
宝石・鉱石・鉱物の漢字を130件、雅名(金剛石=ダイヤモンド、蒼玉=サファイア、緑柱石=ベリル)・和名が定着したもの(翡翠/琥珀/瑪瑙/瑠璃)・鉱物学的な鉱石名(黄鉄鉱/方解石/黒曜石)・王偏(玉偏)の漢字体系・古典文学的な表現(完璧/切磋琢磨/珠玉)の5分類で網羅しました。中国語由来の雅名と日本独自の和名を区別し、難読漢字には読み方とふりがな・対応する宝石名・由来や意味を併記しています。元素の漢字記事で扱った金偏=金属/气がまえ=気体の体系と同様に、王偏(玉偏)は宝石・玉に関わる漢字体系であることが大きな特徴で、本記事の独自の切り口です。漢字シリーズの元素の漢字130選・動物を表す漢字157選・天候・気象を表す漢字211選もあわせてどうぞ。
王偏(玉偏)の漢字体系
王偏(おうへん/ぎょくへん・玉偏)は、宝石・玉に関わる漢字を統一する部首です。元素の漢字で「金偏=金属」「气がまえ=気体」「さんずい=液体」「石偏=固体非金属」と部首が状態を表したのと同じく、王偏の漢字は『美しい玉・宝石』を表す体系性を持っています。
| 偏 | 表すもの | 例 |
|---|---|---|
| 王偏(玉偏) | 玉・宝石・宝飾 | 瑪・瑙・瑠・璃・琥・珀・瑛・瓊・瑶・玲・璞・璽・璧 |
| 石偏 | 石・鉱物 | 砂・砒・硅・磷・砷・硫 |
| 羽偏(一部) | 羽の色から派生した玉名 | 翡・翠(カワセミの羽色から「翡翠」) |
「王」という字は本来「玉」の象形で、中央の点を省いたものが「王」、点を残したものが「玉」となりました。よって多くの王偏漢字は『玉=宝石』を意味するわけです。これを踏まえると、後述する130件の漢字がすべて石・玉・宝飾という同じテーマに属することが見えてきます。
宝石の漢字・雅名(51選)
ダイヤモンド・ルビー・サファイアといった世界の宝石を、中国語由来の雅名と漢字表記でまとめました。「金剛石」「蒼玉」「緑柱石」など、現代でも宝石業界・古典文学で使われる優美な漢字表記が並びます。
| 漢字・和名 | 読み | 対応する宝石・鉱石名 | 補足(由来・意味) |
|---|---|---|---|
| 金剛石 | こんごうせき | ダイヤモンド | 「金剛」は仏教で最も硬いもの。最硬度モース10 |
| 紅玉 | こうぎょく | ルビー | 赤いコランダムの雅名 |
| 蒼玉 | そうぎょく | サファイア | 青いコランダム |
| 青玉 | せいぎょく | サファイア | 蒼玉と同義の別表記 |
| 緑柱石 | りょくちゅうせき | ベリル(エメラルドの母石) | 六方晶系の柱状結晶。緑色変種がエメラルド |
| 翠玉 | すいぎょく | エメラルド | 「翠」は深い緑 |
| 緑玉 | りょくぎょく | エメラルド | 緑色の宝石の総称にも |
| 黄玉 | おうぎょく | トパーズ | 黄色の玉の意 |
| 紫水晶 | むらさきすいしょう | アメジスト | 紫色の石英 |
| 黄水晶 | きすいしょう | シトリン | 黄色の石英 |
| 紅水晶 | こうすいしょう | ローズクォーツ | 淡紅色の石英 |
| 煙水晶 | けむりすいしょう | スモーキークォーツ | 煙色の石英 |
| 玉髄 | ぎょくずい | カルセドニー | 微粒子からなる石英の総称 |
| 紅玉髄 | こうぎょくずい | カーネリアン | 赤い玉髄 |
| 縞瑪瑙 | しまめのう | サードニクス | 縞模様の瑪瑙 |
| 紅縞瑪瑙 | べにしまめのう | サードオニキス | 赤縞の瑪瑙 |
| 黒瑪瑙 | くろめのう | オニキス | 黒い瑪瑙 |
| 月長石 | げっちょうせき | ムーンストーン | 月光を思わせる長石 |
| 日長石 | にっちょうせき | サンストーン | 太陽のような輝きを持つ長石 |
| 太陽石 | たいようせき | サンストーン | 日長石の別名 |
