剣術・武術の流派60選|新陰流・一刀流・示現流など主要流派まとめ

日本には剣術・柔術・弓術・槍術・薙刀術など多岐にわたる武術が発展し、その数は700を超える流派に達するとも言われています。今回は室町時代の源流から幕末・明治まで、各武術の主要流派60選を開祖・成立時代・特徴付きでまとめました。宮本武蔵の二天一流、新選組の天然理心流、坂本龍馬が学んだ北辰一刀流……有名流派の意外な背景も解説します。

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剣術・武術の「流派」とは

日本の武術における「流派」とは、独自の技術体系・思想・伝承方法を持つ武術の学派のことです。

鎌倉時代から南北朝時代にかけて刀が武士の主要武器として確立すると、独自の剣術を伝える師弟関係が生まれ、やがて「流派」として発展していきました。戦国時代には実戦的な技術への需要が高まり、多くの流派が誕生。江戸時代には平和な世の中で武術が稽古・文化として洗練され、さらに分派・細分化が進みました。

室町時代末期に成立した「念流」「神道流」「陰流」の三大源流から始まり、現代の剣道・柔道・弓道・なぎなた道もこれら古流流派を礎としています。

剣術の主要流派一覧

刀・太刀・小太刀を主体とする剣術流派を時代別にまとめました。

室町時代〜戦国時代の主要剣術流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
念流(ねんりゅう) 念阿弥慈恩 南北朝〜室町初期 三大源流の一つ。「念」で相手の心を制する思想
中条流(ちゅうじょうりゅう) 中条長秀 室町時代中期 念流から分派。短刀術を体系化し公家・武家に広まる
天真正伝香取神道流 飯篠家直(長威斎) 室町時代中期 現存最古の総合武術流派。剣・槍・薙刀・柔術を包含
陰流(かげりゅう) 愛洲久忠(移香斎) 室町時代後期 三大源流の一つ。「猿の動き」に着想を得たと伝わる
鹿島神傳直心影流 松本政信(備前守) 室町〜江戸時代 鹿島神宮と関わりが深い古流流派
鹿島新當流(かしましんとうりゅう) 塚原卜伝 戦国時代初期 「一の太刀」で有名。不敗の剣客・卜伝が開く
新陰流(しんかげりゅう) 上泉信綱(伊勢守) 戦国時代中期 「剣聖」上泉が創始。「活人剣」の思想
タイ捨流(たいしゃりゅう) 丸目蔵人佐長恵 戦国時代中期 上泉の弟子が肥後で興す。「体を捨てる」思想
疋田陰流(ひきたかげりゅう) 疋田文五郎景兼 戦国時代 上泉の弟子。「袋竹刀」稽古を広めたとも伝わる
鐘巻流(かねまきりゅう) 鐘巻自斎 戦国時代 陰流・中条流を学んだ流派。一刀流の開祖の師という説がある
一刀流(いっとうりゅう) 伊藤一刀斎景久 戦国時代後期 後世に最も多くの分派を生んだ剣術の一大流派
富田流(とだりゅう) 富田勢源 戦国時代 越前を中心に栄えた。小太刀術でも有名
立身流(たつみりゅう) 立身三佐衛門 戦国時代 千葉県香取市に伝わる現存する古流
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江戸時代の主要剣術流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
柳生新陰流(やぎゅうしんかげりゅう) 柳生石舟斎宗厳→宗矩 江戸時代初期 徳川将軍家兵法師範。「剣禅一如」の思想
小野派一刀流(おのはいっとうりゅう) 小野忠明 江戸時代初期 一刀流の正統派。柳生とともに徳川将軍家師範
二天一流(にてんいちりゅう) 宮本武蔵 江戸時代初期 二刀流を体系化。「五輪書」で哲学的に理論化
示現流(じげんりゅう) 東郷重位 江戸時代初期 薩摩藩の藩術。蜻蛉の構えから繰り出す猛烈な初太刀
馬庭念流(まにわねんりゅう) 樋口定次 江戸時代初期 念流の正統派。群馬県に現存し古式を守る
浅山一伝流(あさやまいちでんりゅう) 浅山一伝斎友秀 江戸時代初期 剣術・体術・捕手術を含む総合流派
駒川改心流(こまがわかいしんりゅう) 駒川太郎左衛門 江戸時代初期 九州・天草に伝わる剣術流派
澁川流(しぶかわりゅう) 澁川伴五郎義方 江戸時代初期 柔術・剣術・捕縄術を統合した流派
奥山念流(おくやまねんりゅう) 奥山休賀斎 江戸時代初期 念流の流れを汲む。起倒流の源流との関係が指摘される
神道無念流(しんどうむねんりゅう) 福井兵右衛門嘉平 江戸時代中期 合理的稽古・試合を重視。桂小五郎らが学ぶ
直心影流(じきしんかげりゅう) 長沼国郷 江戸時代中期 竹刀稽古の普及に貢献した重要な流派
心形刀流(しんぎょうとうりゅう) 伊庭秀明 江戸時代中期 江戸の有力流派。幕末の伊庭八郎で知られる
溝口派一刀流(みぞぐちはいっとうりゅう) 溝口正辰 江戸時代中期 一刀流の有力分派
甲源一刀流(こうげんいっとうりゅう) 逸見太四郎義年 江戸時代後期 武蔵国・上野国に広まった一刀流の分派
北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう) 千葉周作 江戸時代後期 坂本龍馬らが学ぶ。江戸三大道場「玄武館」の流派
天然理心流(てんねんりしんりゅう) 近藤長裕(勘助) 江戸時代中期 近藤勇・土方歳三ら新選組が使った流派
鏡新明智流(きょうしんめいちりゅう) 桃井春蔵(家祖) 江戸時代後期 「位は桃井・業は千葉・力は斎藤」の三大道場の一
野太刀自顕流(のだちじげんりゅう) 薬丸兼武 江戸時代中期 示現流から独立した薩摩下士の流派

