
ボードゲームは人類最古の娯楽のひとつです。最古の記録は紀元前3500年頃の古代エジプトの「セネト」にさかのぼり、チェスや将棋は1500年以上の歴史を持ちます。本記事では古代から現代まで世界の主要なボードゲーム・テーブルゲーム42種を、起源年代・発祥地・特徴とともに時代別の一覧にまとめました。チェス・将棋・象棋の意外な共通祖先や、オセロの起源論争など、知って楽しい歴史トリビアも解説します。
古代〜中世のボードゲーム(〜14世紀)
人類は文明の誕生とほぼ同時にボードゲームを発明していました。ゲームには競争・陣取り・知略という人間の本能が詰まっており、信仰や死後の世界とも深く結びついていたことが遺跡から分かっています。
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| ゲーム名(読み) | 発祥地 | 起源年代 | 特徴・ポイント |
|---|---|---|---|
| セネト(せねと) | 古代エジプト | 紀元前3500年頃 | 現在確認されている世界最古のボードゲーム。30マスのコースを駒が競走する。「死者の書」にも登場し、死後の世界への旅を象徴していた |
| ウル王朝のゲーム | メソポタミア(現イラク) | 紀元前2600年頃 | ウルの王墓から出土した競走系ゲーム。独特の四面体サイコロで駒を進める。現在は大英博物館が所蔵 |
| マンカラ(まんから) | アフリカ・中東 | 紀元前4000年頃〜(諸説あり) | 穴に石・種を移動させ取り合う計数ゲーム。「世界最古の現役ゲーム」とも称され、アフリカを中心に100種以上の派生形が現在も続く |
| 囲碁(いご) | 中国 | 紀元前4世紀頃(詳細は諸説あり) | 縦横19路の盤上に黒白の石を置き、相手の石を囲む。現存する信頼できる記録は紀元前4世紀頃から。現役で続く最古の2人用抽象ゲームのひとつ |
| 五目並べ(ごもくならべ) | 中国・日本 | 紀元前〜(江戸時代に日本で普及) | 先に5つ並べた方が勝つ配列系ゲーム。囲碁盤を流用する形で発展し、日本でルール整備が進んだ |
| ナイン・メンズ・モリス | ヨーロッパ(ローマ帝国) | 紀元前〜(1世紀頃の記録あり) | 9個の石を縦横斜めに3つ並べる陣取り系ゲーム。ローマ遺跡の床石・テーブルに盤面の刻みが多数残っている |
| チャトランガ(ちゃとらんが) | インド | 6世紀頃 | チェス・将棋・象棋すべての共通祖先。サンスクリット語で「4つの軍(象・馬・戦車・歩兵)」を意味し、古代インドの戦争を盤上で再現した |
| シャトランジ(しゃとらんじ) | ペルシャ(現イラン) | 7世紀頃 | チャトランガがペルシャに伝わった形。アラブ世界で「シャトランジ」と呼ばれ、この名がヨーロッパ語のチェス(Chess)の語源になった |
| 象棋(シャンチー) | 中国 | 7世紀以降 | チャトランガ系のゲームが中国で発展した形。川(楚河漢界)をはさんだ2軍が戦う。現在も中国・東南アジアで広くプレイされている |
| すごろく(双六) | 日本 | 7〜8世紀(奈良時代) | 競走型の盤上ゲーム。奈良時代に中国から伝来したとされ、平安時代に貴族に親しまれた。「盤すごろく」と「絵すごろく」の2種類がある |
| チェッカー/ドラフツ | フランス・ヨーロッパ | 12世紀頃 | チェスの盤上で駒を斜めに動かし相手を取る捕獲系ゲーム。フランスで「チェスの盤を使うアルクルケ」として発展し、世界100か国以上でプレイされる |
| 将棋(しょうぎ) | 日本 | 11〜12世紀頃 | チャトランガ系ゲームが日本で発展した形。世界のチェス族で唯一「取った相手の駒を自軍として使える」持ち駒ルールを持つ |
| チャンギ(ちゃんぎ) | 韓国 | 14世紀頃 | 象棋をもとに朝鮮半島で独自に発展したゲーム。将棋・チェスと同じくチャトランガを祖先に持ち、現在も韓国で広く親しまれている |
