
世界の国の名前は、時代とともに変わってきました。植民地からの独立、政治体制の変化、外交的な合意、または「自国の言葉でこそ名乗りたい」という民族的な誇り——その理由は様々です。
2022年に話題になった「テュルキエ(旧トルコ)」の改名のように、現代でも国名の変更は起きています。本記事では、近年から歴史的事例まで、国名が変わった国を35例一覧でまとめました。改名の背景を知ると、その国の歴史が見えてきます。
なお、国名の漢字表記(当て字)の読み方については別記事でまとめています。
2010年代〜2022年の国名変更(9例)
近年の改名事例の多くは、植民地時代の名称からの脱却や、自国語名の国際的な統一が動機となっています。
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| 旧国名(変更前) | 現在の国名 | 変更年 | 変更の背景 |
|---|---|---|---|
| トルコ共和国(Turkey) | テュルキエ(Türkiye) | 2022年 | 英語の「Turkey」が「七面鳥」を意味することを嫌い、トルコ語の自国名「Türkiye」を国連でも正式採用するよう要請 |
| アフガニスタン・イスラム共和国 | アフガニスタン・イスラム首長国 | 2021年 | タリバンが政権を掌握し、「共和国(Republic)」から「首長国(Emirate)」に変更 |
| マケドニア共和国 | 北マケドニア共和国 | 2019年 | ギリシャとの長年の国名紛争をプレスパ合意で解決。「マケドニア地方」を持つギリシャへの配慮から「北」を追加 |
| スワジランド王国 | エスワティニ王国 | 2018年 | 独立50周年を機に、英国由来の植民地名「Swaziland」を廃止。スワジ語で「スワジ人の土地」を意味する「Eswatini」に変更 |
| ガンビア・イスラム共和国 | ガンビア共和国 | 2017年 | 前ジャメ大統領が2015年に加えた「イスラム」の文字を、バロー新大統領が就任直後に削除 |
| チェコ共和国 | チェキア(Czechia) | 2016年 | スポーツ大会や日常場面での使いやすさを理由に、短縮形の通称「Czechia」を国連に正式登録 |
| グルジア | ジョージア | 2015年 | 日本政府が、ロシア語由来の「グルジア」から英語・同国語に近い「ジョージア(Georgia)」に呼称変更 |
| ケープベルデ(Cape Verde) | カーボベルデ(Cabo Verde) | 2013年 | 政府が英語名の使用を禁止し、ポルトガル語の正式名「Cabo Verde」を国連でも統一使用するよう要請 |
| ハンガリー共和国 | ハンガリー | 2012年 | 新憲法施行により、正式国名から「共和国(Republic)」の文字を削除 |
1989〜2009年の国名変更(10例)
東西冷戦の終結後、多くの国で民主化や独立が相次ぎ、国名の変更が起きた時代です。
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| 旧国名(変更前) | 現在の国名 | 変更年 | 変更の背景 |
|---|---|---|---|
| ボリビア共和国 | ボリビア多民族国 | 2009年 | 先住民族の権利を重視する新憲法の施行により、多民族共存を国名で表現 |
| ネパール王国 | ネパール連邦民主共和国 | 2008年 | 制憲議会が王制廃止と連邦民主共和制への移行を決定 |
| 東ティモール民主共和国(旧インドネシア支配) | 東ティモール民主共和国 | 2002年 | 長年の独立運動と国連暫定統治を経て独立。ポルトガル語名「Timor-Leste」を正式採用 |
| ザイール共和国 | コンゴ民主共和国 | 1997年 | カビラ大統領がモブツ政権を打倒し、1971年の改名前の名称「コンゴ民主共和国」を復活 |
| チェコスロバキア | チェコ共和国 | 1993年 | 両民族の合意による「ビロード離婚」で平和的に分離独立 |
