世界の伝統的な家・住居65種類一覧|気候と文化が生んだ建築様式

世界には、雪原・砂漠・熱帯雨林・高原など多様な環境に適応した伝統的な住居が数多く存在します。住居の形は気候・素材・文化・生業を映す鏡です。本記事では世界各地の伝統的な家・住居を65種類、東アジア・東南アジア・南アジア・中東中央アジア・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・中南米・オセアニアの9地域に分けて一覧で紹介します。

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東アジアの伝統的な住居(9種)

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名称 国・地域 特徴
合掌造り 日本(白川郷・五箇山) 急勾配の茅葺き屋根が特徴。豪雪地帯で雪を滑落させ、屋根裏で養蚕を行うために発達した
曲り家(まがりや) 日本(岩手・南部地方) 主屋と馬屋をL字型に連結。厳冬期に馬の世話を室内から行えるよう工夫された
民家(古民家) 日本全国 土間・囲炉裏・縁側を持つ木造建築。地域ごとに屋根の形や素材が異なる
竪穴住居 日本(縄文〜弥生時代) 地面を掘り下げた穴に柱を立て、草や土で屋根を葺いた古代の住居
窑洞(ヤオドン) 中国(黄土高原) 黄土の崖や丘を直接掘り抜いた横穴式住居。冬暖かく夏涼しい断熱性が高い
福建土楼 中国(福建省) 一族が共同生活を送る巨大な円形または方形の土造り集合住居。ユネスコ世界遺産(2008年)
四合院(スーホーユアン) 中国(北方) 中庭を四方の棟で囲む伝統的な中国の院落式住宅。北京の胡同(フートン)に多く残る
吊脚楼(ジャオジャオロウ) 中国(南西部・湖南・貴州) 急斜面に柱を立てた高床式木造建築。ミャオ族・トン族などの少数民族に伝わる
韓屋(ハノク) 韓国 木造・瓦屋根で床暖房「オンドル」を持つ朝鮮伝統建築。現代にも継承されている

東南アジアの伝統的な住居(7種)

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名称 国・地域 特徴
バハイ・クボ(ニパ小屋) フィリピン 竹・ニパヤシ(葉)で作る高床式小屋。熱帯の通気性を確保し、洪水や害虫を避ける
バハイ・ナ・バトー フィリピン スペイン植民地時代に普及した石造りの伝統家屋。石の基礎部分の上に木造2階を重ねる
ルマ・ガダン インドネシア(西スマトラ) ミナンカバウ族の母系社会を反映した大型家屋。水牛の角を模した反り屋根が特徴
ルモ・アチェ(ルンポ・アチェ) インドネシア(アチェ州) 地上高6〜8mに達する高床式木造住居。強い日射し・湿気・野生動物から暮らしを守る
バン・タイ タイ北部 チーク材を用いた高床式木造住宅。床下を家畜の飼育や農具の保管に利用する
ロングハウス(ルマ・パンジャン) マレーシア・インドネシア(ボルネオ島・イバン族) 多家族が一棟に並んで暮らす長屋形式の高床式住居。全長100m超のものもある
ホナイ インドネシア(パプア州・ダニ族) 円筒形のわら葺き小屋。高地の寒さをしのぐため入口を小さく造り、室内で薪を焚く
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南アジアの伝統的な住居(3種)

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名称 国・地域 特徴
ハヴェリー インド・パキスタン(ラージャスターン州等) 富裕な商人階級が建てた石造りまたはレンガ造りの邸宅。精緻な彫刻装飾が施されたベランダが特徴
ケッタバッラム(ケーララの舟形家屋) インド(ケーララ州) 水路が張り巡らされたバックウォーター地帯で用いられた木造舟形の住居。現在はハウスボートとして観光用に残る
竹の高床式住居 バングラデシュ・東北インド 洪水の多い低湿地帯で地表から離れた高床に居住部を置く竹造り住居。モンスーン期の水害対策として発達

