瑠璃色(るりいろ)とは|仏教の七宝が生んだ深い紫みの青【ことのは図鑑】

「瑠璃色(るりいろ)」という言葉を聞いたとき、どんな青を思い浮かべるでしょうか。

濃い紫みを帯びた、奥深く鮮やかな青——それが瑠璃色です。語源は、仏教が最高の宝のひとつに数えた「瑠璃」、すなわち現代でいうラピスラズリ(青金石)にあります。はるかアフガニスタンで産出され、シルクロードを渡り、仏教とともに日本に伝わったこの宝石。その色は千年以上前の『竹取物語』にも記され、今日まで日本人に愛され続けています。

この記事では、瑠璃色の意味・語源・歴史、群青色や紺色との違い、そして「瑠璃」の名を持つ鳥や器まで、その奥深い世界をひもときます。日本の伝統色をまとめてご覧になりたい方は、日本の伝統色77色一覧もあわせてどうぞ。

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瑠璃色(るりいろ)とは

瑠璃色は、濃い紫みの鮮やかな青色を指す日本の伝統色です。JIS慣用色名ではマンセル値「6PB 3.5/11」に分類され、カラーコードは #1e50a2 が広く使われています。

単に「青」と呼ぶには個性が強すぎる色です。紺色よりも明るく、群青色よりも紫みが強い——その独特の深みが、古くから人々を惹きつけてきました。

「瑠璃」という漢字は、仏教の宝石を指す語で、英語ではラピスラズリ(lapis lazuli)として知られる半貴石のことです。ラテン語で「石(lapis)」と「空・青(lazuli)」を合わせた名で、その名のとおり空を閉じ込めたような青さを持ちます。

語源・成り立ち——七宝とラピスラズリ

瑠璃色の「瑠璃」は、仏教の経典に登場する宝石の名前が由来です。

仏教では「七宝(しっぽう)」と呼ばれる7つの宝が説かれます。経典によって構成は異なりますが、金・銀・瑠璃・玻璃(ガラス)・珊瑚・瑪瑙・赤珠などが代表的です。なかでも瑠璃は清浄さや智慧の象徴とされ、薬師如来の経典(薬師瑠璃光如来本願功徳経)では「瑠璃光」として如来の名にも用いられるほど、仏教世界において特別な位置を占めてきました。

瑠璃の正体は、ラピスラズリ(青金石 / せいきんせき)という鉱石です。鮮やかな青の地に金色の粒(黄鉄鉱)が点在するこの石は、古代より宝飾品や顔料として珍重されてきました。

ラピスラズリを細かく砕いて精製した顔料は、天然ウルトラマリンと呼ばれます。ヨーロッパでは15〜16世紀ごろまで最も高価な顔料のひとつで、ルネサンスの画家たちは聖母マリアのローブをこの色で描きました。宗教的な神聖さを表す色として、東西を問わず同じ宝石が愛されていたのは、興味深い一致といえます。

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シルクロードを渡った宝石——日本への伝播

ラピスラズリの主要な産地はアフガニスタン北東部のバダフシャーン州で、採掘の歴史は少なくとも紀元前7,000年ごろ(約9,000年前)にさかのぼるとされています。古代エジプトのツタンカーメン王の黄金のマスクにも使われており、人類が最も古くから愛してきた宝石のひとつです。

日本へは、シルクロードを通じてペルシャ・中国・朝鮮半島を経由するルートで伝わりました。奈良時代(8世紀)に建立された正倉院(東大寺)には、ラピスラズリをあしらった帯飾りなどの宝物が今も収蔵されており、当時すでに宮廷の世界でこの宝石が流通していたことがうかがえます。

一方、正倉院に伝わる「瑠璃碗(るりのわん)」などの青いガラス器は、ラピスラズリそのものではなく、当時「瑠璃」と呼ばれた青色ガラス製です。古代・中世の日本では、美しい青いガラスもまた「瑠璃」と呼ばれており、色名としての「瑠璃」は宝石と青いガラスの両方を包含していました。この歴史的な背景が、「瑠璃色」という色名に複雑な奥行きを与えています。

平安時代になると、「瑠璃」という語が染色やガラス器の色名として広く定着し、「碧瑠璃(へきるり)」という表現も生まれます。シルクロード経由でもたらされた宝石の色が、日本語の色彩語として根付いていく歴史のなかに、東西文化交流の痕跡を見ることができます。

