
「ラムサール条約」という名前は聞いたことがあっても、日本に54か所も登録湿地があることはご存じでしょうか。北海道の釧路湿原から沖縄の慶良間諸島まで、実に多様な湿地が国際的な保護を受けています。本記事では、環境省の公式データをもとに日本の全54か所のラムサール登録湿地を地方別一覧で紹介します。登録年・面積・主な特徴付きで完全網羅しているので、気になる湿地をすぐに調べられます。
ラムサール条約とは
ラムサール条約(正式名称:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)は、1971年2月2日にイランのラムサールで採択された国際条約です。湿地の保全・賢明な利用(ワイズユース)・国際協力を柱とし、毎年2月2日は「世界湿地の日」として世界各地でイベントが行われています。
日本は1980年に加盟し、同年に釧路湿原が最初の登録地となりました。その後、段階的に登録数が増え、2025年7月15日に猪苗代湖が加わり計54か所(総面積約166,134ha)が登録されています(2026年10月時点)。
登録の対象となる湿地には、沼・干潟・湖・湿原・マングローブ・サンゴ礁など多様なタイプがあります。
日本のラムサール登録湿地一覧(地方別)
環境省「日本の条約湿地」のデータに基づく全54か所の一覧です。
北海道(13か所)
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| 湿地名 | 所在地 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 釧路湿原 | 釧路市・釧路町・標茶町・鶴居村 | 1980 | 7,863 |
| クッチャロ湖 | 浜頓別町 | 1989 | 1,607 |
| ウトナイ湖 | 苫小牧市 | 1991 | 510 |
| 霧多布湿原 | 浜中町 | 1993 | 2,504 |
| 厚岸湖・別寒辺牛湿原 | 厚岸町 | 1993 | 5,277 |
| 宮島沼 | 美唄市 | 2002 | 41 |
| サロベツ原野 | 豊富町・幌延町 | 2005 | 2,560 |
| 濤沸湖 | 網走市・小清水町 | 2005 | 900 |
| 雨竜沼湿原 | 雨竜町 | 2005 | 624 |
| 野付半島・野付湾 | 別海町・標津町 | 2005 | 6,053 |
| 阿寒湖 | 釧路市 | 2005 | 1,318 |
| 風蓮湖・春国岱 | 根室市・別海町 | 2005 | 6,139 |
| 大沼 | 七飯町 | 2012 | 1,236 |
北海道は全国最多の13か所を誇ります。釧路湿原は日本最大の湿原で、タンチョウの繁殖地として世界的に有名です。クッチャロ湖・ウトナイ湖はハクチョウやガンの大規模な渡りで知られています。
東北(7か所)
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| 湿地名 | 都道府県 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 仏沼 | 青森県三沢市 | 2005 | 222 |
| 伊豆沼・内沼 | 宮城県栗原市・登米市 | 1985 | 559 |
| 蕪栗沼・周辺水田 | 宮城県大崎市ほか | 2005 | 423 |
| 化女沼 | 宮城県大崎市 | 2008 | 34 |
| 志津川湾 | 宮城県南三陸町 | 2018 | 5,793 |
| 大山上池・下池 | 山形県鶴岡市 | 2008 | 39 |
| 猪苗代湖 | 福島県会津若松市ほか | 2025 | 10,960 |
宮城県に4か所が集中しています。伊豆沼・内沼はマガンの日本最大の越冬地として知られ、冬季には数十万羽が飛来します。猪苗代湖は2025年7月に最新登録された湿地で、面積10,960haは日本最大の自然湖沼のひとつです。
関東・甲信越(9か所)
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| 湿地名 | 都道府県 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 渡良瀬遊水地 | 茨城・栃木・群馬・埼玉県 | 2012 | 2,861 |
