
「日本茶」と聞いてすぐ思い浮かぶのは煎茶やほうじ茶だろうが、チャノキ(Camellia sinensis)から作られる日本茶には、製法・発酵度・栽培方法の組み合わせによってまったく異なる個性を持つ種類が数多く存在する。高知の碁石茶は乳酸菌で二段発酵させる希少な後発酵茶だし、富山のバタバタ茶は泡立てて飲む伝統がある。
本記事では日本茶を製法・発酵度別に全23種、蒸し製緑茶14種・釜炒り製緑茶3種・発酵茶2種・後発酵茶4種の4グループに整理して一覧で解説する。
日本茶の3つの分類軸
日本茶は次の3軸で種類が決まる。
① 製法(加熱方法)
摘んだ茶葉はすぐに酸化が始まるため、熱で酵素を失活させる必要がある。日本では「蒸し製(むしせい)」が主流で、蒸気で短時間加熱することで鮮やかな緑色と清涼感が生まれる。九州の一部では中国茶に近い「釜炒り製(かまいりせい)」を使い、香ばしい風味になる。
② 発酵度
「発酵」とは茶葉中の酵素や微生物による酸化・分解を指す。日本茶の分類はここで大きく分かれる。
- 不発酵茶:緑茶全般(煎茶・玉露・抹茶など)。酵素を熱で止めるため発酵しない
- 半発酵茶:烏龍茶系(国産烏龍茶)
- 全発酵茶:紅茶系(和紅茶)
- 後発酵茶:微生物による後から発酵(碁石茶・阿波番茶など)
③ 栽培方法(遮光の有無)
収穫前に茶園をよしずや寒冷紗で覆う「被覆栽培(ひふくさいばい)」は、日光を遮ることで旨み成分テアニンが増加し、渋み成分カテキンが減少する。玉露・かぶせ茶・碾茶(抹茶の原料)に使われ、甘みと旨みが際立つ高級茶に仕上がる。
蒸し製緑茶の種類一覧(14種)
日本茶消費のおよそ95%を占める蒸し製緑茶。熱処理の方法、栽培方法、製造工程での取り分け方によって個性が異なる。
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| 種類(読み方) | 特徴・製法 | 風味・備考 |
|---|---|---|
| 煎茶(せんちゃ) | 最も一般的な日本茶。露地栽培・普通蒸し(30秒前後) | 清涼感ある渋みとほのかな旨み。日本茶生産量の中で最大のシェアを占める |
| 深蒸し煎茶(ふかむしせんちゃ) | 通常の2〜3倍の時間(60〜120秒)蒸す。葉が細かくなる | まろやかで濃い緑色。渋みが少なく甘みが強い。静岡産に多い |
| 玉露(ぎょくろ) | 収穫前20日以上を遮光した被覆栽培。最高級緑茶 | テアニン(旨み)が凝縮。50〜60℃の低温で淹れると甘みが際立つ |
| かぶせ茶(かぶせちゃ) | 収穫前1〜2週間の短期被覆栽培。別名「冠茶(かんむりちゃ)」 | 玉露と煎茶の中間。旨みと程よい渋みのバランス。三重県が主産地 |
| 碾茶(てんちゃ) | 被覆栽培後、揉まずに乾燥させた平板状の茶葉 | 抹茶の原料。茶道用のほか製菓・食品加工に使用 |
| 抹茶(まっちゃ) | 碾茶を石臼でゆっくり挽いた鮮緑色の粉末 | 茶道の主役。現代はスイーツ・飲料・製菓に広く使用 |
| 番茶(ばんちゃ) | 一番茶摘採後に残る大きく硬化した葉や秋冬摘採の葉 | 庶民的な日常茶。地域により個性多様(京番茶・川根番茶など) |
| ほうじ茶(ほうじちゃ) | 番茶・茎茶・煎茶を200℃前後の高温で焙煎 | 香ばしい焙煎香。加熱でカフェインが揮発し少なめ。子どもや妊婦にも人気 |
| 玄米茶(げんまいちゃ) | 番茶または煎茶に炒り玄米・ポップライスをブレンド | 玄米の香ばしさと緑茶の風味が合わさる。まろやかで飲みやすい |
| 茎茶(くきちゃ)/ 棒茶(ぼうちゃ) | 製茶工程で仕分けられた茎・葉脈部分 | 甘みがあり口当たりが柔らか。加賀棒茶(石川)が有名 |
| 雁が音(かりがね)/ 白折(しらおれ) | 玉露・かぶせ茶の茎のみを選別した高級茎茶 | 一般の茎茶より旨みと甘みが強い。玉露の茎は「白折」とも呼ばれる |
| 芽茶(めちゃ) | 製茶工程で仕分けられた芽先部分。小粒で丸い形状 | 旨みと甘みが凝縮。少量で濃く出るため業務用・家庭用ともに使用 |
| 粉茶(こなちゃ) | 製茶工程で自然に生じる細かい破片・副産物 | 業務用(回転寿司等)が多い。手軽に使えるが滓が多くなりやすい |
| 粉末茶(こなまっちゃ) | 茶葉を丸ごと微粉末に加工した製品(粉茶とは別工程) | 水に溶かすだけで飲める。茶葉丸ごとのため栄養価が高い |
釜炒り製緑茶の種類一覧(3種)
九州の一部に伝わる伝統製法で、摘んだ茶葉を高温の釜で直接炒って酵素を失活させる。蒸し製より香ばしく、すっきりした澄んだ水色が特徴。生産量は日本全体の数%と少なく、産地限定の希少な緑茶として知られる。
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| 種類(読み方) | 産地・製法 | 風味 |
