神経伝達物質の種類一覧|ドーパミン・セロトニン・GABA等36種まとめ

神経伝達物質とは、脳・神経系でニューロン(神経細胞)がシナプスを介して情報を伝えるときに使う化学物質のこと。ドーパミン・セロトニン・GABAといった名前を耳にしたことがある人も多いでしょう。現在までに100種類以上が確認されており、気分・記憶・睡眠・食欲・痛覚のほぼすべてが神経伝達物質によって調節されています。この記事では、アミノ酸系・モノアミン系・ペプチド類・ガス状伝達物質まで主要36種を分類別に一覧でまとめます。

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神経伝達物質とは

ニューロンが次のニューロン(または筋肉・腺)へ信号を送るとき、シナプス前終末から放出される化学物質の総称。「興奮性」(標的細胞を活性化する)と「抑制性」(活動を抑える)の2種類に大別されるほか、受容体の種類によって同じ物質が逆の作用をもたらすこともある。

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神経伝達物質の種類一覧36種

アミノ酸系(興奮性・抑制性)→モノアミン系→コリン類→プリン類→ペプチド類→内因性カンナビノイド→ガス状の9分類で全36種を網羅します。各項目の作用は事典的な記述にとどめており、医療・服薬の助言ではありません。

① アミノ酸系(興奮性)

脳内で最も多量に使われる興奮性の伝達物質群。「興奮毒性」と呼ばれる過剰放出は神経細胞の損傷にもつながる。

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名前(読み方) 主な働き・特徴 関連するキーワード
グルタミン酸(グルタミンさん) 脳内で最も広く使われる興奮性伝達物質。学習・記憶・感覚処理に関与。過剰放出は神経毒性(興奮毒性)を引き起こすことがある 学習・記憶・NMDA受容体・興奮毒性
アスパラギン酸(アスパラギンさん) グルタミン酸と同様の興奮性アミノ酸系伝達物質。脊髄での信号伝達に多く関与する 脊髄・興奮性アミノ酸
D-セリン(ディーセリン) グルタミン酸NMDA受容体の共作動薬として機能するアミノ酸。主にグリア細胞(アストロサイト)から放出され、統合失調症研究で注目される NMDA受容体・グリア細胞・統合失調症研究

② アミノ酸系(抑制性)

興奮をブレーキする役割を持つ。睡眠・鎮静・反射の抑制に幅広く関わる。

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GABA(ガバ)γ-アミノ酪酸 脳内最大の抑制性伝達物質。不安・緊張を和らげ精神を安定させる。睡眠の導入にも関わる 抗不安・睡眠・てんかん・ベンゾジアゼピン
グリシン(グリシン) 主に脊髄・脳幹で働く抑制性アミノ酸。反射の調節に関与する。タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も構造が単純 脊髄・反射抑制・抑制性
タウリン(タウリン) GABA受容体・グリシン受容体に作用する抑制調節物質。心筋・視網膜にも多く含まれる(神経調節物質としての性質を持つとされる) 心臓・視網膜・栄養ドリンク・抗酸化

③ モノアミン系

アミノ基を1つ持つ小分子。気分・覚醒・動機づけ・自律神経など幅広く影響する。

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ドーパミン(ドーパミン) 報酬・快楽・やる気・運動の滑らかさを制御。黒質線条体路・中脳辺縁系・前頭前野の3回路で異なる機能を担う やる気・パーキンソン病・統合失調症・依存
ノルアドレナリン(ノルアドレナリン)※ノルエピネフリンとも 集中力・覚醒・ストレス応答を高める。交感神経の主要伝達物質として血圧・心拍にも関与する 集中力・うつ病・ADHD・SNRI・交感神経
アドレナリン(アドレナリン)※エピネフリンとも 主に副腎髄質から分泌されるが、脳の一部でも伝達物質として機能する。闘争・逃走反応を引き起こす 闘争・逃走・興奮・アナフィラキシー
セロトニン(セロトニン) 気分・幸福感・睡眠リズム・食欲・腸管運動を調節する。脳内では主に縫線核で産生される 幸せホルモン・うつ病・SSRI・腸脳軸
ヒスタミン(ヒスタミン) 覚醒・注意・食欲調節に関わる。末梢の免疫細胞から放出されるとアレルギー反応を引き起こす 覚醒・アレルギー・花粉症・抗ヒスタミン薬
β-フェニルエチルアミン(ベータフェニルエチルアミン)※PEA ドーパミン・ノルアドレナリンの分泌を促す内因性トレースアミン。チョコレートに微量含まれることで知られる 恋愛ホルモン・チョコレート・高揚感

