雷の種類34選まとめ|熱雷・スプライト・球電まで分類別に解説

一般的に「かみなり」とひとまとめにされがちな雷の種類は、発生の仕組みや放電の場所・形状によって実に多彩に分けられています。夏の積乱雲から生まれる熱雷、日本海側の冬に起きる冬季雷、上空80km以上で光るスプライト、そしていまだ謎多き球電まで——気象学・物理学・電気工学のさまざまな視点で分類すると、雷は34種類に分けることができます。

この記事では「どこで」「なぜ」「どんな形で」光るのかを軸に、9つの分類カテゴリで雷の全種類をまとめて解説します。

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気象条件・発生源による分類(9種類)

大気の状態や発生源の違いで、雷は9種類に分けられます。日本の気象学でもっともよく使われる「気象条件別の分類(熱雷・界雷・渦雷・冬季雷)」に加え、火山・地震・火災・核爆発といった特殊な発生源で起きる雷も含みます。

熱雷(ねつらい)

夏の日中に地面が太陽熱で温められ、上昇気流が発生して積乱雲ができるときに起こる雷です。午後から夕方にかけて突然鳴り出す夏の雷のほとんどがこれです。局地的かつ短時間(30分〜1時間程度)で終わることが多く、「夕立の雷」のイメージそのものです。

界雷(かいらい)

冷たい空気と温かい空気がぶつかる「前線」に沿って発生する雷です。寒冷前線や停滞前線の通過時に起こりやすく、熱雷より広い範囲で長時間続く傾向があります。梅雨時期や秋の長雨の時期に多く見られます。

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熱界雷(ねつかいらい)

熱雷と界雷が組み合わさったタイプです。前線の影響に加え、地表の加熱も重なって積乱雲が非常に発達しやすい状況で起きます。猛烈な豪雨や落雷を伴うスーパーセル(強大な積乱雲)が発達するときに見られます。

渦雷(うずらい)

低気圧の渦の中心付近で発生する雷です。台風や発達した温帯低気圧に伴って起きることが多く、渦の周囲で気流が激しく乱れるため複数の積乱雲が同時に活発化します。台風接近時の「台風雷」も渦雷の一種です。

冬季雷(ふゆかみなり)

日本海側(特に北陸・山陰)で11月〜3月に頻発する雷です。シベリアから吹き出す冷たい季節風が暖かい日本海の上を通過し、強い対流が生まれて積乱雲を発生させます。「雪雷(ゆきかみなり)」とも呼ばれ、漁師言葉では「ぶりおこし(ブリが獲れる時期を告げる雷)」とも呼ばれてきました。夏の雷より一撃のエネルギーが大きくなりやすい傾向があります。

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火山雷(かざんらい)

火山の噴火に伴って発生する雷です。火山灰・火山ガス・氷粒の激しい衝突で電荷が生じるほか、上昇する噴煙が積乱雲を形成して大規模な放電が起きます。2022年のトンガ火山噴火では、噴火後数時間で数十万回規模の落雷が観測されたと報告されています。日本では桜島でも頻繁に観測されています。

地震雷(じしんらい)

大地震の前後に雷に似た発光現象が報告されることがある現象です。「地震の光(earthquake light)」とも呼ばれますが、電磁気的・地質化学的なメカニズムは解明されておらず、現象の存在自体に懐疑的な研究者もいます(諸説あり)。古くから「地震雷火事親父」の筆頭に挙げられてきました。

火災雷(かさいらい)

大規模な山火事・野火から発生する雷です。炎の熱で強い上昇気流が生まれ、上空で積乱雲(パイロクムロニンバス、通称「焦雷雲」)に発達して放電します。オーストラリアやカリフォルニアの大規模山火事では「ファイヤーストーム」として火災雷が頻発し、さらに火災を広げる悪循環を引き起こすことがあります。

核爆発雷

核爆発による強烈な熱と対流で発生する雷です。広島・長崎への原爆投下直後、きのこ雲の周囲で激しい雷が観測されたことが複数の証言・記録に残っています。核実験の映像でも爆発後の落雷が確認されています。

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放電の仕組みによる分類(11種類)

「どこで」「どの方向に」「どの極性で」「どのように被害を与えるか」という観点からも雷は細かく分けられます。

放電場所で分ける(3種類)

