
中国には数千年の歴史を持つ伝統色の体系があります。朱砂(しゅさ)・胭脂(えんじ)・天青(てんせい)など、自然・文化・哲学を反映した色名が今も使われています。この記事では102色を7系統に分類し、HEXカラーコード・読み方・由来を一覧にまとめました。日本の伝統色との比較にもぜひご活用ください。
中国の伝統色(中国传统色)とは
中国の伝統色(中国語:中国传统色 zhōngguó chuántǒng sè)は、数千年の歴史の中で蓄積された色名の体系です。漢代の染色術、宋代の陶磁器(汝窯の天青色が有名)、明清代の絵画・建築から生まれた色たちが今に伝わります。
現代の研究では300〜500色以上が記録されており、収録する文献によって数が異なります。この記事のHEXカラーコードは複数の公開資料を参照した近似値です(文献によって微妙に異なる場合があります)。
中国の伝統色の大きな特徴は、五行思想との深い結びつきです。「青・赤・黄・白・黒」の五色(五正色)は、木・火・土・金・水の五行、さらに方角・季節・自然現象と対応しており、単なる色以上の意味を持っています。
赤系(紅系)
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 朱砂 | しゅさ | #FF461F | 辰砂(硫化水銀の鉱物)から作られる顔料の赤。朱肉・印鑑・漆器に使われてきた |
| 朱红 | しゅこう | #FF4C00 | 朱色。漆器や印鑑でおなじみの明るい赤 |
| 大红 | だいこう | #FF2121 | 純粋で鮮やかな赤。婚礼・慶事を彩る祝いの色 |
| 丹 | たん | #FF4E20 | 朱丹色。「丹精(誠意)」「丹薬(仙薬)」にも使われる語 |
| 妃色 | ひしょく | #ED5736 | 后妃(皇后・側室)の衣装に使われた赤 |
| 胭脂 | えんじ | #9D2933 | 紅花・紫草から作る口紅・頬紅の色。日本語の「えんじ色」の語源でもある |
| 朱殷 | しゅいん | #B93A26 | 深く暗みのある朱色 |
| 枣红 | そうこう | #C32136 | ナツメ(棗)の実のような深い赤 |
| 真红 | しんこう | #BE002F | 純粋な深紅色 |
| 绛 | こう | #C03042 | 深みのある暗紅色。古典小説『紅楼夢』の「绛珠仙草」にも登場する |
| 茜色 | せんしょく | #CB3A56 | アカネ(茜草)から作る植物染料の赤。古来から使われてきた |
| 海棠红 | かいどうこう | #DB5A6B | カイドウ(海棠)の花の赤。清楚な赤みがかった桃色 |
| 桃红 | とうこう | #F47983 | 桃の花の色。中国では春と美を象徴する |
| 粉红 | ふんこう | #FFB3A7 | 薄い紅色(ピンク系)。「粉」は白粉(おしろい)の意 |
| 玫瑰红 | まいかいこう | #F00056 | バラ(玫瑰)の深い赤 |
| 石榴红 | せきりゅうこう | #F20C00 | ザクロ(石榴)の実の鮮やかな赤 |
| 绯 | ひ | #D60F0F | 緋色。古代官服の色としても知られる深い赤 |
| 赤 | せき | #C3272B | 五正色のひとつ。南・火・夏に対応する |
| 银红 | ぎんこう | #E7CAD3 | 銀みがかった薄い紅色 |
| 水红 | すいこう | #ECB0C1 | 水のように透けるような淡い紅 |
黄系
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 明黄 | めいこう | #FFF143 | 鮮やかな明るい黄。皇帝専用の色として珍重された |
| 杏黄 | きょうこう | #FFA631 | アンズ(杏)の花・実の色。温かみのある黄 |
| 藤黄 | とうこう | #FFB61E | 藤黄樹の樹脂から作る顔料の黄色。水彩画にも使用された |
| 姜黄 | しょうこう | #FFC773 | ショウガ(生姜)の根の色。ウコン染めに近い |
| 金黄 | きんこう | #E9BB1D | 金色に近い輝く黄 |
| 赤金 | せききん | #F2BE45 | 赤みを帯びた金色 |
| 柘黄 | しゃこう | #C67915 | 柘(つるぼ)の木から作る染料の色。隋・唐代に天子専用とされた |
| 秋香 | しゅうこう | #BF9C46 | 秋の実りを想わせる黄褐色 |
| 枯黄 | ここう | #D3B17D | 枯れ草の黄色。晩秋の風情を表す |
| 土黄 | どこう | #AE7000 | 大地の色。素朴な古典的黄色 |
| 鸭黄 | おうこう | #FAFF72 | 生まれたての鴨のひなの淡い黄色 |
| 金色 | きんしょく | #EACD76 | 金の輝き。富・繁栄の象徴色 |
| 蜜合 | みつごう | #DFD7C2 | 蜂蜜を思わせる淡い黄白色 |
