
チームで1つの答えを出す体験が、会話のルールと互いの価値観の違いを自然に気づかせてくれる——それがコンセンサスゲームの面白さです。
コンセンサスゲームは、研修やアイスブレイクで広く使われているチームワーク体験型のツールです。定番のNASAゲーム(月面遭難)から、価値観や倫理を問うシナリオまで、バリエーションは意外と豊富。この記事では、主なお題17選をカテゴリ別に一覧で紹介し、NASAゲームの詳細な進め方とファシリテーターのコツも解説します。
コンセンサスゲームとは
コンセンサスゲーム(合意形成ゲーム)とは、グループ全員の合意のもとで1つの答えを導き出すチームワーク体験型の研修ツールです。正解・不正解を競うというより、話し合いのプロセスそのものを学ぶことが目的です。
主な目的・学べること
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| 目的 | 具体的な学び |
|---|---|
| 合意形成スキル | 多数決でなく、全員納得の答えを出す |
| コミュニケーション | 自分の意見を論理的に伝える・相手の話を聴く |
| リーダーシップ | 議論をまとめる・引き出す力 |
| 多様性への気づき | 同じ情報でも人によって判断が違うことへの理解 |
| 問題解決思考 | 根拠・優先順位・トレードオフの考え方 |
基本ルール:多数決は使わない・個人の意見を否定しない・全員が納得した答えを出す、というのがコンセンサスゲームの大原則です。この制約があるからこそ、本音の対話が生まれます。
コンセンサスゲームのお題一覧(17選)
定番から変わり種まで、5つのカテゴリに分類して紹介します。
① 脱出・サバイバル系(6選)
最も一般的なカテゴリ。「与えられたアイテムに優先順位をつけ、危機を脱出する」形式がほとんどです。専門家が作成した「参考解答」があり、グループの結果と比較できる点が特徴です。
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| ゲーム名 | シナリオ概要 | アイテム数 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| NASAゲーム(月面遭難) | 月面に不時着した宇宙飛行士が母船へ200マイルを目指す | 15個 | ★★☆ |
| 砂漠からの脱出(デザートサバイバル) | 砂漠で飛行機が不時着。熱帯気候下での生存を目指す | 12個 | ★★☆ |
| 雪山サバイバル | 雪山に墜落した飛行機から生存者が安全な場所へ | 10個 | ★★☆ |
| ジャングルサバイバル | 密林での生存。実際の探検家のノウハウが参考解答に | 不明 | ★★☆ |
| 帰宅困難サバイバル | 都市直下型地震が発生。自宅まで安全に帰る判断 | 不明 | ★★★ |
| マリン・サバイバル(漂流) | 洋上で船が沈没。救助が来るまでの海上生存を目指す | 不明 | ★★☆ |
② 危機管理・判断系(3選)
「誰を・何を救うか」という倫理的な判断を含む、やや高難度のシナリオです。個人の価値観が鮮明に出やすく、チームでの合意が難しいため、研修の中盤〜後半に向いています。
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| ゲーム名 | シナリオ概要 | 特徴 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 船長の決断 | 沈む船の救命ボートに乗せる人を決める | 倫理的ジレンマが核心 | ★★★ |
| 見えない侵略者 | 新型ウイルス感染拡大。家族でどう対処するか | 現実的な危機想定 | ★★☆ |
| ZOMBI PANDEMIC(ゾンビパンデミック) | ショッピングセンターでゾンビから生き延びる | エンタメ要素あり・導入しやすい | ★★☆ |
③ 価値観系(4選)
明確な正解がなく、参加者の「価値観の違い」に気づかせることが目的のシナリオ。研修の締めくくりや、心理的安全性を高めるフェーズで活用されます。
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| ゲーム名 | シナリオ概要 | 学べること | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 無人島の出来事 | 無人島に流れ着いた5人を「最も許せない行動順」に並べる | 価値観の多様性への気づき | ★★☆ |
| 小さな泥棒 | 道徳的な問いを含む物語について合意を目指す | 善悪の基準の違いに気づく | ★★☆ |
| 聖夜のケーキ店 | クリスマスイブのケーキ店を舞台にした複雑なシナリオ | 参考解答なし・完全な合意形成力が求められる | ★★★ |
| 生存者たち | 1972年の飛行機遭難事故(実話)を題材にした討議 | 倫理・生存判断への深い議論 | ★★★ |
④ 思考実験・倫理系(2選)
哲学や企業倫理研修で使われる、古典的なジレンマシナリオです。コンセンサスゲームとして行うことで「正解を決める難しさ」ではなく「なぜそう判断するかを共有する体験」に変わります。各シナリオの背景に興味がある方は「有名な思考実験10選」も参考にどうぞ。
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| ゲーム名 | シナリオ概要 | 特徴 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 暴走トロッコ問題 | 暴走する路面電車の分岐点で、どちらに向けるかを決める | 変形バリエーションも複数あり | ★★★ |
| 6人の患者と薬 | 1種類しかない薬を6人のうち誰に投与するか決める | 医療倫理・資源配分の観点 | ★★★ |
⑤ 防災・実務系(2選)
実際の業務や生活に近い場面設定で、BCP(事業継続計画)研修や防災訓練にも活用されるシナリオです。
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| ゲーム名 | シナリオ概要 | 適した研修 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 台風直撃!避難の判断 | 台風接近時の避難行動を家族やチームで合意して決める | 防災研修・地域向け | ★☆☆ |