竹取物語から現代まで——文学・文化での記録

「瑠璃色」という言葉の古い記録のひとつが、平安時代(9世紀後半〜10世紀前半ごろに成立したとされる・作者未詳)の『竹取物語』です。

車持皇子が語る蓬莱山の描写に、こんな一文があります。

「こがね、しろかね、るりいろの水、山よりながれいでたり」

黄金・白銀と並んで「るりいろの水」が描かれており、当時の人々が瑠璃色を最上の宝の色と同等に位置づけていたことがわかります。

江戸時代には染色技術の発達とともに瑠璃色の布地が実用的に作られるようになり、着物や武家の装束にも用いられました。日本画では岩絵具として瑠璃色の顔料が使われ、仏画の背景や蒔絵に深みのある青が生かされています。

現代でも「瑠璃色の地球」(松田聖子、1986年)という曲のタイトルに使われるように、宇宙から見た地球の色を表す言葉として今も通用します。単なる伝統色を超えて、神秘的で普遍的な美しさを表す言葉として生き続けているのです。

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群青色・紺色・藍色との違い

瑠璃色と混同されやすい青系の伝統色を比較してみましょう。

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色名 特徴 由来
瑠璃色(るりいろ) 濃い紫みの鮮やかな青 宝石ラピスラズリそのものの色
群青色(ぐんじょういろ) 濃い紫みの青(やや暗め) ラピスラズリを砕いた岩絵具の色
紺色(こんいろ) 暗い紫みの青 藍染の濃い色(植物染料由来)
藍色(あいいろ) 暗い青(紫みが少ない) タデアイで染めた暗い青
浅葱色(あさぎいろ) 明るい青緑 葱の若葉の色

瑠璃色と群青色は特によく混同されますが、じつは成り立ちに明確な違いがあります。

瑠璃色は宝石ラピスラズリそのものの輝きを指す色名で、やや明るく鮮やかな紫みの青です。群青色は、そのラピスラズリを砕いて顔料にしたときの色名で、やや暗みがあります。同じ素材に由来しながら、「宝石の色」か「顔料の色」かという視点の違いで、別の色名として定着したわけです。

紺色・藍色はどちらも植物の藍染に由来する色で、瑠璃色とは由来がまったく異なります。紫みと明るさの度合いで段階的に異なり、瑠璃色の方が明るく鮮やかな印象を持ちます。

「瑠璃」の名を持つもの

「瑠璃」という言葉の美しさは、色名だけにとどまりません。その名は自然や文化のさまざまなところに刻まれています。

オオルリ・ルリビタキ——瑠璃色の野鳥たち

日本を代表する美しい野鳥のひとつがオオルリ(大瑠璃・学名 Cyanoptila cyanomelana)です。オスの翼・頭・背中が鮮やかな瑠璃色に輝くことからこの名が付きました。同じく「コルリ(小瑠璃)」「ルリビタキ(瑠璃鶲)」など、青い羽を持つ鳥たちに「瑠璃」が広く使われており、日本人が瑠璃色を鳥の羽の美しさを表す言葉として自然に用いてきたことがわかります。

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瑠璃紺(るりこん)

瑠璃色より暗く深みのある紺青色が「瑠璃紺(るりこん)」です。着物の色名や漆器の色として使われ、より落ち着いた格調のある色合いです。瑠璃色の派生色として、日本の色彩文化に根付いています。

薬師如来の光——「瑠璃光」

仏教の世界では、薬師如来は「薬師瑠璃光如来」とも呼ばれます。瑠璃のように澄んだ光を放つ如来という意味で、瑠璃色が仏教的な清浄さや癒しの象徴であることがここにも表れています。日本各地の薬師寺や薬師堂も、この名にちなんで建てられたものです。

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まとめ

瑠璃色は、仏教の七宝「瑠璃(ラピスラズリ)」を語源に持つ、深い紫みの鮮やかな青色です。はるかアフガニスタンで産出された宝石がシルクロードを渡り、仏教とともに日本に根付いた色——その経緯を知ると、ひとつの伝統色に込められた歴史の重さが感じられます。

『竹取物語』に記され、正倉院の宝物に宿り、野鳥の名前にも刻まれた瑠璃色。群青色と似て非なるその違いを知ると、日本の色彩語の奥深さが改めて伝わってきます。宝石のような神秘的な深みが、千年以上にわたって人々を惹きつけてきた理由なのかもしれません。

日本の伝統色の世界をもっと知りたい方は、日本の伝統色77色一覧もよろしければご覧ください。

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