幕末〜明治時代の剣術流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
一刀正傳無刀流(むとうりゅう) 山岡鉄舟 明治時代初期 「剣・禅・書」の三道を極めた山岡鉄舟が創始
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居合術・抜刀術の主要流派一覧

「居合」とは、刀を抜きながら同時に斬る技法を体系化した武術です。座った状態や歩行中に奇襲への対応を想定しています。

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
神夢想林崎流(はやしざきりゅう) 林崎甚助 戦国時代後期 居合術の祖。神夢想から技を得たと伝わる
田宮流(たみやりゅう) 田宮平兵衛重定 江戸時代初期 居合術の体系化に貢献。多くの後発流派に影響
制剛流(せいごうりゅう) 諸説あり 江戸時代初期 抜刀術に特化した流派。林崎流の系統とも
無双直伝英信流(えいしんりゅう) 林鶴守(英信) 江戸時代中期 現代居合道の最大流派の源流。全国に広まる
夢想神伝流(むそうしんでんりゅう) 中山博道 明治〜大正時代 現代居合道の二大流派の一つ。近代的稽古体系

柔術・体術の主要流派一覧

刀を持たない徒手武術として発展した柔術は、現代の柔道・合気道の直接の源流です。

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
竹内流(たけのうちりゅう) 竹内久盛 戦国時代(1532年) 現存最古の柔術流派。捕縄術・小具足術も含む総合武術
起倒流(きとうりゅう) 磯正足(磯氏) 江戸時代初期 嘉納治五郎が学んだ流派。「起こして倒す」の原理
天神真楊流(てんじんしんようりゅう) 磯又右衛門矩保 江戸時代後期 嘉納治五郎が学んだ。裸絞・関節技を重視
関口流(せきぐちりゅう) 関口氏業 江戸時代初期 紀州徳川家に伝わる柔術。体術・居合も包含
高木揚心流(たかぎようしんりゅう) 高木重弘 江戸時代初期 天神真楊流の源流の一つ。投げ・固めを重視
神道揚心流(しんとうようしんりゅう) 吉田是雲 江戸時代 天神真楊流の源流の一つ。投技・固技体系
難波一甫流(なんばいっぽりゅう) 難波一甫 江戸時代 大阪を中心に伝わった柔術流派
戸塚揚心流(とつかようしんりゅう) 戸塚英俊 江戸時代後期 横浜・神奈川で栄えた柔術。揚心流の系統
大東流合気柔術(だいとうりゅう) 武田惣角 明治時代 合気道の直接の源流。植芝盛平が修行した流派
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弓術・槍術・薙刀術の主要流派一覧