| マークルック(まーくるっく) | タイ | 13世紀頃 | タイのチェス。チャトランガ系のゲームが東南アジアで発展した形。現在もタイ・カンボジアなどでプレイされている伝統ゲーム |
近世〜近代のボードゲーム(15世紀〜19世紀)
15世紀以降、印刷技術と交易の発展によりゲームが商品として普及し始めました。チェスが現代のルールに整備され、バックギャモンが命名され、産業革命後には「遊び」が大衆文化として広がっていきます。
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| ゲーム名(読み) | 発祥地 | 起源年代 | 特徴・ポイント |
|---|---|---|---|
| チェス | ヨーロッパ | 15世紀(現代ルール確立) | チャトランガ→シャトランジを経て現代の形に。クイーンの強化・アンパッサン・ポーンの成りなどのルールが15世紀のヨーロッパで整備された |
| バックギャモン(ばっくぎゃもん) | イギリス | 17世紀(現名称・ルール確立) | サイコロで駒を動かす競走ゲーム。原型はメソポタミアの紀元前5000年頃まで遡るとも言われ、現代の名称は1640年ごろのイギリスで登場した |
| ドミノ(どみの) | イタリア・ヨーロッパ | 18世紀(ヨーロッパ版) | 目の入った牌を並べ、同じ目同士をつなぐタイル系ゲーム。中国起源説もあり(12世紀説)。日常語の「ドミノ倒し」はここから生まれた |
| 人生ゲーム | アメリカ | 1860年 | ミルトン・ブラドレーが考案した競走ゲーム。誕生から老後まで「人生のイベント」を追体験しながら最終的な資産を競う |
| ハルマ(はるま) | アメリカ | 1883年 | ジョージ・ハワード・モンクス考案の移動ゲーム。三角形のエリアに並んだ駒をすべて相手側に運ぶ。チャイニーズチェッカーの原型 |
| リバーシ(りばーし) | イギリス | 1880年代 | 相手の石を挟んで裏返す囲み系ゲーム。ルイス・ウォーターマンほか複数名が考案を主張し、起源については現在も諸説ある |
| チャイニーズチェッカー | ドイツ | 1892年 | ハルマをアレンジした星形ボードのゲームとしてドイツで発明。名称に「中国」が入るが、中国とは無関係のドイツ生まれ。1928年にアメリカで現名称に改名された |
| 麻雀(マージャン) | 中国 | 1870〜1890年代 | 136〜144牌のタイル系ゲーム。牌の組み合わせで役を作り上がりを競う。19世紀末に中国南部で広まり、アジア全域に普及した |
現代のボードゲーム(20世紀〜)
20世紀以降、商業的なゲームが爆発的に増え、1990年代からはドイツを中心に「ユーロゲーム」と呼ばれる新ジャンルが世界に広まりました。運と思考のバランスを追求した現代ゲームは、今も毎年何千タイトルも生み出されています。
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| ゲーム名(読み) | 発祥地 | 起源年代 | 特徴・ポイント |
|---|---|---|---|
| モノポリー | アメリカ | 1935年(商業版発売) | 土地を買い家・ホテルを建て対戦相手を破産させる経済系ゲーム。1903年のエリザベス・マギーの「地主ゲーム」が原型で、世界で最も販売されたボードゲームのひとつ |
| スクラブル | アメリカ | 1938年(考案)・1948年(商品化) | アルファベットのタイルでクロスワードを作り得点を競う語彙ゲーム。アルフレッド・バッツが考案し、ジェームズ・ブルノットが商品化 |
| クルード(クルー) | イギリス | 1949年 | 邸宅で起きた殺人事件の犯人・凶器・場所を推理する探偵ゲーム。アンソニー・プラットが考案し、推理ゲームの代名詞となった |
| ヤッツィー(やっつぃー) | アメリカ | 1956年 | 5個のサイコロを最大3回振り、ポーカーのような役の組み合わせで点数を競うダイス系ゲーム |
