
災害の後は、避難生活が数日から数週間に及ぶこともあります。慣れない環境では、衛生や体調の管理がおろそかになりがちです。避難生活を少しでも健やかに乗り切るために、知っておきたい基本をまとめました。
この記事では、「在宅避難」という選択肢、避難所・在宅に共通する 衛生のポイント、そして避難生活で注意したい 体調管理(健康リスク) を、内閣府・厚生労働省などの公式情報をもとに解説します。
なお、健康に関する内容は、公的機関が呼びかけている「気をつけたいポイント」の紹介にとどめます。体調に不安があるときは、避難所の救護スタッフや医療機関、自治体の相談窓口など専門機関に必ず相談してください。
「在宅避難」という選択肢
「避難」というと避難所へ行くことをイメージしがちですが、内閣府は 避難=避難所へ行くことだけではない と説明しています。
自宅が 浸水や土砂災害の恐れが低い場所 にあり、建物の安全が確認できるなら、住み慣れた自宅で過ごす 「在宅避難」 も有力な選択肢です。安全な親戚・知人の家やホテルなどへ移る方法もあり、こうした 分散避難 は、避難所の混雑を避け、感染症のリスクを下げることにもつながります。
ただし、在宅避難では 物資や情報が届きにくくなる ことがあります。水・食料・携帯トイレなどの備えが前提になるほか、自治体からの情報を自分で取りにいく姿勢も大切です。備蓄については防災備蓄リストの記事を、情報の集め方は公式情報の取り方の記事を参考にしてください。
衛生を保つ(避難所・在宅共通)
避難生活では、水や設備が限られる中で衛生を保つことが、感染症を防ぐ第一歩になります。内閣府の避難所運営ガイドラインや厚生労働省の資料で示されているポイントを挙げます。
- 手洗い・手指消毒:トイレの後や食事の前は、流水と石けんで手を洗う。水が使えないときはアルコール手指消毒液を活用する
- 咳エチケット:マスクの着用や、咳・くしゃみのときに口をおおう
- トイレの衛生:定期的な清掃・消毒を心がけ、使用後は必ず手を洗う(断水時は携帯トイレを活用)
- ゴミの管理:決められた場所に分別して出し、臭いや害虫の発生を防ぐ
- 換気:定期的に空気を入れ替える(体調のすぐれない人や高齢者に配慮しながら)
- 土足を避ける:室内は土足禁止にし、居住スペースを清潔に保つ
こうした基本的な衛生習慣を、避難所でも在宅避難でも意識することが、体調をくずさないための土台になります。
体調を守る:避難生活で気をつけたい健康リスク
環境の変化や運動不足、水分の不足などが重なると、避難生活では特有の体調不良が起こりやすくなります。厚生労働省が呼びかけている代表的なものを紹介します(いずれも詳しくは医療機関・専門機関の情報をご確認ください)。
エコノミークラス症候群に注意
エコノミークラス症候群 は、長時間足を動かさず同じ姿勢でいることで血の固まり(血栓)ができ、それが肺に流れて命に関わることもある病気です。車中泊などで特に注意が必要とされ、厚生労働省は避難生活を送る人に予防を繰り返し呼びかけています。
呼びかけられている予防のポイントは、こまめに水分をとる/ときどき軽い体操やストレッチをする/かかとの上げ下ろしやふくらはぎをもむ/ゆったりした服装をする など。長時間、同じ姿勢で座り続けないことが大切です。気になる症状があるときは、早めに医療スタッフに相談してください。
口腔ケアと誤嚥性肺炎の予防
避難生活では水が不足し、歯みがきがおろそかになりがちです。厚生労働省によると、口の中が不衛生になると、特に高齢者では 誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症 を起こしやすくなります。
水が少なくても、歯ブラシやウェットティッシュ、少量の水や洗口液で口の中を清潔に保つ ことがすすめられています。入れ歯の清掃も忘れないようにしましょう。
生活不活発病・心のケア
避難所では体を動かす機会が減り、特に高齢者は筋力が低下して 「動けなくなる」(生活不活発病) ことがあります。厚生労働省は「からだを動かしましょう」と呼びかけており、意識して体を動かす ことが大切です。
また、動かないでいると気持ちも沈みがちになります。つらい気持ちを一人で抱え込まず、周囲や、自治体・専門機関の相談窓口に相談してください。心の不調も、体の不調と同じように大切なサインです。
季節・要配慮者への目配り
避難生活は季節によっても注意点が変わります。夏は熱中症 に備えて水分・塩分をとり、風通しをよくする。冬は低体温症 を防ぐため、重ね着や保温グッズで暖をとる――といった対策を意識しましょう。
そして、乳幼児・高齢者・持病のある方・妊産婦 など、周囲の配慮が必要な人にはこまめに声をかけ合うことが大切です。困っている人がいないか、みんなで気を配ることが、避難生活を支え合う力になります。
まとめ
避難生活を健やかに乗り切るポイントは、①安全なら在宅避難も選択肢 ②手洗い・トイレ・換気など衛生を保つ ③水分・運動・口腔ケアで体調を守る ④季節と要配慮者に目を配る の4つです。
長引く避難生活では、小さな心がけの積み重ねが体調を大きく左右します。そして、体や心に不安を感じたら、我慢せず専門機関に相談する ことがいちばん大切です。この記事を、いざという時の備えとしてブックマークしておいてください。
【主な出典(いずれも公式)】内閣府防災「避難所運営ガイドライン/避難所のトイレの確保・管理ガイドライン/在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」、厚生労働省「被災地での健康を守るために/災害時における避難所での感染症対策/エコノミークラス症候群の予防のために/からだを動かしましょう」ほか。
※本記事は一般的な注意点の紹介です。体調に関することは、医療機関・専門機関・自治体の相談窓口など専門家に必ずご相談ください。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。