惑星の衛星一覧|月・タイタン・エウロパの名前の由来まとめ

太陽系の惑星を周回する衛星は、2026年時点で463個以上が確認されています。地球の「月」、土星の「タイタン」、木星の「エウロパ」──これらの名前はギリシャ神話の神々・北欧神話の巨人、さらにはシェイクスピアの戯曲の登場人物まで、さまざまな由来を持っています。本記事では太陽系の主要衛星57個を惑星別にテーブルで一覧化し、それぞれの名前の由来を解説します。

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惑星別の主要衛星と命名由来

各惑星の衛星は、その惑星の神話上の神格と関係する人物・生き物にちなんで命名されるのが慣例です。惑星ごとの命名テーマに注目しながら確認してみましょう。

地球の衛星

地球を周回する天然衛星は「月(Moon)」の1個のみです。「Moon」はプロト・ゲルマン語の「月を意味するメーネー(Mēnē)」から派生した一般名詞で、ギリシャ語では「セレネー(Selene)」に相当します。日本語の「つき」も古く「輝くもの」を意味するとされています。

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衛星名 命名由来(神話・言語) 主な特徴
月(Moon) プロト・ゲルマン語の月の女神「メーネー」に由来 太陽系で5番目に大きい衛星・地球の潮汐を支配

火星の衛星

火星(マルス)は古代ローマの軍神で、ギリシャ神話のアレスにあたります。2つの衛星は、アレスとアフロディーテの息子である「恐怖の神」と「恐慌の神」から命名されています。1877年にアサフ・ホールが発見しました。

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衛星名 命名由来(神話・文学の人物) 主な特徴
フォボス ギリシャ神話の恐怖の神・アレスの息子 火星最内部の衛星・約8時間で1周・火星より速く公転
ダイモス ギリシャ神話の恐慌・敗走の神・アレスの息子 火星の外側衛星・表面が砂塵に覆われ滑らか
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木星の衛星

木星(ユーピテル)はローマ神話の最高神で、ギリシャ神話のゼウスにあたります。木星の衛星は「ゼウスの愛人・関係者」が命名テーマです。1610年にガリレオ・ガリレイが発見した4個の大型衛星は「ガリレオ衛星」と呼ばれ、太陽系の衛星研究の出発点となりました。木星には2026年現在115個以上の衛星が確認されています。

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衛星名 命名由来(神話の人物) 主な特徴
メティス ゼウスの最初の妻・知恵の女神(飲み込まれアテナが誕生) 木星最内部の衛星・木星環の外端付近を公転
アドラステア ゼウスを乳幼児期に育てたニンフ(復讐の女神の別称とも) 木星環の外端に沿って公転
アマルテア ゼウスを育てたヤギ(またはニンフ)の名前 赤みがかった楕円形・太陽系で最も赤い天体の1つ
テーベ ゼウスの愛人とされるボイオーティアのニンフ・アソポスの娘 アマルテアの外側を公転
イオ ゼウスの愛人・アルゴスの王女・ヘラに牛に変えられた 太陽系で最も活発な火山活動を持つ
エウロパ ゼウスが白牛に変身して連れ去ったフェニキアの王女 氷の表面の下に液体の海・生命存在の可能性
ガニメデ ゼウスが鷲に変装して天界へ連れ去った美少年・水瓶座の起源 太陽系最大の衛星・水星より大きく独自の磁場を持つ
カリスト ゼウスの愛人・アルテミスの従者・ヘラに熊に変えられた・大熊座の起源 ガリレオ衛星中最外部・古いクレーターが多数
ヒマリア ロードス島の泉の精霊・ゼウスの愛人の1人 木星の主要不規則衛星・直径約150km
エラーラ ゼウスの愛人・ゼウスとの間に巨人を産んだとされる ヒマリア群の一員
パシファエ クレタ王ミノスの妻・牛と交わりミノタウロスを産んだ 逆行軌道を持つ不規則衛星
シノペ ゼウスの愛人・機転でゼウスに永遠の純潔を約束させた 最も遠い不規則衛星の1つ・逆行軌道

土星の衛星

土星(サトゥルヌス)はギリシャ神話のクロノスにあたります。規則衛星はティターン神族(クロノスの一族)から命名されており、遠方の不規則衛星は北欧神話・ケルト神話・イヌイット神話からも命名されています。土星は2026年4月時点で292個以上の衛星が確認されており、太陽系で最多衛星惑星です。