|---|---|---|
| 釜炒り茶(かまいりちゃ) | 九州(嬉野・高千穂・五ヶ瀬・高知)が主産地。釜で手や機械で炒る | 独特の焙煎香と澄んだ黄金色の水色。渋みが少なくすっきり |
| 玉緑茶・ぐり茶(たまりょくちゃ) | 蒸し製だが揉む工程をなくし、丸く短い形状に仕上げる | 旨みが凝縮しまろやか。静岡(天竜)や九州産が多い |
| 釜炒り玉緑茶(かまいりたまりょくちゃ) | 釜炒り製でぐり形状に仕上げる。嬉野茶の一部に該当 | 釜炒りの香ばしさとぐり茶の旨みが合わさった風味 |
発酵茶・後発酵茶の種類一覧(6種)
半発酵・全発酵茶(2種)
チャノキの葉を意図的に酸化させて作る。日本では近年、国産品種を使った烏龍茶や紅茶の生産が増えている。
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| 種類(読み方) | 発酵度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国産烏龍茶(こくさんうーろんちゃ) | 半発酵茶 | やぶきたなど日本品種で作る。台湾産より軽い花香・フルーティーな風味。生産量は少なく希少 |
| 和紅茶(わこうちゃ) | 全発酵茶 | 国産茶葉を完全発酵させた日本産紅茶。繊細な甘みと柔らかい渋み。ミルクを加えず単体で飲むのが主流 |
後発酵茶(4種)
摘採・製造後に微生物(乳酸菌・麴菌など)を使って発酵させる希少な製法。中国の黒茶(プーアル茶)と同じ後発酵カテゴリで、日本各地の山間部に伝わる伝統飲料。腸活・健康飲料として近年再評価が進んでいる。
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| 種類(読み方) | 産地 | 製法・特徴 |
|---|---|---|
| 阿波番茶(あわばんちゃ) | 徳島県那賀川上流域 | 大きな茶葉を蒸した後、乳酸菌で発酵。渋みが少なく程よい酸味と旨みが特徴 |
| 碁石茶(ごいしちゃ) | 高知県大豊町 | 蒸し→麴菌発酵→乳酸菌発酵の2段階発酵。角型に裁断した形が碁石に似ることが名の由来 |
| バタバタ茶(ばたばたちゃ) | 富山県朝日町 | 後発酵茶を深い茶碗に入れ、茶筅(ちゃせん)で「バタバタ」と音を立てて泡立てて飲む |
| 石鎚黒茶(いしづちくろちゃ) | 愛媛県西条市周辺 | 大きな成熟葉を使い、麴菌と乳酸菌の2段階発酵。四国山地の伝統的な後発酵茶 |
日本茶にまつわる豆知識
被覆栽培で旨みが増すのはなぜ?
茶葉は光合成によって旨み成分テアニンをカテキン(渋み成分)に変換する。遮光して光合成を抑えると、テアニンが消費されずに蓄積されるため旨みが増し、カテキンが少なくなることで渋みが減る。玉露や抹茶(碾茶)が甘くまろやかなのはこの仕組みによる。
一番茶・二番茶・三番茶の違い
1年に複数回行う摘採の時期で風味が変わる。
- 一番茶(新茶):4月下旬〜5月。冬の間に蓄積したテアニンが豊富で最も旨みが強い。
- 二番茶:6〜7月。一番茶より渋みが増す。市販の煎茶の主流。
- 三番茶・秋冬番茶:8〜9月以降。渋みが強く、番茶・ほうじ茶・玄米茶の原料となる。
テアニン・カテキン・カフェインの成分比較
3大成分の多少は飲み方の選択の基準になる。
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| 成分 | 役割 | 多い茶 | 少ない茶 |
|---|---|---|---|
| テアニン | 旨み・リラックス効果 | 玉露・かぶせ茶 | 番茶・釜炒り茶 |
| カテキン | 渋み・抗酸化・抗菌作用 | 番茶・煎茶(普通蒸し) | 玉露・ほうじ茶(焙煎で分解) |
| カフェイン | 覚醒効果 | 玉露(コーヒー並みに高い) | ほうじ茶・後発酵茶 |
後発酵茶と腸内環境
阿波番茶・碁石茶などの後発酵茶には乳酸菌や有機酸が豊富に含まれ、腸内環境への好影響が研究されている。中国の黒茶(プーアル茶)が注目される中で、日本の後発酵茶も「在来の発酵飲料」として食文化の面から再評価が進んでいる。
茶の歴史・文化については茶道の歴史・流派・用語一覧も参考にどうぞ。発酵食品に興味があれば世界の発酵食品50選もあわせて読みたい。
まとめ
日本茶の種類を製法・発酵度で分類すると全23種になる。蒸し製緑茶(14種)・釜炒り製緑茶(3種)・半発酵・全発酵茶(2種)・後発酵茶(4種)の4グループで、それぞれ製法・栽培・加工が異なる。煎茶やほうじ茶から始め、産地の希少茶・後発酵茶へと種類を広げていくと、同じチャノキから生まれる日本茶の多様さが実感できるはずだ。