
世界のチーズは1,000種類以上あるといわれ、産地ごとに個性豊かな風味と製法が受け継がれています。その名前には、生まれ故郷の地名や村名、製法をそのまま言葉にしたもの、作った人の名前など、実に興味深い由来が詰まっています。
本記事では、フレッシュ・白カビ・青カビ・シェーブル・ウォッシュ・セミハード・ハードの7タイプに分類して64種を一覧表にまとめました。名前の語源を知ると、チーズ選びがもっと楽しくなりますよ。
チーズのタイプ別分類
チーズは大きくナチュラルチーズとプロセスチーズに分かれます。プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱加工したもので、スライスチーズなどがその代表例です。
ナチュラルチーズは熟成方法によって、以下の7タイプに分類されます。
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| タイプ | 特徴 | 代表チーズ |
|---|---|---|
| フレッシュ | 熟成させず新鮮な状態で食べる | モッツァレラ、リコッタ |
| 白カビ | 表面に白カビを繁殖させて熟成 | カマンベール、ブリー |
| 青カビ(ブルー) | 内部に青カビを繁殖させて熟成 | ゴルゴンゾーラ、ロックフォール |
| シェーブル・ブルビ | 山羊乳・羊乳を原料とする | クロタン、マンチェゴ |
| ウォッシュ | 塩水やお酒で洗いながら熟成 | エポワス、タレッジョ |
| セミハード | プレスして適度に水分を抜いて熟成 | ゴーダ、エダム |
| ハード | しっかりプレスし長期熟成(1年以上) | パルミジャーノ、チェダー |
世界のチーズ64選一覧
フレッシュチーズ(11種)
熟成工程がなく、作りたてのフレッシュな状態で楽しむタイプです。クセが少なく、サラダやピザなど料理にも幅広く使われます。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| モッツァレラ | イタリア・カンパニア州 | 「引きちぎる(mozzare)」の意。成形時に手でちぎる動作から |
| ブッラータ | イタリア・プーリア州 | イタリア語で「バター(burro)」から。中にクリームが詰まっている |
| フィオール・ディ・ラッテ | イタリア | 「ミルクの花」の意。牛乳製モッツァレラの正式名称 |
| リコッタ | イタリア | ラテン語で「再び煮た(recocta)」の意。ホエーを再加熱して作る |
| マスカルポーネ | イタリア・ロンバルディア州 | 諸説あり。スペイン語の「mas que bueno(最高においしい)」説など |
| クリームチーズ | アメリカ | クリームをたっぷり使うことからそのまま命名 |
| コテージチーズ | イギリス | 農家の「小屋(cottage)」で作られたことから |
| フロマージュ・ブラン | フランス | フランス語で「白いチーズ(fromage blanc)」の意 |
| クワルク | ドイツ・オーストリア | 低地ドイツ語で「凝乳」の意 |
| フェタ | ギリシャ | ギリシャ語で「薄切り(feta)」の意。薄切りにして塩水に漬けることから |
| ラブネ(ラバネ) | 中東・地中海地域 | アラビア語で「ヨーグルト」。水切りヨーグルトの一種 |
白カビチーズ(8種)
表面に白いカビ(ペニシリウム・カモンベルティ)を繁殖させて熟成させるタイプです。クリーミーでまろやかな風味が特徴で、フランス産が多く知られています。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| カマンベール | フランス・ノルマンディー | ノルマンディーの「カマンベール村(Camembert)」から |
| ブリー・ド・モー | フランス・イル=ド=フランス | ブリー地方のモー市から。1815年のウィーン会議で「チーズの王」と称された |
| ブリー・ド・ムラン | フランス・イル=ド=フランス | ブリー地方のムラン市から。ブリー・ド・モーより小ぶりで風味が強い |
| シャウルス | フランス・シャンパーニュ地方 | オーブ県「シャウルス村(Chaource)」から |