弓術(ゆみじゅつ)の主要流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
小笠原流(おがさわらりゅう) 小笠原長清 鎌倉時代(12世紀末) 最古の弓術流派。礼法・作法も体系化した武門の礼
日置流(ひきりゅう) 日置弾正政次 室町時代後期 現代弓道の主流。竹林派・雪荷派・印西派に分かれる
竹林派(ちくりんは) 吉田能安 江戸時代初期 日置流最大の分派。和歌山・大阪で栄える
雪荷派(ゆきのわは) 道永(雪荷) 江戸時代初期 日置流の分派。武家に広まった実戦重視の流儀
印西派(いんざいは) 印西(日置流継承者) 江戸時代初期 日置流の分派。現代弓道の三大流派の一つ

槍術(そうじゅつ)の主要流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
宝蔵院流槍術(ほうぞういんりゅう) 覚禅房胤栄 戦国時代 十文字槍を用いる槍術。興福寺の僧侶が開いた
佐分利流(さぶりりゅう) 佐分利源五郎 戦国〜江戸時代 越前国に伝わる槍術の流派
風傳流(ふうでんりゅう) 中村彦左衛門 江戸時代 槍術の流派のひとつ
穴澤流(あなざわりゅう) 穴澤盛秀 江戸時代 槍術・棒術の流派。東北地方に伝わる
本覚克己流(ほんがくこっきりゅう) 諸説あり 江戸時代 槍術の一流派

薙刀術(なぎなたじゅつ)の主要流派

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流派名 流祖 成立時代 特徴・流儀
天道流薙刀術(てんどうりゅう) 桜井伝右衛門 江戸時代初期 薙刀術の最大流派。現代なぎなた道の技法の基礎
荒木流(あらきりゅう) 荒木無人斎 江戸時代初期 鎖鎌・薙刀・槍を含む総合武術
新陰十二信流薙刀術 松田演道 江戸時代 新陰流の系統を引く薙刀術
楊心流薙刀術(ようしんりゅう) 諸説あり 江戸時代 薙刀術の一流派
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特に有名な10流派を深掘り

新陰流|剣聖・上泉信綱が生んだ「活人剣」の思想

戦国時代中期、上野国(現在の群馬県)の武将・上泉信綱(伊勢守)が創始した流派です。それまでの「殺人剣(敵を倒すための剣)」に対して、「活人剣(剣で人を活かす)」という逆転の発想を提唱しました。

安全な打ち合いを実現するために「袋竹刀」を考案したことも大きな功績で、後の「竹刀稽古」の原型になったとされています。弟子には柳生石舟斎・丸目蔵人佐・疋田文五郎など多くの剣豪が名を連ねました。

柳生新陰流|将軍家師範が伝えた「剣禅一如」

新陰流を学んだ柳生石舟斎宗厳が独自に発展させ、息子の柳生宗矩が徳川将軍家の兵法師範となることで大成した流派です。宗矩の著書「兵法家伝書」は剣術書を超えた武士道の哲学書としても知られています。孫の柳生十兵衛三厳は隻眼の剣士として伝説的な存在になりました(実際の素性には諸説があります)。

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一刀流|最も多くの分派を生んだ剣術

戦国時代後期、伊藤一刀斎景久が創始した流派です。「一刀」の名のとおり一本の刀に徹した技法体系が特徴。後世に小野派一刀流・北辰一刀流・溝口派一刀流・甲源一刀流など多数の分派を生み出し、江戸時代の剣術を支配的に形成しました。