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衛星名 命名由来(神話の人物) 主な特徴
ミマス ガイアの子・ギガンテスの巨人の1人 大クレーター「ハーシェル」が目立つ・デス・スターに似た外観
エンケラドゥス ガイアの子・ギガンテスの1人・アテナに地下へ封じられた 南極から水蒸気・液体を噴出する間欠泉・生命の可能性
テティス ティターン族の海の女神・オーケアノスの妹で妻 表面の大部分が水の氷・大クレーターと峡谷が特徴
ディオネ ティターン族の女神・アフロディーテの母とも言われる 一方に明るい断崖・もう一方に暗い地形
レア ティターン族・クロノスの妻・オリンポスの神々を産んだ母 土星の第2位の大きさの衛星
タイタン ティターン神族全体を指す総称 土星最大の衛星・窒素大気と液体メタンの湖を持つ
ハイペリオン ティターン族の光の神・太陽神ヘリオスの父 スポンジ状の不規則な形状・自転軸が混沌
イアペトゥス ティターン族・プロメテウスとエピメテウスの父 片面が真っ黒・片面が白という顕著な二面性
フォエベ ティターン族の月の女神(アルテミスの別称) 逆行軌道・太陽系外縁から捕獲された天体の可能性
ユミル 北欧神話の原初の霜の巨人・神々の大敵 北欧群の不規則衛星
スカジ 北欧神話の冬・狩猟・山岳の女神 北欧群の不規則衛星
スリュム 北欧神話の霜の巨人・トールの槌ミョルニルを盗んだ 北欧群の不規則衛星
ムンディルファリ 北欧神話の月と太陽の父(神々への傲慢で罰せられた) 北欧群の不規則衛星
キビウク イヌイット神話の不死の旅人・英雄 イヌイット群の不規則衛星
イジラク イヌイット神話の謎めいた精霊・変身するとも言われる イヌイット群の不規則衛星
パーリアク イヌイット神話の狡猾な精霊・悪意を持つとされる イヌイット群の不規則衛星
アルビオリクス ガリア(ケルト)神話の神々の王 ガリア群の不規則衛星
タルヴォス ガリア(ケルト)神話の雄牛の神・聖なる牛と戦う姿で描かれる ガリア群の不規則衛星

天王星の衛星

天王星の衛星には、他の惑星と全く異なる命名法が使われています。シェイクスピアの戯曲とアレクサンダー・ポープの詩の登場人物にちなんで命名するのが慣行です。1852年、ジョン・ハーシェルが最初の4個の衛星に名前を付けたことから始まり、現在も同じルールが踏襲されています。天王星には2026年時点で29個の衛星が確認されています。

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衛星名 命名由来(シェイクスピア・ポープの作品) 主な特徴
コーデリア 『リア王』のリア王の末娘 天王星の環の内端に位置する羊飼い衛星
オフェーリア 『ハムレット』のハムレットの恋人 コーデリアと対で環の番人として機能
ビアンカ 『じゃじゃ馬ならし』のカタリーナの妹・温順な性格 小型の内部衛星
クレシダ 『トロイラスとクレシダ』のトロイアの娘 小型の内部衛星
デズデモーナ 『オセロ』のオセロの妻・嫉妬により殺される 小型の内部衛星
ジュリエット 『ロミオとジュリエット』のヒロイン やや大きめの内部衛星
ポーシャ 『ヴェニスの商人』の才媛・弁護士に変装して活躍 内部衛星で比較的大きい
ロザリンド 『お気に召すまま』の主人公・男装して活躍する娘 小型の衛星
マブ 『ロミオとジュリエット』内で言及される妖精の女王 小型の衛星
ベリンダ ポープ『髪盗人』の主人公・ロレーンの美しい令嬢 内部衛星
パック 『真夏の夜の夢』の妖精・ロビン・グッドフェロー 内部衛星の中では比較的大きい
ミランダ 『テンペスト』の大公プロスペローの娘 太陽系最大規模の断崖「ヴェローナ・ルペス」が存在
アリエル 『テンペスト』の空気の精霊(ポープ版でも登場) 天王星衛星で最も明るい表面
ウンブリエル ポープ『髪盗人』の暗くてむっつりした精霊 暗い表面・謎の明るい環状模様「ウンダ」が存在
ティターニア 『真夏の夜の夢』の妖精の女王 天王星最大の衛星
オベロン 『真夏の夜の夢』の妖精の王・ティターニアの夫 天王星第2位の衛星・多数の大型クレーター