| ヌーシャテル | フランス・ノルマンディー | ノルマンディーの「ヌーシャテル=アン=ブレー村(Neufchâtel)」から |
| ブリア=サヴァラン | フランス | 著名な美食家「ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン」の名にちなむ |
| バラカ | フランス・ノルマンディー | アラビア語で「祝福(baraka)」の意。縁起のよい名前 |
| ポン=レヴェック | フランス・ノルマンディー | カルヴァドス県「ポン=レヴェック村(Pont-l'Évêque)」から |
青カビチーズ・ブルーチーズ(7種)
チーズの内部に青カビ(ペニシリウム・ロックフォルティなど)を繁殖させて熟成させます。刺激的な風味と塩味が特徴です。「世界三大ブルーチーズ」はロックフォール・ゴルゴンゾーラ・スティルトンです。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| ロックフォール | フランス・アヴェロン県 | 「ロックフォール=シュル=スールゾン村(Roquefort)」から。羊乳使用 |
| ゴルゴンゾーラ | イタリア・ロンバルディア州 | ミラノ近郊「ゴルゴンゾーラ村(Gorgonzola)」から |
| スティルトン | イギリス・レスターシャー | ハートフォードシャーの「スティルトン村(Stilton)」から |
| ダナブルー(ダニッシュブルー) | デンマーク | 「デンマーク(Dana)のブルーチーズ」の意 |
| カブラレス | スペイン・アストゥリアス州 | アストゥリアスの「カブラレス地方(Cabrales)」から。牛・羊・山羊乳混合 |
| フルム・ダンベール | フランス・オーヴェルニュ地方 | ガリア語でチーズの形を意味する「fulmo」+「アンベール村(Ambert)」 |
| ブルー・ドーヴェルニュ | フランス・オーヴェルニュ地方 | 「オーヴェルニュ地方(Auvergne)のブルーチーズ」の意 |
シェーブル・ブルビ(山羊乳・羊乳チーズ)(11種)
シェーブル(山羊乳)はフランス語で「山羊」の意味、ブルビ(羊乳)は「羊」を意味します。牛乳チーズより酸味が強く、独特のコクとさっぱりした後味が特徴です。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| クロタン・ド・シャヴィニョール | フランス・ロワール渓谷 | 「馬糞(crotin)」の俗称+「シャヴィニョール村(Chavignol)」。山羊乳 |
| サント=モール・ド・トゥーレーヌ | フランス・トゥーレーヌ地方 | 「サント=モール村」+「トゥーレーヌ地方(Touraine)」。山羊乳 |
| ヴァランセ | フランス・アンドル県 | アンドル県「ヴァランセ村(Valençay)」から。山羊乳 |
| セル=シュル=シェール | フランス・ロワール渓谷 | ロワール渓谷「セル=シュル=シェール村(Selles-sur-Cher)」から。山羊乳 |
| カプリーノ | イタリア | イタリア語で「山羊(capra)」の意。山羊乳 |
| ロカマドゥール | フランス・ロット県 | ロット県「ロカマドゥール村(Rocamadour)」から。山羊乳 |
| マンチェゴ | スペイン・ラ・マンチャ地方 | 「ラ・マンチャ地方(La Mancha)」の形容詞形から。羊乳 |
| ペコリーノ・ロマーノ | イタリア・ラツィオ州 | 「ローマ(Romano)の羊(pecora)のチーズ」の意。羊乳 |
| ペコリーノ・トスカーノ | イタリア・トスカーナ州 | 「トスカーナ(Toscano)の羊のチーズ」の意。羊乳 |
| オッソー=イラティ | フランス・バスク・ベアルン地方 | 「オッソー渓谷(Ossau)」+「イラティの森(Iraty)」から。羊乳 |
| イディアサバル | スペイン・バスク地方 | バスク地方「イディアサバル村(Idiazabal)」から。羊乳 |
ウォッシュチーズ(7種)
熟成中に表面を塩水や地酒(ワイン・ビール・ブランデー)などで洗いながら仕上げるタイプです。外皮は独特の強い香りがしますが、中身はクリーミーなものが多く、「外見よりずっとマイルド」といわれます。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| エポワス | フランス・ブルゴーニュ地方 | コート=ドール県「エポワス村(Époisses)」から。マール酒で洗って熟成 |
