
夜空に輝く恒星の名前には、どんな由来があるかご存知ですか?シリウス・ベガ・アンタレスといった恒星名の大半は、中世イスラムの天文学者が記録したアラビア語や、古代ギリシャ語・ラテン語に由来します。本記事では全天で固有名が付けられた恒星のうち有名な72種を一覧にまとめ、一等星21種をはじめとする恒星名の語源と意味を詳しく解説します。星の名前の由来を知ると、夜空を見上げる楽しさがぐっと広がります。
国際天文学連合(IAU)は2022年時点で451個の恒星固有名を公式に承認しており、その約7割がアラビア語に由来します。
恒星の名前一覧【全72種・一等星21種を全収録】
一等星21種の名前一覧
実視等級が1.5より明るい、全天で最も輝く21の恒星です。日本では「一等星」と呼び、肉眼でひときわ明るく見える星のグループにあたります。
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| 恒星名(和名・別名) | 星座 | 実視等級 | 名前の意味・語源 |
|---|---|---|---|
| シリウス(天狼星) | おおいぬ座α | −1.46 | ギリシャ語「輝く・焼き焦がすもの」 |
| カノープス | りゅうこつ座α | −0.74 | ギリシャ神話のアルゴ船の舵手カノポスに由来 |
| リギル・ケンタウルス | ケンタウルス座α | −0.27 | アラビア語「ケンタウルスの足」(最近傍恒星系) |
| アークトゥルス | うしかい座α | −0.05 | ギリシャ語「熊の番人」(arktos=熊・ouros=番人) |
| ベガ(織女星) | こと座α | +0.03 | アラビア語「落ちる鷲」 |
| カペラ | ぎょしゃ座α | +0.08 | ラテン語「小さな雌山羊」 |
| リゲル | オリオン座β | +0.13 | アラビア語「オリオンの足」 |
| プロキオン | こいぬ座α | +0.34 | ギリシャ語「犬の前を行くもの」 |
| アケルナル | エリダヌス座α | +0.46 | アラビア語「川の終わり」 |
| ベテルギウス | オリオン座α | 変光(+0.0〜+1.3) | アラビア語「白帯の中心の腋の下」(諸説あり) |
| ハダル | ケンタウルス座β | +0.61 | アラビア語「地に定住するもの」 |
| アルタイル(牽牛星) | わし座α | +0.77 | アラビア語「飛ぶ鷲」 |
| アクルックス | みなみじゅうじ座α | +0.79 | 近代ラテン語「南十字座のα星」 |
| アルデバラン | おうし座α | +0.87 | アラビア語「後に続くもの」 |
| スピカ | おとめ座α | +1.04 | ラテン語「麦の穂」 |
| アンタレス | さそり座α | +1.06 | ギリシャ語「アレス(火星)に対抗するもの」 |
| ポルックス | ふたご座β | +1.16 | ギリシャ・ラテン神話の英雄ポリュデウケス |
| フォーマルハウト(秋の一つ星) | みなみのうお座α | +1.17 | アラビア語「南の魚の口」 |
| デネブ(天津四) | はくちょう座α | +1.25 | アラビア語「めんどり(白鳥)の尾」 |
| ミモザ | みなみじゅうじ座β | +1.25 | ラテン語「ミモザの花」 |
| レグルス | しし座α | +1.36 | ラテン語「小さな王」 |
その他の有名な恒星名一覧(51種)
一等星以外にも、固有名と独特の語源を持つ恒星が多数あります。
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| 恒星名(和名・別名) | 星座 | 実視等級 | 名前の意味・語源 |
|---|---|---|---|
| アダーラ | おおいぬ座ε | +1.50 | アラビア語「処女たち」 |
| カストル | ふたご座α | +1.58 | ギリシャ・ラテン神話の英雄カストール(ポルックスの双子の兄) |
| ガクルックス | みなみじゅうじ座γ | +1.59 | 近代ラテン語「南十字座のγ星」 |
| シャウラ | さそり座λ | +1.62 | アラビア語「さそりの尾」 |
| ベラトリクス | オリオン座γ | +1.64 | ラテン語「女戦士」 |
| エルナト | おうし座β | +1.65 | アラビア語「角で突くもの」 |
| ミアプラキドゥス | りゅうこつ座β | +1.67 | 語源諸説あり(アラビア語+ラテン語の混成とも) |
| アルニラム | オリオン座ε | +1.70 | アラビア語「真珠の糸」(オリオンのベルト中央星) |
| アルナイル | つる座α | +1.74 | アラビア語「明るいもの」 |
| アルニタク | オリオン座ζ | +1.77 | アラビア語「帯・腰帯」(オリオンのベルト東端) |
| アリオト | おおぐま座ε | +1.77 | アラビア語「黒い馬・脂肪の尾」(北斗七星のひとつ) |
