
神社や寺院を訪れたとき、「あの屋根の形は何という名前?」「破風の先端に付いている飾りは?」と疑問に思ったことはありませんか。日本の伝統的な寺社建築は、ひとつひとつの部位に固有の名前と深い意味があります。
この記事では、神社・寺院の建物を構成する部位名称を96種まとめました。屋根の形式・部位・葺き方から構造部材、神社と寺院それぞれの建物・設備まで、読み方と役割をセットで解説します。参拝のたびに「あれが懸魚か」「ここが向拝か」と気づける、そんな視点を手に入れましょう。
なお、城郭建築の専門用語(天守・石垣・曲輪・虎口など74種)は「日本の城の部位名称一覧」で詳しく解説しています。あわせてご活用ください。
屋根の形式(9種)
屋根は寺社建築の顔ともいえる部分です。形式の違いが、時代・宗派・地域の違いを反映しています。
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| 形式名 | 読み | 特徴 |
|---|---|---|
| 切妻造 | きりづまづくり | 2面の傾斜面をもつ最も基本的な形式。棟の端(妻側)を垂直に切り落としたような形 |
| 入母屋造 | いりもやづくり | 上部が切妻・下部が寄棟を組み合わせた形式。格式が高く御殿・仏堂に多い |
| 寄棟造 | よせむねづくり | 4方向に傾斜する安定感のある形式。大型の堂舎に用いられる |
| 方形造 | ほうぎょうづくり | 正方形の平面から4面の屋根が1点に集まる形式。多宝塔の上層などに用いる |
| 流造 | ながれづくり | 前面の庇が後面より長く「流れる」形式。全国で最も多い神社本殿の形式 |
| 春日造 | かすがづくり | 切妻造の正面に向拝(こうはい)をつけた形式。春日大社に由来する |
| 大社造 | たいしゃづくり | 内部の柱の配置が独特な形式。出雲大社に代表される古い神社建築様式のひとつ |
| 神明造 | しんめいづくり | 切妻平入りで千木・鰹木をもつ古式の形式。伊勢神宮に代表される最古の様式 |
| 八幡造 | はちまんづくり | 同規模の2棟を相の間(あいのま)でつなぐ形式。宇佐八幡宮に由来する |
屋根の部位と葺き方(18種)
屋根の部位(13種)
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| 部位名 | 読み | 説明 |
|---|---|---|
| 棟 | むね | 屋根の頂部に水平に渡る部分の総称 |
| 大棟 | おおむね | 屋根の最頂部にある主要な棟 |
| 降棟 | くだりむね | 大棟の両端から軒先へ向かって斜めに下がる棟 |
| 軒 | のき | 壁面より外側に張り出した屋根の端部 |
| 垂木 | たるき | 棟から軒先へ向かって斜めに渡る細い木材。屋根の骨格を形成する |
| 茅負 | かやおい | 垂木の先端を横方向につなぐ部材 |
| 鼻隠し | はなかくし | 垂木の先端を覆い隠す化粧板 |
| 破風 | はふ | 屋根の妻側(棟と直角方向)にある三角形の面 |
| 千鳥破風 | ちどりはふ | 屋根の斜面に設けられた小さな三角形の破風 |
| 唐破風 | からはふ | 中央が盛り上がった弓形の装飾的な破風。格式ある建物の向拝や門に用いる |
| 懸魚 | げぎょ | 破風板の下端を保護しつつ装飾する板。魚形・草花形が多い |
| 千木 | ちぎ | 屋根の棟の両端で交差して上に突き出た木。神明造の象徴 |
| 鰹木 | かつおぎ | 棟の上に平行に並ぶ短い丸太状の飾り。千木とともに神明造に見られる |
葺き方(5種)
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| 葺き方 | 読み | 特徴 |
|---|---|---|
| 桧皮葺 | ひわだぶき | 桧の樹皮を幾重にも重ねて葺く。神社本殿の代表的な屋根材 |
| 柿葺(杮葺) | こけらぶき | 薄く削った杉・椹の板を重ねて葺く古式の工法 |
| 瓦葺 | かわらぶき | 粘土を焼いた瓦を並べる。寺院・仏堂に広く用いられる |
| 草葺(茅葺) | くさぶき・かやぶき | 茅・萱などを束ねて葺く古代以来の工法 |
| 銅板葺 | どうばんぶき | 銅板を用いた工法。現代の社寺改修でも採用される |
構造部材の名称(19種)
柱・梁・屋根を支える骨格の各部位です。寺社建築では独特の装飾的部材が発達しています。