| リスク | フランス | 1957年 | 世界地図を舞台に領土を争う戦略ゲーム。フランスの映画監督アルベール・ラモリスが考案。運と戦略が入り交じる大作 |
| マスターマインド | イスラエル | 1970年 | 隠された4色のコードの組み合わせを手がかりで推理して当てるゲーム。モルデカイ・メイロウィッツが考案し、シンプルなルールで世界的ヒットになった |
| オセロ | 日本 | 1971年(商品化)・1973年(ツクダ社発売) | リバーシの流れを汲む囲み系ゲーム。「分で覚えられて一生楽しめる」のキャッチコピーで普及。起源はイギリスのリバーシにも諸説あり |
| コネクトフォー | アメリカ | 1974年 | 縦型グリッドにコマを落とし、先に縦・横・斜めいずれかに4つ並べた方が勝つ。五目並べを重力のある立体空間に応用した設計 |
| トリヴィアル・パースーイット | カナダ | 1979年考案・1981年発売 | 6ジャンルの一般知識クイズに答え、扇形コマを完成させるクイズゲーム。1979年12月にクリス・ヘイニーとスコット・アボットが考案し、世界で1億セット以上を販売 |
| ジェンガ | イギリス | 1983年 | 積み上げた54本の木製ブロックから1本ずつ抜いて上に積む、バランスと度胸のテーブルゲーム。レスリー・スコットが考案。「ジェンガ」はスワヒリ語で「建てる」の意味 |
| スコットランドヤード | ドイツ | 1983年 | ロンドンを舞台に逃亡するミスターXを複数プレイヤーが追いかける推理ゲーム。ドイツ年間ゲーム大賞を受賞し、協力と競争を組み合わせた設計が評価された |
| カタンの開拓者たち(かたん) | ドイツ | 1995年 | クラウス・トイバー考案のユーロゲームを代表する名作。資源を集め、道・集落・都市を建設して最多点を競う。世界50言語以上に翻訳され、累計4500万セット以上(2025年時点) |
| カルカソンヌ | ドイツ | 2000年 | タイルを引いて南フランスの地図を完成させるゲーム。城・道・修道院をミープル(人形コマ)で取り合う。入門ユーロゲームの定番 |
| チケット・トゥ・ライド | アメリカ | 2004年 | 色別の列車カードを集め、北米の都市間に鉄道路線を敷くゲーム。シンプルなルールで戦略性が高く、世界で最も普及した現代ボードゲームのひとつ |
| アグリコラ(あぐりこら) | ドイツ | 2007年 | ウヴェ・ローゼンベルク考案の農場経営ゲーム。限られた労働者を配置して農場を発展させる「ワーカープレイスメント」ジャンルを代表する傑作 |
| ドミニオン | アメリカ | 2008年 | プレイ中に王国カードを購入してデッキを強化していく「デッキ構築ゲーム」の元祖。このゲームが生んだジャンルは世界に多数の類似作品を生み出した |
| パンデミック(ぱんでみっく) | アメリカ | 2008年 | 全プレイヤーが協力して世界規模の感染症を封じ込める「協力ゲーム」の代表作。2020年の新型コロナ流行時に話題が再燃し品薄になった |
| ラブレター | 日本 | 2012年 | 金井セイジ(カナイセイジ)考案の超小型カードゲーム。わずか16枚のカードで推理と心理戦を楽しむ。日本のインディーゲームとして国際的な人気を獲得した |
| 宝石の煌めき(スプレンダー) | フランス | 2014年 | 宝石トークンを集めてカードを購入し、貴族を招待するエンジン構築ゲーム。マルク・アンドレ考案。シンプルな見た目と深い戦略性で世界的ヒットに |
| アズール | ポルトガル/ドイツ | 2017年 | ポルトガルの装飾タイル「アズレージョ」をモチーフにしたタイル取りゲーム。ミヒャエル・キースリング考案でドイツ年間ゲーム大賞を受賞 |
知っておきたいボードゲームの雑学
チェスも将棋も「チャトランガ」がルーツ