| タレッジョ | イタリア・ロンバルディア州 | ベルガモ北部「タレッジョ渓谷(Val Taleggio)」から |
| マンステール | フランス・アルザス地方 | ラテン語「修道院(monastérium)」から。修道士が製造したことに由来 |
| リヴァロ | フランス・ノルマンディー | カルヴァドス県「リヴァロ村(Livarot)」から |
| モン・ドール | フランス/スイス国境 | フランス語で「金の山(mont d'or)」の意。秋冬限定の季節チーズ |
| リムバーガー | ベルギー/ドイツ | ベルギー旧「ランプ地方(Pays de Limbourg)」から。強烈な香りで知られる |
| ラングル | フランス・シャンパーニュ地方 | オート=マルヌ県「ラングル市(Langres)」から |
セミハードチーズ(10種)
適度にプレスして水分を抜き、数ヶ月〜1年程度熟成させるタイプです。マイルドで食べやすく、世界で最も消費量が多いタイプの一つでもあります。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| ゴーダ | オランダ・南ホラント州 | 南ホラント州「ゴーダ市(Gouda)」から。市場が開かれた取引の中心地 |
| エダム | オランダ・北ホラント州 | 北ホラント州「エダム市(Edam)」から |
| コンテ(コムテ) | フランス・フランシュ=コンテ地方 | 「フランシュ=コンテ地方(Comté)」から。コムテとも表記 |
| ラクレット | スイス/フランス・サヴォワ | フランス語パトワで「削る(racler)」の意。溶けたチーズを削り取る食べ方から |
| ハバルティ | デンマーク | 19世紀の農家ハンナ・ニールセンが開発した「ハバルティ農場(Havarthigaard)」から |
| ヤルスバーグ | ノルウェー・ヴェストフォール県 | ヴェストフォール県「ヤルスバーグ地方(Jarlsberg)」から |
| サンネクテール | フランス・オーヴェルニュ地方 | ピュイ=ド=ドーム県「サンネクテール村(Saint-Nectaire)」から |
| カンタル | フランス・オーヴェルニュ地方 | 「カンタル山地(Massif du Cantal)」から。フランス最古のチーズの一つとされる |
| ボーフォール | フランス・サヴォワ地方 | サヴォワの「ボーフォール地方(Beaufort)」から。高山牧草地のミルクを使用 |
| アッペンツェラー | スイス・アッペンツェル州 | 「アッペンツェル地方(Appenzell)」から。ハーブ入り塩水で洗いながら熟成 |
ハードチーズ(10種)
しっかりとプレスして低水分にし、1年以上長期熟成させるタイプです。旨みが凝縮されており、パスタやリゾットに削ってかけるなど料理素材としても活躍します。
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| チーズ名 | 原産国・地域 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| パルミジャーノ・レッジャーノ | イタリア・エミリア=ロマーニャ州 | 「パルマ(Parma)」+「レッジョ=ネッレミリア(Reggio)」の地名から |
| グラナ・パダーノ | イタリア・ポー川流域 | 「パダナ平原(Padana)の粒状(grana)チーズ」の意 |
| ペコリーノ・サルド | イタリア・サルデーニャ島 | 「サルデーニャ(Sardo)の羊(pecora)のチーズ」の意 |
| エメンタール | スイス・ベルン州 | ベルン州「エメンタール渓谷(Emmental=エメ川の谷)」から |
| グリュイエール | スイス・フリブール州 | フリブール州「グリュイエール地方(Gruyère)」から |
| スブリンツ | スイス・中央部 | かつての輸出拠点「ブリエンツ(Brienz)」がなまったという説あり |
| チェダー | イギリス・サマセット州 | サマセット州「チェダー村(Cheddar)」から。渓谷の洞窟で熟成されたことが起源 |