④ コリン類

神経と筋肉をつなぐ代表的な伝達物質。記憶・自律神経のほぼすべてに関わる。

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アセチルコリン(アセチルコリン)※ACh 記憶・学習・筋肉収縮・副交感神経(心拍数低下・消化促進)を制御する。1921年に最初に発見された神経伝達物質 記憶・アルツハイマー病・筋弛緩・迷走神経

⑤ プリン類

ヌクレオシド・ヌクレオチドが伝達物質として機能する。睡眠とエネルギー代謝に深く関わる。

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アデノシン(アデノシン) 神経活動が続くと蓄積し、睡眠圧を高める(覚醒を抑制する)。カフェインはこの受容体を阻害して眠気を和らげる 睡眠誘発・カフェイン拮抗・疲労感
ATP(エーティーピー)アデノシン三リン酸 細胞のエネルギー通貨として知られるが、シナプス前終末から共放出されてプリン受容体を活性化する伝達物質でもある 細胞エネルギー・疼痛・共放出

⑥ ペプチド類(オピオイド系)

脳内で作られるモルヒネ様物質。鎮痛・多幸感・依存に関わる。

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β-エンドルフィン(ベータエンドルフィン) 体内で産生される強力な鎮痛ペプチド。モルヒネと同じμ受容体に結合し、多幸感をもたらす。激しい運動時に分泌が増える 脳内モルヒネ・ランナーズハイ・鎮痛
エンケファリン(エンケファリン) β-エンドルフィンより短鎖のオピオイドペプチド。μ受容体とδ受容体に結合して痛みを和らげる 鎮痛・内因性オピオイド・δ受容体
ダイノルフィン(ダイノルフィン) κ受容体に結合するオピオイドペプチド。鎮痛だけでなく、ストレス時の不快感(ジストレス)にも関与するとされる 鎮痛・κ受容体・ストレス不快感
ノシセプチン(ノシセプチン)※OFQ 「第4のオピオイド受容体」(NOP受容体)に結合するペプチド。鎮痛・抗不安・ストレス応答を調節するとされる NOP受容体・鎮痛・抗不安

⑦ ペプチド類(その他)

ホルモンとしても機能するペプチドが多く、脳と体の情報伝達を橋渡しする。

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名前(読み方) 主な働き・特徴 関連するキーワード
オキシトシン(オキシトシン) 信頼・絆・愛着を高める。出産時の子宮収縮・授乳時の乳汁分泌にも関わる 愛情ホルモン・ハグ・信頼・出産
バソプレシン(バソプレシン)※ADH・抗利尿ホルモン 腎臓での水分再吸収を促して血圧を調節する。脳内では社会的絆・縄張り意識にも関与する 抗利尿・血圧・社会行動
サブスタンスP(サブスタンスピー) 痛みの情報を末梢から脊髄後角へ伝える代表的な疼痛伝達物質。炎症反応にも関与する 疼痛・炎症・脊髄後角・片頭痛
ニューロペプチドY(ニューロペプチドワイ)※NPY 視床下部に作用して食欲を強力に促進する。ストレス回復や概日リズムの調節にも関わる 食欲促進・ストレス・概日リズム
コレシストキニン(コレシストキニン)※CCK 食事後に小腸・脳から放出されて満腹感を伝える。胆嚢収縮・膵液分泌を促して消化を助ける 満腹感・消化・胆嚢・膵液
VIP(ブイアイピー)血管作動性腸管ペプチド 血管拡張・平滑筋弛緩に関わる。視交叉上核に多く存在し、概日リズム(体内時計)を制御する 自律神経・体内時計・血管拡張
ニューロテンシン(ニューロテンシン)※NT 体温低下・鎮痛作用を持つ。ドーパミン回路と連動して気分障害の研究で注目される 体温調節・ドーパミン・鎮痛
ソマトスタチン(ソマトスタチン)※成長ホルモン抑制ホルモン 成長ホルモン・インスリン・グルカゴンの分泌を抑制する。脳内では記憶・認知にも関わるとされる 成長ホルモン抑制・インスリン・記憶
オレキシン(オレキシン)※ヒポクレチンとも 覚醒を維持し食欲を高めるペプチド。欠乏するとナルコレプシー(突発的な睡眠発作)を引き起こす 覚醒維持・ナルコレプシー・食欲
ガラニン(ガラニン) 睡眠を促進し食欲を増進する。海馬ではアセチルコリンの分泌を抑制して記憶に影響するとされる 睡眠促進・食欲増進・記憶抑制
CRH(シーアールエイチ)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン 視床下部から放出され、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)のストレス反応を開始する。不安・恐怖感にも関与する ストレス・HPA軸・コルチゾール・恐怖
ニューロキニンA(ニューロキニンエー)※NKA サブスタンスPと同じタキキニン系ペプチド。気管支収縮・疼痛伝達・炎症に関与する 気道収縮・疼痛・タキキニン系