| 月光石 | げっこうせき | セレナイト/ムーンストーン | 月光のような輝き(諸説あり) |
| 猫目石 | ねこめいし | キャッツアイ | 反射光が猫の目のように見える |
| 虎目石 | とらめいし | タイガーアイ | 虎の目のような縞模様の石英 |
| 鷹目石 | たかめいし | ホークスアイ | 青みを帯びた虎目石 |
| 電気石 | でんきせき | トルマリン | 加熱や圧力で帯電する性質から |
| 青金石 | せいきんせき | ラピスラズリ | 瑠璃の中国式表記 |
| 蛋白石 | たんぱくせき | オパール | 「蛋」は卵。卵白のような遊色 |
| 石榴石 | ざくろいし | ガーネット | 結晶が石榴(ザクロ)の種に似る |
| 紫石英 | しせきえい | アメジスト | 紫水晶の中国式古名 |
| 雪花石膏 | せっかせっこう | アラバスター | 雪のような花模様の石膏 |
| 滑石 | かっせき | タルク/ソープストーン | 表面が滑らか・モース硬度1 |
| 蛇紋石 | じゃもんせき | サーペンティン | 蛇のような縞模様 |
| 燐灰石 | りんかいせき | アパタイト | リン酸塩鉱物・歯のエナメル質と同種 |
| 黄鉄鉱 | おうてっこう | パイライト | 黄金色の鉄硫化物・「愚者の金」 |
| 黄銅鉱 | おうどうこう | カルコパイライト | 銅の主要鉱石 |
| 赤鉄鉱 | せきてっこう | ヘマタイト | 赤褐色の鉄鉱・古代の顔料 |
| 磁鉄鉱 | じてっこう | マグネタイト | 磁性を持つ鉄鉱 |
| 方鉛鉱 | ほうえんこう | ガレナ | 立方体結晶の鉛硫化物 |
| 孔雀石 | くじゃくいし | マラカイト | 孔雀の羽のような緑の縞 |
| 藍銅鉱 | らんどうこう | アズライト | 藍青色の銅鉱物 |
| 蛍石 | ほたるいし | フローライト | 熱・紫外線で蛍光を発する |
| 燧石 | ひうちいし | フリント | 古来の発火具・打撃で火花 |
| 黒曜石 | こくようせき | オブシディアン | 火山ガラス・古代の刃物 |
| 軟玉 | なんぎょく | ネフライト | 翡翠の一種(軟らかい方) |
| 硬玉 | こうぎょく | ジェダイト | 翡翠の一種(硬い方)・紅玉と同字に注意 |
| 隕石 | いんせき | メテオライト | 宇宙から落下した石 |
| 緑簾石 | りょくれんせき | エピドート | 緑色のケイ酸塩鉱物 |
| 緑泥石 | りょくでいせき | クロライト | 緑色の層状ケイ酸塩 |
| 葉蝋石 | ようろうせき | パイロフィライト | 葉状にはがれる鉱物 |
| 紅鉛鉱 | こうえんこう | クロコアイト | 赤色のクロム酸鉛 |
| 苦灰石 | くかいせき | ドロマイト | 苦みのあるカルシウムマグネシウム炭酸塩 |
和名が定着している宝石・鉱物(14選)
カタカナ表記より漢字・和名で親しまれている宝石類です。日本古来の意味づけや、仏教経典の七宝として日本文化に深く根ざしています。
| 漢字・和名 | 読み | 対応する宝石・鉱石名 | 補足(由来・意味) |
|---|---|---|---|
| 翡翠 | ひすい | ジェード(ジェダイト・ネフライト) | 「翡」は赤い羽・「翠」は緑の羽。元はカワセミの羽色 |
| 琥珀 | こはく | アンバー | 古来「虎の魂が地に入って石になる」と信じられた(諸説あり) |
| 瑪瑙 | めのう | アゲート | 「馬の脳」に似た文様から |
| 珊瑚 | さんご | コーラル | 海中の刺胞動物の骨格 |
| 真珠 | しんじゅ | パール | 貝の中で形成される玉 |
| 水晶 | すいしょう | クリスタル(クォーツ) | 「水のように透明な晶」 |
| 瑠璃 | るり | ラピスラズリ | 七宝の一・ペルシャ語lazward由来 |
| 玻璃 | はり | 古代の水晶/ガラス | 七宝の一・後にガラス全般を指す |
