干支の順番と由来|なぜ猫が入っていない?12動物の伝説まとめ

なぜ干支(十二支)はネズミから始まるのか、なぜ猫は入っていないのか――子どものころに抱いたその疑問、大人になってもちゃんと答えられる人は案外少ないものです。十二支の順番には、ある日行われた「神様の競争」の伝説が関わっています。この記事では12匹の動物それぞれのエピソード、猫が入れなかった理由、そして龍が架空生物なのに選ばれた理由まで、干支の由来にまつわる伝説を徹底的に解説します。

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十二支とは?「干支」との違いも整理

十二支(じゅうにし)とは、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12の記号のことで、年・月・日・時刻・方位を表すために古代中国で生まれた体系です。起源は殷王朝(紀元前1600年〜紀元前1046年)にさかのぼるとされ、当初は動物とは無関係に、草木の成長サイクルを表す記号として使われていました。

干支(えと)は本来、十干(じっかん:甲・乙・丙…)と十二支を組み合わせた「六十干支」の体系を指します。十干十二支の全60通りの組み合わせを「干支」と呼ぶのが正確な使い方ですが、現代の日本では十二支だけを指して「干支」と呼ぶことが一般的です。

動物が十二支に結びついたのは、中国の漢代(紀元前206年〜220年)ごろとされています。庶民が12の記号を覚えやすくするために、身近な動物を当てはめたのが始まりと考えられています。

干支・十干十二支の一覧(読み方・意味・方位)については「干支・十干十二支一覧|読み方・意味・方位まとめ【全60種】」で詳しく解説しています。

神様の競争伝説|順番はこうして決まった

十二支の順番が決まった理由として、東アジアに広く伝わるのが「神様の元日競争」の伝説です。

昔々、天の神様(天帝)が動物たちに「元日の朝、私のもとへ真っ先に挨拶に来た者から順に、12番まで暦の守護者にしよう」と宣言しました。この知らせを聞いた動物たちは、皆いっせいに神様の宮殿を目指して走り出しました。

途中には大きな川が立ちはだかり、動物たちはそれぞれの知恵と体力でこれを乗り越えていきます。賢い動物は仲間の力を借り、ずる賢い動物はその機転を活かし、そして不運な動物は何かのきっかけで遅れをとりました。この競争の顛末が、子・丑・寅…という十二支の順番の「伝説上の理由」になっています。

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12動物それぞれの到着エピソード

① 子(ね)・ネズミ:一番小さくて一番ずる賢い

ネズミは体が小さく、足も速くありません。しかし並外れた頭の良さで1位を手にしました。「競争当日の朝に出発しよう」と考えていたネズミは、前日の夜から準備を始めた牛の姿を見て作戦を変更します。こっそり牛の背中にしがみつき、神様の宮殿のゴール直前で飛び降りて1着でゴール。「ずる賢さ」の象徴として語られると同時に、「小さくとも機転で大きなものに勝てる」という教訓としても解釈されています。

② 丑(うし)・ウシ:勤勉な努力家

元日の深夜から歩き始めた牛は、ゆっくりながらも確実に進み2位でゴールしました。ネズミに先を越されたとはいえ、大きな体で川を渡り、着実に歩き続けた姿は「誠実・努力・勤勉」の象徴とされています。日本でも昔から「うしとし」に生まれた人は粘り強いと言われますが、その原点はこの伝説にあります。

③ 寅(とら)・トラ:速いが川に手こずった

大柄で俊足のトラは、当然1位を狙っていました。ところが川の流れに翻弄され、懸命に泳いでなんとか3位でゴール。この「強いのに苦労する」という要素が、寅年生まれのイメージ(勇猛・情熱的だが向こう見ずな一面も)につながっているとも言われます。

④ 卯(う)・ウサギ:川を丸太で渡った

ウサギは泳ぎが得意ではありませんが、川に浮かぶ丸太を見つけ、飛び跳ねながら川を渡って4位に入りました。一説には神様の助けを得たとも語られます。素早い判断力と行動力を示すエピソードで、ウサギが「機転・敏捷さ」の象徴とされる由来のひとつです。