| オフィスビル火災 | 職場での火災発生時の対応手順についてチームで合意する | BCP・安全衛生研修 | ★☆☆ |
NASAゲーム(月面遭難)の詳細
コンセンサスゲームの中でも最も有名で使用頻度が高いのがNASAゲーム(月面遭難)です。宇宙という非日常のシナリオが、参加者の先入観を外し、純粋な議論を引き出すのに向いています。
シナリオ
宇宙飛行士を乗せた月面探査船が月に不時着し、本来の着陸予定地点から200マイル離れてしまった。船は修理不可能で、帰還するには母船まで歩いて移動するしかない。船内に残っていた15個のアイテムを、重要度の高い順に並べよ。
15個のアイテムと参考解答
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| 順位 | アイテム | 根拠(要約) |
|---|---|---|
| 1 | 酸素ボンベ×2本 | 月面には空気がなく、生命維持の最優先 |
| 2 | 飲料水(19L) | 熱・過労による水分消耗への対応 |
| 3 | 月面用星座表 | 月面での航行・方向確認に必須 |
| 4 | 宇宙食 | エネルギー確保 |
| 5 | 太陽電池FM送受信機 | 母船との通信・救助要請 |
| 6 | 15mナイロン製ロープ | 地形移動の補助・断崖への対応 |
| 7 | 救急箱(注射器・ビタミン剤) | 負傷時の応急処置 |
| 8 | パラシュート布 | 太陽光・熱線の遮断に活用 |
| 9 | 自動膨張救命ボート | CO₂ボンベ内蔵・移動補助にも転用可 |
| 10 | 照明弾(遭難信号用) | 近づいた母船への視覚的な信号送信 |
| 11 | 粉ミルク×1ケース | 食料代替・水に溶かして栄養補給 |
| 12 | 45口径ピストル×2丁 | 発射の反動を推進力に使用できる |
| 13 | ソーラー発電式携帯ヒーター | 月の夜は−170℃。昼間は太陽熱で代替可 |
| 14 | 方位磁石 | 月に磁場はほぼなく、機能しない |
| 15 | 箱入りマッチ | 月面に酸素がないため着火不能 |
※この順位は「母船まで歩いて移動する」戦略を前提にした参考解答の一例です。研究機関・研修プログラムによって多少異なる場合があります。大切なのはスコアより「なぜその順位にしたか」をチームで語り合うプロセスです。
個人スコアとグループスコアの比較
ゲーム終了後に「個人の解答と参考解答の差分(誤差の合計)」を算出し、グループ全体の誤差の合計が個人の平均誤差より小さければ、チームの合意形成が機能したことを示します。この比較が、「チームで話し合うことの意義」を数字で実感させてくれます。
進め方の基本フロー
所要時間の目安
全体で50〜90分が標準的です。
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| ステップ | 内容 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1. 準備・ルール説明 | シナリオ読み上げ・ルール確認 | 5分 |
| 2. 個人ワーク | 個人で優先順位を決定 | 10〜15分 |
| 3. グループ協議 | チームで合意形成 | 15〜30分 |
| 4. 答え合わせ | 参考解答と比較・スコア算出 | 10分 |
| 5. 振り返り | プロセスの振り返り・学びの言語化 | 10〜15分 |
役割分担の例
グループ(4〜6人が理想)内で以下の役割を設けると、議論がスムーズに進みます。
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| 役割 | 担当内容 |
|---|---|
| ファシリテーター | 意見をまとめ、全員が発言できるように場を作る |
| 書記 | 合意した内容をリアルタイムで記録する |
| タイムキーパー | 残り時間を全員に伝え、議論のペースを管理 |
| 発表者 | グループの解答と、そう決めた理由を発表する |
ファシリテーターのコツ
戦略の合意を最初に
アイテムの順位を決める前に、「どんな方針で生き延びるか」をチームで先に合意させるのが最大のコツです。
- NASAゲームなら:「母船まで歩く」か「その場で救助を待つか」
- 砂漠サバイバルなら:「徒歩移動する」か「定位置で水を探すか」
方針が定まると、各アイテムの評価基準が自然と統一され、議論の質が上がります。
よくあるトラブルと対処
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| トラブル | 対処法 |
|---|---|
| 特定の人が話しすぎる | 「他にどう思う人はいますか?」と全体に開く |
| 議論が堂々巡りになる | 合意できた点を確認し先に進める |
| 沈黙が続く | 「あなたはどれを一番重要だと思いますか?」と個別に聞く |
| 時間が足りない | 「上位5位だけ先に確定しよう」と提案する |
振り返りで聞くと効果的な問い
- 「意見が合わなくて一番難しかったのはどのアイテム?」
- 「誰かの意見で気持ちが変わった瞬間はあった?」
- 「どうすればもっとスムーズに合意できたと思う?」
腕試しクイズ(全5問)
NASAゲームとコンセンサスゲームの知識を試してみましょう!
まとめ
コンセンサスゲームの定番お題17選をカテゴリ別に紹介しました。
- 脱出・サバイバル系(6選):NASAゲームを筆頭に参考解答があり、初めての研修にも使いやすい
- 危機管理・価値観・倫理系(9選):正解のない設問で、価値観の違いを体験できる
- 防災・実務系(2選):現場に近いシナリオで、BCP・安全研修にも活用できる
ゲームの目的は勝敗ではなく、「合意形成のプロセスを体験すること」です。「なぜそうしたいのか」を言葉にし、他者の考えと真剣にすり合わせる体験が、日常のチームワークをじわじわ変えていきます。
参考・出典
- Human Synergistics International「Desert Survival Situation」https://www.hsinternational.com/products/desert-survival-situation/ (2026-10-21参照)
- 合意形成ゲームの理論的背景については、組織開発・グループダイナミクスの研究(1960〜70年代の米国心理学・経営学研究が起源)を参照。NASAゲームのアイテム優先順位は研究者・教材提供者により多少異なります。