
手紙を書くとき、書き出しの言葉や結びの表現に迷った経験はないでしょうか。「拝啓の後には何を書くのか」「この時期に合う時候の挨拶が分からない」──そんな疑問に対応できるよう、頭語・結語のペア表、1月から12月までの時候の挨拶(漢語調・口語調)、目的別の結びの慣用表現、ビジネスメールの定型を一覧にまとめました。書き方に困ったときにすぐ使えるリファレンスとしてご活用ください。
手紙の書き出しの構成
手紙の前文は、大きく次の流れで組み立てます。
- 頭語(拝啓・謹啓など)
- 時候の挨拶(季節感を伝える一文)
- 相手の健康や活躍を喜ぶ言葉(「ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」など)
- 日頃の感謝や厚誼に対する一文
そして、主文(本題)を経て、末文の「結びの言葉→結語」で締めくくります。
頭語と結語のペア一覧
頭語と結語は必ずペアで使います。「拝啓」で始めたら「敬具」で結ぶ、「謹啓」で始めたら「謹白(謹言)」で結ぶ──というルールがあります。組み合わせを間違えると失礼になることもあるため、下表で確認してから使いましょう。
← 横にスクロールできます →
| 頭語 | 読み | 使い場面 | 対応する結語 | 結語の読み |
|---|---|---|---|---|
| 拝啓 | はいけい | 一般的な手紙全般・改まった相手に | 敬具 | けいぐ |
| 謹啓 | きんけい | 特に礼儀を重んじる改まった場面 | 謹白・謹言 | きんぱく・きんげん |
| 前略 | ぜんりゃく | 急ぎの連絡・親しい相手への略式 | 草々 | そうそう |
| 急啓 | きゅうけい | 急用で前文を省いて書く場合 | 草々・不一 | そうそう・ふいつ |
| 拝復 | はいふく | 相手からの手紙への返信 | 敬具 | けいぐ |
| 謹復 | きんぷく | 改まった丁寧な返信 | 謹白 | きんぱく |
| 再啓 | さいけい | 同じ相手に再度・追って手紙を書く場合 | 敬具 | けいぐ |
| 一筆申し上げます | — | 改まった女性の書き出し | かしこ・敬白 | — |
かしこ は女性だけが使える結語で、どの頭語とも組み合わせられる万能な表現です。男性は使いません。
不一(ふいつ)は「言い尽くせなかった」という意味をこめた略式の結語で、急いで書いた手紙に使います。
月別・時候の挨拶一覧(漢語調・口語調)
時候の挨拶は、季節の言葉を文語的に表した漢語調と、日常語に近い口語調の2種類があります。漢語調はビジネス・改まった場面に、口語調はやや親しい相手や丁寧すぎない手紙に向いています。
← 横にスクロールできます →
| 月 | 季節・時期 | 漢語調の書き出し例 | 口語調の書き出し例 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 初春・新春 | 初春の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます | 寒さがひとしお身にしみる毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか |
| 2月 | 余寒・梅花 | 余寒の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます | 立春とは名ばかりの寒い日々が続いておりますが |
| 3月 | 早春・春暖 | 春暖の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます | 日ごとに春の気配が感じられるようになってまいりましたが |
| 4月 | 陽春・花見月 | 陽春の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます | 桜の花もほころぶ春らしい季節となりましたが |
| 5月 | 新緑・薫風 | 薫風の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます | 緑もまぶしく清々しい季節となりましたが |
| 6月 | 梅雨・向暑 | 向暑の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます | 梅雨入りし、うっとうしい日々が続いておりますが |
| 7月 | 盛夏・猛暑 | 盛夏の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます | 連日厳しい暑さが続いておりますが |
| 8月 | 残暑・晩夏 | 残暑の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます | 残暑厳しい折、いかがお過ごしでしょうか |
| 9月 | 初秋・清涼 | 初秋の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます | 朝晩はめっきり涼しくなってまいりましたが |
| 10月 | 錦秋・秋冷 | 錦秋の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます | 秋もすっかり深まり、木々が色づく季節となりましたが |
| 11月 | 晩秋・霜降 | 晩秋の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます | 朝晩はめっきり寒くなってまいりましたが |
| 12月 | 師走・寒冬 | 師走の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます | 年の瀬も押し迫り、何かとご多忙のことと存じますが |