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| 部材名 | 読み | 説明 |
|---|---|---|
| 礎石 | そせき | 柱の下に置く石。柱が土に直接触れないよう荷重を受ける |
| 丸柱 | まるはしら | 断面が円形の柱。格式ある社殿・仏堂によく用いられる |
| 角柱 | かくばしら | 断面が四角形の柱。書院造・民家建築などに多い |
| 梁 | はり | 水平方向に渡る主要な横架材。建物の骨格を担う |
| 虹梁 | こうりょう | 弓なりに反った装飾的な梁。そのやわらかな曲線が社寺建築の見どころのひとつ |
| 桁 | けた | 建物の長手方向に渡る横架材 |
| 棟木 | むなぎ | 屋根の最頂部を支える水平材 |
| 斗栱 | ときょう | 柱頭や梁上に組んで軒の出を支える複雑な組物。「組物」ともいう |
| 大斗 | だいと | 柱の頂上に直接乗る大きな斗形の木。斗栱の基盤となる |
| 肘木 | ひじき | 斗に乗って上部からの荷重を受ける横向きの部材 |
| 蛙股 | かえるまた | 梁の上で荷重を分散させる、蛙が股を広げた形の装飾的部材 |
| 木鼻 | きばな | 肘木や梁が柱の外側に突き出た部分。巻草・雲形などに彫刻されることが多い |
| 向拝 | こうはい | 社殿の正面に突き出た屋根付きの礼拝空間。参拝者はここで礼拝する |
| 縁 | えん | 建物の外側に設けた板張りの通路 |
| 濡れ縁 | ぬれえん | 屋根のない、雨や露にさらされる縁 |
| 格子 | こうし | 細木を縦横に規則正しく組んだ建具 |
| 蔀戸 | しとみど | 上下二枚に分かれ、上部が外側に跳ね上がる格子戸。平安建築を代表する建具 |
| 舞良戸 | まいらど | 框の内側に細い横板(舞良子)を等間隔に入れた引き戸 |
| 唐戸 | からど | 大陸(唐)様式を取り入れた格式ある板戸。社寺の正面扉に多い |
神社の建物・設備(26種)
社殿の建物(11種)
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| 建物名 | 読み | 役割 |
|---|---|---|
| 本殿 | ほんでん | 御神体を祀る最も神聖な建物。宝殿・正殿ともいう |
| 拝殿 | はいでん | 参拝者が礼拝・祈願を行う建物。本殿の前に設けられる |
| 幣殿 | へいでん | 幣帛(ぬさ)などのお供えを奉る建物。本殿と拝殿の間に置かれることが多い |
| 祝詞殿 | のりとでん | 神職が祝詞を奏上するための建物 |
| 御供所 | ごくうしょ | 神饌(食物のお供え)を調理・準備する場所 |
| 直会殿 | なおらいでん | 神事終了後に参列者が神様のお下がりをいただく建物 |
| 神楽殿 | かぐらでん | 神楽や奉納舞楽を行う建物 |
| 社務所 | しゃむしょ | 神社の事務を行う建物。御朱印・お守りの授与も行う |
| 宝殿 | ほうでん | 神宝・祭祀道具を収納する建物 |
| 神庫 | しんこ | 祭器具・神具を保管する倉庫 |
| 籠所 | こもりしょ | 祭礼の前に神職や参拝者が身を清めて籠もる場所 |
境内の設備・施設(15種)
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| 設備名 | 読み | 説明 |
|---|---|---|
| 鳥居 | とりい | 神域への入口を示す門。2本の柱と2本の横木からなる |
| 参道 | さんどう | 鳥居から社殿へ向かう道 |
| 手水舎 | ちょうずや | 参拝前に手と口を清めるための施設 |
| 狛犬 | こまいぬ | 社殿前に対で置かれる守護獣の像 |
| 注連縄 | しめなわ | 神域と俗界を区画する縄。神聖な場所の目印 |
| 玉垣 | たまがき | 境内や社殿を囲む低い垣根 |
| 瑞垣 | みずがき | 本殿を直接取り囲む最内側の神聖な垣根。玉垣よりも格が高い |
| 回廊 | かいろう | 建物を取り囲む屋根付きの通路 |
| 楼門 | ろうもん | 二階建て構造の格式ある門 |
| 随神門 | ずいしんもん | 随神(矢大臣・左大臣)を安置する門 |
| 摂社 | せっしゃ | 主祭神と縁深い神を祀る境内の小社 |