| チェコスロバキア | スロバキア共和国 | 1993年 | 同上。スロバキア語で「スロバキア人の国」を意味する名称が採用された |
| モンゴル人民共和国 | モンゴル国 | 1992年 | 民主化革命によりソ連式の「人民共和国」を廃止。モンゴル語の正式名「Монгол Улс(モンゴル・オルス)」に |
| 南西アフリカ | ナミビア共和国 | 1990年 | 南アフリカによる長期統治から独立。「ナミビア」はナミブ砂漠に由来する現地の呼称 |
| ビルマ連邦 | ミャンマー連邦 | 1989年 | 軍事政権(SLORC)が英国植民地時代の「Burma(バーマ)」を廃止し、地名の語源に近い「Myanmar」を採用 |
| カンプチア人民共和国 | カンボジア国 | 1989年 | ポル・ポト政権が付けた「カンプチア」から「カンボジア」に改称。その後1993年にカンボジア王国へ |
1970〜1988年の国名変更(10例)
アフリカを中心とする旧植民地からの独立ラッシュと、革命・クーデターによる政権交代が重なった時代です。
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| 旧国名(変更前) | 現在の国名 | 変更年 | 変更の背景 |
|---|---|---|---|
| 上ボルタ共和国 | ブルキナファソ | 1984年 | サンカラ大統領が植民地時代の「上ボルタ(Haute-Volta)」を廃止。「ブルキナファソ」はモシ語・ジュラ語で「清廉なる者たちの地」を意味する |
| ジンバブエ・ローデシア | ジンバブエ共和国 | 1980年 | 黒人多数派政権の樹立後、英国人ローデス卿の名を冠した「ローデシア」を廃止。「ジンバブエ」はショナ語で「石造りの宮殿」を意味する |
| ニューヘブリデス | バヌアツ共和国 | 1980年 | 英仏共同統治から独立。「バヌアツ」は現地語で「私たちの土地」を意味する |
| イラン帝国(パフラヴィー朝) | イラン・イスラム共和国 | 1979年 | ホメイニー師主導のイスラム革命によりパフラヴィー朝が打倒され、神権共和制に移行 |
| フランス領アファル・イッサ | ジブチ共和国 | 1977年 | フランスから独立。首都の港町名「ジブチ」が国名に採用された |
| 南ベトナム・北ベトナム | ベトナム社会主義共和国 | 1976年 | ベトナム戦争終結後の南北統一により、社会主義国家として一つの共和国を形成 |
| ダホメ共和国 | ベナン共和国 | 1975年 | 旧国名「ダホメ」は一部民族の旧王国名。全民族を代表しないとして廃止し、ベナン湾に由来する「ベナン」に変更 |
| セイロン自治領 | スリランカ共和国 | 1972年 | 英連邦から共和国として独立。「Ceylon(セイロン)」は西洋由来の名称で、シンハラ語・タミル語の「スリランカ(輝ける島)」に変更 |
| コンゴ民主共和国 | ザイール共和国 | 1971年 | モブツ大統領が「真正性(アフリカナイゼーション)」政策の一環として改名(のちに1997年元に戻す) |
| 東パキスタン(パキスタン東部州) | バングラデシュ人民共和国 | 1971年 | インドの支援を受けてパキスタンから独立。「バングラデシュ」はベンガル語で「ベンガルの国」を意味する |
1920〜1969年の主な国名変更(6例)
独立の波が訪れる前夜、および二度の世界大戦をまたぐ時代の改名事例です。
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| 旧国名(変更前) | 現在の国名 | 変更年 | 変更の背景 |
|---|---|---|---|
| タンガニーカ・ザンジバル | タンザニア連合共和国 | 1964年 | タンガニーカとザンジバル・ペンバが合併して連合国家を形成。「Tanzania」は両地名の合成語 |
| フランス領スーダン | マリ共和国 | 1960年 | フランスから独立し、西アフリカを支配したかつてのマリ帝国の名称を採用 |