| ドゥーベ | おおぐま座α | +1.79 | アラビア語「熊の背」(北斗七星のひとつ) |
| ミルファク | ペルセウス座α | +1.79 | アラビア語「肘」(ペルセウスの肘) |
| ウェゼン | おおいぬ座δ | +1.84 | アラビア語「重さ」 |
| アルカイド | おおぐま座η | +1.86 | アラビア語「棺の運び手たちのリーダー」(北斗七星の柄先) |
| アビオル | りゅうこつ座ε | +1.86 | 近代命名(20世紀、詳細な語源は未確定) |
| サルガス | さそり座θ | +1.87 | シュメール語起源とされる(詳細は不明) |
| アルヘナ | ふたご座γ | +1.93 | アラビア語「ラクダの首の白い印」 |
| ピーコック | くじゃく座α | +1.94 | 英語「クジャク」(英国の航海暦局が1930年代に命名) |
| ポラリス(北極星) | こぐま座α | +1.98 | ラテン語「極の星」(stella polaris) |
| アルファード | うみへび座α | +1.98 | アラビア語「孤独な星」(周囲に明るい星がない) |
| ハマル | おひつじ座α | +2.00 | アラビア語「羊の頭」 |
| ディフダ | くじら座β | +2.04 | アラビア語「カエル」 |
| アルフェラッツ | アンドロメダ座α | +2.06 | アラビア語「馬の肩」(ペガスス座と共有された星) |
| ヌンキ | いて座σ | +2.05 | シュメール語起源「聖なる都市の星」 |
| コカブ | こぐま座β | +2.08 | アラビア語「星」(紀元前1500〜300年ごろの北極星) |
| アルジェバ | しし座γ | +2.08 | アラビア語「ライオンの額」 |
| サイフ | オリオン座κ | +2.09 | アラビア語「剣」(オリオンの剣) |
| アルゴル | ペルセウス座β | +2.12 | アラビア語「怪物の頭」(2.9日ごとに明るさが変わる変光星) |
| デネボラ | しし座β | +2.14 | アラビア語「ライオンの尾」 |
| ミントカ(ミンタカ) | オリオン座δ | +2.23 | アラビア語「帯・腰帯」(オリオンのベルト西端) |
| ミザール | おおぐま座ζ | +2.23 | アラビア語「腰布・エプロン」(北斗七星のひとつ) |
| エルタニン | りゅう座γ | +2.23 | アラビア語「大蛇・竜」 |
| アルフェッカ | かんむり座α | +2.23 | アラビア語「はずれた環・壊れた輪」(北冠の中心) |
| シェダル | カシオペヤ座α | +2.24 | アラビア語「胸」(カシオペヤのW字形の一角) |
| カフ | カシオペヤ座β | +2.28 | アラビア語「手のひら」 |
| エニフ | ペガスス座ε | +2.38 | アラビア語「鼻」(ペガススの鼻) |
| マルカブ | ペガスス座α | +2.49 | アラビア語「鞍・船」 |
| メンカル | くじら座α | +2.54 | アラビア語「鼻孔」(くじらの) |
| グラフィアス | さそり座β | +2.56 | ギリシャ語「かきつめ」(さそりの爪) |
| アルネブ | うさぎ座α | +2.58 | アラビア語「ウサギ」(うさぎ座α) |
| ズベネシャマリ | てんびん座β | +2.61 | アラビア語「北のかぎ爪」(もともとさそり座の爪) |
| ズベネルゲヌビ | てんびん座α | +2.75 | アラビア語「南のかぎ爪」(もともとさそり座の爪) |
| アルジェニブ | ペガスス座γ | +2.83 | アラビア語「脇腹」(ペガスス) |
| アルキオーネ | おうし座η | +2.87 | ギリシャ神話・プレアデスの7姉妹のひとり(昴の最輝星) |
| サダルスード | みずがめ座β | +2.91 | アラビア語「幸運の中の幸運」 |
| ムルジム | こいぬ座β | +2.90 | アラビア語「告げ知らせるもの」(シリウスの昇る前触れ) |
| アルゴラブ | からす座δ | +2.95 | アラビア語「カラス」 |
| アルコル | おおぐま座g | +4.0 | アラビア語「かすかなもの」(ミザールの伴星・視力テストの星) |
| ツバン | りゅう座α | +3.65 | アラビア語「大蛇」(紀元前2700年ごろの北極星・約4700年前) |
| ミラ | くじら座ο | 変光 | ラテン語「不思議な」(世界初確認の周期変光星) |
恒星名の語源:言語別まとめ
アラビア語由来(全体の約7割)
現代に伝わる恒星名のうち、IAU承認済みのものの約7割はアラビア語に由来します。8世紀〜13世紀のイスラム黄金時代に、天文学者たちが古代ギリシャの星カタログをアラビア語に翻訳・発展させ、それがヨーロッパへ逆輸入されました。アラビア語名の多くは「その星が星座のどの部位にあるか」を表す表現です。