| 末社 | まっしゃ | 摂社よりも格が低い境内の小社 |
| 絵馬堂 | えまどう | 絵馬を奉納するための建物 |
| 石灯籠 | いしどうろう | 参道や境内を照らす石造りの燈籠 |
| 御神木 | ごしんぼく | 神が宿るとされる神社の神聖な木 |
寺院の建物・設備(24種)
「伽藍(がらん)」とは寺院の境内全体、またはそこに立ち並ぶ建物群を指す言葉です。禅宗の七堂伽藍(山門・仏殿・法堂・僧堂・庫裏・浴室・東司)のように、宗派によって必要な建物が定められていました。
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| 建物名 | 読み | 役割 |
|---|---|---|
| 本堂 | ほんどう | ご本尊を祀る寺院の中心的建物。奈良時代以前は「金堂」と呼んだ |
| 金堂 | こんどう | 飛鳥・奈良時代の寺院における本堂の呼称 |
| 仏殿 | ぶつでん | 禅宗における本堂の呼称 |
| 山門 | さんもん | 寺院正面の門。三解脱(空・無相・無願)を象徴する楼門は「三門」ともいう |
| 仁王門 | におうもん | 金剛力士(仁王)像を左右に安置する門 |
| 四天王門 | してんのうもん | 東西南北を守護する四天王を安置する門 |
| 五重塔 | ごじゅうのとう | 仏舎利(釈迦の遺骨)を納める五層の仏塔。寺院のシンボル的建物 |
| 三重塔 | さんじゅうのとう | 三層の仏塔 |
| 多宝塔 | たほうとう | 下層が方形・上層が円形の二重塔。真言宗の寺院に多い |
| 講堂 | こうどう | 仏法の講義や法要を行う建物。禅宗では「法堂(はっとう)」という |
| 法堂 | はっとう | 禅宗における講堂の呼称。住職が仏法を説く場 |
| 鐘楼 | しょうろう | 梵鐘を吊り下げ、時刻や法要を知らせる建物 |
| 梵鐘 | ぼんしょう | 鐘楼に吊られた大型の銅製の鐘。「除夜の鐘」はこれを撞く |
| 経蔵 | きょうぞう | 経典(お経)を収蔵・保管する建物。「輪蔵(りんぞう)」ともいう |
| 宝蔵 | ほうぞう | 寺宝・文化財を収納する蔵 |
| 庫裏 | くり | 僧侶の台所・生活空間。現代では寺務所を兼ねることが多い |
| 方丈 | ほうじょう | 住職の居室。「一丈(約3m)四方」の意味から転じた呼称 |
| 食堂 | じきどう | 僧侶の食事をとる場所。「斎堂(さいどう)」ともいう |
| 僧堂 | そうどう | 座禅・修行を行う建物。禅宗寺院に欠かせない施設 |
| 御影堂 | みえいどう | 宗派の宗祖・高僧の像(御影)を祀る堂 |
| 開山堂 | かいさんどう | 寺院を創建した開山(かいさん)を祀る建物 |
| 納骨堂 | のうこつどう | 遺骨を安置する建物 |
| 手水舎 | ちょうずや | 参拝前に手を清める施設。神社と同様に設けられる |
| 回廊 | かいろう | 諸堂を取り囲む屋根付きの通路 |
豆知識:千木の切り方で祭神がわかる
神明造の屋根に突き出た千木(ちぎ)には、2種類の切り方があります。先端を垂直に切った「内削ぎ(うちそぎ)」は男神、水平に切った「外削ぎ(そとそぎ)」は女神を祀るとされます。たとえば伊勢神宮の内宮(天照大神・女神)は外削ぎ、外宮(豊受大神・女神)も外削ぎです。ただし例外も多く、一説には後世に整理された区分とも言われます。
豆知識:斗栱(ときょう)は建物の格を表す
柱の上に積み上げる複雑な組物「斗栱(ときょう)」は、建物の格式と構造的な強さを同時に表します。斗栱の出し方(柱間にも斗栱を並べる「詰組」)や形式の複雑さは、その建物の重要度を示すバロメーターです。東大寺南大門や唐招提寺金堂の斗栱は、大陸の技術を直接取り入れた壮大な組物として知られています。
まとめ
寺社建築の部位名称96種をまとめました。
屋根形式(流造・大社造・神明造など9種)・屋根の部位と葺き方(18種)・構造部材(斗栱・虹梁・懸魚など19種)、そして神社の建物・設備(26種)と寺院の建物(24種)を一覧で整理しました。
次に神社や寺院を訪れたとき、「これが桧皮葺か」「あの弓形の梁が虹梁だ」と気づける視点が生まれれば、建築を通じて日本の歴史・文化をより深く感じられます。
城郭の専門用語については「日本の城の部位名称一覧」(74種)をご覧ください。
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