北辰一刀流|龍馬も学んだ幕末の大流派

江戸時代後期、千葉周作が1822年(文政5年)に玄武館を開き確立した流派です。一刀流に独自の技法と理論を加え、「北辰(北極星)のように動じない心」にちなんだ名称といわれます。坂本龍馬・山南敬助・清河八郎など幕末の著名な志士が多く学び、千葉周作の「玄武館」は練兵館・士学館とならぶ「江戸三大道場」の一つでした。

二天一流|宮本武蔵が確立した二刀流

宮本武蔵(1584〜1645年)が晩年に体系化した流派です。太刀と小太刀を同時に用いる「二刀流」を理論的に昇華させ、60余の真剣勝負に勝利したとされる武蔵が生涯最後の著作として「五輪書」を著しました。五輪書は剣術書を超えた戦略論・心理論の書として、今日も経営者に読まれています。

示現流|薩摩が育てた「一撃必殺」の剣術

江戸時代初期、薩摩藩士・東郷重位が創始した流派で、薩摩藩の公式藩術とされました。「猿叫(えんきょう)」と呼ばれる独特の掛け声とともに、蜻蛉(とんぼ)の構えから放つ速い初太刀が特徴です。「二の太刀いらず(一撃で決める)」の思想が、薩摩隼人の強さの源となりました。示現流から分かれた「野太刀自顕流(薬丸自顕流)」は薩摩下士の間に広まりました。

天然理心流|新選組の剣術

近藤勇・土方歳三・沖田総司ら新選組幹部が修行した流派です。農村地帯(武蔵国)での道場稽古を通じて在郷の武士や農民に広まりました。実戦的な「野試合稽古」と呼ばれる激しい打ち込みで有名で、近藤勇が四代目師範となり新選組を結成しました。

鹿島新當流|剣客・塚原卜伝の伝説

「剣聖」の一人として讃えられる塚原卜伝が戦国時代に開いた流派です。卜伝は37の合戦・真剣勝負19回を経験し、刀による傷を一切受けなかったと伝わります(矢傷は受けたとされ、諸説あります)。「一の太刀」と呼ばれる秘伝の技は相手の心の動きを制するものとされ、「合気」概念の先駆けともいわれています。弟子に将軍・足利義輝も含まれていたと伝わります。

天真正伝香取神道流|現存最古の総合武術

室町時代中期、飯篠家直(長威斎)が開いた日本最古の総合武術流派です。剣術・槍術・薙刀術・柔術・手裏剣術など複数の武術を一体化して体系化した点で画期的でした。千葉県香取市の神域と深く関わり、現在も「香取神道流」として継承されています。

大東流合気柔術|合気道の源流

明治時代、武田惣角が整備・普及させた柔術流派です。植芝盛平がこの大東流を修行したのち、独自の精神的・技術的発展を加えて「合気道」を創始しました。「合気(相手の力を利用して制する)」という技術・思想が核であり、現代格闘技・護身術にも影響を与えています。

現代武道と古流流派の関係

現代日本の武道(剣道・柔道・弓道・なぎなた道・合気道)はいずれも古流武術の系統を受け継いでいます。

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現代武道 主な源流となった古流流派
剣道 一刀流・神道無念流・直心影流など複数流派の統合
柔道 起倒流・天神真楊流(嘉納治五郎が集大成)
弓道 日置流・小笠原流
なぎなた道 天道流薙刀術など
合気道 大東流合気柔術(植芝盛平が独自発展)

明治時代以降、武術の近代化・統一化が進み、各流派の技術が現代武道として再編成されました。一方、今日も多くの古流流派が伝統的な形・技法を守って継承されており、「古武道演武大会」などで見ることができます。日本武術の流派は「技術」だけでなく、師匠から弟子へ受け継がれる「心」と「哲学」の系譜でもあります。

まとめ

今回は日本の武術流派60選を、剣術・居合術・柔術・弓術・槍術・薙刀術に分けてまとめました。室町時代の念流・香取神道流から始まり、戦国の新陰流・一刀流、江戸の柳生新陰流・北辰一刀流・天然理心流、そして現代に続く合気道まで、日本の武術文化の奥深さが伝わったでしょうか。日本刀そのものについては以下の記事もあわせてどうぞ。

日本刀の種類と名刀一覧|天下五剣・村正・正宗など44選まとめ

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