
天照大御神(アマテラス)・スサノオ・イザナギ・イザナミ——日本神話には、個性豊かな神々が数多く登場します。古事記と日本書紀に記されたその物語は、日本人の自然観・世界観の根底をなしてきた文化的遺産です。本記事では、古事記・日本書紀の違いから天地開闢・国生み・天岩戸・国譲り・天孫降臨まで、日本神話の主要な物語と15柱の主要神を分かりやすくまとめました。
世界の主要な神話体系を一覧で知りたい方は、こちらも参考にどうぞ。
→ 世界の神話一覧|主要31神話体系の特徴・神々・物語まとめ
古事記・日本書紀とは——日本神話の2つの源典
日本神話の出典は主に「古事記」と「日本書紀」の2冊。いずれも奈良時代初期に成立した日本最古の歴史書です。
古事記(712年成立)は、稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗誦していた帝紀・旧辞を、太安万侶(おおのやすまろ)が筆録したもの。和文(変体漢文)で記され、神話・伝承の保存を主目的としています。
日本書紀(720年成立)は、舎人親王(とねりしんのう)らが編纂した国際向けの正史。純漢文で書かれており、中国・朝鮮に向けて日本の権威を示す目的がありました。
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| 項目 | 古事記 | 日本書紀 |
|---|---|---|
| 成立年 | 712年(和銅5年) | 720年(養老4年) |
| 編纂者 | 太安万侶 | 舎人親王ら |
| 目的 | 皇室の由緒・伝承の保存 | 国際的な正史の記録 |
| 言語 | 変体漢文(和文寄り) | 純漢文 |
| 構成 | 上中下 3巻 | 30巻 |
| 特徴 | 神話・物語中心 | 記録・正式性重視 |
両書は同じ神話を題材にしますが、細部に違いがある場合も多くあります。「どちらが正しい」ではなく、「2つの視点から日本神話を伝える書物」として読むのが適切です。
神代の物語の流れ
日本神話の物語は大きく「神代(かみよ)」と「人代(ひとよ)」に分かれます。神代は神々の物語、人代は初代天皇・神武天皇以降の歴史的な物語です。以下では、神代の主な出来事を時系列で解説します。
天地開闢(てんちかいびゃく)——世界の始まり
天と地が分かれる以前、宇宙は卵のように混沌としていました。その中から軽いものが上昇して「天」となり、重いものが沈んで「地」となります。
この天地創造のとき最初に現れた3柱を「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼びます。
- 天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)——宇宙の中心・主宰神
- 高御産巣日神(タカミムスビノカミ)——万物を生み育てる神
- 神産巣日神(カミムスビノカミ)——同じく生命・創造を司る神
この3柱は姿を現すことなく身を隠した「独神(ひとりがみ)」とされます。その後も独神が2柱生まれ、合計5柱を「別天津神(ことあまつかみ)」と呼びます。
イザナギとイザナミの国生み
別天津神のあと、さらに7世代の神々(神世七代)が生まれます。最後に誕生したのが、国土創造を命じられた夫婦神・伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。
2神は「天の浮橋」に立ち、天沼矛(あめのぬぼこ)で海をかき回しました。矛を引き上げたときにしたたった塩が積もって島(淤能碁呂島)となり、そこを拠点に淡路島・四国・九州・本州などの大島を次々に生み出していきます(国生み)。
しかし、火の神・迦具土神(カグツチ)を産んだことでイザナミはその炎に焼かれて命を落としてしまいます。嘆き悲しんだイザナギは亡き妻を連れ戻そうと黄泉国(よみのくに)を訪れますが、すでに腐敗していたイザナミの姿を見て逃げ帰りました。
イザナギの禊——三貴子の誕生
黄泉国の穢れを払うため、イザナギは阿波岐原(あわぎはら)で禊をおこないます。このとき3柱の偉大な神が生まれました——「三貴子(みはしらのうずのみこ)」です。
- 左目を洗って → 天照大御神(アマテラスオオミカミ)——太陽の女神・高天原を治める
- 右目を洗って → 月読命(ツクヨミノミコト)——月の神・夜の国を治める
- 鼻を洗って → 須佐之男命(スサノオノミコト)——嵐・海の神
三貴子誕生は、日本神話のなかでも特に重要な場面のひとつです。
天岩戸(あまのいわと)——太陽が消えた日
スサノオが高天原で乱暴を働いたことで、アマテラスは天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまいます。太陽が失われた世界は暗闇に包まれ、作物は枯れ、禍事が相次ぎました。