| ミモレット | フランス・フランドル地方 | フランス語で「やや柔らかい(mi-molle)」の意。ハードだが名前はやわらかさを示す |
| マオン(マホン) | スペイン・メノルカ島 | メノルカ島の港「マオン(Maó/Mahón)」から |
| サプサゴ | スイス・グラールス州 | 「すりおろす」を意味するグラールス方言から、または地名由来と諸説あり |
チーズの名前の付け方(豆知識)
チーズの名前は大きく4つのパターンに分けられます。
① 地名・産地由来(最多パターン)
産地の村名・市名・地方名がそのまま名前になるケースが最も多く、チーズの名前を見ると産地がおおよそわかります。
- 村名から:カマンベール(ノルマンディーのカマンベール村)、ゴーダ(オランダのゴーダ市)、チェダー(イギリスのチェダー村)、ゴルゴンゾーラ(ミラノ近郊のゴルゴンゾーラ村)
- 地方・渓谷名から:エメンタール(エメ川の谷)、グリュイエール(フリブール州グリュイエール地方)、コンテ(フランシュ=コンテ地方)、ボーフォール(サヴォワのボーフォール地方)
- 地名の合成から:パルミジャーノ・レッジャーノ(パルマ+レッジョ)、オッソー=イラティ(オッソー渓谷+イラティの森)
② 製法・食べ方由来
チーズの作り方や食べ方を言葉にした名前も多く見られます。
- モッツァレラ:「引きちぎる(mozzare)」→ 成形時に手でちぎる動作から
- リコッタ:「再び煮た(recocta)」→ ホエー(乳清)を再加熱して作ることから
- ラクレット:「削る(racler)」→ 半割りにしたチーズを火にあて、溶けた部分を削り取ってかける食べ方から
③ 形・見た目由来
- ミモレット:「やや柔らかい(mi-molle)」→ 外見はかなり硬いのに対し、食感がやや柔らかいことから命名されたといわれる
- グラナ・パダーノ:「粒状(grana)」→ チーズの断面が粒状に見える
④ 人名・機関名由来
- ブリア=サヴァラン:18〜19世紀フランスの著名な美食家「ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)」の名から
- マンステール:ラテン語の「修道院(monastérium)」から。アルザスの修道士が製造・発展させた
- ハバルティ:デンマークのチーズ研究家ハンナ・ニールセンが19世紀に開発した「ハバルティ農場」の名から
世界のチーズ豆知識
チーズは世界に1,000種類以上
全世界で生産されているチーズは1,000種類以上(諸説あり)とされています。フランスだけで400〜500種以上、イギリスだけで700種以上という説もあり、正確な数は定義の仕方によって変わります。
世界最古のチーズは7,500年前?
チーズ製造の最古の痕跡は、ポーランドで発見された約7,500年前(紀元前5,500年ごろ)の陶製チーズ漉し器とされています。また2013〜2014年の発掘では、ラムセス2世に仕えたエジプト高官プタハメスの墓から約3,200年前のチーズが発見されており、現存する世界最古のチーズ実物とされています。
ド・ゴール将軍の名言
フランスのシャルル・ド・ゴール元大統領が「246種ものチーズを擁する国をどうやって統治できるというのか」と嘆いたというエピソードは有名です(実際の数は諸説あり)。それほどフランスにはバラエティ豊かなチーズ文化が根付いています。
「チーズ」の語源
英語の"cheese"はラテン語の"caseus(カセウス)"に由来し、古英語の"cēse"を経て現在の形になりました。同じ語源を持つ言語に、ドイツ語の"Käse(ケーゼ)"、オランダ語の"kaas(カース)"があります。
まとめ
世界のチーズをタイプ別に64種紹介しました。フレッシュから長期熟成のハードまで、製法によって風味も名前の由来も大きく異なります。
特に地名由来の名前が多く、「カマンベール」を聞けばノルマンディーの小さな村が、「パルミジャーノ・レッジャーノ」と聞けばイタリアのパルマとレッジョの丘陵地帯が浮かぶようになります。名前に土地の記憶が刻まれているのが、チーズという食文化の面白さのひとつです。
スーパーやチーズ専門店で手に取るときに、ぜひ名前の由来を思い浮かべてみてください。
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