人名がつく単位43種一覧|ニュートン・ワット・マッハなど語源まとめ
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人名がついた単位は、科学者たちへの敬意から命名されました。「ワット」も「ボルト」も「ヘルツ」も、すべて実在した人物の名前です。では、いったい何人の科学者が単位に名を残したのでしょうか。

本記事では、人名に由来する単位を43種一覧にまとめました。SI単位から日常的な非SI単位まで、カテゴリ別に整理しています。「なぜ哲学者マッハが速度単位になったのか」「日本人で唯一単位に名を残した湯川秀樹とはどんな人物なのか」など、知ると誰かに話したくなるエピソードも厳選してご紹介します。

なお、キロ・メガ・ギガなどのSI接頭辞の語源については「単位の接頭辞全24種一覧|キロ・メガ・ギガ・テラの意味と語源まとめ」もあわせてご覧ください。

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人名がついた単位43種 カテゴリ別一覧

人名がついた単位は、大きく「SI国際単位系」「CGS単位系」「非SI・日常単位」に分類できます。それぞれのカテゴリでまとめました。

SI基本単位(人名由来)2種

SI基本単位は7つありますが、そのうち人名に由来するのはわずか2つです。残り5つ(メートル・キログラム・秒・カンデラ・モル)はラテン語や物理的定義に由来します。

単位名 記号 計測する物理量 由来の科学者
アンペア A 電流 アンドレ=マリ・アンペール(仏)
ケルビン K 熱力学温度 ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)(英)

SI組立単位(人名由来)17種

SI組立単位22種のうち、人名に由来するものは17種。電気・磁気・力学・放射線など幅広い分野の科学者が名を残しています。なお、ルーメン(lm)・ルクス(lx)はラテン語「光」由来、カタール(kat)はラテン語由来のため人名単位には含めません。

単位名 記号 計測する物理量 由来の科学者
ヘルツ Hz 周波数 ハインリヒ・ヘルツ(独)
ニュートン N アイザック・ニュートン(英)
パスカル Pa 圧力・応力 ブレーズ・パスカル(仏)
ジュール J エネルギー・仕事・熱量 ジェームズ・プレスコット・ジュール(英)
ワット W 仕事率・電力 ジェームズ・ワット(英)
クーロン C 電荷・電気量 シャルル=オーギュスタン・ド・クーロン(仏)
ボルト V 電圧・電位差 アレッサンドロ・ボルタ(伊)
ファラド F 静電容量 マイケル・ファラデー(英)
オーム Ω 電気抵抗 ゲオルク・ジーモン・オーム(独)
ジーメンス S 電気コンダクタンス ヴェルナー・フォン・ジーメンス(独)
ウェーバ Wb 磁束 ヴィルヘルム・エドゥアルト・ヴェーバー(独)
テスラ T 磁束密度 ニコラ・テスラ(セルビア系米)
ヘンリー H インダクタンス ジョセフ・ヘンリー(米)
セルシウス 温度 アンデルス・セルシウス(スウェーデン)
ベクレル Bq 放射能 アンリ・ベクレル(仏)
グレイ Gy 吸収線量 ルイス・ハロルド・グレイ(英)
シーベルト Sv 線量当量 ロルフ・マキシミリアン・シーベルト(スウェーデン)

CGS単位系(人名由来)8種

CGSとはセンチメートル(cm)・グラム(g)・秒(s)を基本とする旧来の単位系で、現在は主に電磁気学・物理学の研究分野で使われています。

単位名 記号 計測する物理量 由来の科学者
ガウス G 磁気誘導(磁束密度) カール・フリードリヒ・ガウス(独)
マクスウェル Mx 磁束 ジェームズ・クラーク・マクスウェル(英)
エルステッド Oe 磁場の強さ ハンス・クリスティアン・エルステッド(デンマーク)
ギルバート Gb 起磁力 ウィリアム・ギルバート(英)
ガル Gal 加速度(重力測量用) ガリレオ・ガリレイ(伊)
ストークス St 動粘度 ジョージ・ガブリエル・ストークス(英)
ポアズ P 粘性率(粘度) ジャン・ルイ・ポアズイユ(仏)
デバイ D 電気双極子モーメント ピーター・デバイ(蘭)

非SI・日常でも使われる人名単位16種

天文学・核物理・日常生活で広く使われる人名単位です。教科書の枠を超えた意外な由来が揃っています。

単位名 記号 計測する物理量 由来の科学者
オングストローム Å 微小な長さ(0.1 nm) アンデルス・ヨーナス・オングストローム(スウェーデン)
フェルミ fm 核サイズの長さ(10⁻¹⁵ m) エンリコ・フェルミ(伊)
ユカワ 微小な長さ(フェルミと同値とされる) 湯川秀樹(日本)
ドルトン Da 原子・分子の質量 ジョン・ドルトン(英)
トル Torr 圧力(水銀柱1 mmHgに相当) エヴァンジェリスタ・トリチェリ(伊)
キュリー Ci 放射能(非SI) マリー&ピエール・キュリー(仏)
レントゲン R X線の照射線量 ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(独)
ベル/デシベル B/dB 音圧・電力比の対数 アレクサンダー・グラハム・ベル(英米)
マッハ数 Ma 速度(音速比) エルンスト・マッハ(チェコ系墺)
ファーレンハイト °F 温度 ガブリエル・ファーレンハイト(独)
ランキン °Ra 絶対温度(°F基準) ウィリアム・ランキン(英)
スコヴィル SHU 唐辛子の辛さ ウィルバー・スコヴィル(米)
ドブソン単位 DU 大気中のオゾン量 ゴードン・ドブソン(英)
ジャンスキー Jy 電波の強度(電波天文学) カール・ジャンスキー(米)
ネーパ Np 対数スケール(自然対数) ジョン・ネイピア(スコットランド)
ハウンズフィールド HU CT画像の放射線濃度 ゴッドフリー・ハウンズフィールド(英)
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知っておきたい!注目の人名単位エピソード

