
地球上のあらゆる文明は、世界の始まりと終わり、神と人間の関係を語る「神話」を持っています。ギリシャ・北欧・エジプト・日本・インド・マヤなど、文化圏ごとに独自の神々と物語が育まれてきました。この記事では、ヨーロッパ・中東・アジア・アメリカ大陸・オセアニア・アフリカから主要31の神話体系を地域別に一覧でまとめ、各神話の主要神格・世界観・代表的な物語を解説します。
世界の主要神話体系31を一覧で
世界の神話体系を地域別にまとめました。特徴をひと目で比較できます。
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| 神話体系 | 地域・文明 | 主要な神格 | 特徴・世界観 |
|---|---|---|---|
| ギリシャ神話 | 古代ギリシャ | ゼウス・アテナ・アポロン・ポセイドン | オリュンポス十二神と英雄が活躍する人間的な神々の体系 |
| ローマ神話 | 古代ローマ | ユピテル・ミネルウァ・ユノ・マルス | ギリシャ神話を継承・拡充し帝国統治に組み込んだ |
| 北欧神話 | スカンジナビア | オーディン・トール・フレイ・ロキ | 世界樹ユグドラシルと終末「ラグナロク」を持つ |
| ケルト神話 | 西ヨーロッパ | ダグザ・ルー・モリガン・マナナン | ダーナ神族と異界ティル・ナ・ノグが中心 |
| スラブ神話 | 東ヨーロッパ | ペルン・ヴェレス・モコシュ・スヴァロジチ | 雷神と冥界神の対立を軸にした自然神信仰 |
| フィンランド神話 | フィンランド | ウコ・ヴァイナモイネン・イルマリネン | 叙事詩「カレワラ」(1835年集成)に記録された体系 |
| バルト神話 | リトアニア・ラトビア | ペルクーナス・ディエヴァス・サウレ | ヨーロッパ最後に改宗した民族の自然神信仰 |
| エトルリア神話 | 古代イタリア(トスカーナ) | ティニア・ウニ・メネルワ | ローマ神話の前身。独自の冥界観と占いの文化 |
| エジプト神話 | 古代エジプト | ラー・オシリス・イシス・アヌビス・ホルス | 死後の審判と来世への旅が中心テーマ |
| メソポタミア神話 | シュメール・バビロニア | アヌ・エンリル・マルドゥク・イシュタル | 現存最古の英雄叙事詩「ギルガメシュ」の舞台 |
| ペルシャ神話 | 古代ペルシャ | アフラ・マズダー・アンラ・マンユ | 善悪二元論(ゾロアスター教)が特徴 |
| カナン神話 | 古代カナン・フェニキア | バアル・エル・アシェラ・アスタルテ | 旧約聖書と隣接し一神教成立前の多神信仰 |
| ヒッタイト神話 | 小アジア(アナトリア) | タルフンナ・アリンニティ・テシュブ | 嵐神を中心とする古代アナトリアの体系 |
| 日本神話 | 日本(大和) | アマテラス・スサノオ・イザナギ・大国主 | 古事記・日本書紀に記録された国産みから天孫降臨 |
| インド神話 | 南アジア | ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ・インドラ | ヴェーダを源流とするヒンドゥー教の壮大な体系 |
| 中国神話 | 中国 | 盤古・女媧・玉皇大帝・西王母 | 道教・儒教と結びついた仙人・神仙の世界 |
| 朝鮮神話 | 朝鮮半島 | 環雄・檀君(タングン)・宓羲 | 天から降りた環雄の子・檀君による朝鮮建国神話 |
| チベット神話 | チベット | シェンラブ・ミウォチェ・カルマ(カルマ) | ボン教(前仏教期)の宇宙創造と神霊信仰 |
| モンゴル神話 | モンゴル・中央アジア | テングリ(天神)・エトゥゲン(大地女神) | 天(テングリ)崇拝を中心とするテングリ信仰 |
| アイヌ神話 | 北海道・樺太 | カムイ(神霊)体系・アイヌラックル | 自然のあらゆる存在をカムイ(神)とする体系 |