| 涸沼 | 茨城県鉾田市ほか | 2015 | 935 |
| 奥日光の湿原 | 栃木県日光市 | 2005 | 260 |
| 芳ヶ平湿地群 | 群馬県中之条町・草津町 | 2015 | 887 |
| 尾瀬 | 福島・群馬・新潟県 | 2005 | 8,711 |
| 谷津干潟 | 千葉県習志野市 | 1993 | 40 |
| 葛西海浜公園 | 東京都江戸川区 | 2018 | 367 |
| 瓢湖 | 新潟県阿賀野市 | 2008 | 24 |
| 佐潟 | 新潟県新潟市 | 1996 | 76 |
東京都の葛西海浜公園は首都圏の貴重な干潟環境です。谷津干潟(習志野市)も東京湾最後の干潟として重要で、シギ・チドリ類の渡りの中継地になっています。尾瀬は国内有数の高層湿原で、面積8,711haに及びます。
北陸・東海(6か所)
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| 湿地名 | 都道府県 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 立山弥陀ヶ原・大日平 | 富山県立山町 | 2012 | 574 |
| 片野鴨池 | 石川県加賀市 | 1993 | 10 |
| 中池見湿地 | 福井県敦賀市 | 2012 | 87 |
| 三方五湖 | 福井県若狭町・美浜町 | 2005 | 1,110 |
| 藤前干潟 | 愛知県名古屋市・飛島村 | 2002 | 323 |
| 東海丘陵湧水湿地群 | 愛知県豊田市 | 2012 | 23 |
立山弥陀ヶ原・大日平は標高2,000m前後の高山湿原で、木道が整備され多くの登山者が訪れます。片野鴨池は石川県加賀市の小さな池ながら、カモ類の越冬地として重要です。東海丘陵湧水湿地群は愛知県の丘陵に点在する湧水湿地の集まりで、希少種シラタマホシクサの生育地として知られます。
近畿・中国(6か所)
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| 湿地名 | 都道府県 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 琵琶湖 | 滋賀県(10市町村) | 1993 | 65,984 |
| 円山川下流域・周辺水田 | 兵庫県豊岡市 | 2012 | 1,094 |
| 串本沿岸海域 | 和歌山県串本町 | 2005 | 574 |
| 中海 | 鳥取・島根県 | 2005 | 8,043 |
| 宍道湖 | 島根県松江市・出雲市 | 2005 | 7,652 |
| 宮島 | 広島県廿日市市 | 2012 | 142 |
琵琶湖は面積65,984haと日本最大のラムサール登録湿地です。兵庫県豊岡市の円山川下流域はコウノトリの野生復帰事業が行われている場所として有名で、湿地保全と地域振興を両立するモデルケースです。宮島(厳島)は世界遺産としても知られ、干潟・海藻藻場などの海岸湿地が登録されています。
九州・山口(8か所)
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| 湿地名 | 都道府県 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 秋吉台地下水系 | 山口県美祢市 | 2005 | 563 |
| 東よか干潟 | 佐賀県佐賀市 | 2015 | 218 |
| 肥前鹿島干潟 | 佐賀県鹿島市 | 2015 | 57 |
| 荒尾干潟 | 熊本県荒尾市 | 2012 | 754 |
| くじゅう坊ガツル・タデ原湿原 | 大分県竹田市・九重町 | 2005 | 91 |
| 藺牟田池 | 鹿児島県薩摩川内市 | 2005 | 60 |
| 出水ツルの越冬地 | 鹿児島県出水市 | 2021 | 478 |
| 屋久島永田浜 | 鹿児島県屋久島町 | 2005 | 10 |
出水ツルの越冬地(鹿児島県出水市)は、ナベヅル・マナヅルが毎年1万羽以上越冬する世界的な越冬地です。秋吉台地下水系は地表ではなく地下水系(洞窟・鍾乳洞内水域)が対象という珍しいケースです。屋久島永田浜はアオウミガメの産卵地として知られます。
沖縄(5か所)