海王星の衛星

海王星(ネプトゥーヌス)はギリシャ神話の海の神ポセイドンにあたります。衛星の命名テーマは「海や水に関係するギリシャ神話の神々・精霊」です。16個が確認されており、最大の衛星トリトンは太陽系の大型衛星の中で唯一、惑星の自転と逆方向(逆行)に公転する特異な軌道を持っています。

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衛星名 命名由来(神話の人物) 主な特徴
ナイアド ギリシャ神話の淡水の精霊(泉・川・池のニンフ) 海王星最内部の衛星
タラッサ ギリシャ神話の原初の海の女神(「海」の擬人化) 環の内側付近を公転
デスポイナ ポセイドンとデメテルの娘・馬の姿で生まれたとされる 環の番人的役割
ガラテア 海のニンフ・キュクロプスのポリュペモスに愛された美しいニンフ 海王星の環の形成に影響
ラリッサ ポセイドンの愛人とされるギリシャの地名由来のニンフ 不規則な楕円形状
プロテウス ポセイドンの息子・変身の達人「海の老人」・予言の神 海王星で2番目に大きい衛星
トリトン ポセイドンとアンフィトリーテの息子・半人半魚の海の神 太陽系唯一の大型逆行衛星・窒素の間欠泉を持つ
ネレイド 海のニンフ(ネレウスの50人の娘の総称) 極端に細長い楕円軌道・公転周期360日以上
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衛星命名の豆知識

命名は国際天文学連合(IAU)が管理

衛星の名前は個人や国が自由に決められるわけではありません。1973年以降、国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループが管理しており、発見者が候補名を提案し、IAUが審査・承認する形で正式名称が決まります。名前の提案には「惑星の神話テーマと関係があること」という条件が求められます。

惑星ごとの命名テーマ一覧

同じギリシャ・ローマ神話でも、各惑星の神格に合わせて命名テーマが細かく分かれています。

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惑星 命名テーマ
火星(マルス) アレス(マルス)の息子・仲間の戦闘関係者
木星(ユーピテル) ゼウスの愛人・使者・関係者
土星(サトゥルヌス) ティターン神族(規則衛星)・北欧/ケルト/イヌイット神話(不規則衛星)
天王星(ウラヌス) シェイクスピアの戯曲+ポープの詩の登場人物
海王星(ネプトゥーヌス) 海・水に関わるギリシャ神話の神々・精霊
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土星の不規則衛星は「三文化の神話」から命名

土星の遠方にある不規則衛星は、軌道の傾き・公転方向によって3グループに分類されます。北欧群(北欧神話)、ガリア群(ケルト・ガリア神話)、イヌイット群(イヌイット神話)と、それぞれまったく異なる文化の神話から命名されているのが大きな特徴です。天文学者が北欧・ケルト・イヌイットと命名源を分けることで、軌道グループの所属が名前からすぐわかるという実用上の利点もあります。

天王星だけシェイクスピアを採用した理由

天王星(ウラヌス)自体はギリシャ神話の天空神ウラノスに由来しますが、衛星の命名だけはなぜか「イギリス文学」です。1852年、天文学者ジョン・ハーシェルが最初の4個の衛星を命名する際、父ウィリアム・ハーシェルによる天王星発見(1781年)へのオマージュとして、イギリス文学の作品から人名を採用しました。「天空の神」と「空気・妖精を扱うイギリス詩劇」の組み合わせが、詩的にうまく噛み合ったとも言われています。この独自の慣行がそのまま現在まで続いています。

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まとめ

今回ご紹介した太陽系の主要衛星57個の名前は、惑星ごとにギリシャ神話・北欧神話・ケルト神話・イヌイット神話・シェイクスピア作品と、まったく異なるテーマから命名されています。木星衛星に「ゼウスの愛人たち」、土星衛星に「ティターン神族+三文化の神話」、天王星衛星に「シェイクスピアの登場人物」という法則を知ると、夜空を眺める楽しみが格段に増します。衛星の総数は観測技術の進歩とともに今も増え続けており、新しい衛星が発見されるたびに神話・文学から新たな名前が採用されています。

宇宙の天体名の由来が気になる方は、88星座の名前の由来・神話一覧恒星の名前一覧|一等星21種を含む固有名のある星72選もあわせてどうぞ。

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