人名がついた元素19種一覧|キュリウム・アインスタイニウムから命名秘話まとめ
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118種ある元素のうち、人名(またはそれに由来する地名)にちなんで命名された元素は19種。サマリウム・ガドリニウムの2種は自然界に存在しますが、残りはすべて人工的に合成された超重元素です。この記事では全19種を一覧テーブルで網羅し、なかでも特に興味深い命名秘話を5つ深掘りして解説します。

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人名がついた元素一覧(全19種)

まず直接、科学者や偉人の名が元素名になった16種を一覧でまとめます。

元素名(日本語) 記号 原子番号 命名の由来となった人物
サマリウム Sm 62 ヴァシーリー・サマルスキー=ビホヴェツ(ロシア、鉱山省大佐)
ガドリニウム Gd 64 ヨハン・ガドリン(フィンランド、化学者)
キュリウム Cm 96 マリー・キュリー&ピエール・キュリー(フランス/ポーランド、物理・化学者夫妻)
アインスタイニウム Es 99 アルバート・アインシュタイン(ドイツ、理論物理学者)
フェルミウム Fm 100 エンリコ・フェルミ(イタリア、物理学者)
メンデレビウム Md 101 ドミトリ・メンデレーエフ(ロシア、化学者)
ノーベリウム No 102 アルフレッド・ノーベル(スウェーデン、発明家・実業家)
ローレンシウム Lr 103 アーネスト・ローレンス(アメリカ、物理学者)
ラザホージウム Rf 104 アーネスト・ラザフォード(ニュージーランド、物理学者)
シーボーギウム Sg 106 グレン・シーボーグ(アメリカ、化学者)
ボーリウム Bh 107 ニールス・ボーア(デンマーク、物理学者)
マイトネリウム Mt 109 リーゼ・マイトナー(オーストリア、物理学者)
レントゲニウム Rg 111 ヴィルヘルム・レントゲン(ドイツ、物理学者)
コペルニシウム Cn 112 ニコラウス・コペルニクス(ポーランド、天文学者)
フレロビウム Fl 114 ゲオルギ・フリョーロフ(ソ連、物理学者)
オガネソン Og 118 ユーリ・オガネシアン(ロシア、物理学者)

次に、地名を経由して人名に遡る3種です。都市名・大陸名が元素名の由来になっており、そのさらに語源が人名という間接型です。

元素名 記号 原子番号 地名 → 由来の人物
アメリシウム Am 95 アメリカ大陸 → アメリゴ・ヴェスプッチ(イタリア、航海者)
バークリウム Bk 97 バークレー市(カリフォルニア)→ ジョージ・バークレー(アイルランド、哲学者・主教)
リバモリウム Lv 116 リバモア市(カリフォルニア)→ ロバート・リバモア(アメリカ、牧場経営者)
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特に注目の命名秘話5選

① キュリー夫妻が一緒に名を刻んだ「キュリウム」

1944年、アメリカの化学者グレン・シーボーグらが合成したキュリウム(96番)は、マリー・キュリーとピエール・キュリー夫妻の両名を称えて命名されました。

マリー・キュリーはラジウムとポロニウムを発見し、女性として初めてノーベル賞(物理学賞と化学賞)をダブル受賞した科学者。ポロニウムは母国ポーランドを意味する「Polonia」からの命名でしたが、キュリウムは夫妻が共に称えられる唯一の元素です。放射性元素の研究において文字通り命を削った夫妻の名が、放射性の超重元素に刻まれているのは偶然ではありません。

② 生前に元素名になった史上初の人物・シーボーグ

シーボーギウム(106番)は、1974年にソ連の研究所が合成し、1997年にIUPACが正式名称として採用した元素です。その名を持つグレン・シーボーグは、なんと命名された時点でまだ存命中でした。

元素に自分の名前をつけること自体が異例ですが、シーボーグはプルトニウムをはじめ10種以上の元素を合成・発見した20世紀最大の核化学者の一人。IUPACはその業績を称えて生前に命名を決定しました。シーボーグは1999年に86歳で没するまで、文字どおり「自分の名前を持つ元素」とともに生きた人物です。

