
「スモモモモモモモモ」「チョコレートパフェ」「オレハマッテルゼ」——競走馬の世界には、思わず二度見する名前を持つ馬たちが実際に日本のターフを駆け抜けています。本記事では、面白い競走馬の名前を71頭カテゴリ別に紹介します。実況アナウンサーが思わずつっかえる「実況泣かせ」の難読馬名から、G1の大舞台を珍名で制した名馬、食べ物・サブカル由来の個性的な馬名、海外の珍名馬まで、競馬ファンも初心者も楽しめる珍名馬の世界をご案内します。JRAの命名ルールや由来もあわせて解説します。
JRAの馬名命名ルール
競走馬の名前には厳格なルールがあります。思いついた名前を何でも付けられるわけではなく、公益財団法人日本軽種馬登録協会(JAIRS)に申請し、審査を通過する必要があります。
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| ルール | 内容 |
|---|---|
| 文字種 | カタカナのみ(ひらがな・漢字・アルファベット不可) |
| 文字数 | カタカナ2文字以上9文字以内 |
| アルファベット表記 | 18文字以内(空白を含む) |
| 禁止事項 | 著名人・有名馬と同名、公序良俗に反する名前、商標名、数字・頭文字のみの名前 |
| 保護馬名 | 歴代の名馬(ディープインパクト等)は登録不可 |
かつては漢字も使えた時代がありましたが、現在はカタカナ表記のみです。「ヲ」は1997年から使用可能になりました(エガオヲミセテが最初の使用例)。初出走前であれば1回だけ改名できますが、初出走後の改名は認められていません。
馬名をつけるのは馬主本人(調教師でも厩務員でもない)。そのため馬主の個性・ユーモアがそのまま馬名に反映され、日本独自の珍名馬文化が生まれています。毎年数千頭が新たに名前を登録するため、長い競馬の歴史の中でありとあらゆる名前が誕生してきました。
面白い競馬の馬名71選
カテゴリ別に珍名馬を紹介します(各馬は重複なし・1カテゴリに1回のみ掲載)。
① G1・重賞を制した珍名馬(6頭)
珍名馬でも実力は本物。大舞台を笑いながら制した6頭です。
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| 馬名 | 主な活躍 | 由来・特徴 |
|---|---|---|
| オレハマッテルゼ | 高松宮記念(2006年)G1制覇 | 「俺は待ってるぜ」。小田切有一オーナーの代表作。初重賞初G1という離れ業をやってのけた |
| カレンチャン | スプリンターズS(2011)・高松宮記念(2012) | 冠名「カレン」+「ちゃん」。可愛らしい名前でスプリント二冠を達成 |
| ウオッカ | 日本ダービー・天皇賞(秋)ほかG1 7勝 | ロシアの蒸留酒「ウォッカ」から命名。2007年に牝馬として64年ぶりの日本ダービー制覇 |
| マチカネフクキタル | 菊花賞(1997年)ほか重賞複数勝 | 「待ちかね 福来たる」。縁起の良い名前でクラシックを制した |
| ティコティコタック | 秋華賞(2000年)G1制覇 | 10番人気の低評価を覆して優勝。読みにくいカタカナ連続8文字で実況アナウンサーを困惑させた |
| ネコパンチ | 重賞制覇 | 「猫のパンチ」そのまま。愛嬌ある名前で競馬ファンの記憶に刻まれた |
② 小田切有一オーナーの珍名シリーズ(17頭)
競馬界最大の珍名馬製造機・小田切有一オーナー(福岡のフードビジネス会社の代表)。G1馬「オレハマッテルゼ」も彼の所有馬。「待ってるシリーズ」など、馬名で観客を笑わせる名人として知られています。
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| 馬名 | 由来・特徴 |
|---|---|
| エガオヲミセテ | 「笑顔を見せて」。JRA史上初めて馬名に「ヲ」を使用した馬(1997年登録)として名を残す。G2複数勝利を挙げたが2000年の厩舎火災で惜しくも落命 |
| ロバノパンヤ | ロバのパン屋さん。昭和の移動販売の風景を馬名に |
| ヒコーキグモ | 飛行機雲。空を見上げる牧歌的なイメージ |
| ドモナラズ | 「どうにもならない」という諦めの言葉を堂々と馬名に |
| チムドンドン | 沖縄方言で「胸がときめく」。NHK朝ドラのタイトルにもなった |
| タクシー | タクシー。乗り物をそのまま馬名にした潔さ |
| ワスレナイデ | 「忘れないで」。懇願調の言葉が競走馬の名前に |
| オドロキノサイフ | 「驚きの財布」。フードビジネス会社目線が感じられる命名 |
| ビックリシタナモー | 「びっくりしたなもう」。女性漫才師・ミヤコ蝶々の口癖から |