| 琉球神話 | 沖縄 | アマミキヨ・シネリキヨ・ニライカナイ | 女神アマミキヨによる島と人間の創造 |
| マヤ神話 | メソアメリカ | フナフプ・イシュバランケー・イツァムナー | 聖典「ポポル・ヴフ」が現存する天文学的神話 |
| アステカ神話 | メソアメリカ | ケツァルコアトル・ウィツィロポチトリ | 太陽を維持するため供犠が必要とされた世界観 |
| インカ神話 | アンデス | インティ(太陽神)・パチャママ・ワカ | 太陽崇拝と大地の女神を中心とする体系 |
| 北米先住民神話 | 北アメリカ各地 | コヨーテ(トリックスター)・大いなる精霊 | 部族によって多様な体系を持つ多元的神話 |
| イヌイット神話 | 北極圏(カナダ・アラスカ・グリーンランド) | セドナ(海の女神)・ナヌーク | 海と氷の環境に根ざした精霊信仰 |
| ハワイ神話 | ハワイ諸島 | カネ・クー・カナロア・ロノ | 火の女神ペレと兄弟神たちが織りなす島の神話 |
| ポリネシア神話 | 太平洋諸島 | マウイ・タネ・タンガロア・ヒナ | 半神マウイが島々や太陽を操る冒険譚で有名 |
| アボリジニ神話 | オーストラリア | ドリームタイムの先祖精霊たち | 「夢の時代」に先祖が大地を歩き地形を創った |
| ヨルバ神話 | 西アフリカ(ナイジェリア) | オルン・オリシャ体系(400以上の神格) | 400以上のオリシャが生活の各側面を司る多神体系 |
| バンツー神話 | 中・南・東アフリカ | ンザンビ(ムレンガ)・レザ・イマナ | 創造神を頂点に祖先霊崇拝が広がる体系 |
ヨーロッパの神話
ギリシャ神話|オリュンポス十二神と英雄の時代
ゼウスを頂点とするオリュンポス十二神が人間の世界に深く関わるのがギリシャ神話の特徴です。ヘラクレスの十二の試練・オデュッセウスの帰還・トロイア戦争など英雄譚が豊富で、神々自身も嫉妬・怒り・愛といった人間的な感情を持つことで親しみやすい体系になっています。星座の名前(射手座=ケンタウロス族など)、科学・芸術の用語(ミューズ、アトラス、カオス等)は多くがギリシャ神話に由来します。
ローマ神話|帝国が整備した神々の体系
ギリシャ神話の神々をほぼ引き継ぎながら、独自の神格(双面神ヤヌス、農業神サトゥルヌス等)を加えたのがローマ神話です。ゼウス→ユピテル、アテナ→ミネルウァ、アレス→マルスと対応します。月の英語名(January=ヤヌス、March=マルス)や惑星名(Jupiter・Mars・Venus・Saturn・Mercury)はローマ神話の神名に由来しており、現代語にも広く残っています。
北欧神話|ラグナロクと世界樹の宇宙観
オーディン・トール・ロキを中心とするアース神族が活躍する北欧神話は、世界の終末「ラグナロク」を予言に持つ点で独特です。9つの世界が枝に宿る世界樹ユグドラシル、三人の運命の女神ノルン、英雄を選ぶワルキューレなど、独自の宇宙観が発達しました。曜日の名前(Thursday=Thor's day、Wednesday=Odin/Woden's day)は北欧神話の神名に由来しています。
→ 関連:北欧神話の神々一覧|オーディン・トール・ロキ等80柱を完全網羅
ケルト神話|ダーナ神族と異界への扉
アイルランドを中心とした西ヨーロッパのケルト民族に伝わる神話です。光の神ルーや知恵の神マナナン・マク・リールなどのダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)が登場します。後にキリスト教化が進むにつれダーナ神族が地下に去り、「シー(妖精塚)」に住む妖精の原型になったという伝承が有名です。アーサー王伝説・妖精伝承もケルト神話の流れを汲んでいます。
→ 関連:ケルト神話の神々・英雄40選|ダーナ神族からガリアの神まで完全まとめ
スラブ神話・フィンランド神話・バルト神話|東欧・北欧の自然神信仰