なお118番のオガネソン(命名2016年)の由来、ユーリ・オガネシアンも現在存命であり、シーボーグに続く2例目となっています。

③ ノーベル賞を受け取れなかった「マイトネリウム」

マイトネリウム(109番)の由来、リーゼ・マイトナーは核分裂のメカニズムを理論的に解明した物理学者です。1938年にオットー・ハーンと共同で核分裂を発見しましたが、ノーベル賞は1944年にハーンのみに授与され、マイトナーは受賞を逃しました。

後の科学史家はこれを「ノーベル賞史上最大の失態の一つ」と批判しています。ナチスドイツ時代にユダヤ系であったため迫害を受けてスウェーデンに亡命したマイトナーは、1968年に89歳で没しました。元素命名は1997年のことであり、残念ながら生前の受賞とはなりませんでしたが、女性科学者の名前を持つ唯一の元素として今も輝いています。

④ 核爆発の残骸から発見されたアインスタイニウムとフェルミウム

アインスタイニウム(99番)とフェルミウム(100番)は、1952年に行われたアメリカの水素爆弾実験「アイビー・マイク(Ivy Mike)」の残骸から発見されました。その事実は当初、核兵器開発の機密保持のため公表されませんでした。

発見されたこと自体が数年間秘密にされたのち、1955年に2元素の発見が同時に公式発表されました。アインスタイニウムはアルバート・アインシュタイン(E=mc²の理論で核物理学の基礎を作った人物)に、フェルミウムは世界初の核連鎖反応を実現したエンリコ・フェルミに捧げられました。核時代を象徴する2つの元素が、核兵器の爆発によって発見されるという歴史の皮肉が込められています。

⑤ 周期表の父が自らの表に加わる「メンデレビウム」

メンデレビウム(101番)は、1955年にグレン・シーボーグらのチームが合成し、周期表を考案したドミトリ・メンデレーエフを称えて命名されました。

メンデレーエフが1869年に発表した周期表は、当時まだ発見されていない元素の存在をあらかじめ予測した革命的な業績でした。彼が予言した「エカシリコン」「エカボロン」「エカアルミニウム」は後にゲルマニウム、スカンジウム、ガリウムとして実際に発見されています。その偉業を後世の科学者が称えた結果、メンデレーエフ自身が作り上げた周期表の101番目に、自分の名前が刻まれることになりました。

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豆知識:人名元素あれこれ

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自然界に存在する人名元素はたった2種

19種の人名元素のうち、自然界で安定的に存在するのはサマリウム(62番)とガドリニウム(64番)のみです。残り17種はすべて人工的に合成された放射性元素で、多くは半減期が非常に短く、ごくわずかの原子しか生成できません。

トランスフェルミウム戦争(命名争い)

100番フェルミウムより重い元素をめぐり、アメリカ(カリフォルニア大学バークレー校)とソ連(ドゥブナ合同原子核研究所)が、「どちらが先に合成したか」「誰の名前をつけるか」をめぐって1950年代〜1990年代にわたって激しく争いました。この対立は「トランスフェルミウム戦争」と呼ばれ、IUPACが1997年に最終的な命名を裁定して決着しました。104番のラザホージウムは長年アメリカがラザフォーディウム、ソ連がクルチャトビウム(イゴール・クルチャトフにちなむ)と別の名称で呼んでいた代表例です。

元素記号の大文字ルール

人名由来の元素でも、記号の頭文字は人名と一致しないことがあります。たとえばCopernicium(コペルニシウム)の記号はCnであり、CoはCobaltが先に使っているため使えません。また、Nobel Prize(ノーベル賞)の記念名称のはずが、記号NoはNitrogen(窒素、N)と被らないよう2文字が使われています。

人名がついた元素についてさらに詳しく知りたい方は、元素一覧|全118元素の記号・性質・名前の由来まとめもご覧ください。また、元素と同様に人名がついた「人名がついた単位43種一覧」も合わせてどうぞ。元素の漢字表記が気になる方は「元素の漢字130選」も参考にしてみてください。

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まとめ

人名がついた元素は全118元素のうち19種。そのほとんどが20世紀に合成された超重元素で、マリー・キュリー、アインシュタイン、フェルミといった物理・化学の巨人たちが名を刻んでいます。特に「生前に命名されたシーボーグ」「ノーベル賞を逃したマイトナー」「核爆発で発見されたアインスタイニウム・フェルミウム」のエピソードは、科学史の縮図そのもの。周期表の裏には、人間ドラマがぎっしり詰まっています。

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