| 硨磲 | しゃこ | シャコ貝(真珠母貝) | 七宝の一・巨大二枚貝 |
| 玳瑁 | たいまい | タイマイ(鼈甲の原料ウミガメ) | 古来の宝飾素材 |
| 鼈甲 | べっこう | タイマイの甲 | 装飾品・櫛などに加工 |
| 象牙 | ぞうげ | アイボリー | 象の牙・現在は国際取引規制 |
| 螺鈿 | らでん | 貝細工 | 「螺(巻貝)」の「鈿(飾り)」 |
| 七宝 | しっぽう | エナメル(七宝焼) | 仏教の七宝=金/銀/瑠璃/玻璃/硨磲/赤珠/瑪瑙 |
鉱物・鉱石・石の漢字(25選)
宝飾用ではなく、地質学・鉱物学的な鉱石名・岩石名の漢字をまとめました。
| 漢字・和名 | 読み | 対応する鉱物・岩石名 | 補足(由来・意味) |
|---|---|---|---|
| 石英 | せきえい | クォーツ | SiO₂・地殻で最も普遍的な鉱物 |
| 長石 | ちょうせき | フェルドスパー | 地殻で最も多い鉱物群 |
| 雲母 | うんも | マイカ | 層状にはがれる |
| 黒雲母 | くろうんも | バイオタイト | 鉄を多く含む雲母 |
| 白雲母 | しろうんも | マスコバイト | カリウムを多く含む雲母 |
| 金雲母 | きんうんも | フロゴパイト | マグネシウムを多く含む雲母 |
| 方解石 | ほうかいせき | カルサイト | 炭酸カルシウム・複屈折の性質 |
| 辰砂 | しんしゃ | シナバー | 水銀の硫化物・朱色顔料の原料 |
| 朱砂 | しゅさ | 辰砂の別名 | 朱色の意味 |
| 雄黄 | ゆうおう | オーピメント | 黄色のヒ素硫化物 |
| 雌黄 | しおう | オーピメント類縁鉱物 | 雄黄と対をなす |
| 寒水石 | かんすいせき | 大理石/カルサイト | 白く透き通る |
| 大理石 | だいりせき | マーブル | 中国・雲南省大理が産地名の由来 |
| 花崗岩 | かこうがん | グラニット | 石材として広く使用 |
| 玄武岩 | げんぶがん | バサルト | 火山岩・四神の玄武に由来 |
| 石灰石 | せっかいせき | ライムストーン | セメント・建材原料 |
| 砂岩 | さがん | サンドストーン | 砂粒が固結した堆積岩 |
| 頁岩 | けつがん | シェール | 頁(ページ)状にはがれる |
| 凝灰岩 | ぎょうかいがん | タフ | 火山灰が固結 |
| 石膏 | せっこう | ジプサム | 建材・医療ギプスの原料 |
| 鍾乳石 | しょうにゅうせき | スタラクタイト | 鍾乳洞の天井から垂れ下がる |
| 自然金 | しぜんきん | 純金結晶 | 地中で生じた金 |
| 自然銀 | しぜんぎん | 純銀結晶 | 地中で生じた銀 |
| 自然銅 | しぜんどう | 純銅結晶 | 地中で生じた銅 |
| 蛇紋岩 | じゃもんがん | サーペンタイン岩石 | 蛇紋石を主とする岩石 |
宝石・玉に関わる漢字(30選)
ここまで登場した複合語の構成要素となる、王偏(玉偏)を中心にした一字漢字をまとめました。これらの漢字を知ると、宝石名の漢字がぐっと読みやすくなります。
| 漢字 | 読み | 意味(対応する宝石・概念) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 玉 | ぎょく/たま | 玉一般・宝の総称 | 「王」と同源の象形文字 |
| 珠 | しゅ/たま | 小さい玉・真珠 | 真珠・珠玉 |
| 玖 | きゅう | 黒い玉 | 人名にも使われる |
| 玻 | は | 水晶 | 玻璃の「玻」 |
| 璃 | り | 瑠璃の「璃」 | 単独では使われない |
| 瑠 | る | 瑠璃の「瑠」 | 単独では使われない |
| 瑪 | め | 瑪瑙の「瑪」 | 単独では使われない |
| 瑙 | のう | 瑪瑙の「瑙」 | 単独では使われない |