スラブ神話は雷神ペルンと冥界の支配者ヴェレスの対立を中心に、農耕・自然を司る神々が活躍します。キリスト教化により多くの記録が失われましたが、民話や儀礼に痕跡が残っています。フィンランド神話は19世紀に叙事詩「カレワラ」として集成され、魔法の歌い手ヴァイナモイネン・鍛冶師イルマリネンらの英雄譚として知られ、J・R・R・トールキンの世界観にも影響を与えたとされます。バルト神話(リトアニア・ラトビア)はヨーロッパで最後にキリスト教化された民族の信仰で、雷神ペルクーナスと天の神ディエヴァスを中心とする自然神信仰が今日まで民俗に息づいています。また、ローマ神話の前身とされるエトルリア神話(イタリア・トスカーナ地方)は独自の冥界観と肝臓占いで知られ、ローマ宗教に多くの神格を提供しました。
中東・アジアの神話
エジプト神話|死者の書と来世への旅
古代エジプト神話は太陽神ラーを中心に、オシリスとイシスとホルスの三者が織りなす死と再生の物語が軸です。兄弟神セトに殺された農耕神オシリスが、妻イシスの魔法で復活し冥界の王となる神話は、エジプトの死生観そのものを体現しています。ジャッカルの頭を持つアヌビスが死者の審判を司り、「死者の書」が魂を来世へ導く呪文集として埋葬に用いられました。
→ 関連:世界の死生観・あの世まとめ|主要宗教・神話の死後の世界を比較
メソポタミア神話|世界最古の英雄叙事詩
シュメール・アッカド・バビロニアに伝わるメソポタミア神話は、現存する最古の叙事詩「ギルガメシュ叙事詩」の舞台として知られます。主神マルドゥクが混沌の女神ティアマトを倒して世界を創ったという「エヌマ・エリシュ」の創世神話は、後の旧約聖書の創世記にも影響を与えたと考えられています。半神半人の英雄ギルガメシュが永遠の命を求めて旅する物語は、人類共通の問いを描いた普遍的な叙事詩です。
ペルシャ神話・カナン神話・ヒッタイト神話|中東の多様な体系
ゾロアスター教に基づくペルシャ神話は、善の創造神アフラ・マズダーと悪神アンラ・マンユ(アーリマン)の宇宙的な戦いが中心テーマです。この善悪二元論は後のユダヤ教・キリスト教・イスラム教の天使と悪魔の概念に影響を与えたとされています。カナン神話は旧約聖書の舞台となった地・古代カナン(現在のイスラエル・レバノン周辺)に伝わる神話で、嵐と豊穣の神バアルと創造神エルが中心です。モノテイズム(一神教)成立の直前・隣接した多神信仰として、聖書研究と深く関わっています。ヒッタイト神話(小アジア・前2000〜1200年頃)は嵐神タルフンナを中心とする体系で、複数の「失われた神」が地下に去り世界に悪が蔓延するという物語パターンが特徴的です。
日本神話|古事記・日本書紀と国産みの物語
日本神話は712年の『古事記』と720年の『日本書紀』に体系的に記録されています。イザナギとイザナミの国産みから始まり、アマテラス(太陽)・スサノオ(嵐)・ツクヨミ(月)の三貴子の誕生、大国主命の出雲での国作り、ニニギによる天孫降臨まで、日本の国土と皇室の起源を語る壮大な物語が展開します。現在も神道の信仰に生き続けている体系です。
インド神話・中国神話・朝鮮・チベット・モンゴル神話|アジアの多様な体系
インド神話はヴェーダ(前1500年頃〜)を源流に持ち、ブラフマー(創造)・ヴィシュヌ(維持)・シヴァ(破壊)のトリムールティ(三主神)が宇宙を司ります。叙事詩「ラーマーヤナ」と「マハーバーラタ」は現代のインド文化にも深く根付いています。中国神話では巨人・盤古が混沌から天地を開き、女媧が人間を泥から創ったとされます。朝鮮神話は天から降りた環雄の子・檀君(タングン)による朝鮮(古朝鮮)建国神話を中心に、三国(高句麗・百済・新羅)それぞれの建国伝説を持ちます。チベットでは仏教伝来以前のボン教に独自の宇宙観・神霊体系があり、モンゴルのテングリ信仰は青い永遠の空「テングリ」を最高神として崇める体系でチンギス・ハーンの時代にも重要な役割を果たしました。
→ 関連:世界の神話の神様・神の名前252選|神格・別名まとめ
アメリカ大陸・オセアニア・アフリカの神話