⑧ 内因性カンナビノイド系

体内で合成される大麻様物質。シナプス後細胞から逆方向に放出される「逆行性伝達物質」として知られる。

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名前(読み方) 主な働き・特徴 関連するキーワード
アナンダミド(アナンダミド)※AEA 気分・食欲・痛覚・記憶を調節する内因性カンナビノイド。大麻の主成分THCと同じCB1受容体に作用する。サンスクリット語で「至福」を意味する 至福・CB1受容体・食欲・気分調節
2-AG(ツーエージー)2-アラキドノイルグリセロール 内因性カンナビノイドの中で最も多量に存在する物質。アナンダミドと同様にCB1/CB2受容体を活性化する 内因性カンナビノイド・CB受容体・逆行性

⑨ ガス状神経伝達物質(ガソトランスミッター)

細胞膜を自由に通過する気体分子が直接隣接細胞に作用する。従来の「小胞→受容体」モデルに当てはまらない新しい伝達様式。

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名前(読み方) 主な働き・特徴 関連するキーワード
一酸化窒素(いちさんかちっそ)※NO 血管拡張・シナプスの長期増強(LTP)促進・記憶の固定に関わる逆行性伝達物質。1998年にノーベル生理学・医学賞が授与された 血管拡張・記憶固定・LTP・NO
一酸化炭素(いちさんかたんそ)※CO ヘムオキシゲナーゼ酵素によって体内で微量産生される内因性ガス。一酸化窒素と類似した神経調節・血管弛緩機能を持つとされる 内因性ガス・血管弛緩・神経調節
硫化水素(りゅうかすいそ)※H2S 第3のガス伝達物質として注目される。神経保護・血管拡張・記憶強化への関与が研究されている(現在も研究が進む新興分野) ガソトランスミッター・神経保護・脳保護
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豆知識① 「幸せホルモン」ドーパミン・セロトニン・オキシトシンの違い

3種はいずれも「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、役割は明確に異なります。

  • ドーパミン:「欲しい・達成したい」という動機づけ(期待・報酬)に関わる。目標へ近づく過程やその達成時に分泌が高まる。
  • セロトニン:「今が安定・穏やかだ」という満足感に関わる。日光を浴びることや規則正しい生活で分泌が促進されるとされる。
  • オキシトシン:「このひとを信頼・愛している」という絆の感情に関わる。スキンシップや視線の交流などの対人接触で分泌が高まるとされる。

この3種は互いに影響し合っており、各物質のバランスが精神的な安定と深く関係していると考えられています。心理学の法則・効果まとめ認知バイアス解説も合わせて読むと、人間の行動・思考への理解が深まります。

豆知識② カフェインが眠気を覚ます仕組み(アデノシンの拮抗)

カフェインが眠気を和らげる理由は、アデノシンと深く関係しています。脳はエネルギーを使い続けるとアデノシンを蓄積し、これがA1・A2Aなどの睡眠促進受容体に結合することで眠気が高まります。カフェインはアデノシンと化学構造が似ており、受容体に「偽物」として先に結合することで(競合的拮抗)、本物のアデノシンが入り込む余地を減らします。研究では、特にA2A受容体の阻害が覚醒効果の主役とされています。これが「コーヒーを飲むと眠気が消える」メカニズムです。

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まとめ

神経伝達物質は主要な36種が確認されており、気分・記憶・睡眠・食欲・痛覚・体温調節など私たちの内面のほぼすべてに関与しています。アミノ酸系・モノアミン系・ペプチド類・ガス状と種類は多彩ですが、共通の役割は「シナプスを介してニューロン間の情報を正確に伝えること」です。ドーパミンやセロトニンのように名前がよく知られている物質も、その背後には複雑な受容体・神経回路との相互作用があります。人体の構造をさらに深掘りしたい方は、骨の名前一覧筋肉の名前一覧もあわせてご覧ください。

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