中東・中央アジアの伝統的な住居(8種)

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名称 国・地域 特徴
ゲル(ユルト) モンゴル・中央アジア 羊毛フェルトと木の骨格で作る円形テント。遊牧民が移動のたびに組み立て・解体できる移動式住居
ベドウィンテント(ハイマ) アラビア半島・中東 山羊や羊の毛で織った黒または茶色の布張りテント。砂漠の強烈な日差しと砂嵐を遮る遊牧民の家
ムドハッフ イラク(南部メソポタミア・マーシュアラブ人) ヨシ(葦)を束ねて弓形に曲げた骨格の上にヨシのマットを重ねた集会場兼住居
バードギール付き住居 イラン(ヤズド等) 風を室内に取り込む塔「バードギール(風捕り塔)」を持つ土造り住居。エアコンなしで夏の灼熱を乗り切る
カスバ(クサル) モロッコ・アルジェリア 日干しレンガ造りの城塞集落。乾燥地帯で水と防衛のために高く積み上げた集合住居
リヤド(中庭式住居) モロッコ・チュニジア等 外壁に窓を設けず、中央の中庭(リヤド)に向かって部屋が開く構造。外の熱気と砂を遮断する
カッパドキア洞窟住居 トルコ(カッパドキア) 火山灰岩(凝灰岩)をくり抜いた洞窟住居。夏涼しく冬暖かく、外敵からも身を隠しやすい
シバム高層住居 イエメン(ハドラマウト) 日干しレンガで8〜11階建てに積み上げた塔状集合住居群。「砂漠のマンハッタン」と呼ばれる。ユネスコ世界遺産(1982年)
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ヨーロッパの伝統的な住居(8種)

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名称 国・地域 特徴
ターフハウス(芝土の家) アイスランド・フェロー諸島 石の基礎の上に芝土のブロックを積み上げた家。自然の断熱材として機能し、極寒地の気候に対応する
ラッヴ(サーミの伝統テント) スカンジナビア北部(サーミ人) 木の棒を組んで木の皮や獣皮で覆った円錐形テント。北極圏の遊牧民サーミ人が使用した
ブラックハウス(タイ・ハウス) スコットランド(ヘブリディーズ諸島) 石積みの二重壁に芝土の屋根を持つ小屋。壁の間の空気層が強風・寒さを防ぐ
シャレー スイス・オーストリア(アルプス地方) 傾斜した広い庇(ひさし)と木造のバルコニーを持つ山岳住居。積雪を軒先から落とし農具を保管する
トゥルッリ イタリア(プーリア州アルベロベッロ) 石灰岩を積んだ円錐形の白い屋根が特徴の石造り住居。ユネスコ世界遺産(1996年)
クロカン(農家小屋) フランス(ペリゴール地方) 石積みの円形または長方形の小屋。農作業時の一時避難所として使われた
イズバ ロシア(農村部) 丸太を組んだ木造住宅。装飾的な窓枠彫刻が特徴で、ロシア農村の伝統的な民家を代表する
キクラデス様式住居 ギリシャ(エーゲ海諸島) 白く塗られた石造りの立方体状住居。強い日射しを反射し、室内温度を下げる地中海的知恵

アフリカの伝統的な住居(10種)

