小さな団体。「聖杯(マグダラのマリアの血統)を守護するキリスト教の古代秘密騎士団」という設定の偽文書(「秘密文書」)をパリ国立図書館に偽造・寄贈した。1982年の英書『レンヌ=ル=シャトーの謎』(リンカーン・ベイジェント・リー著)でこの偽文書が事実として紹介され、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』の着想源となった。プランタール自身が1993年のフランスの裁判で「創作した虚構」と証言しており、「中世から続く秘密騎士団」という設定はフィクションである。
三百人委員会(The Committee of 300)
起源:陰謀論書(1992年・ジョン・コールマン著)
「世界の真の支配者は300人の委員会」という概念は1992年に出版された陰謀論書『Conspirators' Hierarchy: The Story of the Committee of 300(三百人委員会)』を起源とする。英国東インド会社の役員会300人説などと混同されることがあるが、歴史的実体として確認されている組織ではなく、世界政府陰謀論の代表的なモチーフのひとつとして扱われる。
まとめ
世界の秘密結社32団体を見てきた。慈善団体・宗教組織・知識人サークル・革命組織・オカルト結社・犯罪集団と、その実態は多彩だ。「秘密」という性質が後世の想像力を刺激し、実体よりはるかに大きな陰謀論を生み出してきたケースも少なくない。
歴史を紐解けば、シオン修道会のように完全な捏造と判明した例もあれば、ロッジP2のように実際の権力腐敗に関与した例もある。秘密結社を考えるうえでは「陰謀論(俗説)」と「歴史的事実」を区別する視点が不可欠だ。
中世の騎士団についてはこちらも参考にどうぞ:中世ヨーロッパの騎士団まとめ