| ナゾ | 「謎」のみ2文字。謎深い最短系 |
| ウソ | 「嘘」のみ2文字。自虐的な命名 |
| ワナ | 「罠」のみ2文字。ストレートすぎる2文字 |
| ドングリ | どんぐり。秋の野山のイメージ |
| メロンパン | メロンパン。パン系馬名の代表格 |
| オケラカイドウ | 「おけら街道」。作家・田辺聖子の小説タイトルが由来とも |
| ワタシマッテルワ | 「私まってるわ」。「オレハマッテルゼ」の女性版・待ってるシリーズ第2弾 |
| オレモマッテタゼ | 「俺も待ってたぜ」。待ってるシリーズ第3弾。まるで連続ドラマ |
③ 実況泣かせ馬名(11頭)
アナウンサーが実況で戸惑う、読みにくい・言いにくい名前の数々。スピードを上げながら正確に読み上げる難しさが倍増します。
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| 馬名 | 特徴 |
|---|---|
| スモモモモモモモモ | 「スモモも桃も桃のうち」という早口言葉が由来。「モ」が8つ並ぶ9文字のモンスター馬名 |
| ナナナナナイロ | 「ナ」が5つ連続する馬名。七色の読みを崩したとされ(諸説あり)実況の難関 |
| オヌシナニモノ | 「お主、何者」の時代劇調。実況すると江戸時代の立ち回りシーンになる |
| アンドロメダザダゾ | アンドロメダ座+「だぞ」。9文字ジャストの宇宙語 |
| オマワリサン | お巡りさん。「オマワリサン、逃げる、逃げ切った!」という実況が伝説に |
| マルマルモリモリ | 同音の繰り返し8文字。実況で調子が狂いやすい |
| イチネンエーグミ | 「一年A組」のシャレ。なぜか馬の名前になった学校の教室 |
| イケイケドンドン | 気合いの掛け声8文字。実況と馬名が一体化する |
| ウマザイル | 「ウマ(馬)」+「ザイル(ドイツ語でロープ)」。競馬×登山の合体語 |
| ゾロ | 2文字の最短実例。「ゾロ、逃げる!」という実況のシュールさ |
| アシタモハレルカナ | 「明日も晴れるかな」の9文字ジャスト。詩的だが実況では9音節の難関 |
④ 食べ物・お菓子・お酒系(13頭)
競走馬の名前には食べ物・スイーツ系が非常に多く登録されています。カタカナ9文字という制約の中で洋菓子名がちょうどよく収まるのが特徴です。
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| 馬名 | 由来・特徴 |
|---|---|
| チョコレートパフェ | チョコレートパフェをそのまま馬名に。9文字ジャスト |
| イチゴミルフィーユ | 苺のミルフィーユ。フランス菓子の9文字ジャスト |
| リンゴアメ | りんご飴。縁日の定番菓子 |
| モンブラン | モンブランケーキ。山名+ケーキの二重の意味 |
| シュークリーム | シュークリーム。定番洋菓子を堂々と馬名に |
| クリキントン | 栗きんとん(おせち料理)。年始の縁起物を馬名に |
| トリアエズナマ | 「とりあえず生!」。居酒屋での第一声がそのまま馬名に |
| モチ | 餅。粘り強く走ってほしいという願いが込められたとも |
| イセエビ | 伊勢海老。高級食材をそのまま競走馬の名前に |
| シシャモチャン | シシャモ+「ちゃん」。魚名に愛称をつける謎の親しみやすさ |
| モグモグパクパク | 食べる擬音語の8文字。食いしん坊全開 |
| ジャンボフランク | 大きなフランクフルト。テーマパークグルメを思わせる |
| メイショウタチマチ | 冠名「メイショウ」+「たちまち」。勝利がたちまちやってくる願い込め |
⑤ 方言・口語・流行語系(7頭)
時代の空気を馬名にとどめた言葉たちです。登録年代がわかる「時代の証人」でもあります。
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| 馬名 | 由来・特徴 |
|---|---|
| ナンデヤネン | 大阪弁の定番ツッコミ。「ナンデヤネン、逃げる!」という実況には独特の味わいがある |
| シランケド | 「知らんけど」。大阪弁の語尾が全国的に流行した時期に命名 |
| ソンタク | 「忖度」。2017年ごろの社会流行語がそのまま競走馬の名前に |
| センテンススプリング | 週刊誌名の言い間違いがネット上で流行したことに由来(諸説あり) |
| ソンナノカンケーネ | お笑いタレント・小島よしおのネタが馬名に(諸説あり) |
| オトコノユウジョウ | 「男の友情」。漢気あふれる8文字 |
| カゼニフクレテ | 「風に膨れて」。詩的ながら珍しい組み合わせ |