⑤ 辰(たつ)・龍:途中で善行を積んで遅れた

もともと龍は風を起こし空を飛べる存在で、1位を取れるはずでした。しかし途中で雨を降らせてほしいと頼まれた村のために雨を降らせ、さらにウサギが渡れずにいた川で助力するなど、善行を積んで遅れて5位となりました。「強者があえて力を使わない」という龍の慈悲深さを語る伝説で、龍のイメージ(威厳・慈悲・神秘)を形成しています。

⑥ 巳(み)・ヘビ:馬の足に隠れてゴール

ヘビは馬の足にひそかに巻きついてゴールに近づき、馬がゴールする寸前に飛び出して6位を獲得したとされます。馬はゴール直前にヘビに驚いて後退し、7位になってしまいました。「冷静・忍耐・直観」といった蛇のイメージの裏に、こうしたしたたかさの伝説があります。

⑦ 午(うま)・ウマ:ゴール寸前でヘビに驚いた

前述のとおり、馬はヘビに驚いて後退し7位になりました。本来なら6位だったはずで、馬の「悔しい7位」が伝説の見どころのひとつでもあります。「活発・情熱・自由」のイメージを持つ午年ですが、競争では一瞬の隙が明暗を分けたとも言えます。

⑧ 未(ひつじ)・ヒツジ:仲間と協力して渡河

ヒツジ・サル・ニワトリは途中で竹のいかだを見つけ、三者が力を合わせて川を渡りました。この「三つ巴の協力」が評価され、神様から「チームワークのお手本」として称えられたという説もあります。ヒツジは8位でゴールし、「温厚・協調性」のシンボルになっています。

⑨ 申(さる)・サル:ヒツジ・ニワトリと共にゴール

ヒツジとニワトリとともにいかだで渡河した後、9位でゴール。一説では、途中で犬とけんかして遅れたとも伝えられています(この伝説が「犬猿の仲」の語源とされます)。

⑩ 酉(とり)・ニワトリ:いかだを見つけた功労者

ヒツジとサルに川渡りのいかだのアイデアを提案したのがニワトリだとされています。それでも10位というのは少し損をした印象ですが、「まとめ役」「アイデアマン」のイメージは現代でも続いています。

⑪ 戌(いぬ)・イヌ:川でお風呂に入って遅れた

犬はもともと足が速く、本来なら上位に入れたはずです。ところが途中で川があまりに気持ちよく、泳いで遊んでしまい(あるいはサルとけんかして時間を無駄にし)、11位でゴール。「誠実・忠実」の象徴とされる戌年ですが、競争では意外に遊び好きな一面を見せました。

⑫ 亥(いのしし)・イノシシ:最後まで猛然と駆けた

12位でゴールしたイノシシは「脱落しなかった最後の動物」として、その一直線な走りっぷりから「猪突猛進(ちょとつもうしん)」の象徴になりました。イノシシが最後なのは「途中でお腹が空いてドングリを食べていた」「川を渡れなくて時間がかかった」など、地域によって異なる伝説があります。

なぜ猫は十二支に入れなかったのか

十二支に猫がいないことを不思議に思う人は多いでしょう。伝説上の理由として最も広く伝わるのは「ネズミに騙された」という話です。

競争の知らせを聞いたネズミは、仲良しだった猫に「競争は1月2日の朝だよ」と1日遅れの情報を教えました。素直に信じた猫は1月2日の朝に出発し、神様のもとに到着したときにはすでに競争は終わっていました。以来、猫はネズミを恨んで追いかけるようになった――これが「猫がネズミを追いかける理由」の伝説的な説明にもなっています。

ただし、これはあくまで後付けの伝説です。歴史的には、十二支が中国から朝鮮半島・日本へ伝わった時代(遅くとも5〜6世紀)、猫はまだ日本に存在しませんでした。猫が日本に渡ってきたのは奈良時代(8世紀)以降とされており、十二支が定まった時点で猫を組み込む余地がなかったというのが実態に近いでしょう。「猫を入れなかった理由」を説明するために、のちにネズミとの伝説が作られたと考えられています。

