
「冥王星ってなんで惑星じゃなくなったの?」と思ったことはありませんか。2006年、国際天文学連合(IAU)は史上初めて「惑星」の定義を明文化し、冥王星を準惑星へと格下げしました。太陽系の惑星は9つから8つへ。半世紀以上、九番目の惑星として親しまれてきた冥王星にとっては大きな降格です。本記事では、その定義の3条件と降格の理由、IAUが認定する準惑星5天体のプロフィールをわかりやすく解説します。
惑星の定義とは?IAU 2006年の3条件
2006年8月24日、チェコ・プラハで開かれたIAU(国際天文学連合)第26回総会において、「惑星」の公式定義が初めて採択されました。それまで惑星に明確な定義はなく、教科書によって件数が変わるほど曖昧な状態が続いていたのです。
3つの条件
IAUが定めた惑星の定義は、以下の3条件をすべて満たす天体です。
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| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 太陽周回 | 太陽の周りを直接公転している |
| ② 球状の形 | 自己重力で流体力学的平衡(ほぼ球形)を保てる十分な質量を持つ |
| ③ 軌道の支配 | 自分の軌道周辺から他の天体を重力で排除している |
この3つをすべて満たす天体が「惑星」で、現在の太陽系には8つあります。水星・金星・地球・火星(地球型惑星)、木星・土星(木星型惑星)、天王星・海王星(天王星型惑星)の8天体です。
3番目の条件が最大のポイント
①と②の条件は比較的シンプルです。しかし③「軌道の支配」こそが、冥王星の命運を決めた条件でした。惑星は長い時間をかけて周囲の小天体を取り込んだり弾き飛ばしたりして、軌道周辺を「掃き清めた」存在でなければならないのです。
準惑星とは?惑星との違い
準惑星(英語:dwarf planet)は、惑星の①②を満たすが、③を満たさない天体です。
準惑星の条件
- 太陽の周りを公転している(①)
- 自己重力でほぼ球形(②)
- 軌道周辺に他の天体が残っている(③を満たさない)
- 惑星の衛星ではない
簡単にいうと、「丸くなれるほど大きいが、周囲を支配するほど大きくはない天体」が準惑星です。
なぜ冥王星は惑星から外されたのか
冥王星が降格した最大の理由は、「軌道支配」の条件③を満たさなかったからです。しかし、その背景にはひとつの重大な発見がありました。
きっかけはエリスの発見(2005年)
2005年、アメリカの天文学者マイケル・ブラウン率いるチームが、冥王星の外側に新天体「エリス」を発見しました。驚くべきことに、エリスは冥王星よりも質量が大きい天体だったのです。
もしエリスを惑星とするなら10番目の惑星になります。しかし冥王星と同じカイパーベルト(海王星の外側に広がる天体帯)には、類似した大きさの天体が次々と発見されており、それらをすべて「惑星」と呼ぶわけにはいきません。そこでIAUは定義の明確化に踏み切り、冥王星を含む複数の天体を「準惑星」として再分類することにしたのです。
冥王星が外れた理由:軌道を「掃き清め」ていない
冥王星が軌道③を満たせない理由は、その軌道環境にあります。冥王星はカイパーベルトの中に存在しており、周囲には無数の氷天体が共存しています。惑星ならば自らの重力でこれらを弾き飛ばしたり取り込んだりして軌道を独占するはずですが、冥王星はそれができる質量を持っていません。
地球と冥王星を比べると、冥王星の質量は地球の約0.0022倍(1/450以下)に過ぎず、海王星の重力の影響下にある公転軌道をたくさんの小天体と共有している状態です。これが「軌道の支配」ができていないと判断された根拠です。
太陽系の天体の詳しい種類については、天体の種類一覧65種|恒星・惑星・銀河・ブラックホールまで宇宙を完全網羅もあわせてどうぞ。
準惑星5つ一覧と各天体のプロフィール
IAUが現在公式に認定している準惑星は5天体です。発見の古い順にまとめました。
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| 天体名 | 発見年 | 直径(km) | 軌道長半径(AU) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ケレス | 1801年 | 約940 | 2.77 AU | 火星と木星の間(小惑星帯)にある唯一の準惑星 |
| 冥王星 | 1930年 | 約2,370 | 39.4 AU | 76年間「惑星」だった最も有名な準惑星 |
| ハウメア | 2004年 | 約1,560 | 43.1 AU | 高速自転でラグビーボール型に変形した異形の天体 |
| エリス | 2005年 | 約2,326 | 67.8 AU | 冥王星より質量が大きく、降格のきっかけを作った天体 |