| ゴールドコースト(Gold Coast) | ガーナ共和国 | 1957年 | サブサハラ・アフリカ初の独立国の一つ。「Ghana」は9〜13世紀に栄えたガーナ帝国に由来(実際の位置とは異なる) |
| シャム王国(Siam) | タイ王国(Thailand) | 1939年/1948年 | 国粋主義のピブン政権がタイ族の国家を強調するため「タイ(自由な人々の国)」に変更。1945年に一時シャムに戻したのち、1948年にタイに再変更 |
| ペルシャ(Persia) | イラン帝国(Iran) | 1935年 | パフラヴィー朝のレザー・シャーが「ペルシャ」の国際使用を禁止し、古代からの自称「アーリアン人の国(Iran)」を国際社会に要請 |
| 中華民国(大陸支配部分) | 中華人民共和国 | 1949年 | 国共内戦で中国共産党が勝利し、中華民国政府は台湾に撤退。大陸部に中華人民共和国が成立(現在も中華民国は台湾として継続) |
豆知識① 国名が変わる主な理由4パターン
これまで紹介した35例を見ると、改名の理由は大きく4つのパターンに分類できます。
パターン1:植民地名の脱却
欧米列強が付けた植民地時代の名称から、自国の言語・文化・歴史に由来する名称へ変更するケースです。エスワティニ(旧スワジランド)・ブルキナファソ(旧上ボルタ)・スリランカ(旧セイロン)・ジンバブエ(旧ローデシア)などがこれにあたります。脱植民地化の象徴として、多くのアフリカ・アジア諸国が独立後に実施しました。
パターン2:政治体制の変化
革命・民主化・クーデターなどにより政権や国家体制が変わり、国名も変更されるケースです。イラン(イスラム革命)・ミャンマー(軍事政権)・ネパール(王制廃止)・カンボジア(複数回の政変)などが代表例です。体制変更を対外的に示す意味合いもあります。
パターン3:独立・分離・合併
植民地からの独立や、国家の分裂・合併によって新たな国名が誕生するケースです。バングラデシュ(パキスタンから独立)・ナミビア(南ア支配から独立)・チェコ&スロバキア(連邦解体)・タンザニア(タンガニーカ+ザンジバルの合併)などがあります。
パターン4:自国名の正確な表記への統一
外国語由来の通称を廃止し、自国の言語での正式名称を国際社会で使用するよう求めるケースです。テュルキエ(トルコ語名)・カーボベルデ(ポルトガル語名)・ジョージア(英語・現地語名)・チェキア(チェコ語短縮名)などが近年の事例です。
豆知識② 何度も名前が変わった国
一度だけでなく、複数回にわたって国名が変わった国もあります。
コンゴ民主共和国(アフリカ中部)
この国は特に複雑な改名の歴史を持ちます。ベルギー領コンゴ(植民地)→コンゴ共和国(1960年独立)→コンゴ民主共和国(1964年)→ザイール(1971年・モブツが改名)→コンゴ民主共和国(1997年・カビラが旧称を復活)。同じ国が26年で元の名前に戻った、珍しいケースです。
カンボジア(東南アジア)
カンボジア(独立後)→クメール共和国(1970年・ロン・ノルのクーデター)→民主カンプチア(1975年・ポル・ポト政権)→カンプチア人民共和国(1979年)→カンボジア国(1989年)→カンボジア王国(1993年)と、約20年間で5回も国名が変わりました。
タイ(東南アジア)
タイは「シャム→タイ→シャム→タイ」と同じ名前を2度使っています。1939年にシャムからタイに改名、1945年に一時シャムに戻し、1948年に再びタイに変更。政権交代のたびに名前が変わった珍しい事例です。
まとめ
国名が変わった国を、近年から歴史的事例まで35例にわたって紹介しました。改名の背景には、植民地支配からの脱却、政治体制の変化、民族的な誇りの回復、そして自国語名の国際的な普及という、それぞれの国が辿った固有の歴史が刻まれています。
「テュルキエ」「チェキア」「エスワティニ」——見慣れない名前に戸惑うことがあるかもしれませんが、その名の裏には、その国が選び取った歴史があります。地図を眺めるとき、少しだけ国名の由来に思いを馳せてみると、世界はさらに面白く見えてきます。世界195か国の国旗と色・図柄の意味もあわせてご覧ください。