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名称 国・地域 特徴
ロンダヴェル 南アフリカ・ジンバブエ等 円形の石またはレンガ壁に円錐形の草葺き屋根を持つ住居。サブサハラに広く分布する基本的な住居形式
インドゥル(ジュルー族の集落) 南アフリカ(ズールー族) ドーム形に曲げた木の骨格に草束を重ね貼りした住居。草の重なりが雨水をはじく
タタ・ソンバ ベナン・ブルキナファソ(ソンバ族) 二階建てで屋上に物見台を持つ土造り砦型住居。外敵を見張るための構造が特徴
マニャッタ ケニア・タンザニア(マサイ族) 牛糞と泥を混ぜた土で覆う低い楕円形の小屋。乾燥地帯での材料入手のしやすさを活かす
エチオピア円形小屋(トゥクル) エチオピア高原 石またはレンガの円形壁に円錐形の草葺き屋根を持つ小屋。高地の気候に合わせた通気設計
ベルベル泥レンガ住居 モロッコ(アトラス山脈) 日干しレンガ(アドベ)を積み上げた土色の家屋。乾燥地帯に豊富な土を建材とする
ベルベル洞窟住居(マトマタ) チュニジア(マトマタ) 地中に縦穴を掘り、周囲に横穴を開けた地下住居。砂漠の灼熱と砂嵐を地中で避ける
ドゴン族崖居 マリ(バンディアガラ断崖) 砂岩の断崖の岩棚に張り付くように建てられた土造り住居と穀物倉庫群。ユネスコ世界遺産(1989年)
ジェンネの土造り住居 マリ(ジェンネ) 日干しレンガを「フェレイ工法」で積み上げ、表面を泥で塗り固めた住居。ジェンネの大モスクと同じ建築様式
アシャンティ族住居 ガーナ(アシャンティ地方) 木の骨格に赤土と泥を塗り込んだ壁と、植物繊維で葺いた屋根を持つ中庭式住居
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北アメリカの伝統的な住居(10種)

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名称 国・地域 特徴
イグルー カナダ北部・グリーンランド(イヌイット) 雪のブロックを螺旋状に積み上げたドーム型住居。外気−40℃でも内部を0℃前後に保てる優れた断熱性を持つ
ティーピー 北アメリカ大平原(スー族・シャイアン族等) バッファローの皮を張った円錐形テント。解体・移動が素早く、大平原の遊牧生活に最適
ウィグワム 北アメリカ東部(アルゴンキン語族) 木の枝を曲げてドーム状に組み、樹皮や草で覆った半球形の住居。比較的定住的な農耕・狩猟民族が使用
ロングハウス(イロコイ連邦) 北アメリカ北東部(ホウデノショーニー族) 木の骨格に樹皮を張った長屋。一棟に複数の家族が居住し、母系の氏族制度を反映する
プランクハウス 北アメリカ北西岸(トリンギット族・ハイダ族等) 大型のヒノキ科の木材を板に割って組んだ大型家屋。外壁にはトーテムポールが立つ
アドベ(プエブロ住居) アメリカ南西部(プエブロ族) 日干しレンガ(アドベ)を積み上げた多層式集合住居。乾燥地帯で土を主材料に使う
ホーガン アメリカ(ナバホ族) 丸太と土で作る八角形または円形のドーム型住居。東向きの入口で朝日を迎える宗教的意味を持つ
チキー アメリカ(フロリダ州・セミノール族) 壁を持たない高床式のパームヤシ葺き小屋。フロリダの高温多湿な湿地帯で通気性を最大限に確保する
アースロッジ アメリカ中西部(マンダン族・ヒダサ族等) 木の骨格を土で覆った半地下式のドーム型住居。複数家族が冬を越す大型の定住性住居
クリフドウェリング(断崖住居) アメリカ(コロラド州・メサ・ヴェルデ) 砂岩の断崖の自然の窪みを利用して建てられたアナサジ族(先住民)の集合住居跡。ユネスコ世界遺産(1978年)

中南米の伝統的な住居(5種)