| マケマケ | 2005年 | 約1,300〜1,900 | 45.5 AU | イースター島の神話の神の名を持つ赤みがかった天体 |
(1 AU = 地球と太陽の平均距離 約1億5000万km)
ケレス(Ceres)
ケレスは1801年1月1日にイタリアの天文学者ジュゼッペ・ピアッツィが発見した、小惑星帯で最大の天体です。発見当初は「惑星」と呼ばれましたが、その後同じ軌道領域に次々と小惑星が発見されて降格。2006年の定義改定で今度は「準惑星」に認定されました。
直径は約940km(水星の約40%)で球形に近い形状を持ちます。2015年にNASAの探査機ドーンが接近観測を行い、地表に謎の明るい輝点が複数発見されて話題になりました(後に塩の堆積物と判明)。名前はローマ神話の豊穣の女神ケレースに由来します。
冥王星(Pluto)
冥王星は1930年2月18日、アメリカの若き天文学者クライド・トンボーが発見しました。76年間にわたって「太陽系第9惑星」として親しまれましたが、2006年に準惑星へ降格。この決定はいまも議論を呼んでいます。
直径は約2,370kmで月(3,475km)より小さく、カイパーベルトに位置します。最大の衛星カロンは冥王星の約半分の大きさがあり、ほぼ双子惑星のような関係です。2015年にNASAの探査機ニュー・ホライズンズが世界初のフライバイ観測を実施し、ハート型の平原「スプートニク平原」が発見されて大きな反響を呼びました。名前は冥界の神プルートーに由来します。
衛星については惑星の衛星一覧|月・タイタン・エウロパの名前の由来まとめでも詳しく紹介しています。
ハウメア(Haumea)
ハウメアは2004年12月にマイケル・ブラウンのチームが発見しました。最大の特徴は極端な自転速度で、約3.9時間で一回転します(地球の自転は約24時間)。この高速自転による遠心力で、ラグビーボールのような扁平形状に変形しているユニークな天体です。長軸は約1,920km、短軸は約1,000kmほどと推測されています。
2つの衛星(ヒイアカとナマカ)と細い環を持つことが確認されており、準惑星としては珍しい構造体です。名前はハワイ神話の出産と豊穣の女神ハウメアに由来します。
エリス(Eris)
エリスは2005年1月にマイケル・ブラウンらのチームが発見し、「第10惑星か」と騒がれた天体です。その質量は冥王星を上回ることが判明し、「エリスを惑星とするなら10番目、しないなら冥王星も外す必要がある」という議論が起き、2006年のIAU決議を直接促した張本人でもあります。
直径は約2,326kmで冥王星とほぼ同サイズですが、密度が高く質量は冥王星の約1.27倍。太陽から最大67.8 AUという非常に遠い軌道(散乱円盤天体)を持ちます。名前はギリシャ神話の不和と争いの女神エリスに由来し、その発見が惑星論争に火をつけたことと符合します。
マケマケ(Makemake)
マケマケは2005年3月31日(イースターの翌日)にマイケル・ブラウンらのチームが発見しました。南太平洋ラパ・ヌイ島(イースター島)の神話に登場する創造神マケマケにちなんで命名され、発見日がイースターと重なることからも選ばれた名前です。
表面にはメタンや窒素の氷が豊富で、赤みがかった色をしています。2016年には微小な衛星(通称MK 2)が発見されました。直径は推定1,300〜1,900kmとまだ誤差が大きく、詳細な観測が待たれます。
惑星の定義は今も議論中?
2006年のIAU決議は賛成多数で採択されたものの、出席した天文学者全体から見れば投票参加率は高くなく(総会参加者約2,500人のうち賛成票は424票)、その後も「定義が不完全だ」とする反論が天文学者の間で続いています。
特に、「軌道の掃き清め」を条件にした場合、位置によって天体の「格」が変わる可能性があるという問題点が指摘されています。たとえば地球が木星の軌道にあった場合、地球もカイパーベルトの天体を排除できず「準惑星」になってしまうと計算されます。
2019年には「地球型惑星科学者」たちが「球状であれば惑星と呼ぶべき」と主張する新たな定義を提唱し、冥王星の再昇格を求める声は絶えません。ただしIAUが正式に定義を見直す動きは2026年現在、まだ起きていません。
まとめ
惑星の定義はIAUが2006年に明文化した「①太陽周回・②球形・③軌道支配」の3条件で、この3つをすべて満たす太陽系の天体が現在8つの惑星です。冥王星は③を満たせず準惑星に降格。同じ仲間の準惑星には、ケレス・エリス・ハウメア・マケマケの4天体がIAUに認定されています。「惑星とは何か」の議論は今も続いており、宇宙の知識が深まるほど、その定義の難しさが見えてきます。
太陽系のほかの天体についても知りたい方は、天体の種類一覧65種もあわせてご覧いただけると嬉しいです。
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