雷の放電がどこで起きるかを示す分類です。英語の略称が研究・気象報告でよく使われます。

対地雷(CG雷:Cloud-to-Ground) は雲から地面への放電で、一般的に「落雷」と呼ばれるものです。全雷放電の約20〜25%を占めますが、人間や建物への直接的な被害を引き起こします。雲内雷(IC雷:Intra-Cloud) は同じ積乱雲の中での放電で、全雷放電の約75〜80%を占め最も多いタイプです。遠くから見ると雲全体がぼんやり光る「稲光」として観察されます。雲間雷(CC雷:Cloud-to-Cloud) は異なる雲と雲の間で起こる水平方向の放電です。

放電方向で分ける(3種類)

対地雷(CG雷)はさらに放電方向で分けられます。

下降型雷 は雲の下部から地面に向かって標準的に落ちる落雷で、私たちが「落雷」として思い浮かべる雷のほとんどがこれです。上昇型雷 は高い建造物(電波塔・高層ビル・山頂など)の先端から上空の雷雲に向かって放電する雷で、スカイツリーや北アルプスの山頂付近でも観測されています。高さ数百m以上の構造物では下降型より上昇型が多くなることもあります。水平型雷 は積乱雲の底から水平方向に伸びる放電で、後述の「晴天雷」の原因になります。

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極性で分ける(2種類)

対地雷は「プラスとマイナスのどちらの電荷を地面に運ぶか」でも分けられます。

負極性雷(-CG) は全対地雷の約90〜95%を占める一般的な落雷です。雲の下部にたまった負電荷が地面に放電されます。正極性雷(+CG) は全対地雷の約5〜10%しかない希少な落雷ですが、一撃のピーク電流が負極性雷の数倍〜十数倍に達することがある極めてエネルギーの大きい雷です。冬季雷の約半数が正極性雷とされており、送電線・航空機への被害が深刻になりやすいとされています。

落雷経路で分ける(3種類)

電気設備や建物への被害経路による実用的な分類です。

直撃雷 は建物・機器・人体に雷が直接落ちるタイプで最も危険です。誘導雷 は近くの落雷で電磁誘導や静電誘導によって離れた電線・機器に高電圧が誘起されるタイプで、パソコンやテレビが故障する主な原因です。実害は直撃雷より誘導雷によるものが圧倒的に多いといわれています。逆流雷 は避雷針から接地(アース)を流れた電流が近くの配線・機器に逆流するタイプで、避雷針を設置しているにもかかわらず機器が壊れる原因のひとつです。

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形状・外観と特殊現象(14種類)

雷の見た目・発生高度・未解明の特性による分類です。英語圏ではカメラマンやスポッターの文化から形状分類が発達しており、日本語ではあまり紹介されていない種類が多くあります。

枝分かれ稲妻(フォーク・ライトニング)

最もよく見られる稲妻の形です。先端(リーダー)が空気の電気抵抗の弱い部分を選びながら進むため、木の枝のように自然と分岐します。英語では Forked Lightning または Branched Lightning と呼ばれます。

リボン稲妻(Ribbon Lightning)

同じ稲妻が複数回放電する間に横風で流されることで、バンド(帯)状に見える稲妻です。通常の稲妻と放電経路は同じですが、長時間露光の写真に撮ると縞模様(リボン)に写ります。

ビーズ稲妻(Bead Lightning)

稲妻が消える際に一部の発光が点(ビーズ)状に残る現象です。チェーン稲妻とも呼ばれます。発生メカニズムは完全には解明されておらず、チャンネルの太さの不均一や部分的な温度差などが関係していると考えられています。

シートライトニング(Sheet Lightning)

雲の内部(IC雷)の放電が雲全体を面発光させる現象です。稲妻の経路は見えず、雲がぼんやりと光って見えます。夏夜の遠くの雷でよく観察できる「稲光」の多くはこのタイプです。

晴天雷(ボルト・フロム・ザ・ブルー)

晴れた空から突然落ちる雷です。積乱雲の底から水平方向に何十kmも伸びた放電が、遠く離れた地点に落下します。空が青く晴れているように見えているのに突然落雷するため、英語では "bolt from the blue"(青天の霹靂)と呼ばれます。「雷鳴が聞こえないからといって安全とは限らない」といわれる理由のひとつです。