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名称 国・地域 特徴
マロカ コロンビア・ブラジル(アマゾン先住民) 複数の家族が暮らす大型の共同長屋。熱帯の素材(木・棕櫚・葉)のみで建て、集落全体の生活拠点となる
ウロスの葦の家 ペルー・ボリビア(チチカカ湖・ウロス族) チチカカ湖上に浮かぶ葦(トトラ)の束の上に建てられた住居。島ごと浮き島として湖面を移動できる
アンデスのアドベ住居 ペルー・ボリビア(アンデス高地) 標高3,000〜4,000mの高地で日干しレンガと石を組み合わせた住居。厚い壁が昼夜の激しい寒暖差を緩和する
パラフィット(高床水上住居) ベネズエラ(マラカイボ湖・ワユー族) 湖や海岸の水上に杭を立てて建てる高床式住居。スペイン人が発見した際ベネズエラ(小ヴェネツィア)と命名した由来となった
アマゾンの浮き家(カサ・フルトアンテ) ブラジル(アマゾン川流域) 大木の丸太を浮き材にして川面に浮かべた家屋。雨季に数メートル増水するアマゾン川で水位に合わせて上下する
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オセアニアの伝統的な住居(5種)

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名称 国・地域 特徴
ファレ サモア・トンガ等(ポリネシア) 壁を持たないか開放的な柵だけの楕円形高床式小屋。熱帯の通風を最大化するポリネシアの知恵
ファレ・タリ(マオリのウェアレ) ニュージーランド(マオリ) 木彫り装飾を施した切妻屋根の木造住居。祖先の彫像が外壁と内壁を飾り、共同体の精神的中心となる
PNG高床式住居 パプアニューギニア 熱帯雨林の湿地に高床を設け、ヤシの葉で葺いた住居。通気性を確保しながら洪水・害虫・野生動物を避ける
ファルウ(男の家) ミクロネシア(ヤップ島) 石積みの土台に木骨・ヤシ葺きの屋根を持つ共同集会所兼住居。伝統的な社会の意思決定の場
ウィルチャ オーストラリア(アボリジニ) 木の枝・木の皮・葉を組み合わせた簡素なドーム型シェルター。半乾燥地帯で季節移動する狩猟採集民の一時的な住まい

豆知識

住居の形は気候の答えである

住居の形は、その土地の気候に対する人類の知恵が凝縮されています。

円形・ドーム形(イグルー・ゲル・ホーガン・ロンダヴェル)は、外壁の表面積が最小になるため熱の出入りが最も少なく、冷寒地や砂漠の寒暖差に強い形状です。イグルーの内部はエスキモーランプ(アザラシ油の灯火)一つで体温の熱だけでも0℃を超えます。

高床式(バハイ・クボ・ファレ・チキー)は熱帯・湿地帯の知恵です。地表の熱気・湿気・害虫・洪水・ヘビなどの危険から生活空間を離します。床下の通気が冷房効果を生み出します。

洞窟・地下住居(カッパドキア・マトマタ・窑洞)は、地中の安定した温度(年間を通じてほぼ一定)を利用した天然の冷暖房です。砂漠地帯では地上50℃でも地下は20℃台に保たれます。

中庭式住居(リヤド・四合院・アシャンティ住居)は、外に窓を向けず内側の中庭に開口部を集中させることで、砂塵・強風・視線を遮りながら内部に緑と水を取り込む構造です。

ユネスコ世界遺産に登録された伝統住居群

伝統的な住居が「顕著な普遍的価値」を認められ、世界遺産として保護されている例を紹介します。

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住居・集落名 国・地域 登録年
白川郷・五箇山の合掌造り集落 日本 1995年
アルベロベッロのトゥルッリ イタリア 1996年
バンディアガラ断崖(ドゴン族崖居) マリ 1989年
古代都市シバム(高層土造り住居) イエメン 1982年
メサ・ヴェルデ(クリフドウェリング) アメリカ 1978年
福建土楼 中国 2008年

これらの住居は単なる「家」ではなく、その民族の歴史・信仰・技術・自然観が凝縮された文化財です。

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まとめ

世界の伝統的な住居65種類を地域別に紹介しました。住居の素材・形・構造は気候と文化を如実に映しています。現代建築が忘れた自然との知恵を、ぜひ地域ごとに読み比べてみてください。

あわせて読みたい:世界の伝統工芸・民芸品一覧

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