- ベテルギウス(オリオン座α):本来は「イブト・アル=ジャウザー(白帯の中心の腋の下)」の意。写本の繰り返し転写による誤読が積み重なり、現在の発音になったとされます。
- アルデバラン(おうし座α):「後に続くもの」を意味し、プレアデス星団(昴)が沈んだ後に東の空に昇ってくることに由来します。
- フォーマルハウト(みなみのうお座α):「ファム・アル=フート(南の魚の口)」が転訛したもの。秋の夜空で一等星が少ない時期に南方向に輝くため、「秋の一つ星」と呼ばれます。
- アルゴル(ペルセウス座β):「ラース・アル=グール(怪物・鬼の頭)」が語源で「悪魔の星」とも呼ばれます。約2.9日周期で明るさが変化する食連星で、古代から不吉の星として知られていました。
- ミラ(くじら座ο)はラテン語ですが、アラビア語天文学の記録にも登場します。17世紀初頭に周期変光星と確認され、「驚くほど不思議な星」という意味でミラ(Mira)と命名されました。
ギリシャ語・ラテン語由来
古代ギリシャ・ローマの神話観と自然観察が名前の由来となっています。
- シリウス(おおいぬ座α):ギリシャ語のセイリオス(Σείριος)「輝く・焼き焦がすもの」に由来。全天最輝星で、真夏に太陽と同じ方向にあるため古代人は「暑さを増す星」と信じ、ラテン語で「狂犬病の星(Canicula)」とも呼ばれました。距離は約8.6光年で、肉眼で見える恒星の中では比較的近い部類です。
- アークトゥルス(うしかい座α):ギリシャ語で「熊の番人」(arktos=熊・ouros=番人)。すぐ近くにおおぐま座があり、その番人のように見立てられました。全天第4位の明るさで、距離は約37光年。
- アンタレス(さそり座α):ギリシャ語で「アレス(火星)に対抗するもの」(Anti-Ares)。赤みを帯びた色が火星に酷似しており、夜空で見分けにくかったことからこの名が付きました。
- プロキオン(こいぬ座α):ギリシャ語で「犬の前を行くもの」(Pro=前・Kyon=犬)。おおいぬ座のシリウスよりも少し早く地平線から昇ることに由来します。
- カノープス(りゅうこつ座α):ギリシャ神話の英雄メネラオスの舵手カノポスに由来するとされます。全天第2位の明るさ(−0.74等)ですが、南の空低く昇るため、日本では九州・沖縄でないと見えにくい幻の一等星です。
ラテン語由来の代表的な恒星:
- スピカ(おとめ座α):ラテン語で「麦の穂」。おとめ座の女神(農業の女神ケレス)が手に持つ穂を表します。
- カペラ(ぎょしゃ座α):ラテン語で「小さな雌山羊」(capella)。御者座の御者が戦車に乗りながら抱いた子山羊とされました。
- レグルス(しし座α):ラテン語で「小さな王」(regulus)。しし座の心臓にあたる星で、古代から「王星」として特別視されてきました。
- ポラリス(こぐま座α・北極星):ラテン語で「極の星」(stella polaris)。現在、地球の自転軸がほぼ正確に指す方向にある星で、何千年もの間、航海・測量・天文観測の基準点として用いられてきました。
日本の和名・中国の星名
西洋固有名が広まる以前から、日本・中国でも独自の呼び名が使われてきました。
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| 恒星 | 和名・中国名 | 意味・由来 |
|---|---|---|
| ベガ | 織女星(おりひめぼし) | 七夕の「おりひめ」。天の川の西岸に輝く |
| アルタイル | 牽牛星(けんぎゅうぼし) | 七夕の「ひこぼし」。天の川の東岸に輝く |
| デネブ | 天津四(てんつし) | 夏の大三角の一角をなす「白鳥の尾」 |
| シリウス | 天狼星(てんろうせい) | 中国では「天の狼」として恐れられた |
| アンタレス | 心宿二(しんしゅくに) | 二十八宿「心宿」の主星。さそりの心臓 |
| アークトゥルス | 大角(だいかく) | 中国天文における「大きな角(つの)」 |
| スピカ | 角宿一(かくしゅくいち) | 二十八宿「角宿」の主星 |
| フォーマルハウト | 北落師門(ほくらくしもん) | 中国天文の伝統名。秋空の孤立した一等星 |
| アルデバラン | 毕宿五(ひっしゅくご) | 二十八宿「毕宿」の主星。「あとに続く」の意 |
| ポラリス | 北辰(ほくしん)・北極星 | 「天の中心」として古くから重視された |
まとめ
恒星の名前は、アラビア語・ギリシャ語・ラテン語・日本語とさまざまな言語の歴史が交差する宝庫です。本記事では一等星21種を含む72種の恒星名を語源とともに紹介しました。シリウスの「焼き焦がすもの」やアルゴルの「悪魔の星」など、古代人が星に投影したイメージを知ると、夜空を見上げる視点がぐっと豊かになります。星座神話との組み合わせでさらに深く楽しみたい方は、関連記事もあわせてどうぞ。
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