ティルカヨとは|100年以上ぶりに記載された新種の野生ネコ

「新種のネコが100年以上ぶりに見つかった」というニュースで注目を集めているのが、ティルカヨ(学名:Leopardus tilcayo)です。ただし、ここで大切な前提が一つあります。ティルカヨはアメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドのような「イエネコの品種」ではありません。南米ボリビアの雲霧林にすむ、野生のネコ科動物(ヒョウ属=タイガーキャットの仲間)の新種です。この記事では、2026年9月にCurrent Biology誌で発表された研究をもとに、ティルカヨとは何か・なぜ100年以上ぶりの快挙なのかを整理します(2026年9月時点の情報です)。

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ティルカヨとは|ボリビアの雲霧林にすむ野生の小型ネコ

ティルカヨ(Leopardus tilcayo)は、南米ボリビアのユンガスと呼ばれる雲霧林(アンデス山脈とアマゾン低地が接する霧の多い森)にすむ、小型の野生ネコです。イエネコよりもひとまわり小さく、細身の体に丸みのある耳、そして体をおおう不規則な斑点(ロゼット模様)が特徴です。

「ティルカヨ(tilcayo)」という名前は研究者が新しく付けたものではなく、現地ユンガスの人々が昔からこの野生ネコを呼んでいた呼称を採用したものです。つまり「地元では知られていたが、科学的には別種と認識されていなかったネコ」ということになります。

繰り返しになりますが、ティルカヨはペットとして飼われるイエネコの品種(TICAやCFAといった血統登録団体が公認する猫種)ではありません。分類上はヒョウ属(Leopardus)に属する野生動物の新種です。イエネコの品種を知りたい方は、あわせて猫の品種一覧もご覧ください。

100年以上ぶりの「新種記載」という意味

今回の発表が大きなニュースになったのは、現生のネコ科で「亜種の格上げ」ではない完全な新種の記載が100年以上ぶりだからです。

ネコ科の分類では、これまで知られていた集団を「別種に格上げする」形の見直しはたびたびありました。しかしティルカヨは、そうした格上げではなく、独立した新しい種として正式に記載されました。研究成果は2026年9月17日、学術誌『Current Biology』にオンライン掲載されています(Lescroart et al.、doi: 10.1016/j.cub.2026.08.059)。

ネコ科は世界的に研究が進んでいる動物群で、「もう新種はほとんど出ないだろう」と考えられてきました。そのなかでの新種記載は、この分野の研究者にとっても驚きをもって受け止められています。

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どうやって新種と確認したのか|ゲノム解析と博物館標本

ティルカヨが新種だと確認できたのは、遺伝子(ゲノム)を詳しく比べたからです。研究チームはヒョウ属(Leopardus)の38個体を対象にゲノム規模の比較を行い、さらに博物館に保管されていた8点の歴史的標本からもDNAを読み取りました。古い標本からDNAを解析するこうした手法は「ミュージオミクス(museomics)」と呼ばれます。

この解析の結果、ボリビアのティルカヨが、見た目のよく似た他のタイガーキャットとは遺伝的にはっきり異なる系統であることが分かりました。研究では、ティルカヨが近縁のティグリナ(Leopardus tigrinus)/パルディノイデス(L. pardinoides)の系統と約140万年前(更新世前期)に分岐したと推定されています。

発見のきっかけをつくったのが、ボリビアの首都ラパス近郊にある野生動物保護施設「センダ・ベルデ(Senda Verde)」でボランティアをしていたパオラ・ノガレス=アスカルンス氏でした。彼女が「他のタイガーキャットと何かが違う」と気づいたことが、研究チームによる本格的な解析につながりました。研究全体はベルギー・アントワープ大学のヨナス・レスクロアート氏らが主導しています。

ティルカヨの特徴|大きさ・見た目

ティルカヨの体つきは、次のように報告されています。

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項目 内容
頭胴長 約42.5〜50.5cm(イエネコよりやや小さい)
尾の長さ 約25〜26.5cm
体重 約1.4kgとされる
毛色・模様 淡い褐色〜ベージュの地に、大きめで不規則な暗褐色〜黒のロゼット模様
生息地 ボリビア・ユンガスの雲霧林

背中の中央(背筋のライン)は色が濃く、脚のほうへ向かうにつれて淡くなります。斑点は輪郭が開いた(または半分閉じた)ロゼット状で、これが同属の他種と見分ける手がかりの一つになっています。

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タイガーキャット群の分類も整理された

今回の研究は、新種ティルカヨを記載しただけではありません。これまで見た目が似ていて分類が混乱しがちだった「タイガーキャット(オンシラ/ヒョウ属の小型ネコ)」の仲間全体の系統も整理されました。

研究では、この複合群のなかに互いに区別できる複数の系統が確認され、すでに知られていた南のタイガーキャット(Leopardus guttulus)に加えて、ティグリナ(L. tigrinus)やパルディノイデス(L. pardinoides)、エミリアエ(L. emiliae)などが位置づけられました。さらに、ティルカヨという新種の記載と、新しい亜種 Leopardus tigrinus antisuyo(ペルーのユンガスに分布)の設定も行われています。

「1種だと思われていたものが、実は複数の種・亜種の集まりだった」という整理は、保全(どの地域の個体群をどう守るか)を考えるうえでも重要です。

ティルカヨはイエネコの品種ではない(もう一度)

ニュースの見出しだけを見ると「新しい猫が公認された」と、ペットの猫種のように受け取ってしまいがちです。ですが、ここまで見てきたとおり、ティルカヨは野生のネコ科動物の新種であって、血統登録団体が認めるイエネコの品種とはまったく別のものです。

  • ティルカヨ=野生種(ヒョウ属)。学術論文で「新種」として記載された。
  • イエネコの品種(例:アメリカンショートヘア、ペルシャなど)=人が交配・選抜してつくり、TICAやCFAなどが公認したもの。

イエネコの品種のほうに興味がある方は、猫の品種一覧で原産国や特徴を一覧にまとめています。生き物の「種」と「品種」の違いが気になる方は、生物の分類階級一覧もあわせてどうぞ。

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まとめ

ティルカヨ(Leopardus tilcayo)は、2026年9月17日にCurrent Biology誌で記載された、ボリビアの雲霧林にすむ野生ネコの新種です。亜種の格上げではない完全な新種の記載は100年以上ぶりで、38個体のゲノム比較と8点の博物館標本を用いた解析によって、他のタイガーキャットとは異なる系統だと確認されました。イエネコの品種とは別物である点だけは、混同しないようにしておきたいところです。新しい情報が出れば、この記事も更新していきます。

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