| 琥 | こ | 琥珀の「琥」 | 「虎」が含まれる |
| 珀 | はく | 琥珀の「珀」 | 「白」が含まれる |
| 翡 | ひ | 翡翠の「翡」(羽偏) | 元はカワセミの赤い羽 |
| 翠 | すい | 翡翠の「翠」(羽偏) | 元はカワセミの緑の羽 |
| 琉 | りゅう | 瑠の通用字 | 琉球の「琉」 |
| 璧 | へき | 環状の玉 | 「完璧」の語源 |
| 瑛 | えい | 玉の光・水晶 | 人名にも頻出 |
| 瓊 | けい/ぬ | 美しい玉 | 神武天皇の母「玉依姫」の関連表現 |
| 瑶 | よう | 美しい玉 | 「瑶台」は神仙の住む御殿 |
| 瑾 | きん | 美玉 | 三国志の周瑜の字(あざな)にも |
| 璋 | しょう | 祭祀用の半圭の玉器 | 古代中国の礼器 |
| 圭 | けい | 上が尖った長方形の玉器 | 古代中国の礼器 |
| 璞 | はく | まだ磨いていない玉の原石 | 「璞玉」は才能の原石の喩え |
| 璽 | じ | 玉印・玉璽(国璽) | 天皇の御璽など |
| 瑞 | ずい/みず | 吉兆の玉・めでたい | 「瑞祥」「瑞穂」 |
| 玲 | れい | 玉が触れ合う透明な音 | 「玲瓏」 |
| 琢 | たく | 玉を磨く | 「切磋琢磨」 |
| 璜 | こう | 半円形の玉 | 古代の礼器 |
| 環 | かん | 環状の玉 | 「指環(指輪)」「玉環」 |
| 珮 | はい | 帯につける玉飾り | 古代中国の装身具 |
| 玦 | けつ | 環の一部が欠けた玉 | 古代の装身具・決別の意も |
| 珂 | か | 白い瑪瑙・馬の頭飾り | 古代の装飾 |
古典・文学的な石の表現(10選)
宝石・玉に由来する四字熟語や、現代日本語に残る玉の表現をまとめました。「完璧」「切磋琢磨」など、日常語の語源が玉に関わっていることが分かります。
| 漢字・表現 | 読み | 意味 | 補足(由来) |
|---|---|---|---|
| 宝玉 | ほうぎょく | 貴重な玉・宝物 | 古来の宝石の総称 |
| 珠玉 | しゅぎょく | 真珠と玉・素晴らしい作品の喩え | 「珠玉の名言」など |
| 玉石混淆 | ぎょくせきこんこう | 玉と石が混ざる | 良いものと悪いものが混在する |
| 完璧 | かんぺき | 瑕(きず)のない玉 | 戦国時代・藺相如(りんしょうじょ)が「和氏の璧」を完全に持ち帰った故事 |
| 切磋琢磨 | せっさたくま | 玉を磨く4工程 | 詩経「如切如磋、如琢如磨」が出典 |
| 玉砕 | ぎょくさい | 玉のように潔く砕け散る | 北斉書から |
| 五色の玉 | ごしきのたま | 赤・青・黄・白・黒の玉 | 諸説あり |
| 美玉 | びぎょく | 美しい玉 | 人や物の比喩にも |
| 玉杯 | ぎょくはい | 玉で作った酒杯 | 古代の貴重な器 |
| 璞玉 | はくぎょく | 磨かれていない玉の原石 | 才能のある若者の喩え |
まとめ
宝石・鉱石・鉱物の漢字を、雅名51/和名定着14/鉱物・鉱石25/王偏の漢字30/古典文学表現10の5分類で合計130件を網羅しました。「金剛石(ダイヤモンド)」「蒼玉(サファイア)」「緑柱石(ベリル)」のような中国語由来の優美な雅名から、「翡翠」「琥珀」「瑪瑙」「瑠璃」のような和名定着の難読漢字、「黄鉄鉱」「黒曜石」のような鉱物学的な鉱石名まで、石をめぐる漢字の世界を体系的にまとめました。記事の核心は王偏(玉偏)が宝石・玉を表す漢字体系であることで、元素の漢字130選で扱った「金偏=金属/气がまえ=気体」と同じ偏が意味を表すしくみが、宝石漢字でも一貫しています。「完璧」「切磋琢磨」のような日常語が玉に由来することも、漢字の奥深さを物語ります。漢字シリーズの動物を表す漢字157選・天候・気象を表す漢字211選もあわせてご覧ください。












