
日本語には、色の名前にこそ「和の美意識」が凝縮されています。「桜色」「茜色」「浅葱色」——自然の情景からそのまま切り取ったような言葉は、1100色を超えるとも言われる日本の伝統色(和色)のほんの一部。
この記事では、代表的な伝統色77色を7系統に分類し、読み方・HEXカラーコード・由来をまとめます。天皇だけに許された「絶対禁色」や、江戸っ子の粋な色文化「四十八茶百鼠」など、和色にまつわる面白い話も合わせてどうぞ。
日本の伝統色とは
日本の伝統色(和色)とは、自然の草花・鳥獣・鉱物・染料などにちなんだ名前を持つ色のことです。奈良・平安時代から発展し、江戸時代にかけて表現の繊細さが増してきました。
最大の特徴は「色名が由来を内包している」点です。「茜色」なら茜草の根で染めた赤、「桜色」なら桜の花びらの淡いピンク——色名を見れば、染料や自然のモチーフがすぐに浮かびます。
日本の伝統色の総数は研究者によって異なりますが、1100色以上が記録されているとする説が有力です。単なる「薄いピンク」にも桜色・桃色・撫子色など複数の名前が存在するほど、日本の色彩表現は細かく発達しました。
系統別・日本の伝統色77色一覧
HEXコードは参考値です。伝統色はデジタル以前の概念のため、資料によって数値が異なる場合があります。
赤・橙・桃系の伝統色(16色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 紅 | べに | #C0204F | 紅花から採る深みのある赤 |
| 紅色 | べにいろ | #D9333F | 紅の代表的な鮮やかな赤 |
| 朱色 | しゅいろ | #E83929 | 水銀の硫化物(朱砂)の橙赤 |
| 緋色 | ひいろ | #CF3F14 | 茜草で染めた鮮烈な赤 |
| 茜色 | あかねいろ | #9E0034 | 茜草の根で染めた暗赤色 |
| 今様色 | いまよういろ | #CF3579 | 平安中期に流行した明るい紅 |
| 韓紅花 | からくれない | #9B0048 | 大量の紅花で染めた濃紅 |
| 桜色 | さくらいろ | #FEECED | 桜の花のごく淡いピンク |
| 桃色 | ももいろ | #F9B7C6 | 桃の花の柔らかいピンク |
| 撫子色 | なでしこいろ | #E891AE | ナデシコの花の濃いピンク |
| 牡丹色 | ぼたんいろ | #E8518A | 牡丹の花の鮮やかな紅紫 |
| 珊瑚色 | さんごいろ | #F4A097 | 珊瑚のオレンジがかったピンク |
| 梅色 | うめいろ | #EA879C | 梅の花の中間的なピンク |
| 柿色 | かきいろ | #EF7B3C | 完熟した柿の橙赤色 |
| 曙色 | あけぼのいろ | #F2927D | 夜明けの空の薄い橙赤 |
| 黄丹 | おうに | #F07F00 | 皇太子のみ許された絶対禁色 |
黄色系の伝統色(9色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 黄色 | きいろ | #FFD700 | 基本の黄色 |
| 山吹色 | やまぶきいろ | #F7AA00 | ヤマブキの花の鮮やかな黄 |
| 菜の花色 | なのはないろ | #F0E020 | 菜の花の明るい黄 |
| 黄金色 | こがねいろ | #E6B422 | 黄金の輝きを表す黄 |
| 蒲公英色 | たんぽぽいろ | #F5C518 | タンポポの花の黄 |
| 鬱金色 | うこんいろ | #E6A817 | ウコン(ターメリック)染めの黄 |
| 向日葵色 | ひまわりいろ | #F5B800 | ヒマワリの橙がかった黄 |
| 浅黄 | うすき | #F3C13A | 平安時代から用いられる薄い黄 |
| 黄櫨染 | こうろぜん | #C78C2E | 天皇のみ許された絶対禁色 |
緑系の伝統色(12色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 若草色 | わかくさいろ | #B0D06D | 春の若草の明るい緑 |
| 萌黄色 | もえぎいろ | #8DB255 | 芽吹きの黄緑色 |
| 若竹色 | わかたけいろ | #5DAF74 | 若い竹の明るい緑 |
| 柳色 | やなぎいろ | #B4C96D | 柳の葉の黄緑 |
| 青竹色 | あおたけいろ | #3B8A64 | 青々とした竹の緑 |
| 松葉色 | まつばいろ | #4F6F44 | 松の葉の深みある緑 |
| 鶯色 | うぐいすいろ | #96882A | ウグイスの背羽の黄緑褐 |
| 常磐色 | ときわいろ | #006B3C | 常緑樹の濃い深緑 |
| 深緑 | ふかみどり | #005831 | 深く暗い緑色 |
| 抹茶色 | まっちゃいろ | #908833 | 抹茶の暗みがかった緑黄 |
| 千歳緑 | ちとせみどり | #006334 | 長寿を象徴する深緑 |
| 海松色 | みるいろ | #474B23 | 海藻「ミル」のオリーブ色 |
青・藍・水色系の伝統色(12色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 藍色 | あいいろ | #16457A | 蓼藍で染めた深い青 |
| 縹色 | はなだいろ | #1E6DBF | 薄い藍色・古名「はなだ」 |
| 浅葱色 | あさぎいろ | #00A5A5 | 薄い葱の葉のような青緑 |
| 水色 | みずいろ | #83CCD2 | 清流を思わせる淡い青 |
| 空色 | そらいろ | #6699CC | 晴れた空の青 |
| 瑠璃色 | るりいろ | #2951A2 | ラピスラズリの深い青紫 |
| 群青色 | ぐんじょういろ | #4051A5 | 岩絵具の鮮明な青紫 |