43種の中から、特に「知ると面白い」由来を持つ単位を5つ厳選しました。

湯川秀樹(ユカワ):日本人で唯一、単位に名が刻まれた科学者

「ユカワ」は原子核の直径レベルの微小な長さを表す単位で、10⁻¹⁵メートル(フェルミと同値)に相当するとされています。名前の由来は、中間子理論を提唱したことでノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹(1907〜1981)。日本人として初めてのノーベル賞受賞者でもあります。

人名に由来するSI単位・CGS単位はすべてヨーロッパ・北米の科学者の名前。その中でアジア人として唯一、単位に名前を残したとされるのが湯川秀樹です。国際的な公式単位としての採用ではなく、素粒子物理学の分野で慣用的に使われている単位ですが、日本の科学史を語る上で欠かせない存在です。

デシベル(dB):電話の発明者が音の単位になった理由

「デシベル」は音の大きさを表す単位として知られますが、その名前の由来は電話の発明者アレクサンダー・グラハム・ベル(1847〜1922)です。もともとは電話の信号レベルを比較するために「ベル(B)」という単位が定義されました。「デシ」は10分の1を意味するSI接頭辞なので、「デシベル」は「ベルの10分の1」という意味です。

音の分野で使われるようになったのは、電話システムの音圧比較からそのまま転用されたため。ベル本人が音響工学を専門にしていたわけではありません。通信工学の計測単位が音響工学全体に広まったという、少し意外な経緯を持っています。

スコヴィル(SHU):辛さを数値にした薬剤師が残した単位

唐辛子の辛さを表す「スコヴィル値(SHU = Scoville Heat Units)」は、アメリカの薬剤師ウィルバー・スコヴィル(1865〜1942)が1912年に考案しました。砂糖水で唐辛子エキスを薄めていき、辛さが感じられなくなるまでの希釈倍率を「辛さの値」とした測定法です。

現在では機器分析でカプサイシン濃度を直接測定する方法が主流ですが、単位名は今もスコヴィルのまま。ピーマンは約0 SHU、一般的な唐辛子は2,500〜8,000 SHU、キャロライナ・リーパーは平均約156万 SHUで個体によっては220万 SHUを超える例もあります(2023年までギネス世界記録最辛に認定されていた唐辛子)。食品分野で人名が単位になった珍しい例です。

マッハ(Ma):哲学者が残した速度の単位

「マッハ1 = 音速」で知られるマッハ数の由来は、エルンスト・マッハ(1838〜1916)。チェコ出身のオーストリア人で、物理学者であると同時に哲学者・科学哲学の大家でもありました。「感覚でとらえられないものは科学ではない」というマッハの実証主義的な立場は、アインシュタインの相対性理論の着想にも影響を与えたとされています。

マッハ自身は「マッハ数」という単位に名前が使われたことを知りませんでした。彼の死後、1929年にスイスのエンジニア、ヤコブ・アッカーレットが超音速流の研究で「マッハ数」と命名しました。哲学者の名前が速度の単位として世界中に広まった稀なケースです。

キュリー夫妻(Ci):夫婦二人でそれぞれ単位に名を残す

放射能の非SI単位「キュリー(Ci)」は、マリー・キュリー(1867〜1934)とピエール・キュリー(1859〜1906)の功績を称えて命名されました。夫婦そろって同じ単位に名が残るのは、世界でもキュリー夫妻だけです。

マリー・キュリーはノーベル賞を2度(物理学賞・化学賞)受賞した唯一の人物。SI単位ではベクレル(Bq)が放射能の公式単位として定められていますが、医療・原子力分野ではキュリーも今なお使われています。1キュリー=370億ベクレルという換算で、大きな放射能量を扱う際に便利な単位です。

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豆知識:人名由来の単位記号が大文字になる理由

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物理単位の記号で、人名由来の単位は記号が「大文字」で始まります。アンペア→A、ボルト→V、ワット→W、ニュートン→N、パスカル→Pa などです。一方、メートル(m)・秒(s)・グラム(g) など人名でない単位は小文字です。

この大文字ルールはSI単位系の国際規則で決まっており、「偉大な人物の名前は大文字で敬意を表す」という意図があります。単位を英字で書くとき「N・W・V」が大文字になっていれば、それは人名由来の証拠といえます。

また、温度単位には特に多くの人名が使われています。セルシウス(℃)・ファーレンハイト(°F)・ケルビン(K)・ランキン(°Ra) という4つの主要な温度スケールはすべて人名由来。「なぜ温度に人名が多いのか」については、温度の測定が科学史的に長らく難題であり、各国の科学者が独自の基準を提案してきた歴史があるからです。

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まとめ

人名がついた単位は、SI基本単位2種・SI組立単位17種・CGS単位系8種・非SI単位16種の計43種を確認できます。毎日使うワット・ボルト・アンペアのほか、辛さを表すスコヴィル、速度のマッハ、音の大きさのデシベルまで、あらゆる分野の科学者が単位に名を残しています。

また、日本人科学者として唯一単位に名前が残されているのが湯川秀樹という事実は、日本の科学史を語る上でも誇らしいポイントです。単位の名前を覚えるだけで科学者の人生や歴史が見えてくる——そんな視点で単位を見直すと、理科の授業がちょっと面白くなるかもしれません。

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