| 象牙黄 | ぞうげこう | #EEDEB0 | 象牙のような暖かみのある黄白 |
| 雌黄 | しこう | #B4884D | 雌黄(砒素硫化物系の顔料)から作る黄色。古代に文書の誤りを塗り消すのにも使われた |
緑系
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 翠 | すい | #00E079 | 翡翠(かわせみ)の羽の鮮やかな緑 |
| 碧 | へき | #3FA796 | 碧玉(碧色の翡翠)の青緑色 |
| 翡翠色 | ひすいしょく | #3DE1AD | 翡翠(ヒスイ)の宝石の色 |
| 竹绿 | ちくりょく | #789262 | 竹林の深みのある緑 |
| 豆绿 | とうりょく | #9ED048 | 若い豆のような明るい黄緑 |
| 草绿 | そうりょく | #40DE5A | 草の緑。生命力と春を象徴する |
| 松花绿 | しょうかりょく | #057748 | 松の木の深く暗い緑 |
| 官绿 | かんりょく | #2A6E3F | 官服(官吏の服)に使われた格式ある緑 |
| 玉色 | ぎょくしょく | #2EDFA3 | 玉(ぎょく)の色。高貴・清廉を象徴する |
| 孔雀绿 | くじゃくりょく | #1BD1A5 | 孔雀(くじゃく)の羽の緑 |
| 嫩绿 | きりょく | #BDDD22 | 若草色。若々しさ・春の色 |
| 柳绿 | りゅうりょく | #AFDD22 | 柳の葉の薄緑。春の訪れを象徴する |
| 曲尘 | きょくじん | #C0D09D | 麴(こうじ)の粉末のような薄緑 |
| 鸭卵青 | おうらんせい | #E0EEE8 | カモの卵の殻のような淡い青緑 |
| 苔绿 | たいりょく | #8D9051 | 苔(こけ)の色。渋みのある深緑 |
青・藍系
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 青 | せい | #2775B6 | 五正色のひとつ。東・木・春に対応。中国語では青〜緑の広い色域を指す |
| 靛蓝 | てんらん | #065279 | 藍(インジゴ)染めの深い青。古来の植物染料 |
| 靛青 | てんせい | #177CB0 | 靛(藍植物)の青。品のある深い青 |
| 藏蓝 | ぞうらん | #3B2E7E | チベット(蔵)に伝わる深い藍青 |
| 宝蓝 | ほうらん | #2B6CB2 | 宝石(サファイア)のような鮮やかな青 |
| 品蓝 | ひんらん | #4B5CC4 | 正統な青。官服・礼服に使われた |
| 群青 | ぐんせい | #4C8DAE | 群青色。ラピスラズリ顔料に近い |
| 碧蓝 | へきらん | #3EEDE7 | 碧い澄んだ青。熱帯の海のような色 |
| 蔚蓝 | いらん | #70F3FF | 晴天の空のような明るい青 |
| 湖蓝 | こらん | #30DFF3 | 湖面に映る青。透明感がある |
| 天青 | てんせい | #8AABCC | 宋代・汝窯の釉薬色。「雨過天青(雨上がりの空の色)」として名高い |
| 霁蓝 | せいらん | #3C4654 | 雨上がりの空の深く澄んだ青 |
| 花青 | かせい | #1A2847 | 大青(植物)から作る顔料の深い青 |
| 青黛 | せいたい | #45465E | 青黛(顔料)の深い青灰色。眉墨(眉を描く顔料)にも使われた |
| 月白 | げっぱく | #D6ECF0 | 月光のような白みがかった青。「月白風清」の色 |
| 孔雀蓝 | くじゃくらん | #4994C4 | 孔雀の羽の青みがかった色 |
紫系
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 紫 | し | #8D4BBB | 五間色のひとつ。高貴・皇族を象徴する |
| 绛紫 | こうし | #8C4356 | 深みのある暗紫色 |
| 葡萄紫 | ぶどうし | #6B2A2A | ブドウの実の深い紫 |
| 茄紫 | かし | #6C216D | ナス(茄子)のような紫 |
| 魏紫 | ぎし | #903754 | 魏朝にちなむ紫。牡丹の品種名にも使われる |
| 紫棠 | してき | #56004F | 棠棣(ヤマナシ)の花の深い紫 |
| 木槿 | もくきん | #BA79B1 | ムクゲ(木槿)の花の淡い紫 |
| 丁香 | ちょうこう | #CE93BF | チョウジ(丁香)の花の薄紫 |
| 紫苑 | しおん | #757CBB | シオン(紫苑)の花の青紫 |
| 青莲 | せいれん | #801DAE | 青蓮(蓮の花)の深い紫 |
| 黛紫 | たいし | #574266 | 黛(まゆずみ)のような暗紫 |
| 雪青 | せっせい | #B0A4E3 | 雪のように淡い青紫 |
黒・白・灰系
