
世界中でたった一種類の単位体系が使われていることをご存知でしょうか。それが SI(国際単位系:Système International d'Unités) です。メートル、キログラム、秒……日常生活でなじみの深い単位もSIの一部です。そして「ヘルツ」「ニュートン」「ボルト」といった科学者の名前がついた単位も、すべてSIの組立単位として体系化されています。
この記事では、SI基本単位7種・固有名称を持つ組立単位22種・主な名称なし組立単位をまとめて一覧表にしました。語源や由来も一緒に紹介しているので、単位を覚えながら科学史も楽しめます。単位の接頭辞(キロ・メガ・ギガ)はこちらで詳しく解説しています。
SI(国際単位系)とは
SI(エスアイ) は、1960年の第11回国際度量衡総会で正式に採択された、世界共通の計量単位システムです。「フランス語で国際単位系を意味するSystème International d'Unités の略称」というのが公式の由来で、日本でも計量法でSIへの準拠が定められています。
SIの仕組みは 「7つの基本単位」 と 「それを組み合わせた組立単位」 の2階層です。面積(m²)も電力(W)も、たった7つの基本単位の掛け算・割り算で表せます。この体系のシンプルさが、世界各国で法定計量単位として採用されている理由のひとつです。
SI基本単位7種一覧
7つのSI基本単位はすべての物理量の土台であり、互いに独立して定義されています。2019年の改定で、すべての基本単位が普遍的な物理定数を基準にした定義に切り替わりました。
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| 物理量 | 単位名(記号) | 語源・由来 | 身近な用途 |
|---|---|---|---|
| 長さ | メートル(m) | ギリシア語 métron(測る)から | 身長・距離・波長 |
| 質量 | キログラム(kg) | ギリシア語 grámma(小さな重さ)×接頭辞キロ(千) | 体重・食品の重さ |
| 時間 | 秒(s) | ラテン語 pars minuta secunda(第2の小さな部分)から | 時刻・振動数の逆数 |
| 電流 | アンペア(A) | フランスの物理学者アンドレ=マリ・アンペール(1775–1836)の名 | 家電の消費電流 |
| 熱力学温度 | ケルビン(K) | イギリスの物理学者ケルビン卿(ウィリアム・トムソン、1824–1907)の称号 | 絶対温度・宇宙の温度 |
| 物質量 | モル(mol) | ドイツ語 Mol(Molekül=分子)から | 化学反応の計算 |
| 光度 | カンデラ(cd) | ラテン語 candela(ろうそく)から | 照明の明るさ評価 |
基本単位を覚えるコツ
「時 長 質 温 電 量 光(じ・なが・しつ・おん・でん・りょう・こう)」の7文字で、秒・メートル・キログラム・ケルビン・アンペア・モル・カンデラに対応します。
固有名称を持つSI組立単位22種一覧
組立単位は基本単位を組み合わせて得られる単位です。22種には固有の名前と記号が与えられており、そのうち 17種は科学者の名前に由来 します(人名由来の単位は記号が大文字始まりになります)。
力学・エネルギー系(5種)
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| 単位名(記号) | 物理量 | SI基本単位による表現 | 語源・由来 |
|---|---|---|---|
| ヘルツ(Hz) | 周波数 | s⁻¹ | ドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツ(1857–1894)。電磁波の存在を実証した |
| ニュートン(N) | 力 | kg·m·s⁻² | イギリスの物理学者アイザック・ニュートン(1643–1727)。万有引力の法則で知られる |
| パスカル(Pa) | 圧力・応力 | N/m² | フランスの数学者ブレーズ・パスカル(1623–1662)。パスカルの原理を発見 |
| ジュール(J) | エネルギー・仕事 | N·m | イギリスの物理学者ジェームズ・ジュール(1818–1889)。熱の仕事当量を確立 |
| ワット(W) | 仕事率・電力 | J/s | スコットランドの発明家ジェームズ・ワット(1736–1819)。蒸気機関の改良で産業革命を支えた |
電気・磁気系(8種)
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| 単位名(記号) | 物理量 | SI基本単位による表現 | 語源・由来 |
|---|---|---|---|
| クーロン(C) | 電荷・電気量 | s·A | フランスの物理学者シャルル・クーロン(1736–1806)。クーロンの法則で静電気を体系化 |
| ボルト(V) | 電圧・起電力 | W/A | イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタ(1745–1827)。世界初の電池を発明 |
| ファラド(F) | 静電容量 | C/V | イギリスの物理学者マイケル・ファラデー(1791–1867)。電磁誘導を発見した実験の天才 |
| オーム(Ω) | 電気抵抗 | V/A | ドイツの物理学者ゲオルク・オーム(1789–1854)。オームの法則(V=IR)を発見 |
| ジーメンス(S) | 電気コンダクタンス | A/V | ドイツの実業家・技術者エルンスト・ジーメンス(1816–1892)。電信・電気工学を発展させた |