世界でプレイされるチェス・将棋・象棋(シャンチー)・チャンギ・マークルックは、すべて6世紀ごろのインドのゲーム「チャトランガ」を共通の祖先に持ちます。チャトランガはサンスクリット語で「4つの軍(象・馬・戦車・歩兵)」を意味し、古代インドの戦闘を盤上で再現したゲームでした。
チャトランガはペルシャに伝わって「シャトランジ」となり、7世紀以降にアラビア世界へ広まり、13〜14世紀ごろヨーロッパへと伝わって「チェス」に進化しました。東方に伝わったものは中国で「象棋(シャンチー)」に、日本では「将棋」に独自発展しています。
将棋が他のチェス族と最も異なる点は「取った駒を自軍として使える持ち駒ルール」です。世界中のチェス系ゲームの中でこの仕組みを持つのは将棋だけで、無限の局面を生み出す理由でもあります。将棋の戦法・囲いの名称由来について詳しくは将棋の戦法・囲い一覧をどうぞ。
世界最古のゲームはエジプトのセネト
現在確認されている最古のボードゲームは、古代エジプトの「セネト(Senet)」です。紀元前3500年頃の遺跡から実物のゲーム盤が発掘されており、「死者の書」にもプレイ場面が描かれています。
セネトは30マスのコースを2人の駒が競走するゲームで、単純な娯楽にとどまらず、エジプト人にとって「死後の世界への旅」を象徴する宗教的な意味も持っていました。ツタンカーメンの墓からも4組のセネト盤が副葬品として出土しており、当時いかに重要なゲームだったかが分かります。現在も復元品が博物館で展示され、ルールを再現したプレイ体験イベントも各地で開催されています。
囲碁の専門用語を体系的に知りたい方は囲碁用語一覧121選もあわせて読むと、古代ゲームの奥深さをさらに感じられます。
オセロの起源には論争がある
オセロは「日本人が発明したゲーム」として広く知られていますが、実は起源に論争があります。1880年代にイギリスでルイス・ウォーターマンが同様のルールの「リバーシ」を考案しており、これがオセロの原型とも言われています(ただしウォーターマンの考案についても異説あり)。
日本側の経緯としては、長谷川五郎氏が1971年に改良版の「オセロ」を商品化し、1973年にツクダ社(現メガハウス)が「オセロ」の商標で販売を開始しました。長谷川氏は当初「源平碁の改良」として申請したり、後に「独自考案」と説明したりと、主張が変わった経緯もあります。「リバーシというゲームシステムの起源」と「オセロという商品の誕生」は別の話として整理するのが実態に近いといえます。
ドイツが「ボードゲーム大国」になった理由
1990年代以降、ドイツは世界のボードゲームの発信地となりました。その背景にあるのが1979年に創設された「ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)」です。厳格な選考基準で毎年優秀作を表彰するこの賞は、受賞ゲームの販売部数を一気に押し上げる効果を持ち、ドイツのゲーム産業を世界水準に引き上げました。
ドイツゲームの特徴は「運の要素を小さくし、思考と判断で勝負を決める」哲学にあります。プレイヤー全員が最後まで逆転の可能性を持ち、一度脱落したら最後まで待ちぼうけという状況を避ける設計が好まれます。カタン・カルカソンヌ・チケット・トゥ・ライドといった現代の名作は、このドイツゲームの哲学から生まれた作品です。
なお、ゲームで有名なナッシュ均衡・囚人のジレンマなど数学的な「ゲーム理論」に興味がある方はゲーム理論の用語51選もあわせてどうぞ。
まとめ
セネト(紀元前3500年頃)からアズール(2017年)まで、ボードゲームは約5500年以上にわたって人類に楽しまれてきた知恵と競争の文化です。チェスも将棋も囲碁も、現代の私たちが遊ぶゲームはどれも長い歴史の旅と進化を経てたどり着いた姿です。今日遊んでいるゲームのルーツをたどると、古代エジプト・インド・中世ヨーロッパといった思わぬ歴史のつながりが見えてきます。ぜひお気に入りのゲームの起源を調べてみてください。