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| 湿地名 | 所在地 | 登録年 | 面積(ha) |
|---|---|---|---|
| 漫湖 | 那覇市・豊見城市 | 1999 | 58 |
| 久米島の渓流・湿地 | 久米島町 | 2008 | 255 |
| 慶良間諸島海域 | 渡嘉敷村・座間味村 | 2005 | 8,290 |
| 与那覇湾 | 宮古島市 | 2012 | 704 |
| 名蔵アンパル | 石垣市 | 2005 | 157 |
慶良間諸島海域は8,290haと沖縄最大のラムサール登録湿地で、ザトウクジラの繁殖海域やアオサンゴの大群落で知られます。名蔵アンパル(石垣島)はマングローブ林・干潟・アマモ場が複合する貴重な汽水域です。漫湖は那覇市街地に隣接しながらマングローブが残る都市型湿地です。
豆知識
面積ランキング(上位10か所)
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| 順位 | 湿地名 | 面積(ha) | 都道府県 |
|---|---|---|---|
| 1 | 琵琶湖 | 65,984 | 滋賀県 |
| 2 | 猪苗代湖 | 10,960 | 福島県 |
| 3 | 尾瀬 | 8,711 | 福島・群馬・新潟県 |
| 4 | 慶良間諸島海域 | 8,290 | 沖縄県 |
| 5 | 中海 | 8,043 | 鳥取・島根県 |
| 6 | 釧路湿原 | 7,863 | 北海道 |
| 7 | 宍道湖 | 7,652 | 島根県 |
| 8 | 風蓮湖・春国岱 | 6,139 | 北海道 |
| 9 | 野付半島・野付湾 | 6,053 | 北海道 |
| 10 | 志津川湾 | 5,793 | 宮城県 |
琵琶湖(65,984ha)は2位の猪苗代湖(10,960ha)の約6倍という圧倒的な面積を誇ります。
都道府県別登録数
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| 都道府県 | 件数 |
|---|---|
| 北海道 | 13 |
| 宮城県 | 4 |
| 沖縄県 | 5 |
| 鹿児島県 | 3 |
| 愛知県 | 2 |
| 福井県 | 2 |
| 新潟県 | 2 |
| 佐賀県 | 2 |
| 島根県 | 2(単独登録分) |
| その他 | 各1 |
北海道(13件)の多さが際立っています。東京都は葛西海浜公園1か所のみですが、首都圏唯一のラムサール湿地として重要な役割を担っています。
登録の歴史
日本のラムサール湿地登録は1980年の釧路湿原1か所から始まり、2005年に20か所が一括登録されて急増しました。最近では2021年(出水ツルの越冬地)、2025年(猪苗代湖)と少数ずつ追加されています。
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| 登録年 | 新規登録数 | 累計 |
|---|---|---|
| 1980 | 1 | 1 |
| 1985〜1999 | 10 | 11 |
| 2002〜2008 | 26 | 37 |
| 2012〜2018 | 15 | 52 |
| 2021 | 1 | 53 |
| 2025 | 1 | 54 |
2002年登録(宮島沼・藤前干潟)と2005年の大量登録(20か所)は、日本の湿地保全に対する国際的な関心が高まった時期と重なっています。
腕試しクイズ(全5問)
日本のラムサール条約登録湿地について学んだら、理解度を試してみましょう。
まとめ
日本のラムサール条約登録湿地は全54か所(総面積約166,134ha)で、北海道13か所を筆頭に北は北海道から南は沖縄まで多様な湿地が守られています。最新の登録は2025年7月の猪苗代湖です。各湿地は渡り鳥の中継地・絶滅危惧種の生息地・地域の自然遺産として重要な役割を担っています。ラムサール湿地への訪問を計画する際は、環境省の公式情報で最新の保護状況を確認してみてください。
環境省「日本の条約湿地」 https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/RamsarSites_in_Japan.html(2026-10-05参照)