漢語調の「時候の候」について
漢語調に登場する「〇〇の候(こう)」の「候」は「そうろう」でなく「こう」と読みます。「暑さの折、いかがお過ごしでしょうか」のように「候」を使わない言い回しでも問題ありません。
また、漢語調で使う「ご清祥(ごせいしょう)」「ご清栄(ごせいえい)」「ご繁栄(ごはんえい)」は使い分けが必要です。
← 横にスクロールできます →
| 表現 | 対象 |
|---|---|
| ご清祥 | 相手個人の健康・幸せを祝う言葉(個人宛て) |
| ご健勝 | 相手の健康を喜ぶ(個人宛て) |
| ご清栄 | 繁栄・活躍を喜ぶ(個人・法人どちらにも) |
| ご繁栄 | 事業・組織が栄えていることを喜ぶ(法人・団体宛て) |
結びの慣用表現一覧
主文(本題)を終えた後の「結びの言葉」は、結語(敬具など)の直前に置きます。目的別に整理しています。
相手の健康・ご多幸を祈る言葉
- 末筆ながら、ますますのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
- 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
- 季節の変わり目でございますので、どうかご自愛くださいますようお願い申し上げます。
- 酷暑(寒さ)の折、くれぐれもご自愛のほどお願い申し上げます。
感謝・日頃の厚情への礼
- 今後とも変わらぬご厚誼のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
- 引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
- 何かとお世話になりましたこと、改めてお礼申し上げます。
- ご芳情を賜り、重ねて御礼申し上げます。
用件を結ぶ言葉
- 取り急ぎ、まずはお礼まで申し上げます。
- まずはご連絡まで申し上げます。
- 略儀ながら書中にてご挨拶申し上げます。
- 乱筆乱文お許しください。まずは用件のみにて失礼いたします。
返信・連絡をお願いする言葉
- ご多用中誠に恐縮ですが、ご返事いただけますと幸いです。
- ご一報いただければ幸いに存じます。
- よろしければ、折り返しご連絡いただけますと大変助かります。
ビジネスメールの書き出し・結び定型
メールでは手紙のような前文・頭語は省くのが一般的ですが、改まった内容では手紙に準じた表現を使うこともあります。
メールの書き出し
← 横にスクロールできます →
| 場面 | 書き出し例 |
|---|---|
| 基本(毎回の連絡) | お世話になっております。〇〇(社名・氏名)です。 |
| 初めての相手 | 初めてご連絡させていただきます。〇〇と申します。 |
| お礼の書き出し | 先日はお時間をいただき、ありがとうございました。 |
| 問い合わせ | 突然のご連絡、失礼いたします。〇〇について確認したく、ご連絡いたしました。 |
| 返信 | ご連絡いただきありがとうございます。 |
メールの結び
← 横にスクロールできます →
| 場面 | 結び例 |
|---|---|
| 基本 | 何卒よろしくお願いいたします。 |
| 確認依頼 | ご確認のほど、よろしくお願いいたします。 |
| お願い | ご多忙の折、誠に恐縮ですが、よろしくお願いいたします。 |
| 返信期待 | ご検討いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。 |
| お礼 | 引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 |
よくある間違いとポイント
頭語・結語のペアを間違えない
「拝啓→謹白」「謹啓→敬具」のように、格の異なるペアを混在させるのは誤りです。下記の組み合わせは誤用となるため注意してください。
← 横にスクロールできます →
| 誤った組み合わせ | 正しい組み合わせ |
|---|---|
| 拝啓〜謹白 | 拝啓〜敬具、謹啓〜謹白 |
| 前略〜敬具 | 前略〜草々 |
| 謹啓〜草々 | 謹啓〜謹白または謹言 |
「前略」は目上の人には使わない
「前略」は「前文を省略します」という意味で、時候の挨拶などを省いた略式の頭語です。親しい相手や急いでいるときに使いますが、目上の方や改まった手紙には適しません。
「かしこ」は女性だけが使える
「かしこ」は女性専用の結語で、男性は使いません。「恐れ多い」という意味を持ち、どの頭語にも対応できる便利な表現です。女性の場合は「敬具」の代わりに「かしこ」とするだけで柔らかい印象になります。
時候の挨拶の二つの使い方
時候の挨拶の後に続ける言葉として、「候」で終わるパターンと「〜ことと存じます」で終わるパターンがあります。
- 「初秋の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」
- 「秋の深まりを感じるころとなりましたが、ますますご健勝のことと存じます。」
どちらも正しいので、書く相手や文体に合わせて選びましょう。
まとめ
手紙の書き出しと結びは、頭語と結語を正しいペアで使い、季節に合った時候の挨拶を添えるのが基本です。漢語調は改まった場面に、口語調は少しカジュアルな相手に向いています。結びの慣用表現は「何を伝えたいか(健康を祈る・感謝する・用件を結ぶ)」を軸に選ぶと、自然な文章になります。ビジネスメールでも丁寧な書き出し・結びを意識するだけで、相手に与える印象が格段に変わります。
腕試しクイズ(全5問)
頭語と結語のペア知識を試してみましょう。