| 紺色 | こんいろ | #213A72 | 濃く染めた藍の紺 |
| 花浅葱 | はなあさぎ | #50ABCA | 浅葱より明るい青緑 |
| 御納戸色 | おなんどいろ | #3A7DA5 | やや暗みのある青緑 |
| 鉄色 | てついろ | #2B3349 | 鉄のような暗い青黒 |
| 錆浅葱 | さびあさぎ | #5B8EA6 | 錆びた浅葱のくすんだ青緑 |
紫系の伝統色(8色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 紫 | むらさき | #4B0082 | 紫草の根で染めた高貴な色 |
| 藤色 | ふじいろ | #9785BF | 藤の花の薄紫 |
| 菫色 | すみれいろ | #5B44A0 | スミレの花の青紫 |
| 桔梗色 | ききょういろ | #6A4C95 | キキョウの花の青紫 |
| 江戸紫 | えどむらさき | #66327C | 江戸時代に流行した紫 |
| 葡萄色 | えびいろ | #4E2B62 | ぶどうの深みある暗紫 |
| 若紫 | わかむらさき | #C4A3BF | 淡い薄紫 |
| 紅紫 | べにむらさき | #D44C6D | 赤みを帯びた紫 |
茶系の伝統色(10色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 茶色 | ちゃいろ | #965842 | お茶の実の茶褐色 |
| 小豆色 | あずきいろ | #8B3A3A | 小豆の暗い赤茶 |
| 栗色 | くりいろ | #7B4D28 | クリの実の赤茶色 |
| 琥珀色 | こはくいろ | #CE8931 | 樹脂化石・琥珀の橙褐色 |
| 弁柄色 | べんがらいろ | #9B2624 | 赤土顔料(弁柄)の暗赤褐 |
| 鶯茶 | うぐいすちゃ | #6B5728 | 鶯色に近い暗みのある茶 |
| 黄土色 | おうどいろ | #C68E2B | 黄みがかった土の色 |
| 焦茶 | こげちゃ | #573012 | 深く焦げた暗褐色 |
| 利休茶 | りきゅうちゃ | #6B6745 | 千利休好みの渋い茶 |
| 煤竹色 | すすたけいろ | #5E462B | 煤けた竹の暗い茶褐 |
白・灰・黒系の伝統色(10色)
| 色名 | 読み | HEX | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| 白 | しろ | #FFFFFF | 純粋な白 |
| 胡粉色 | ごふんいろ | #FDFEF4 | 牡蠣殻を砕いて作った白 |
| 象牙色 | ぞうげいろ | #F8F4E6 | 象牙の温かみある白 |
| 銀鼠 | ぎんねず | #AAAAAA | 銀のような明るい灰 |
| 利休鼠 | りきゅうねず | #8E8B82 | 茶みがかった渋い灰 |
| 藍鼠 | あいねず | #6E7E8D | 藍みを帯びた青灰色 |
| 鉄鼠 | てつねず | #4E4B4E | 鉄のような暗い灰色 |
| 墨色 | すみいろ | #424531 | 墨汁の暗緑がかった灰黒 |
| 黒 | くろ | #000000 | 純粋な黒 |
| 漆黒 | しっこく | #0B0B0B | 漆塗りのような深い黒 |
豆知識|日本の伝統色にまつわる話
日本の伝統色は1100色以上ある
日本の伝統色の総数は、定義や数え方によって大きく異なります。色の研究書によっては1100色以上が記録されており、単なる「薄いピンク」にも桜色・桃色・撫子色と複数の名前が存在するほど、表現の繊細さは抜きんでています。
この多彩さが生まれた背景のひとつが、平安時代の「かさね色目」文化です。十二単の重ね着で用いる表と裏の配色をルールとして定め、季節ごとに使う組み合わせが細かく決まっていました。それぞれの配色に固有の名前がつけられたことで、色名の文化がさらに豊かになりました。
天皇と皇太子だけが着られた「絶対禁色」
古代日本では、色が身分を示すシステムとして機能していました。7世紀初め、聖徳太子が冠位十二階の制度を定め、位階ごとに服の色を割り当てました。8世紀には衣服令によってさらに厳格化され、自分の位より上の色を着ることは「禁色(きんじき)」として禁じられました。
中でも特別な二色が「絶対禁色」と呼ばれます。「黄櫨染(こうろぜん)」は天皇のみ、「黄丹(おうに)」は皇太子のみに許された色です。黄櫨染は日光の当たり方によって赤褐色から赤く輝いて見える不思議な色で、太陽の象徴とされました。どれほど地位が上がっても臣下には決して許されない色であり、現代でもその慣習は守られています。
江戸っ子が生み出した「四十八茶百鼠」
江戸時代、幕府は庶民に派手な色を禁じる奢侈禁止令を繰り返し発しました。しかし江戸の粋(いき)な人々は、この制約を逆手に取ります。許された茶色と鼠色の範囲で微妙な差を生み出し、100種を超えるバリエーションを作り出しました。これが「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」という言葉の由来です。
「利休茶」「江戸茶」「鶯茶」「煤竹色」「銀鼠」「藍鼠」——どれも地味に見えて、わずかに異なる色合いを持っています。制限があるからこそ磨かれた美意識は、江戸文化の「粋」を象徴するエピソードです。「派手さではなく、微細な差に美を見出す」という感性は、日本人の色彩観の真髄と言えるでしょう。
まとめ
日本の伝統色77色を赤・黄・緑・青・紫・茶・白黒の7系統で整理しました。色の名前を眺めるだけで、自然の情景や時代の文化が浮かんでくるのが和色の魅力です。デザインの配色に取り入れたい方から、日本の色彩文化を深く知りたい方まで、ぜひ参考にしてみてください。