⑥ アニメ・映画・サブカル・動物系(7頭)
ポップカルチャーとリアルな動物名が入り混じるカテゴリ。オーナーの趣味と時代の人気作品が反映されています。
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| 馬名 | 由来・特徴 |
|---|---|
| シャア | 「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブル由来。赤い機体のように速くという願いとも |
| タイガーマスク | アニメ・プロレスの「タイガーマスク」。変身ヒーローの名を競走馬に |
| オニャンコポン | ガーナのアカン神話の最高神の名。「進撃の巨人」への登場で日本でも広まった |
| キンタマーニ | バリ島の高原リゾート地名「キンタマーニ高原」。正当な地名だが素直に読むと実況が止まる |
| ウマピョイ | ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の楽曲タイトルから。競馬ゲームが馬名に還流 |
| ノラネコ | 野良猫をそのまま馬名に。どこにでもいる存在感 |
| ウマウマ | 「馬」を重ねた最もシンプルな競走馬ネタ。愉快な2文字 |
⑦ 海外の珍名馬(10頭)
珍名文化は世界共通。特に英語圏では「発音すると別の言葉になる」型が人気です。
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| 馬名(原語) | 特徴 |
|---|---|
| Potoooooooo | 1773年生まれの英国名馬。"Potato"の縮略「Pot8os」が転じ、Oが8つ並ぶ伝説の馬名に |
| Hoof Hearted | 発音すると "Who Farted?"(誰がおならをした?)に聞こえる。英米で複数の馬が登録 |
| Passing Wind | 「風を通す」=「おならをする」の二重の意味 |
| Wear The Fox Hat | 速く言うと俗語になる。英競馬で実際に出走した有名な珍名 |
| Norfolk In Chance | 同じく発音で俗語になるシリーズ |
| Arrrrr | Rが7つ。米国で出走記録のある最短系の珍名 |
| Yes Yes Yes | 肯定の繰り返し。見た目のインパクトがある |
| Big Juicy Melons | オーストラリアで登録された二重の意味を持つ馬名 |
| Dontlookbackinanger | Oasisの名曲「Don't Look Back in Anger」を一語でつなげた |
| Odor in the Court | 「法廷に臭いが」。競馬場の笑いを誘った英国の珍名 |
豆知識:競馬の珍名文化あれこれ
9文字の罠——スイーツ名が多い理由
「チョコレートパフェ」「イチゴミルフィーユ」がそれぞれ9文字ジャストなのは偶然ではありません。洋菓子のカタカナ名は9文字以内に収まりやすいサイズ感で、馬名として非常に使いやすいのです。「モンブラン」(5文字)「シュークリーム」(7文字)など、ケーキ系は日本競馬の「スイーツ馬名」カテゴリとして定着しています。
「待ってるシリーズ」という連続ドラマ
小田切有一オーナーの「オレハマッテルゼ(俺は待ってるぜ)」から始まった連作は、「ワタシマッテルワ(私まってるわ)」「オレモマッテタゼ(俺も待ってたぜ)」へと発展。男→女→男(別の馬)と掛け合いのように展開し、競馬ファンをドラマのように楽しませました。
却下された馬名
いくら面白くても通らない名前もあります。公序良俗基準や商標に触れる名前は審査で弾かれます。競馬の黎明期には「カ」という1文字の馬も存在したとされており(文字数制限のない時代ならでは)、現在の2〜9文字制限はこうした歴史の積み重ねで生まれたルールです。
海外vs日本:珍名の作り方の違い
英語圏の珍名馬は「発音で別の言葉になる」言葉遊びが主流。日本は「感情・食べ物・日常語をそのまま馬名にする」スタイルが特徴です。どちらも「命名者(馬主)のユーモアが公式記録として永遠に残る」という点は共通しています。
まとめ
競走馬の名前には、馬主の個性・時代の空気・言葉遊びのすべてが凝縮されています。JRAの「カタカナ2〜9文字」という制約が逆に珍名文化を育て、71頭にのぼる個性的な名前が生まれました。「スモモモモモモモモ」と実況されながらゴールする光景、「チョコレートパフェ」の複勝馬券を手にする瞬間——競馬場には名前だけで笑顔になれる世界が広がっています。次のレース前にぜひ出走馬の名前を眺めてみてください。きっとお気に入りの珍名馬が見つかるはずです。