困り果てた八百万の神々は岩戸の前で宴を開きます。天鈿女命(アメノウズメノミコト)の激しい踊りに神々が爆笑したことを不思議に思ったアマテラスが岩戸を少し開けたとき、屈強な天手力男神(アメノタヂカラオ)が力いっぱい戸を引き開け、世界に光が戻りました。
この出来事から、天鈿女命は芸能の神として、天手力男神は力の神として祀られています。
スサノオとヤマタノオロチ
高天原を追われたスサノオは出雲国へ降り立ちます。そこで8つの頭と8つの尾を持つ大蛇ヤマタノオロチに娘を食べられ続けている老夫婦と出会います。
スサノオはヤマタノオロチを強い酒で酔わせて退治し、その尾から「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を発見。これが後に三種の神器の一つ「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれる名剣です。
大国主命(オオクニヌシ)の国づくり
スサノオの子孫にあたる大国主命(おおくにぬしのみこと)は、数々の試練を乗り越えて葦原中国(地上の世界)を発展させました。因幡の白兎を助けたエピソードでも有名で、「縁結び」の神として今も出雲大社に祀られています。
国譲り——天からの要請
アマテラスは自分の子孫に地上を治めさせようと、大国主に「国を譲れ」と迫ります。武神・建御雷神(タケミカヅチノカミ)と天鳥船神(アメノトリフネ)が遣わされ、交渉の末、大国主は国を譲ることを承諾しました。
天孫降臨——ニニギノミコトが地上へ
アマテラスの孫・邇邇芸命(ニニギノミコト)が、三種の神器(八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣)を携えて日向国(現在の宮崎県)の高千穂峰に降り立ちます。これが「天孫降臨」と呼ばれる出来事です。
神武天皇——初代天皇の即位
ニニギのひ孫・神武天皇(じんむてんのう)は、日向から東征を行い(神武東征)、大和の地(奈良)で初代天皇として即位します。これが日本という国の始まりとされる神話上の出来事です。
主要な神様15柱一覧
日本神話に登場する主な神様を一覧にまとめました。
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| 神名 | 読み | 主な神格・役割 | 主な祀られる神社 |
|---|---|---|---|
| 天照大御神 | アマテラスオオミカミ | 太陽・高天原の最高神 | 伊勢神宮内宮 |
| 須佐之男命 | スサノオノミコト | 嵐・海・勇気の神 | 八坂神社・須佐神社 |
| 月読命 | ツクヨミノミコト | 月・夜の国を治める神 | 月読神社 |
| 伊邪那岐命 | イザナギノミコト | 国生みの父神 | 多賀大社・伊弉諾神宮 |
| 伊邪那美命 | イザナミノミコト | 国生みの母神・黄泉の神 | 花窟神社・伊弉冉神社 |
| 大国主命 | オオクニヌシノミコト | 縁結び・国づくりの神 | 出雲大社 |
| 天鈿女命 | アメノウズメノミコト | 芸能・笑い・縁結びの神 | 椿大神社・佐瑠女神社 |
| 建御雷神 | タケミカヅチノカミ | 雷・武神・国譲りの交渉役 | 鹿島神宮・春日大社 |
| 邇邇芸命 | ニニギノミコト | 天孫降臨・農業の祖神 | 霧島神宮 |
| 天手力男神 | アメノタヂカラオノカミ | 力・武道・スポーツの神 | 戸隠神社・手力雄神社 |
| 少名毘古那神 | スクナビコナノカミ | 医療・酒造・温泉の神 | 少彦名神社(大阪)・酒列磯前神社 |
| 宇迦之御魂神 | ウカノミタマノカミ | 稲・食物・農業の神 | 伏見稲荷大社 |
| 木花之佐久夜毘売 | コノハナサクヤヒメ | 花・富士山・美の神 | 富士山本宮浅間大社 |
| 大物主神 | オオモノヌシノカミ | 農業・疫病除け・縁結び | 大神神社(三輪山) |
| 天之御中主神 | アメノミナカヌシノカミ | 宇宙の中心・最初の神 | 水天宮・亀戸天神社 |
各地の神社に祀られている神様も、古事記・日本書紀の神話に登場する神々とつながっています。参拝の際に物語を知っていると、より深く神社の由緒を感じることができます。
また、ギリシャ神話・北欧神話・エジプト神話などを含む世界252柱の神々一覧はこちらをどうぞ。
→ 世界の神話の神々252選|9神話の神の名前・神格・別名まとめ
まとめ
日本神話は、古事記(712年)と日本書紀(720年)に記された、日本独自の世界創造の物語です。天地開闢から国生み・天岩戸・ヤマタノオロチ退治・国譲り・天孫降臨へと連なる物語は、日本の自然観や信仰の根底をなしてきました。
現存する神社の多くが日本神話の神様を祀っており、物語を知るほど日本の文化や伝統がより深く見えてきます。なお、神道は現在も日本人の生活と結びついた信仰であり、神話の解釈には諸説あります。本記事の内容はひとつの参考として活用ください。