スパイダーライトニング(クモ稲妻)

雲の下面に沿って水平方向に長く伸び、クモの巣のように広がる稲妻です。数十kmに及ぶこともあり、雷雨のタイムラプス映像で特徴的に見られます。雷雨の後半、放電が衰えてくる時期に多く発生します。

スプライト(Sprite)

高度40〜90kmの中間圏で光る赤橙色の発光体です。大規模な対地雷(CG雷)の直後、数ミリ秒以内に出現する瞬間的な現象です。低温のプラズマによる発光で、クラゲ・ニンジン・コラムなど様々な形態があります。1989年に偶然撮影されるまで未発見でした。超高層雷放電(TLEs)の中で最もよく知られています。

エルブス(ELVES)

「Emission of Light and Very low frequency perturbations from an Electromagnetic pulse Source」の略称です。高度75〜100kmの熱圏下部で出現するリング状の発光で、発光時間は1ミリ秒以下と極めて短く、直径数百kmに広がることもあります。スプライトの上方に重なって出現することがあります。

ブルージェット(Blue Jet)

積乱雲の上端(高度10〜15km)から成層圏(高度40〜50km)に向けて突き上げる青い噴射状の発光です。名前の通り青色を帯び、上昇速度は毎秒100km前後に達します。国際宇宙ステーション(ISS)からの観測で詳しい撮影に成功しています。

ブルースターター(Blue Starter)

ブルージェットより小さく、積乱雲の上端付近に留まる青い発光現象です。高度15〜20km程度まで達した後、ジェット状に伸びずに収まります。ブルージェットの「未完成版」または別メカニズムと考えられていますが、観測例が非常に少なく詳細は未解明です。

巨大ジェット(Gigantic Jet)

ブルージェットが電離圏(高度80〜90km)まで到達したものです。積乱雲から電離圏を一気につなぐ放電で、確認例は世界で数十例しかない非常に希少な現象です。2021年にプエルトリコ上空で観測された巨大ジェットは、負の大量電荷(約300クーロン)を対流圏と電離圏の間で転送したと報告されています。

球電(きゅうでん/ボールライトニング)

落雷の直後などに、発光する球体が数秒〜数分間空中を漂う現象です。大きさは数cm〜数mと幅広く、白・赤・橙・青など様々な色の目撃報告があります。世界各地で古くから目撃情報があり、航空機パイロットによる記録も存在しますが、再現実験が難しく発生メカニズムは未解明のままです(諸説あり)。マイクロ波放電・プラズマ球・酸化シリコンの泡など多数の仮説が提唱されています。

スーパーボルト(Superbolt)

通常の雷の平均より1000倍以上のエネルギーを持つ極めて強力な落雷です。定義上は100万ジュール(1メガジュール)以上のエネルギーを極超短波帯で放射する雷とされています。主に北大西洋・地中海・東アジア沿岸の冬期に多く観測されており、日本周辺では冬季の日本海がスーパーボルトの多発地帯であることが国際的な研究でも注目されています。

メガフラッシュ(Megaflash)

1回の放電が水平方向に768km以上の距離を走る超長距離の雷です。世界気象機関(WMO)の公式記録として、2020年4月29日にアメリカ南部(ミシシッピ・ルイジアナ・テキサス州にまたがる)で観測された放電が認定されています。「雷は局地的なもの」というイメージを覆す現象です。

まとめ

「落ちる稲妻」として一種類のように見える雷も、発生条件・放電場所・方向・極性・形状・発生源・超高層現象まで分類すると34種類にのぼります。

特に日本は、冬季の日本海側での冬季雷・正極性雷・スーパーボルトが世界的にも稀なほど高頻度で発生し、雷研究の最前線として注目されています。また、1989年以降に研究が急速に進んだTLEs(超高層雷放電)の分野では、スプライト・エルブス・巨大ジェットなど、宇宙と雷の意外なつながりが次々と明らかになっています。

気象用語に興味がある方は気象予報用語一覧もあわせてどうぞ。自然現象の名前については自然現象・天気に関わる現象の名前一覧でも紹介しています。

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