| ウェーバ(Wb) | 磁束 | V·s | ドイツの物理学者ヴィルヘルム・ウェーバー(1804–1891)。磁気測定の国際基準を整備 |
| テスラ(T) | 磁束密度 | Wb/m² | セルビア系アメリカ人の発明家ニコラ・テスラ(1856–1943)。交流電力システムを実用化 |
| ヘンリー(H) | インダクタンス | Wb/A | アメリカの物理学者ジョセフ・ヘンリー(1797–1878)。電磁誘導をファラデーと並行して発見 |
光・放射線・角度・その他(9種)
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| 単位名(記号) | 物理量 | SI基本単位による表現 | 語源・由来 |
|---|---|---|---|
| セルシウス度(°C) | セルシウス温度 | K − 273.15 | スウェーデンの天文学者アンダース・セルシウス(1701–1744)。100分割の温度計を考案 |
| ルーメン(lm) | 光束 | cd·sr | ラテン語 lumen(光・明かり)から。人名由来ではないため記号は小文字 |
| ルクス(lx) | 照度 | lm/m² | ラテン語 lux(光)から。ルーメンを面積で割った「1m²あたりの光の量」 |
| ベクレル(Bq) | 放射能 | s⁻¹ | フランスの物理学者アンリ・ベクレル(1852–1908)。ウランの放射線を偶然発見したノーベル賞受賞者 |
| グレイ(Gy) | 吸収線量 | J/kg | イギリスの放射線物理学者ルイス・グレイ(1905–1965)。放射線の生体への影響を研究 |
| シーベルト(Sv) | 線量当量 | J/kg | スウェーデンの放射線医学者ロルフ・シーベルト(1896–1966)。被ばく線量の計測を開拓 |
| カタール(kat) | 触媒活性 | mol·s⁻¹ | ギリシア語 katalysis(触媒作用)から。1999年に22番目のSI組立単位として追加 |
| ラジアン(rad) | 平面角 | m/m(無次元) | ラテン語 radius(半径)から。弧の長さ÷半径で定義される角度 |
| ステラジアン(sr) | 立体角 | m²/m²(無次元) | ラテン語 stella(星)+ラジアンの合成語。球面上の面積÷半径²で定義 |
主な名称なし組立単位
固有名称はないが日常・科学でよく使われる組立単位の一覧です。
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| 物理量 | 単位 | 用途例 |
|---|---|---|
| 面積 | m² | 土地・部屋の広さ |
| 体積 | m³ | タンクの容量・ガスの量 |
| 速度 | m/s | 風速・投球速度 |
| 加速度 | m/s² | 自動車の加速・重力加速度(≒9.8 m/s²) |
| 角速度 | rad/s | モーターの回転速度 |
| 波数 | m⁻¹ | 光の吸収スペクトル |
| 質量密度 | kg/m³ | 素材の比重比較 |
| 比体積 | m³/kg | 蒸気表・流体工学 |
| 電流密度 | A/m² | 回路設計・電気分解 |
| 磁界の強さ | A/m | 磁性材料の特性評価 |
| 物質量濃度 | mol/m³ | 溶液の濃度計算 |
| 輝度 | cd/m² | ディスプレイの明るさ(nit) |
| 運動量 | kg·m/s | 衝突解析・ロケット推力 |
| 動粘度 | m²/s | 潤滑油・塗料の流れやすさ |
| 熱伝導率 | W/(m·K) | 断熱材・放熱素材の評価 |
豆知識
SI単位の記号が大文字・小文字になる理由
22種の固有名称組立単位のうち、人名に由来する17種(Hz, N, Pa, J, W, C, V, F, Ω, S, Wb, T, H, °C, Bq, Gy, Sv)は記号が大文字始まり、人名に由来しない5種(rad, sr, lm, lx, kat)は小文字で始まります。基本単位も同じルールで、アンペアのA・ケルビンのKのみ大文字です。
キログラムだけが基本単位に接頭辞がついている理由
7つの基本単位の中で、接頭辞(キロ=1000倍)が付いているのはキログラムだけです。これは歴史的な事情で、メートル法制定時に「1リットルの水の質量=1キログラム」という定義が採用され、そのまま定着したためです。グラムより1000倍重い単位が基本単位になった、という珍しいケースです。
2019年の大改定:物理定数が基準に
2019年5月20日、SI基本単位の定義が大幅改定されました。たとえばキログラムは、それまで「国際キログラム原器(フランスのSèvresに保管された白金イリジウム合金の分銅)の質量」と定義されていましたが、「プランク定数 h=6.62607015×10⁻³⁴ J·sを用いた定義」に変更されました。「物の重さ」から「物理法則」へ基準が移ったことで、原器の経年変化による誤差がなくなり、永遠に変わらない定義が実現しました。
「テスラ」と「ヘンリー」は争いがあった
電磁誘導の発見をめぐっては、ファラデー(英)とヘンリー(米)がほぼ同時期に独立して発見したことで知られています。ファラデーが先に論文を発表したため「電磁誘導の発見者」はファラデーとされますが、ヘンリーの功績を称えてインダクタンスの単位「ヘンリー(H)」が付けられました。人名がついた単位の詳細はこちらでまとめています。
まとめ
SI単位系は7つの基本単位を土台に、22種の固有名称付き組立単位と数多くの名称なし組立単位で成り立っています。ヘルツ・ニュートン・パスカル・ジュール・ワット……これらはすべて科学の歴史に名を刻んだ人物への敬意から命名されています。単位ひとつひとつに科学者の発見の物語があると思うと、授業で習う数字も少し違って見えてくるのではないでしょうか。