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 黑 | こく | #000000 | 純粋な黒(五正色のひとつ)。北・水・冬と対応 |
| 墨 | ぼく | #50616D | 墨(煤煙+膠から作る)の色。書道・水墨画の色 |
| 玄 | げん | #3D3B4F | 深く暗みのある青黒。「天地玄黄(天は黒く地は黄)」の玄 |
| 玄青 | げんせい | #3A3D4A | 玄に青みが混じった深い暗色 |
| 漆黑 | しっこく | #161823 | 漆(うるし)のような深い漆黒 |
| 乌黑 | うこく | #392F41 | 烏(からす)の羽のような黒 |
| 缁色 | しょく | #493131 | 僧侶の黒法衣の色。出家・脱俗を象徴する |
| 灰 | はい | #808080 | 灰色 |
| 墨灰 | ぼくはい | #758A99 | 墨のような灰みがかった色 |
| 白 | はく | #FFFFFF | 純白(五正色のひとつ)。西・金・秋と対応 |
| 象牙白 | ぞうげはく | #FFFFEC | 象牙のような暖かみのある白 |
| 莹白 | えいはく | #E3F9FD | 水晶のように輝く純白 |
褐色系(茶系)
← 横にスクロールできます →
| 色名 | 読み | カラーコード | 意味・特徴 |
|---|---|---|---|
| 棕 | そう | #7C5B3E | 棕櫚(シュロ)の繊維の色 |
| 茶 | ちゃ | #8B6952 | 茶色。中国茶文化と深く結びついた伝統色 |
| 赭 | しゃ | #9C5333 | 赭石(赤鉄鉱)から作る顔料の赤褐色 |
| 栗 | りつ | #60281E | 栗(くり)の実の色 |
| 驼色 | だしょく | #A88462 | ラクダ(駱駝)の毛の色 |
| 褐色 | かっしょく | #6E511E | 褐色(かっしょく)。粗末な布の色 |
| 棕褐 | そうかつ | #7A5C40 | 棕と褐が混ざった色 |
| 沉香 | じんこう | #99806C | 沈香(じんこう)という香木の色 |
| 枣褐 | そうかつ | #68361A | ナツメ(棗)のような暗褐色 |
| 琥珀 | こはく | #CA6924 | 琥珀の色 |
| 棠梨 | とうり | #B15A43 | 棠梨(シャリン梅)の実の赤褐色 |
| 丁香褐 | ちょうこうかつ | #BD9683 | チョウジの実のような淡い褐色 |
豆知識①:五行思想と五色(五正色)
中国の伝統色を理解するうえで欠かせないのが五行思想との結びつきです。万物を「木・火・土・金・水」の5つの元素で捉えるこの思想は、色にも対応しています。
← 横にスクロールできます →
| 五行 | 五正色 | 方角 | 季節 | 象徴 |
|---|---|---|---|---|
| 木 | 青(qīng) | 東 | 春 | 生命・成長 |
| 火 | 赤(chì) | 南 | 夏 | 情熱・繁栄 |
| 土 | 黄(huáng) | 中央 | 土用 | 大地・安定 |
| 金 | 白(bái) | 西 | 秋 | 清潔・収穫 |
| 水 | 黒(hēi) | 北 | 冬 | 知恵・静寂 |
「青・赤・黄・白・黒」の5色を五正色(ごせいしょく)と呼び、権威・格式を持つ「正(ただしい)色」とされました。北京の紫禁城には五正色を象徴する五色の建物があり、今も五行の思想が建築に刻まれています。
豆知識②:正色と間色——皇帝の色の秘密
五行の5色(正色)を混ぜて作られた色を間色(かんしょく)と呼びます。正色は高貴な身分(皇族・官吏)が使う色とされ、間色は庶民の色として位置づけられていました。
← 横にスクロールできます →
| 区分 | 色 | 意味 |
|---|---|---|
| 正色(五正色) | 青・赤・黄・白・黒 | 高貴・権威の色 |
| 間色(五間色) | 紫・緑・绯・硫黄・黒 | 庶民・補助的な色 |
特に黄(明黄・柘黄)は皇帝専用の色とされ、庶民がこの色の衣服を着ることは禁じられていました。また紫は「間色」でありながら神秘的な魅力から高貴な色とされ、皇族にも好まれました。北京の「紫禁城」という名も、この紫が持つ高貴さに由来します(紫微星=天子の星に由来する説も)。
まとめ
中国の伝統色102色を、赤・黄・緑・青・紫・黒白・褐色の7系統に分けて紹介しました。五行思想に根ざした五正色から、胭脂・天青・翡翠色といった詩的な色名まで、中国の文化・自然・哲学が凝縮されています。
日本の伝統色と比べながら眺めると、漢字文化圏に共通する色彩の感性と、それぞれの独自性が見えてきます。日本の伝統色については日本の伝統色77色一覧もあわせてご覧ください。また、中国の神話・文化全般に興味がある方は中国神話をわかりやすく解説|盤古・女媧・道教の神々と三皇五帝もおすすめです。