マヤ神話・アステカ神話・インカ神話|太陽と供犠の宇宙観
マヤ文明の聖典「ポポル・ヴフ」は、神々が泥・木・そしてトウモロコシから人間を創り直した経緯を記録しています。高度な天文学・暦と神話が密接に結びつき、双子の英雄フナフプとイシュバランケーが冥界の支配者と戦う物語が有名です。アステカ神話では羽毛を持つ蛇の神ケツァルコアトルと太陽神ウィツィロポチトリが中心的存在で、太陽が運行し続けるために人の心臓と血が必要という信仰がありました。インカ神話は太陽神インティを国家神とし、アンデスの山・岩・水などに宿る神聖な力「ワカ」を崇拝する体系です。
ポリネシア神話・ハワイ神話・アボリジニ神話・イヌイット神話|海と大地の神々
太平洋諸島のポリネシア神話では、半神・英雄「マウイ」が釣り針で島々を海から引き上げ、太陽を捕まえて日照時間を延ばしたという伝説が広く知られます(ディズニー映画「モアナ」のモデルのひとり)。ハワイ神話では火の女神ペレが火山に宿るとされ、4大神(カネ・クー・カナロア・ロノ)が天地・戦争・海・農業をそれぞれ司ります。オーストラリア先住民のアボリジニ神話には「ドリームタイム(夢の時代)」という独自の宇宙観があり、太古の先祖精霊たちが大地を歩き、山・川・岩などの地形を創り上げたとされます。北極圏のイヌイット神話では、海の女神セドナが深海の主として崇拝されます。彼女の指が切り落とされて海の生き物たちになったという神話は、厳しい北極の自然に対する信仰を映しています。
ヨルバ神話・バンツー神話・北米先住民神話|アフリカと北米の体系
ナイジェリアを中心とする西アフリカのヨルバ民族の神話では、最高神オロドゥマレの下に400以上の「オリシャ」(神格)が存在し、生活の各側面を司ります。このヨルバ系信仰はカリブ海・南米にも伝わり、サンテリア(キューバ)やカンドンブレ(ブラジル)として今も信仰されています。中・南・東アフリカのバンツー神話は、地域によってンザンビ(コンゴ)・レザ(ザンビア)・イマナ(ルワンダ・ブルンジ)などの創造神を持ち、祖先霊(エグングン)の崇拝が生活に深く根付いています。北米先住民の神話は部族ごとに多様で、トリックスター(いたずら者)として知られるコヨーテや「大いなる精霊(グレート・スピリット)」が代表的な存在です。
世界の神話に見られる共通のテーマ
地理的・文化的に交流のない文明でも、神話には驚くほど似た構造が繰り返し現れます。
① 天地創造:混沌(カオス)から秩序が生まれ、神が世界と人間を創るパターンはギリシャ・エジプト・メソポタミア・中国・マヤなど世界各地に見られます。
② 大洪水伝説:神の怒りで洪水が起き、選ばれた者が生き残るという物語は旧約聖書のノアの方舟・ギルガメシュ叙事詩・マヤ神話・古事記(ヤマタノオロチ退治の文脈)など世界各地に存在します。
③ 英雄の旅:英雄が試練・死・再生を経て成長・帰還する物語構造(ヘラクレス・ラーマ・スサノオ・マウイ)はジョーゼフ・キャンベルが「英雄の千の顔」として体系化しました。
④ 世界の終末と再生:ラグナロク(北欧)・カリユガの終焉(ヒンドゥー)・マヤの五つの太陽の終わりなど、世界が一度滅んで新しい世界が始まるという終末論は複数の神話に現れます。
⑤ 冥界と死後の世界:死者が向かう冥界の存在はギリシャのハデス・エジプトのデュアット・日本の黄泉の国・北欧のヘルなど広く共通して見られます。
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まとめ
世界31の主要神話体系を地域別にご紹介しました。時代も地域も異なる神話が「世界の始まり」「英雄の試練」「死と再生」という共通のテーマを持つのは、人類が普遍的に持つ問い——「私たちはどこから来て、何者で、どこへ向かうのか」——への答えを神話に求めてきた証かもしれません。各神話体系の神々の詳細は世界の神話の神様・神の名前252選、神話の武器・神器は神話の武器・神器一覧もあわせてご覧ください。