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なぜ龍だけが架空の生き物なのか

十二支の中で、辰(龍)だけが実在しない架空の生き物です。これはなぜでしょうか。

古代中国では、龍(竜)は実在の聖なる生き物として信じられていました。雨を呼び、河川を支配し、天子(皇帝)の権威を象徴する存在として崇められており、「架空の動物」という認識は当時ありませんでした。龍の伝説は大型爬虫類(ワニ・大型ヘビ)や恐竜の化石から生まれたとする説もあり、かつての人々にとっては「見たことはないが、実在するはずの生き物」だったのです。

このため、十二支に龍が加わることに当時の人々は違和感を覚えなかったと考えられています。現代でも中国・日本・韓国で龍は文化的に重要な位置を占めており、十二支の中でも特別な存在感を放つ理由のひとつと言えるでしょう。

世界の十二支|ベトナムには猫年がある

十二支は中国を起源として、アジア各地に広まりました。日本・中国・韓国では同じ動物の組み合わせが基本ですが、ベトナムではいくつかの動物が異なります。

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十二支(順) 日本・中国・韓国 ベトナム
1番目(子) ネズミ ネズミ
2番目(丑) ウシ 水牛
3番目(寅) トラ トラ
4番目(卯) ウサギ 猫
5番目(辰) 龍 龍
6番目(巳) ヘビ ヘビ
7番目(午) ウマ ウマ
8番目(未) ヒツジ ヤギ
9番目(申) サル サル
10番目(酉) ニワトリ ニワトリ
11番目(戌) イヌ イヌ
12番目(亥) イノシシ ブタ

ベトナムで4番目が「猫」になっている理由としては、古代中国語でウサギを指す発音「マオ(māo)」が、ベトナム語で猫を意味する「メオ(mèo)」に近かったため、伝承の過程で混同されたという説が有力です。このため、日本では「卯年(うさぎ年)」に当たる年が、ベトナムでは「猫年」になります。「十二支に猫がいないのは日本の話で、ベトナムには猫年がある」というのは、干支に関する豆知識のなかでも特に反応がよいトリビアです。

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干支にまつわる豆知識

「犬猿の仲」は干支の伝説から

「仲の悪い二者」を表す慣用句「犬猿の仲」は、神様の競争伝説でイヌとサルがレース中にケンカをしたことに由来するとされています。この争いにニワトリが間に入って仲裁したという話もあり、「犬猿の仲に鶏が仲裁」という形で語られることもあります。

「猪突猛進」はイノシシの走り方

一直線に突き進む様子を表す「猪突猛進(ちょとつもうしん)」は、イノシシが方向転換が苦手で一目散に走り続けることから来ています。伝説でも最後まで猛然と走り続けたイノシシの姿が重なります。

「午前・午後」は十二支の時刻表現

現代語として残る「午前」「午後」の「午」は十二支の午(うま)です。十二支は方位だけでなく時刻にも使われており、「午の刻」はおおよそ正午(11時〜13時)を指しました。「午の刻の前=午前、午の刻の後=午後」が語源です。

十干十二支と陰陽五行の対応では、各動物と五行・方位・色の関係を詳しく解説しています。

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まとめ

子から亥まで12匹の順番には、神様の競争伝説という物語があり、各動物の個性やエピソードが順位と結びついています。猫が入れなかったのはネズミに騙されたという伝説が有名ですが、歴史的には伝来の時代に猫が日本にいなかったことが実態に近い理由です。十二支は約2000年の歴史を持つ体系で、「犬猿の仲」「猪突猛進」「午前・午後」など、現代語にも静かに生き続けています。

腕試しクイズ(全5問)|十二支の伝説
全5問。「採点する」で正解数と解説が表示されます。
第1問 ネズミ(子)が十二支の1位になれた理由は?

第2問 猫が十二支に入れなかった「伝説上の理由」として最も広く伝わる説は?

第3問 十二支の中で唯一の架空(実在しない)の生き物は?

第4問 ベトナムの十二支では、日本の「卯(うさぎ)」の年に当たる動物は?

第5問 慣用句「犬猿の仲」の語源として伝わる十二支の逸話は?

参考・出典
- 荒川紘『十干十二支の歴史』(信濃毎日新聞社)
- 諸橋轍次『大漢和辞典』(大修館書店)
- 国立国語研究所「語源の研究」資料

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